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第四章 バーンシュタット魔法道具店 開店

第四話 厄介な男達

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 「おい、ポーションをくれや…」

 私は翌日に開店を控えていて今一度商品棚を見直していた時に、その男達は来た。

 …話は40分前に遡る。

 ~~~~~~~~~~

 「彼はまだ来ていないのかな?」

 「どうやらまた遅刻の様ですね…」

 その日の朝は、翌日のオープンの為にフィッツに声を掛けていた…んだけど、朝が弱いのか5分後に遅刻して来た。

 私とブリオッシュはいつもの様にカウンターで待っていると、従業員用の扉が勢い良く開いて白い塊が転がり込んで来た。

 「ごめんにゃ~! また寝坊してしまったにゃ~~~!」

 「まぁ、約束の時間より多少の遅刻なら構わないけど…明日の開店ではちゃんと来ないとダメよ。」

 「本当にごめんにゃ~、お詫びとして…肉球を触らせてあげるから許してにゃ~!」

 猫魔法を使う猫魔道士のフィッツの手の平は、歴戦の戦士の様にゴツゴツとした手ではなく…フニフニした弾力のある肉球だった。

 パテット曰く、ケットシーが肉球を触らせるという行為は…非常に恥ずかしい行為らしく、番でも滅多に触らせないという話だった。

 …の筈なんだけど、遅刻したお詫びに何でもすると謝罪をされた時に、私は肉球を触らせて欲しいと頼んだら…それから遅刻する度に肉球を触っていたら、いつの間にかそれがフィッツの謝罪表現になっていた。

 ケットシーにとって、何故肉球を触らせるのが恥ずかしい行為なのかというと…?

 フィッツは手袋を外すと私に向けて手を差し出した。

 ピンク色でふっくらした肉球は、指で突くと中々の良い弾力がある。

 これだけなら別に恥ずかしい行為という話は結びつかないのだけど、肉球を触られている時に発する声が…?

 「にゃ…にゃう! にゃ…にゃう、にゃうん……にゃ…にゃう~ん♡」*(フィッツは♂です)

 ただ肉球を触らせて貰っているだけなのに、卑猥な事をされている様な可愛らしい声で喘いでいる姿が恥ずかしい行為の由来らしい。

 自分で触る分には問題は無いんだけど、他人に触られるとこういう反応になるらしい。

 私は別にマゾっ気はない…筈なんだけど、身長1m前後の可愛らしい姿をした猫が喘いでいる声を発すると、何だか変な気分が込み上げてくる。

 私はその可愛らしい声を聞きたくて何度も何度も触っていると、甲高い声を発しながらフィッツは崩れ落ちた。

 「あ…やり過ぎちゃった。」

 「ダメですよお嬢、ケットシーの肉球は他人に触られると敏感なのですから…」

 フィッツの顔が紅く荒い息を吐いていた。

 ここまでしたのは今回は初めてだったけど、私はブリオッシュに他人で従業員用の休憩室に運んで貰った。

 相も変わらず…腕の無いカラダでどうやって持ち上げているのが謎なんだけど、細かい事は突っ込まない事にした。

 「う~ん…結局はこうなったかぁ? まぁフィッツには起きたら仕事をして貰うとして…今はこっちを片付けないとね。」

 そんな形でお客様目線での商品の見易さを考えている時に、その男達は来た。

 お店の扉を激しく叩かれていたので、このままだと破壊されかね無いと思って扉を開けると、ガラの悪そうで人相の悪い男達が3人立っていた。

 そして冒頭に戻る。

 「おい、ポーションくれや…」

 「申し訳ありませんが、この店の開店は明日になっておりますので…明日にまたいらして下さいね。」

 私は扉を閉めようとすると、扉の隙間に手を差し込んでから無理矢理力任せで開かれた。

 「そうじゃねぇよ! お前が昨日、商店街の連中に配っている所を見たんだよ。 他人に配れるのなら、俺達にも分けてくれても良いだろう…なぁ?」

 あー、あれ…見られていたんだ?

 あまり騒ぎになら無い様に店の中で話して渡していたつもりだったんだけど。

 「あれは各店の方々にお店のオープンと御迷惑をお掛けするかもしれ無い為にお配りした物で、売り物とは別の物なのですが…」

 「何訳の分からない事をゴチャゴチャ言ってんだよ! 良いから早く寄越せや‼︎」

 あー…人の話を全く聞かないタイプね。

 応対しているのが馬鹿らしくなってくるわ。

 「迷惑って何の事だよ!」

 「今、貴方達がしている事ですよ。 扉を壊さんばかりに力一杯叩いた後に、店内に入ろうとして大声で相手を萎縮させようと脅しながら要求をしている事です。 まぁ、一般の街娘だったら有効な手段でしょうけど、私には効果がありませんよ。」

 「…んだと?」

 お店をオープンしたら、こういった輩も必ずくるんでしょうねぇ?

 これは良い予行練習になるわ~。

 でも、どうしようかなぁ?

 「良いから早く寄越せって言っているだろうが! この店をぶっ壊して奪って行っても良いんだぞ‼︎」

 「なるほど、窃盗の方達でしたか! ではすぐ近くの騎士団に連絡を入れて…」

 「騎士団が来る頃には間に合わないかも知れないぜ! 明日からとか言っていたけど、これで店は開けなくな………」

 「随分と面白い話をしているじゃねーか‼︎」

 3人の男達の2人の頭を掴んで持ち上げた男が居た。

 それは…依頼を終えて訪ねて来てくれたギャレッドだった。

 「ギャレッドさん、おかえりなさい!」

 「よぉ、リアーナ! 開店前の様子を見に来ていたんだが、随分と面白い話をコイツ等がしていてな…」

 今回はたまたまギャレッドが来てくれたし、任せちゃおうと思った。

 私はテールナール子爵家では虐待されていた時に、耳の付け根の部分を強く押すと涙が出るのを知っていたので…曽祖母の秘術の1つの涙の訴えを実行した。

 涙を流しながら上目遣いで怯えた声でギャレッドに話し掛けた。

 「この人達がポーションを寄越さないと私のお店を壊すって脅されて…」

 「ほぉ…?」

 ギャレッドは冒険者ギルドに登録されている者達やこの辺の悪党には顔が知れ渡っている。

 なので当然、この3人の男達もギャレッドの事は知らない筈がない訳で…?

 ギャレッドは2人の掴んだ頭を握り潰す勢いで握力に力を込めると、2人の男達は頭を押さえながら叫び声を上げていた。

 「俺様の仲間に手を出すだけではなく、これから世話になる店を壊す気だったとはな! 安心しろよリアーナ、コイツ等にはたっぷりとをしておいてやるからよ‼︎」

 ギャレッドは2人の男を頭を離してから左腕で締め上げると、もう1人の頭を掴んで何処かに去って行った。

 当然の事ながら…3人の男達は青い顔をしながら連行されて行った。

 ギャレッドの説教は恐らく…タダでは済まないだろう。

 私は去って行った方向に向かって手を合わせて祈った。

 「それにしても…今回はギャレッドに助けて貰ったけど、あの手の輩はまた来るだろうなぁ? 何か対策を考えておかないと…」

 今回は事なきを得たけど、次もこんな感じで終わる訳はない。

 私は頭の片隅に留めておいてから、明日のオープンの準備に取り掛かった。

 バーンシュタット魔法道具店は、明日にオープンします!
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