第5回漫画大賞
選考概要
編集部内での議論の末、最終候補作としたのは「ヒトコミ。」「江戸怪談『百の世の夢』」「キツネミネラル」「モンタニョーラ」「きみ★てん」の5作品。選考の結果、いずれもそのまま出版化するのは難しいと考え、編集部内で支持の高かった「キツネミネラル」「モンタニョーラ」の2作を特別賞に選出することとした。
「キツネミネラル」は妖怪退治をメインとした和風ファンタジーで、まだストーリーの序盤ではあるが、画力が応募作の中でも非常に高く、設定や小物などスピリチュアルな要素も加わり、とくに一定層の女性に高い魅力をもった作品であると評価された。
「モンタニョーラ」は色彩ゆたかな水彩画に不可思議な間(ま)をもった、日常を描きながらも独特な世界観を持つノスタルジー溢れる作品だった。なにかもう一つ強い魅力づけがあれば出版の道も可能ではないかと評価された。
またそのほかの三作も各々に違った魅力があり、編集部内の選考も差のないものだった。
「ヒトコミ。」は王道の少女漫画であるが、その王道の世界の中でもオリジナリティあふれるキャラクターやストーリーで展開されたクオリティの高い作品であった。また絵も回を追うごとに洗練されてきており、そこも評価された。
「江戸怪談『百の世の夢』」はタイトル通り江戸時代のちょっと不可思議な怪談をショート漫画にした連作作品で、その絵のタッチも作品によくあっており、おそらくそのまま出版した場合、応募作の中で一番商業ニーズがあるであろう完成された世界をもつ作品であった。
また「きみ★てん」はそれら安心して読める作品とは逆に、病んだ青春世界を描いた、しかし読み進めずにはおれないパワーを持つストーリー漫画で、こちらも強く惹かれる読者がいる作品であると評価された。決して下手ではないのだが、作画がもう少し現代風であればがらっと良くなったのではと編集部では考えた。
なし
キツネミネラル
妖怪退治という和の題材に、熱帯魚やオーパーツといった意外性のあるアイデアが加わったファンタジー作品でした。女性にも好まれそうなタッチの絵も魅力です。ご神石と対峙した店長はどうなってしまうのか、そして晴茂はどんな使命を負っているのか、とこれからの展開に期待している読者の方も多いのではないでしょうか。今後の更新も、楽しみにしております。
モンタニョーラ
色彩豊かな水彩絵と丁寧に描き込まれた情景、登場人物の繊細な内面も相まって、ノスタルジックで温かな作品世界に仕上がっていると思います。また、登場人物たちの関西弁のシュールな会話も特徴的で、どことなくずれた独特のテンポや間が、読者を物語の中に引きこんでいるのではないかと感じました。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。異世界を舞台に、利害の衝突する国同士の関係が緊迫感をもって描かれ、壮大なファンタジーに仕上がっていると感じました。また、呪いに悩み苦しみながらも前に進んでいこうとするアムの心情など、キャラクターの内面の繊細な表現が物語に深みを与えています。テンポも良く、先が楽しみになる展開が続いている点も、多くの読者の好評を得る結果に繋がったのだと思います。