――インタビューの最終回は担当編集とのフリートークです。木野先生はアンソロジーコミックやコミカライズを多く手掛けていますが、オリジナルコミックも描いてみたいとは思いませんか?
オリジナルコミックは、ストーリーもキャラクターも最初から全部自分で考えないといけないので……。漫画を描くところまでたどり着かないんです(笑)。原作がある方がありがたいですね。
――たどり着かない?
設定から何から、細かいところまで考え続けてしまって、いっこうにお話作りが進まないんです。第1回で少し触れたように、私はどちらかというと描き手として発信するタイプというより、読者として受信するタイプだと思っているので、創作をしている方は尊敬します。
――たしかにオリジナルコミックを作るのは大変だと思いますが、コミカライズならではの苦労もおありなのでは?
そうですね。やっぱり原作者さんが考えていることや、原作自体とズレが生じないよう、常に気をつけています。「月が導く」の原作小説が好きだから、なるべく壊したくないのですが……表現上の手法やら、ページ数の兼ね合いやらで、漫画にするにあたって切り崩していかないといけない部分もあるので……。すべてのシーンをカットせず、なんなら原作の書籍に収録されていないエピソードまで描きたいと思っているんですけどね(笑)
――小説のコミカライズの場合、カバーイラストや挿絵に描かれていないビジュアルを漫画家の先生が補完して描く苦労もあると思います。
たしかに、そこは苦労するところですね。最近の話だと、第16話以降に出てくるツィーゲの街を、どんな雰囲気にするかで迷いました。原作のあずみ圭先生からは「ファンタジーの中で違和感がなければいい」と任せていただいていましたが、私のファンタジー感と先生のファンタジー感には差があるはずなので、さてどうするかと……。いまだに悩みながら、海外の街並みを参考にしつつ描いています。なるべく原作を読んだ時のイメージと差がないようにしたいので、こういう時は原作ファンの主人にも意見を聞いてみたりしています。
――木野先生はゲーム原作のコミカライズにも多く関わっていますが、小説が原作のものとゲームが原作のもので、描き方に違いはありますか?
小説原作のコミカライズは、だいたい原作に沿ったお話の流れで漫画にしていきます。ゲーム原作の方は、アンソロジーのお仕事が多いからともいえるのですが、本筋のネタバレ要素は描けないんです。ゲームの物語をそのまま描くというよりは、その中から派生したエピソードや小ネタを描いていく感じですね。小説のコミカライズは、逆に小ネタ的なものはあまり描けないので、「月が導く」ではコミックスの巻末に収録している描き下ろし4コマで描かせていただいています!
――コミックスの描き下ろし4コマは、ネタからすべて木野先生が考えていますね。
はい、すごく楽しく描かせていただいています! 「月が導く」のファンである私としては、私以外の人が描いた「月が導く」の漫画も読みたいんです。さらに言うと自分でも「月が導く」のアンソロジーを描きたいくらいで、描き下ろしの四コマはいわばアンソロジーに参加している感じですね。何を言ってるんだという感じですが。もうどうしようもないですね(笑)
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