第5回ファンタジー小説大賞
選考概要
編集部内で一次選考において大賞候補作としたのは「月が導く異世界道中」「物語の中の人」「ネクストライフ」「八百万ってたくさんって意味らしい」「今度こそ幸せになります!」「ウォーキングライフ ぶらり異世界散歩録」「魔王が地上では救世主になっている理由」「異世界は赤い星と共に」「強くてニューサーガ」「えっ?平凡ですよ??」 「大魔王が倒せない」「ルーントルーパーズ」「異世界で婚活はじめました」「獣医さんのお仕事 in異世界」「辺境護民官ハル・アキルシウス」「THE NEW GATE」「エデン」「精霊地界物語」「かコよヶ駅の年月表」「響命のフェアリース」「と、言うかただの走りたがり」の21作品。
流行りのVRMMOもの、異世界転生もの、勇者と魔王の話、またレジーナ向けの女性ヒロインもの、その枠に納まらない個性的な作品、など様々なジャンルから幅広く選び、結果として多くの作品が大賞候補作に選ばれることとなった。
どの作品も各々に魅力があり、また人気も非常に高いものが多かったが、以下の観点から最終選考を進めていった。
1.出版できる商業性のあるものをより重視。
現在の流行とは異なる個性的でユニークな作品、あるいは優れた筆致で描かれている質の高い作品もあったが、他のWebコンテンツ大賞とは異なり、参加作の中から多くの作品を出版するファンタジー大賞では、確実に出版できるものを選ぶべきであると考えた。
2.同じく、出版できるだけの分量が充分に備わった作品をより優先的に選考。
非常に人気があり、流行のストーリーの中にも個性が光る、素晴らしい作品が数多くあったが、残念ながら書籍として刊行するには分量が足りないもの、あるいはシリーズ化を考える上では、その更新頻度も含め、分量的にやや不安が残ると思われるものは、この最終選考においては優先度を下げることとした。
3.文章力、表現力という面でも質の高い作品をより評価。
これだけの作品数から選ばれる受賞作であるため、他の作品を上回る一定以上の文章力・表現力を備えているべきであると考え、そこも重視した。
こうした観点から、最終選考を進め、結果、大賞候補作として残ったのは「物語の中の人」「八百万ってたくさんって意味らしい」「今度こそ幸せになります!」の3作品。編集部内のさらなる選考の末、万遍なく支持が高かった「物語の中の人」を大賞に選び、残り2作品を特別賞に選出した。
「物語の中の人」は200年引きこもっていた大魔法使いが、少年の姿になり、学園生活を送るという魅力的な設定のファンタジー小説であり、男女、年齢問わず幅広い層に受け入れられる作品内容であることがとくに高く評価された。
「八百万ってたくさんって意味らしい」は魔法使いとしてチートな能力を発揮する主人公と、彼を召喚させた元大魔法使いで今はカエル人間の姿の“カワズ”さんの異世界珍道中もので、とにかく読んでいて楽しいコミカルな小説であり、各々のキャラクターのくすっと笑わせてくれる言動が、著者のセンスの良さを強く感じさせるものであった。
「今度こそ幸せになります!」は過去3回、勇者の幼馴染として生まれ変わり、旅立つ勇者を見送るも、いずれも勇者は他の女性とくっついてしまい、結局帰ってこなかった、という女性が主人公であり、そのユニークな冒頭設定のみならず、展開されるストーリーも大変面白い、魅力的なファンタジー小説であった。
また大賞候補作は他にも出版に資する作品が多々見受けられ、編集部において出版化を検討したい、あるいは出版化の道を探りたい作品に対して、個別に連絡をしていく予定である。また同じく大賞候補作以外にもレジーナブックスで是非出版化を検討したい作品も少なからずあり、レジーナブックス編集部より個別にオファーあるいは出版化への挑戦の打診をしていきたい。
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最後に、今回、選考中に他社からの出版を検討したいので選考辞退したい旨の申出が一件ありました。
それに対してアルファポリスでは、次の通り、賞開催及び選考の途中での辞退はできない旨の説明をし、理解を求めました。
1.アルファポリス「Webコンテンツ大賞」はそもそも開催概要にあるとおり、受賞作の出版権はアルファポリスにあり、賞に応募した時点で、受賞の可能性が発生し、出版の優先権がアルファポリスにあること。(もちろん選考が終了し、受賞されなかった場合にはそうした権利関係は解消されることになります)。
2.アルファポリスのみならず出版社の賞開催においては、多くの人力をはじめとする様々な業務コストがかけられており、その目的は一にも二にも商業出版として成功する作品・作家の発掘にあること。
3.Webコンテンツ大賞では数多くの読者にも投票いただいており(しかも結果的に大賞に選ばれた作品に投票した方は賞金の当選確率が格段にあがる)、その方たちを裏切ることになること。
是非皆さまには1クリックで気軽に賞にご参加いただきたいと思いますが、一方、受賞のあかつきにはアルファポリスに出版権が設定される、また賞開催及び選考の途中で他の出版社へ出版権を設定することはできないということだけはご理解の上、エントリーしていただきたいと思います。
もちろんアルファポリスにおいても、受賞作であるがアルファポリスから出版する予定の無い作品、検討のうえ出版を諦めざるをえない作品については、いたずらに拘束することはせず、個別の申し出に誠実に対応し、出版権を放棄することをここに明記しておきます。
物語の中の人
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。竜が作り出す亜空間の中で、さまざまなキャラが皆で徐々に村を大きくしていくというのは、他にはない特異な設定だと思います。また、異世界の絶望的な状況を前にしても、変わらぬ調子でのんびり旅を続ける主人公のマイペースっぷりがコミカルで、その予想のつかない言動も、作品の一つの魅力となっているのではないかと感じました。数多ある異世界転生チート作品の中でも異彩を放つオリジナリティに多くの読者が惹きつけられたのではないでしょうか。是非アルファポリスから出版したいと思います。
文章が軽快で読みやすく、また登場人物を蛙人間として生き返らせたり、魔法を使ってとんでもないことをやったりと、冒頭から続く“おもしろ展開”に一気に引き込まれました。主人公やカワズさんなどのちょっとひねくれた、けれど憎めないキャラたちが予想もつかないことを引き起こし、そして解決していく様がとにかく楽しく、読者の心をとらえているのだと思います。是非、アルファポリスから出版したいと思います。
今度こそ幸せになります!
単なるシンデレラストーリーとは一線を画した魅力的な設定で、ヒロインもとても共感しやすいキャラクターでした。少し斜に構えたようなヒロインの語り口調が面白く、また白馬の王子さま(この作品では勇者ですが)に頼らず自分の力で幸せを掴もうという姿勢は多くの読者が応援したくなるものだと思います。是非、レジーナブックスから出版したいと思います。
二百年間引きこもっていた大魔法使いが、少年の姿になり魔法学校に通い、仲間とともに学園生活を送る様子が生き生きと描かれた、安心して読めるとても楽しい作品でした。おおらかで、天真爛漫な主人公が新しい仲間と出会い仲良くなっていく様子は、ユーモアとやさしさに満ちており、読んでいて心がほっこりしました。もちろん、主人公が無自覚に引き起こす様々な事件も大変面白く、読者をひきつけるものだと思います。是非アルファポリスから出版したいと思います。