第5回恋愛小説大賞
選考概要
編集部内で最終的に大賞候補作としたのは「ジュディハピ!」「Steel Life」「となりの、」「金曜日はピアノ」「Loving home」「強欲ラプソディ」「『~たくて』シリーズ」「何もしない夏の一日」「Love Story」の9作品。最終選考での議論の結果、大賞に選出したのは「金曜日はピアノ」。金曜日に行われる二人だけのピアノレッスンを通じて、心に傷を抱える男女がお互いに惹かれあっていく様を、確かな文章力で静かに優しく描いたとても雰囲気のある作品であり、まさに恋愛小説と呼ぶにふさわしい秀作と高く評価された。またその他では「Loving home」が編集部内で「金曜日はピアノ」に劣らず高く評価された。母の再婚と死によって、血のつながらない家族をもつこととなった主人公の、その家族に対する愛情、そしてゆれる恋愛模様が、大変読みやすく、しっかりした文章力で描かれた、完成度の高い、そして好感のもてる作品であった。最終的に同作は「家族」を描いた面が強いことから、より「恋愛小説大賞」と呼ぶにふさわしい「金曜日はピアノ」を大賞に選出することになった。またここであげた候補作のほかに、エタニティブックスのレーベルから出版の可能性を感じる作品もいくつかあり、エタニティブックス編集部で検討し、個別にオファーや打診をしていきたいと思う。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。巷で人気の乙女ゲームを全く別の観点から見た、まったく新しいタイプのオリジナリティあふれる作品だと思います。乙女ゲームならではの美形キャラクターや夢のある設定を、ズバズバ切り捨てていく様はどこか気持ちよく、そこを楽しんでいる読者も多いのではないでしょうか。出版化の可能性について是非検討していきたいと思います。
たしかな筆力で描かれた、繊細でとても雰囲気のある作品でした。それぞれ心に傷を持つふたりが、雨の日の偶然の出会いから始まる金曜日のピアノレッスンを通じて、互いに静かに惹かれあっていく様が、美しく、そしてどこかやさしい響きのするピアノの調べのように描かれており、大変魅力的な小説世界を作り出していると思います。ラストや細部の表現描写にやや物足りなさを感じますが、著者と改稿について相談し、出版化に挑戦したいと思います。