――漫画家インタビュー3人目は、透明感のある絵柄と魅力的なキャラクターたちで大人気の「異世界で『黒の癒し手』って呼ばれています」(以下『癒し手』)の村上ゆいち先生にご登場いただきました。さっそくですが、村上先生は『癒し手』が初めての漫画連載なんですよね。
そうなんです。同人でも商業媒体でも、漫画を描いたことがほとんどなかったので、最初にお話をいただいた時はかなり驚きました。
――では「漫画家・村上ゆいち」としてのお話は後ほどお伺いするとして……やはり子供の頃から絵を描くことが好きだったんですか?
小さい頃は好きな絵を模写して喜ぶ、よくいるお絵描き好きの子供という感じでしたね。キャラクターとしての絵を初めて意識したのは、小学生の頃読んだ種村有菜先生の「神風怪盗ジャンヌ」(集英社)です。それこそ今の萌え系に近いような、目力のあるキャラには本当に衝撃を受けました。今考えると、キャラクターだけで画面を成立させるということをあの時に学んだような気がします。
――そこからご自身でも、落書きじゃない“絵”を描くことを意識しだしたんですね。
意識はそうでも、テクニックがなかなか追いつかなくて……。中学生になって、漫画専門の文具メーカーが出していた、インクがカートリッジ式になっているお絵描き用の万年筆みたいなペンを買って「漫画家風〜」と満足していたくらいでした。着色に関しても、お小遣いが足りないからコピックを一本、肌色だけしか買えなくて。頑張って重ね塗りすると、色が濃くなった部分が影っぽく見えるので「プロっぽい!」と自画自賛していました(笑)。だから着色を含めてきちんとイラストを完成させたのは、ペイントソフトのSAIを使ったデジタル絵が初めてなんです。
――デジタルツールとの出会いはどういったきっかけだったんですか?
話は少し遡るんですけど、小学生の頃、アニメの絵が付いた物をたくさん売っているアニメイトというお店があると話題になったんです。その時、友達と行って「ONE PIECE」(尾田栄一郎/集英社)のクリアファイルを買ったんですが、おまけに「君が望む永遠」(âge/「君が望む永遠」製作委員会)というギャルゲーのクリアファイルが付いてきて。
――すごい組み合わせですね!
その絵が、自分が今まで見ていたアニメのようなパキッとした塗りじゃなくて、いわゆるギャルゲー塗りだったんですよ。もらった時はきれいだな、くらいの印象だったんですが、中学生になって自分が実際に絵を描くようになるとコピックとも違う塗りなので、もしかしてパソコンで描いてる? と気付いたんです。父が自営業をしていて仕事部屋にパソコンを置いていたので、調べ物をしたいからと言って借りて、こっそり当時開発中で無料配布されていたSAIを入れました。それからは夜な夜な、父の仕事部屋に行ってはお絵描きをして。
――よくバレませんでしたね……。お父さんからしたら、いつの間にか見知らぬソフトが入っているわけじゃないですか。
父はパソコンに詳しくなくて、年賀状を印刷する時にしか使わないような状態だったんです。なので何のソフトを入れようが、デスクトップにさえ表示させなければ全然バレなかったんですよね(笑)
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