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序章

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 【ファークラウド大陸・クラウディア王国】
 
 そこの王国騎士団にこの物語の主人公のグロリアはいる。
 今グロリアは…どうやらお取込みの真っ最中の様だ。

 「シグサール様…私は貴方の事が好きです!」
 「ごめん、グロリア…僕は標準サイズの子が好きなんだ。 自分より身長の高い子はちょっと…」

 そう言って彼女グロリアは、人生で78回目の失恋をした。
 …というか、彼女が未だかつて恋が実った事はない。
 それは…彼女の身長が高すぎるのが問題だった。
 彼女は、顔は可愛く…巨乳でプロポーションは抜群である。
 そんな彼女なら男は放っておかないはず…と思うだろうが、それが標準サイズの話でならモテモテの人生だっただろう。
 だけど彼女の身長は196cmあり、フラれる1番の理由は身長が高いという理由だからである。

 「今回も私はフラれたけど、次があるわ!」

 彼女はポジティブだった。
 何故彼女がこんなに身長が高いかというと…本人は話したがらないが、実は彼女はデミだからである。
 デミというと…普通は他種族と人間の子というイメージがあるが、彼女の父親は巨人族で母親はラミアである。
 どちらも巨漢種族な為に生まれてくる子供のサイズも成長すると大きくなるみたいだ。
 そして彼女は巨人族と間違わられることを極端に嫌い、人に聞かれると「人間です!」と答えるのである。
 
 「だって、巨人族の血が入っているなんて知られたら、嫌われるじゃ無いですか!」

 《嫌われる以前に好かれているかすら怪しいのに、気にするところはそこなの?》

 彼女を好いている者かまでは解らないが…グロリアは皆から頼りにされる存在だった。

 「グロリア、この間は助かったよ!」
 「グロリア、次も頼むな!」
 「グロリア~隊長から差し入れ貰ったんだけどいるか?」

 グロリアはこんな感じで恋愛では全くだが、人となりとしては好かれていた。
 グロリアは女子の寄宿舎に帰ると、そこには同期の騎士達がいた。
 同期の騎士達は、強くなるために必死で…色恋の話は全くと言って良い程に興味を示さないのだが、この日だけは違った。
 グロリアは、女騎士達が輪になって何かに夢中になっている感じだったので話に加わった。
 すると女騎士達は新聞を見ながら話し合っていた。
 
 「ゴルディシア大陸の英雄のリュカ・ハーサフェイ…第四の魔王デスゲイザーを倒すかぁ!」
 「黒髪でイケメン…そして強いかぁ!」
 「私はエルドナート大陸の英雄シオン君推しかなぁ? 顔が可愛いし、凄い使い手だって言う話だしね。」
 「以前騎士団に在籍していて退団して冒険者になったシーリスさんが言っていたわよ。 シオン君は可愛い上に仕事が出来るサポーターだって。」
 
 女騎士達は2人の英雄の話で盛り上がっていた。
 他大陸の2人の英雄の話は、この大陸にも伝わっているからだ。
 若き2人の英雄は、かつて世界を支配していた魔王サズンデスを倒した英雄ダン・スーガーの再来とも言われているという話だった。
 確かに映っている写真には、カッコいい男の子と可愛い男の子がいる。
 お近付になりたいという思いはあっても、私の容姿では見向きもされないだろうから、私には興味が無いのだ。
 ところが…英雄達が書かれている新聞の欄の下に面白い記事を見付けたので新聞を借りた。
 すると、こんな事が書かれていた。

 【グラウディア王国主催の闘技場武道大会が開催される。 今回の優勝者には、神々の恩恵というアイテムが与えられるだろう!】

 【神々の恩恵】とは?
 邪な考えを持つ者には効果を発揮しないが、その者が純粋な願いの場合のみ叶えてくれるというアイテムである。
 なので、大金持ちになりたいとか世界を牛耳りたいという願いは一切叶わないのである。
 
 「これよ! これだわ‼ 私は武道大会に優勝して、神々の恩恵を手に入れて見せる‼」
 「グロリア…神々の恩恵に何を願うつもりよ? 彼氏が欲しいという願いは邪に当たるから叶わないわよ?」
 「神々の恩恵に彼氏何か願わないよ! 私は身長を低くしてもらうだけ‼」
 「それなら叶うかもしれないけど…貴女本気なの?」
 「もちろんよ! これで私の事を【壁女】とか【要塞】とか言ってくる人がいなくなるわ!」
 
 そして彼女は思う。
 小さくなった身長で迎えに来てくれる王子様に出会える事を…
 それは逞しいギガントウォーリアフェーズに跨った王子様が私を迎えに来るという事を…
 《…と申しておりますが、ギガントウォーリアフェーズは体長4m~6mに成長する馬です。 それに跨るって、もはや人間では不可能では?》

 グロリアは武道大会に向けて燃えていた。
 それを見ていた女騎士団の団長アマンダは、こっそり寄宿舎を抜けると軍部に報告に行ったのだった。

 「失礼します!」
 「アマンダか? 一体どうした?」
 「会議中に申し訳ありませんが、大至急緊急な案件の為に御報告しようと参上致しました。」
 「お前が大変というからには、それだけ大事という事だな? 話してみよ…」
 「はっ! グロリアが王国主催の武道大会に出場して優勝宣言を致しました。」
 
 軍部のお偉いさんは、彼女なら必ずや優勝をするだろうと頷いていたが、アマンダの一言で態度をがらりと変えた。
 
 「実は…グロリアの目当ては優勝もですが、賞品の【神々の恩恵】でして…」
 「ふむ…【神々の恩恵】かぁ、それで彼女は何を望むのだ?」
 「それが…高すぎる身長を低くすると。」
 「何だと⁉ あの身長であるからグロリアはガーディアンウォール壁女とか、フォートレスウェポンズ要塞兵器としての需要があるというのに‼ 身長が低くなれば…」
 「ですが、彼女自身の能力を失う訳ではありません。」
 「それは分かってはいるが、相手に対する威圧感が無くなるだろ‼」

 軍部内では激しく討論されていた。
 そして結論が出たのでそれをアマンダに言って来た。

 「出場を阻止する為に、寄宿舎から出すな!」
 「それが…大会にエントリーしてくると既に出発しました。」
 「では、会場に着く前に取り押さえ…」
 「どうやってですか? 彼女がその気になれば、我が騎士団では相手になりません。」
 「ならば…大会の出場内容を変更するとか…」
 「魔法も何でもありの武道大会ですが、どんな変更が出来ますか?」
 「お困りのようですね!」

 会議室にまた別の軍人が現れた。
 眼鏡を掛けたインテリの様な男だった。

 「話は聞きました。 大会には参加させましょう…ただし、出場者に少し変更を加えて、更には優勝した際にもわなを仕掛けるのです。」
 「だが…グロリアを相手にする者だと、生半可な者では相手にならんぞ?」
 「それも心得ております! 彼女は強い…ですが、優しい部分もあるので、そこに浸け込むのです!」

 インテリ眼鏡は、軍部のお偉いさんにアドバイスをした。
 そして全ての策を与えると、お偉いさんたちは納得した表情をした。

 「そして恐らく決勝になると思いますが、ある切り札を用意します。 彼女が如何に強くても、切り札には絶対に勝てません!」
 「その切り札とは?」
 「それは後のお楽しみという事で…では、失礼します!」

 インテリ眼鏡の切り札とは一体?
 そしてグロリアは、無事に優勝を果たせるのだろうか?
 
 物語はここから始まるのであった。
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