――これまでのお話を聞いていて思ったのですが、木野先生は本当に絵を描くことが好きなんですね。
もちろん大変だったり、うまく描けなくて苦しかったりはします。でもやめていないということは、やっぱり絵を描くことが楽しいんだと思います。むしろ、描けなくなる方がつらいかもしれませんね。とはいえ、本当に描いている人は、私が足元にも及ばないくらいたくさん描いていますよ! 仕事で漫画を描いて、休憩時間に落書きをして、同人誌も作って……。漫画家の世界に入って、私よりもたくさん描いている人がいることに、なぜかすごくホッとしたんです(笑)
――インタビューの第1回で、子供時代は女の子を描くのが好きだったとおっしゃっていました。それは今でも変わりませんか?
昔からそうだといえばそうなのですが、今はいろんなものを描くのが楽しいです。もう少し補足すると、これまで技術的に描けなかったものが、描けるようになるのが楽しい……という感じでしょうか。でももちろん、今でも女の子を描くのは好きですよ(笑)
――男の子を描くのはいまだに難しいですか?
ありがたいことに、だいぶ描き慣れてきたと思います。食わず嫌いだった乙女系ゲームも好きになって、男性キャラクターの魅力もわかるようになったので。少女漫画を多く読んでいたせいか、以前はどんなに格好いい男の人でも、女の子を可愛らしく演出するための添え物のように考えていましたが、今はもうそんなことはありません。男の子についても、「描けなかったものが描けるようになった」楽しさを感じています。
――「描けなかったものが描けるようになるのが楽しい」。これは木野先生が漫画家を続けられている秘訣のようなものなのですね。
たしかにそうですね。子供の頃は、女の子がアイドルになりたいと思うのといっしょで、漫画家になりたいという気持ちはどこかにあったとは思います。でも、それだけではただの憧れでしかないですよね。だからいまだに、自分が漫画を描く側にいることが信じられない時もありますが、描けないことを描けるようになりたいという気持ちを持ち続けていたからこそ、漫画家にもなれて、それを続けられているんだと思います。
――なるほど、そうですね。
しかも、描けば描くほど描けないものが出てきます。これはもう、一生やっていられる職業だな、と(笑)。裏を返すと、「これが描きたい」という明確な完成形がないまま描き続けていることになるので、最近はもう少し目標を定めてもいいのかなと思っています。
――目標を定めるとしたら、どんなことになりますか?
みんなが読みやすい漫画、読んでいてその世界に没頭できる漫画を描けるようになりたいです。視線の誘導とか、漫画のイロハもきちんと勉強しないまま、実はけっこう無意識で描いている部分が多いので、少しずつ勉強しながら描いていこうと思っています。
――「基本に立ち返る」ともいえますが、もう少し具体的に言うと?
そうですね。ひとつ挙げるならば、変に描き込みすぎないこと……いわゆる「引き算」です。見せたいものを目立たせるためにあえて描き込みを減らす、場合によっては何も描かないことも重要だとわかってはいるのですが、バランスの取り方がまだまだですね。ホントに勉強だらけですが、それが楽しい! 楽しい一方で、毛が抜けるくらい辛い(笑)
――髪の毛はもちろん、体も大切にしないといけませんね。
やっぱり体が資本なので! 描く時は全力を出し切りますから、体力も大事ですよね。休憩中には腹筋をしたりしていますが、あまり効果がないのか、ちょっと動くと足がつるんですよ(笑)
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