第8回ファンタジー小説大賞
選考概要
編集部内で一次選考において大賞候補作としたのは、「虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌」「邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~」「強くてニューゲーム!~とある人気実況プレイヤーのVRMMO奮闘記~」「アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-」「異世界転移したよ!」「異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと」「剣聖の弟子」「ありえない生産職~あんたが生産職なワケがない!~」「剣戟rock'n'roll」「異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました」「俺 VS 人類 ~アンデッドを使役して王国を襲う俺~」「魔法学校の落ちこぼれ」「転生無双の宮廷魔導士さま」「ブサメンガチファイター」「神さまにチート能力もらって転生したらオークだった」「使えない祝福とぼっちな俺」「前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。」「ヤンキーは異世界で精霊に愛されます。」「ロボット対戦ゲームをしていたら、ファンタジー系異世界にトリップしました」「転生したら森林部族だった【マタギの孫をなめんなよ!伝説】」の20作品。
ウェブ小説では根強い人気の最強主人公モノに加え、ここ数年の間にスタンダードとして定着したほのぼの日常系や職業・生産系など、いずれも読者のニーズに応える完成度の高い秀作が目立った。中でもこれまでにない個性的なキャラクター達が軽快に物語を引っ張っていく作品には大いに読み応えを感じた。
その後、最終選考で大賞候補として残ったのは、「虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌」「邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~」「アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-」「異世界転移したよ!」「異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと」「剣戟rock'n'roll」「転生したら森林部族だった【マタギの孫をなめんなよ!伝説】」の7作品。
それぞれテーマが異なり特徴が際立つ中、設定・構成・キャラクターなど全体的に高い水準にあった「邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~」を大賞に決定した。また、大賞には一歩及ばずながらも非常に優れた作品であった「アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-」を優秀賞に選出し、「異世界転移したよ!」「異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと」の2作品を特別賞とした。また、「虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌」はポイント最多により読者賞に決定している。
「邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~」は、誰もが夢想するような最強の存在の格好良さと、剣と魔法の異世界での冒険の危険さを、バランスを保ちながら軽快な筆致で両立させていた。華のあるキャラクター同士のやりとりも魅力的で、これからの物語にもまだまだ伸びしろがあると感じられた。
「虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌」は、個性的な固有名詞で構成された設定の細かさが目を引くとともに、勢いのある文体がアクション性を高め、ぐいぐいと引き込まれる作品。苦境の立場にあった主人公が異世界で逆転を目指すカタルシスがストレートに描かれている点も良かった。
「アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-」は、序盤のダンジョンでの苦戦、さらにその後に続く主人公の快進撃と、読者のツボを押さえた作品だった。人気ジャンルとして定着した感のあるモノ作り系の設定のキャッチーさも加わって、ファンタジーの世界の中で工夫して生きていく楽しさが伝わってくる優れた構成だった。
「異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと」は、転生した先の異世界で同級生を探すという一風変わった設定と、元不良少年の主人公のキャラクターがユニークな物語。それぞれの登場人物の事情と異世界の抗争を上手く絡ませていく構成力も見事だと好評を集めた。
「異世界転移したよ!」は、朴訥としたおっさん主人公と賑やかなヒロイン3人のやりとりがほほえましい日常系ファンタジー。適度なゆるさとユーモラスな展開が心地よく、登場キャラクターへの好感が作品の魅力を後押しする好例といえた。
また大賞候補作の中には是非出版化を進めたい、あるいは出版化の道を探りたい魅力のある作品が数多くあり、個別に連絡をしていく予定である。同じく大賞候補作以外にもレジーナブックスなどのレーベルでの出版化を検討したい作品もあり、編集部より個別にオファーあるいは出版化への挑戦の打診をしていきたい。
邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~
虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。不遇な状況にも負けない主人公の強い意志が勢いのある文章によって上手く表現されており、激しいながらも爽快な物語の熱量が伝わってきました。また、細部まで練られた設定や、凝りに凝った固有名詞などに、ライトノベルやゲーム好きのツボを押さえた格好良さを感じます。この主人公になりたい、この世界へ行ってみたいという共感を得られる作品でした。
アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-
生産やダンジョン攻略、魔物使役といった、読者に訴求する要素が多く、これらがバランスよくまとまっている点が見事でした。特に、最初から圧倒的なチート能力を振りかざすわけではなく、試行錯誤しつつもコツコツと積み上げていくタイプの主人公の姿勢は好感が持てます。戦闘シーンで要所要所引き締めつつも、全体的にほのぼのとした空気感が漂い、楽しく読み進められました。
異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと
転生した主人公が記憶を取り戻し、かつての仲間たちと再会していくという展開に非常に目を引かれました。軽快ながらしっかりした筆致であり、面白いだけでなくとても読みやすい作品です。また主人公や元同級生たちなどのキャラクターがそれぞれ個性的で、ストーリーを見事に演出していました。
異世界転移したよ!
冒頭の転生シーンや「無限サラミ」などの設定に強烈なインパクトがあり、勢いのあるストーリー展開とともに引きつけられました。主人公、ヒロイン三姉妹、その他のキャラクターによる軽妙なやりとりが全編を通じて光っていて、適度なゆるさとユーモラスな展開が心地よい作品だと感じました。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
最強の邪竜に転生するという胸躍る冒険を期待させる設定、また、その邪竜が次々と派手な活躍をしていくテンポの良い展開が小気味良く、読み進める手が止まりませんでした。加えて、弱きに優しく涙もろい主人公とクロエ、イレーヌといった個性的なヒロインたちとの交流がコミカルかつ温かみのある筆致で描かれており、ただ強さを誇るだけのチート作品にはない温もりを感じられる作品でした。