第5回キャラ文芸大賞

第5回キャラ文芸大賞

選考概要

前回の応募数を上回るエントリーとなった第5回キャラ文芸大賞。全894作品の中から、最終選考に進んだのは32作品。定番のあやかしものをはじめ、家族の情愛を描いた作品、お仕事による成長譚、ダークでシリアスな恋愛ものなど、幅広いテーマの作品が集まった。

その後さらに検討を続け、大賞候補に残ったのは、「~千年屋あやかし見聞録~和菓子屋店主はお休み中」「ねこの湯、営業中です! ~函館あやかし銭湯物語~」「こちら、あやかし移住就職サービスです。ー福岡天神四〇〇年・お狐社長と私の恋ー」「半妖のいもうと〜あやかしの妹が家族になります〜」「鬼の頭領様の花嫁ごはん!」「大正石華戀奇譚<一> 桜の章」「あやかし移動都市の美術商~鵺の本音は分かりにくい~」の7作品。

最終選考の結果、大賞にふさわしい突き抜けたレベルの作品は見当たらず、残念ながら大賞はなしとしたが、個性豊かなテーマの作品が集まったため、従来のテーマ別賞に加えて恋愛賞、家族賞を新設した。
まず、大賞には一歩及ばなかったものの、北海道の歴史や舞台をじっくり取材して書き上げた「ねこの湯、営業中です! ~函館あやかし銭湯物語~」を優秀賞とご当地賞、キャラのかけあいが魅力的な「~千年屋あやかし見聞録~和菓子屋店主はお休み中」を優秀賞とあやかし賞に選出。
次に、本ジャンルで人気のある恋愛要素をうまく取り入れた「こちら、あやかし移住就職サービスです。ー福岡天神四〇〇年・お狐社長と私の恋ー」と「大正石華戀奇譚<一> 桜の章」を恋愛賞、個性的な世界観を描いた「あやかし移動都市の美術商~鵺の本音は分かりにくい~」を謎解き賞、王道ストーリーを綺麗にまとめ上げた「鬼の頭領様の花嫁ごはん!」をグルメ賞、家族の温かな絆が胸を打つ「半妖のいもうと〜あやかしの妹が家族になります〜」を家族賞とした。また最終選考に残ったものの、惜しくも受賞に至らなかった作品を奨励賞とした。

「ねこの湯、営業中です! ~函館あやかし銭湯物語~」は、八年前に死んだ愛猫のさくらと協力し、祖父の遺した銭湯を復興させるお話。北海道ならではの魅力が随所に盛り込まれており、霊力に関する設定も魅力的に描かれていた。

「~千年屋あやかし見聞録~和菓子屋店主はお休み中」は、無気力店主がおいしい和菓子を通じて、あやかし関係のトラブルを解決する物語。大正時代を舞台に繰り広げられる幼馴染三人の掛け合いが軽妙で、各キャラクターの個性が光っていた。

「こちら、あやかし移住就職サービスです。ー福岡天神四〇〇年・お狐社長と私の恋ー」は、転職活動中だったOLが、美形お狐社長のもとで奮闘する物語。二人の恋愛模様がコミカルかつシリアスに描かれていた。

「大正石華戀奇譚<一> 桜の章」は、不幸な主人公が婚約者とあやかしの間で翻弄されながらも、自分の運命に抗っていく恋愛小説。次々と訪れる波乱の出来事に引き込まれ、奇譚のタイトルに相応しい内容だった。

「あやかし移動都市の美術商~鵺の本音は分かりにくい~」は、本音を見抜く麒麟眼を持つ主人公が美術商とタッグを組み、様々な依頼を受けるお話。移動都市の春龍街や鵺の店主など、ユニークな設定で美しい世界観が表現されていた。

「鬼の頭領様の花嫁ごはん!」は、主人公を食べないと生きることができない鬼とのハラハラドキドキな新婚生活を描いたストーリー。ぎこちなかった二人が食を通じて心を通わせていく様子に心温まった。

「半妖のいもうと〜あやかしの妹が家族になります〜」は、父親が突然連れてきた半妖の妹、くり子との生活を描いたストーリー。くり子がとても愛らしく、ほっこりしつつも切ない展開が読み手の涙を誘った。

開催概要はこちら
応募総数 894作品 開催期間 2022年01月01日〜末日

なし

森のくまさんと元OL

浅葱
1位 / 894件

編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。社会生活に疲れたヒロインが、突然、田舎暮らしを始める冒頭の展開は勢いがあり、ぐっと引き込まれました。個性豊かなキャラクターたちが生き生きと描かれ、森での穏やかなスローライフは非常に楽しく魅力的で、多くの読者が癒やされたのではないかと思います。


編集部より

あやかしが集い、霊力を養うというユニークな設定が秀逸で、次はどのようなあやかしが出てくるのだろうとワクワクしました。また、北海道と昭和銭湯の組み合わせも斬新で作品の世界観が上手く表現されており、函館にある名所や店舗などが随所にちりばめられているので、ご当地小説としても魅力たっぷりでした。


編集部より

怠け者の和菓子屋三代目店主と、幼馴染の陰陽師と女学生、そして彼らを取り巻くあやかしたちなど、個性的なキャラクター達のやりとりがとても軽妙に描かれていました。大正を舞台に、あやかし、お仕事、ご飯ものと人気の要素がバランスよく取り入れられており、ストーリー展開も読みごたえがありました。


編集部より

「あやかし移住就職サービス」というオリジナリティのある設定や、楓と篠崎をはじめとするユニークなキャラクターたちが魅力的で、序盤から物語にぐっと引き込まれました。徐々に進んでいく楓と篠崎との恋愛模様も丁寧に描かれていて、終始二人を応援しながら読み進めることができました。


編集部より

大正時代を舞台に描かれる、クラシカルかつシリアスな世界観が魅力的な作品でした。人間の歪み、ヒロインに襲いかかる波乱の運命、登場人物たちの心情が繊細に描かれており、それぞれの葛藤や望みがしっかり伝わってきます。物語の展開からも、最後まで目が離せませんでした。


編集部より

本音を見抜くことができる麒麟眼や、あやかしの棲む不思議な移動都市、鵺の美術商といったユニークな設定に加え、ちづると白露のテンポ良いかけあいのおかげで、一気に読み進めさせられました。ちづると白露の今後や酒呑童子の正体など、この先の展開が非常に気になる作品です。


編集部より

家族を亡くした孤独な主人公・菖蒲姫と鬼の頭領であるヒーロー・鬼童丸の二人が、少しずつ距離を縮めていく様子がほほえましく、読んでいてキュンとする作品でした。初めて見る菖蒲姫の料理に興味津々な鬼たちの姿も可愛らしく、キャラクター描写の巧みさが感じられます。


編集部より

野々宮家にやって来たくり子がとても愛らしく、彼女が杏菜たちと家族になっていく過程に、心が温まりました。また、くり子と別れるまでの思い出づくりや、ラストのシーンはとても切なく、胸を打たれます。家族愛にあふれた、読んだ人の心に残る作品だと感じました。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

奨励賞

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