第3回ホラー・ミステリー小説大賞

第3回ホラー・ミステリー小説大賞

選考概要

前回を大幅に上回るエントリー数となった、第3回ホラー・ミステリー小説大賞。編集部内で最終候補としたのは、「妹がいじめられて自殺したので復讐にそのクラス全員でデスゲームをして分からせてやることにした」「【R18】Overkilled me」「猫屋敷古物商店の事件台帳」「喫茶店オルクスには鬼が潜む」「白い手紙」「霊感不動産・グッドバイの無特記物件怪奇レポート」「祈願成就」「ゆりかごを抱いて」「鹿翅島‐しかばねじま‐」「子鬼のつぶやき」「静寂の園」「花月弥生の異界散歩」の12作品。

その後の検討の結果、残念ながら商業的ニーズを満たしたオリジナリティに富む作品は見当たらず、大賞の該当作をなしとした。また大賞には一歩及ばなかったものの、編集部内で高い評価を集めたのが「妹がいじめられて自殺したので復讐にそのクラス全員でデスゲームをして分からせてやることにした」。ポイント最多として読者賞に決定していたが、通常の賞金にプラスして評価することとした。さらに次点として「【R18】Overkilled me」と「霊感不動産・グッドバイの無特記物件怪奇レポート」を特別賞に選出し、その他、最終選考に残ったものの、惜しくも授賞に至らなかった作品を奨励賞とした。


「妹がいじめられて自殺したので復讐にそのクラス全員でデスゲームをして分からせてやることにした」は、自殺した妹の復讐を果たすべく、姉がクラスメイト達にデスゲームを仕掛けるという王道のサイコスリラー小説。スクールカーストの描き方が巧みで、多数登場する生徒達の設定もよく練られていた。極限状態で感情が剥き出しになっていくキャラクターの心情には臨場感があり、最後まで読者を飽きさせない展開だった。

「【R18】Overkilled me」は、タイムループを繰り返すヒロインを描いたパニックホラー作品。物語の構成が秀逸で、冒頭から読者をぐっと引き込む力があり、読み応えたっぷりの意欲作であった。ストーリー中盤からは恋愛要素も絡み、難しいジャンルを卓越した筆力で描き切ったことが評価された。

「霊感不動産・グッドバイの無特記物件怪奇レポート」は、霊感体質の主人公と曲者上司の掛け合いが軽妙なバディ小説。いわくつき物件を扱う不動産屋という舞台設定がユニークで、脇役を含めキャラクターもよく立っており、短編エピソードから結末に繋げていくストーリーラインも綺麗にまとまっていた。


今年で3回目を迎え、様々なテイストの作品が集まった「ホラー・ミステリー小説大賞」。今後は、読み手を意識しつつ、WEBならではの自由な発想を活かした設定や斬新なアイデアが用いられた作品がさらに増えることを期待したい。

開催概要はこちら
応募総数 902作品 開催期間 2020年04月01日〜末日

なし


編集部より

ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。少年少女の残酷さやデスゲームのグロテスクさがテンポの良い文章で描かれた、魅力的な作品でした。彩乃の狂気や復讐者としてのある種の潔さ、多治比の正義が徐々に歪んでいく様子など、それぞれのキャラクターの生き様に引き込まれ、一気に読み進めた読者も多いのではないかと思います。


編集部より

ループするごとに事態が変化していく展開が巧みで、構成力の高さが窺える作品でした。世界観も非常に凝っており、読者を惹きつける力強さを感じます。ストーリーが進むごとに逞しくなっていくミシカ、それを支えようとするリアンなどの登場人物も、パニックホラーの王道をいくキャラクターで魅力的でした。


編集部より

『無特記物件』という新奇な設定が魅力的な作品でした。癖のある里見所長と気弱な朝前のバディのやりとりは軽快で楽しく、物語をどんどん読み進めることができます。また、エピソードのところどころに里見の妹についての伏線が敷かれており、ラストシーンで綺麗に繋がる展開は素晴らしかったです。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

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