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第四章 バーンシュタット魔法道具店 開店

第三話 開店前にやるべき事

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 開店前にやるべき事があります。

 それは…商店街の各店の挨拶回りです。

 ポーションを販売するに当たって買い求めるお客様は後を絶たないという話ですが…?

 あまりにも行列が出来すぎて他店の店の前にも並んだり、対応を遅いと感じて騒ぎ立てる者もいなくは無いという話なので、事前に挨拶をして理解をして貰おうというものです。

 …と、商家の息子だったソーマの助言です。

 「リアーナ…周囲の店に挨拶を会いに行く時に、まさか手ぶらで行く訳じゃないよね?」

 「え?」

 「やっぱりか…元貴族様だとそういった事情には疎いんだね。」

 「ちょ、ちょっと待って! 私が元貴族って話した事があったっけ? あ、パテット⁉︎」

 「パテットからは何も聞かされていないよ。 言葉遣いや仕草が平民とは違うと思ったからね、僕の実家は商家だったから…お貴族様も足を運んでいたんだけど、リアーナはそれに近い作法がたまに見えていたからね。」

 ブリオッシュに教えられながら標準語を学んでいたつもりだったけど…?

 こんな所でボロが出ていたかぁ~!

 「ギルやギャレッドは気付いてないと思うけど、メルーファやレイヴン辺りは気付いているんじゃないかな? あの2人も貴族だしね。」

 ソーマに見破られていた時点で考えると、確かにレイヴンにはバレていてもおかしくはないわね?

 メルーファは表情が読み取れないから、分かっているのかが謎だけど?

 「手土産かぁ…そこまで考えていなかったけど、手土産として持って行くのなら何が良いかな?」

 「無難な物を選ぶとしたら…ポーション辺りが妥当じゃないかな? リアーナは鑑定魔法が使えるでしょ?」

 「う、うん…って、何で知っているの⁉︎」

 ソーマは溜め息を吐きながら言った。

 「リアーナの依頼を手伝う際に、高級食材のキノコを1発で見ただけで当てた事があったよね?」

 「うん…」

 まだランクE時代の時に、レストランの依頼で高級食材のキノコを持って来るというものがあって、ソーマに手伝ってもらった事があった。

 「あの時に高級食材のベノグサボンドダケを1発で見抜いたでしょ?」

 「あーうん、覚えているわ。」

 「並んで生えていた毒キノコのベノグサベングダケには一切目もくれずに…」

 「うん。」

 「あの2種類のキノコは表面から見ただけでは全く区別する事ができずに…狩猟者でもある方法を行って初めて分かるというのに、リアーナは表面だけ見て言い当てた。 薬草学に詳しいと一目で分かるのかとも思ったんだけど…でも採取した時に初めて見たと言っていたから、鑑定魔法が使えるという事を前提に考えればそうじゃないかと思ったんだよ。」

 「あ…うん、鑑定魔法を持っているけど…良くそれで行き着いたわね?」

 「僕の父親も鑑定魔法が使えたからね、だからもしかして…と思ってね。」

 迂闊…乙女の秘密曽祖母の秘術がこんな事でバレてしまうとは。

 ソーマって一見ポヤンとしているけど、見ているところはしっかりと見ているんだね。

 「それで鑑定魔法とポーションがどう繋がるの?」

 「各お店の店主さん達は、朝早くから開店する迄用意をして、店を閉めても翌日の仕込みをする為に夜遅くまで作業をしているんだよ。 そこでリアーナが店主さん達に鑑定魔法をして、その治療薬としてポーションを渡すのが良いと思ったんだよね。」

 お店をオープンする為に、私はグリモアールを開いて色々調べていた。

 当初の予定では…回復ポーション上中下に毒や麻痺の治療ポーション、狩猟用の神経毒や猛毒薬迄だったけど、女性の肌ケアに必要な化粧水の他に…肩凝りや腰痛などの生活習慣病を治療するポーションまで作り出した。

 乳液や化粧水などならともかく…生活習慣病を治療するポーションなんて売れるのかとも思ったんだけど、試作品という事で挨拶回りの手土産には丁度良いのかな?

 私は生活習慣病を治療するポーションをソーマみ持って貰うと、各店に宣伝とお世話になるという事を言いながら鑑定をして、要所に効くポーションを渡して行った。

 手土産のポーションは皆に喜ばれた。

 ボルグワーツ雑貨店の親父だけは、ポーションを売りたがっていたけど。

 飲まないのなら返して欲しいと告げると、ボルグワーツはしぶしぶと飲んだ後に治療ポーションは回復ポーションとは違う事を実感している様だった。

 これで挨拶回りが終わってから店に戻った私達は、ブリオッシュの入れてくれたお茶を飲みながら一息付いていた。

 これで…全てが終わったと思っていたんだけど?

 開店前に厄介事が待ち受けるのだった。
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