第9回絵本・児童書大賞
選考概要
編集部内で大賞候補作としたのは、「とっておきの えどみやげ」「【絵本】ふとんに包まれながら」「ちびりゅうのかいかた」「わたしのげぼく」「悪ガキプロジェクト」の5作品。
最終選考の結果、編集部内で特に評価の高かった「【絵本】ふとんに包まれながら」を大賞に選出することとした。
「【絵本】ふとんに包まれながら」は、布団に包まった子供の姿をミノムシやカンガルーの赤ちゃんに見立てる発想が楽しい1~3才向けの絵本。イラストも、温もりのあるタッチで親しみやすく好感が持てた。ただ、ラストで主人公の男の子が、友達に誘われて野球に出かけるのは年齢がブレた印象で残念だったという意見があった。ストーリーに関して、今よりさらに強い特徴付けができれば、より良いものに仕上がるだろう。
「とっておきの えどみやげ」は、キャラクターのインパクトと、色彩の綺麗さが編集部内で高く評価された。絵のクオリティは、応募作のなかでトップクラスだった。しかし、ストーリーがわかりにくく、読者対象となる年齢層と合致していないと感じる点はマイナスとなった。
「ちびりゅうのかいかた」は、お祭りの屋台で手に入れた小さな竜を机の引き出しで飼う設定が、男の子の心をくすぐりそうな魅力的な短編小説。タイトルも良く、読者ターゲットに届くものだと感じた。ただ、対象読者を考えると、絵がついていることは必須のため、その点が惜しかった。
「わたしのげぼく」は、飼い主の少年を「げぼく」と呼ぶ猫視点で描かれた繊細な物語。少年を「げぼく」と呼びながらも、親のような温かい目線で見守る猫の姿が微笑ましかった。その一方で、内容が大人向けのため、ニーズをつかむのは難しいという指摘も上がっていた。
「悪ガキプロジェクト」は、謎の老人によって選出された平凡な小学生が「悪ガキ」として暗躍するエンタメ性の高い児童小説。テーマに魅力はあるものの、各話の内容は小粒な印象で、さらに多くの読者を引きつけるためには、もっと強いネタが必要だと感じた。
【絵本】ふとんに包まれながら
雪の夜、耳をすまして
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。乖離性障害に苦しむ少女と、彼女を温かく見守る少年の世界が、淡々とした筆致で丁寧に描かれた作品でした。二人の心の交流に、多くの読者が心を打たれたのではないかと思います。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
柔らかな温もりのあるタッチと世界観で、絵本として完成度の高い作品でした。布団に包まりながらあれこれ想像する「ぼく」のあどけなさや、考えているうちに、ついうとうとしてしまう子供らしさが微笑ましく、読後は優しい気持ちになりました。