第3回歴史・時代小説大賞
選考概要
編集部内で大賞候補作としたのは、「中山道板橋宿つばくろ屋」「又右衛門、斬ってはならぬ ―宇都宮釣天井異聞―」「懈怠剣梅明かり」「天暗の星~念真流寂滅抄~」の4作品。最終選考の結果、編集部内で支持の高かった「中山道板橋宿つばくろ屋」を大賞に選出することとした。
「中山道板橋宿つばくろ屋」は、中山道板橋宿の旅籠『つばくろ屋』を舞台にした時代小説。旅籠で働く娘・お佐久を中心に、人情味あふれるストーリーと巧みな構成、そしてキャラクターの繊細な心情を、長編で見事に描ききっていた。
「又右衛門、斬ってはならぬ ―宇都宮釣天井異聞―」は、江戸時代初期の事件に着想を得た作品。史実ベースながら魅力的なキャラクターが目を引いたが、ストーリー全体にもう少しメリハリと盛り上がりが欲しかった。
「懈怠剣梅明かり」は武士の友情を描いた時代小説。しっかりと練り上げられたストーリー構成とキャラクター性に高い評価が集まったものの、見せ場の盛り上がりに欠けることと、短編ゆえの物足りなさがマイナスとなった。
「天暗の星~念真流寂滅抄~」は架空の江戸時代を舞台とした活劇モノ。平易ながら巧みな文章と独自の舞台設定にセンスを感じたが、物語の主題が見えづらかったのが残念だった。
中山道板橋宿つばくろ屋
科学チートで江戸大改革! 俺は田沼意次のブレーンで現代と江戸を行ったり来たり
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。江戸時代と現代を自由に行き来できるスキルがある、というオリジナリティのある設定が目を引きました。現代の知識・技術を駆使して、どのように改革していくのか、作品に引き込まれた読者は多かったのではないでしょうか。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
旅籠で働く人情味たっぷりのキャラクター達が生き生きと描かれた作品でした。四季折々の描写や旬の膳、江戸の暮らしなども丁寧に描かれていて、筆力の高さがうかがえます。「つばくろ屋」の何気ない日常に舞い込んだいくつかの事件が人々の心に少しずつ影響を及ぼして、染み入るラストに繋がっていく構成にはとても惹きこまれました。