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第四話

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 「昨日の夜は風が強かったからなぁ…」
 《見事に崩れたわね。》

 この山に来てから3日が過ぎていた。
 簡素な造りの小屋だったが、簡素なだけあって倒壊も早かった。
 昨日の夜は強風吹き荒れる嵐だったので、畑は無事だったけど家は完全倒壊していた。

 「私に建築の技術は無いからなぁ?」
 《家が駄目なら、その山に洞穴でも掘ってみたら? そこを拠点にすれば、倒壊の危険性は無くなるわよ。》
 
 確かにフォルティーナの言う通りだった。
 建設技術が無い私が家を再び作った所で、同じ轍を踏む事になる。
 ならば、山に洞穴を作って中で生活するという形にすれば良いだけだ。
 そして入り口には隠蔽魔法で閉ざしておけば問題ない筈。

 「後は畑に手を加えたい所だけど…」
 《聖女の結界を張り巡らせば? 元いた王国では王国全土に結界を張っていたんでしょ?》
 「そうか、これだけの規模だけなら別に大した魔力消費も起こらないか!」

 この付近では、野菜泥棒は村人や盗賊の類はまず無い。
 いるとすれば野生動物の類なのだろうけど、結界を張れば手出しが出来ない筈。
 私は小規模の結界を張って、野生動物の侵入を防ぐ事に成功した。

 《ところでセレナ、聖女魔法ってどんなのがあるの?》
 「聖女魔法は人々の癒しの魔法が数多くて、外敵から身を守る守護結界に結界内の植物に実りを与える豊穣の祈り、その他はステータス障害を回復する治癒魔法や回復魔法、戦闘の士気等を高める聖女の歌が数種類と…光による攻撃魔法が少々ある位ね。」
 《でも、セレナは精霊魔法や他の魔法も使えるよね?》
 「故郷のカロナック王国で聖女の修業と王子妃になる為の講義だけで良かったのに、魔力量を調べるついでに他の適性魔法を調べたら…精霊魔法や召喚魔法といった他の魔法も使える事が判明してね。 それ以来、別な講義が追加されたのよ。」
 
 宮廷魔術師が変なやる気を出さなければ、やる事が増えなくて済んだのに。
 更には武術の才能もあるとか言われてからやる事が増えすぎて、社交界やパーティーの参加が一切出来なくなったのよね。
 その他にも薬学に関する薬品造りや、錬金術なんかも学ばされたっけ?

 《なんか…聖女から段々遠ざかっている気がするわね?》
 「武術の訓練の後に戦場に出された事もあったけど、最初は兵士や騎士の回復による癒しだけだった筈なのに、魔法を封じられた場合の対処という事で、剣を持たせられて戦った事もあるわ。」
 《己の使う武器を作れとか言われた事は無かったの?》
 「それもあったなぁ…鍛冶ギルドや甲冑ギルドで己が使う武具を作れとか言われて、ドワーフから技術を学んだ事もあったわね。」
 《もう何でも作れるんじゃないの?》
 「さすがに建築とかは無理だったけど、護符を作るのに彫金ギルドや木工ギルドで装飾品を作らされたり、その後に祈りを捧げて護符にしてから神殿に収めたり、法衣やブーツなどを作るのに裁縫ギルドや革細工ギルドにも顔を出した事があったなぁ。」
 
 他にも住民達の炊き出しの為に、聖女が祈りを込めた料理に癒しの効果が付与できる可能性があるとかで料理も作らされたことがあったっけ。
 途中で聖女関係ないじゃん!
 これはただの雑用じゃん!
 そういって何度か心が折れ掛けたんだよね。
 今となっては…身に付けていて良かったと思えたけど。

 「それにしても…あの馬鹿勇者がフォルティーナを奪われた逆恨みで懸賞金を懸けたのは分かるけど、まさかカロナック王国からも懸賞金を掛けられるとは思わなかったなぁ。」
 《カロナック王国って、セレナが結界を解除して壊滅した国よね? 誰がやったか目星は付いているの?》
 「神殿長が運良く生き残っていたか、もしくは馬鹿王子が生き残れたか…どちらにしても、宝物庫の宝を全て持ち去った…とか書かれていない所を見ると、懸賞金を掛けたのは王族ではないでしょうね。」
 《宝物庫の宝を全て持ち去ったって…》
 「馬鹿王子に婚約破棄を告げられてから国外追放されたからね。 せめて王国から出て行く際には、今迄働いていた分のお給料を貰おうとして…全て戴いたのよ。」
 
 今迄の苦労を考えれば、全て戴いても罰は当たらない。
 私は青春の5年間を無駄にされたのだから。

 《それでセレナはこれからどうするつもり?》
 「しばらくはゆっくりしながら考えるとするわ。 カロナック王国を出てから、碌に休みなしで働いていた所為で休める暇がなかったしね。」

 私は野菜は好きだけど、野菜だけ食べるのは少し飽きる。
 とりあえずは野菜を育てながら生活をして行って、食べきれない量が出来たら村にお裾分けにでも行こうかな?

 …そう、その考えが甘かった。
 まさか村に野菜を持っていた際に、厄介事に巻き込まれるとは思わなかったのだった。
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