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第二章 曽祖母を求めて…

第六話 曽祖母は…?

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 扉を開けて入ってみると…そこは薄暗い部屋の中だった。

 そう思っていたら、またもグリモアールが光り出すと同時に部屋内の照明が付いて…部屋の全貌が見えたのだった。

 大きな本棚に無数の本、大きなテーブルの上に調合器具、部屋内は埃1つない綺麗な部屋で…変わった事があるとすれば、私の持っている箒より少し大きな箒が床の上を歩いていた⁉︎

 「何…この箒?」

 「おや…お方様ではございませんね? どなたでしょう…あ、グリモアール!」

 その箒は…何処に口があるのか分からなかったけど、私に話し掛けてきた。

 「グリモアールを所持されていると言う事は…貴女様はレオナリア様ですね?」

 「そうですけど…あなたは?」

 「あ、これは申し遅れました! 自分の名はブリオッシュと申しまして、偉大なるグランマリー・バーンシュタット様に造られしアーティファクトに御座います。」

 そういえば…曽祖母の名前を昔に聞いた事があったけど、確かグランマって呼んでいたっけ?

 これは本名ではないし、本名が凄く長いと言う事でそう呼ばされていたのを今思い出した。

 「えっと…ブリオッシュ、色々聞きたい事があるんだけど?」

 「何なりと…」

 「どうやって喋っているのかなぁ?」

 「えっ! そこですか⁉︎」

 箒のブリオッシュは驚いた様なリアクションをした…というか、後ろに跳ねたので勝手にそう思っただけなんだけどね。

 「自分の体の先端に魔石が付けられており、そこから声を発することが出来るのです…というか、まず最初にお方様の行方を聞かれるものだとばかり思っていましたが…?」

 「それも聞きたかったんだけど、ブリオッシュの事が最初に知りたくてね。 それで、グランマは何処にいるの?」

 「お方様は長い事レオナリア様をお待ちになっておられたのですが…二年ほど前に旅立って行かれました。」

 私は壁を見ると、壁に掛けられていたグランマの肖像画を見ながら涙を流していた。

 グランマはかなり高齢だったから、私がもう少し早く来ていれば…グランマに会えたかも知れない事に。

 「あの~~~感傷に浸っているところ大変申し訳ありませんが…レオナリア様は何か誤解をされておりませんか?」

 「えっ?」

 「お方様が旅立たれたというのは、別に亡くなられた訳ではありませんよ? 言葉通りの意味で…この場所から旅に出られたのです。」

 「えっと…ちょっと待って! グランマってかなりの高齢よね?」

 「あぁ~レオナリア様はこの絵の姿のお方様にしか会った事がないんですよね? お方様は人間にしたら高齢と呼ばれる年齢ですが、実際の見た目は若い姿をされておりますよ。 レオナリア様とあまり変わらない年齢くらいのお姿に…」

 グランマって…一体何者なんだろう?

 私は両親に曽祖母として紹介されたと思ったけど?

 「色々と混乱するのは仕方ないのかも知れません。 ですが、お方様より事付けをお預かりしています。」

 ブリオッシュは奥の扉の方に向かって行き…扉を開けると、其処はグランマの書斎の様な部屋だった。

 そこには机があって、その上には無数の本が積まれていた。

 「お方様から、もしも私がいない時にレオナリアが訪ねて来たら…手紙とこの書物を渡してくれと。」

 「この書物は?」

 私はそういうとグリモアールが光り出して、机の上に置かれていた書物がグリモアールに吸い込まれて行った。

 ストレージに入った訳ではなく、グリモアールに新たなページが追加されていたのだった。

 私はそのページを捲って行くと…其処には今まで取得した魔法の他に、攻撃に関する魔法が書かれていた。

 「新しいページが増えて読むのは構いませんが…その前にお方様の手紙をお読み下さい。」

 私はブリオッシュに言われた通りに手紙を開いて読んでみた。

 【レオナリア、貴女が此処にいるという事は…何かしらの理由で屋敷に居られなくなって私を訪ねに来たのですね?
 残念ながら会う事は叶わなかったけど、貴女の性格ならいつまでもこの場所に留まっているなんて事はしないで他所に移るでしょう。
 ですが、外での生活は屋敷の中の暮らししか知らない貴女にとっては色々戸惑う事になるかも知れません。
 そこで…ブリオッシュを連れて行きなさい。
 ブリオッシュは貴女に助言をしてくれるし、迷った時は正しい方向を記してくれる道標にもなります。
 それ以外にも乗り物としての機能もありますし、箒から杖の形に変化する事が可能です。
 テルシェリア王国では魔法を使う者は大変珍しがられますが、ベルシュナーデ王国ではテルシェリア王国ほど物珍しがられる事はないでしょう。
 今後の生活を考えて…貴女は冒険者ギルドに登録して資金を稼ぎなさい。
 そしてその道を続けるのも良いですが、別な道を模索するのも良いかも知れません。
 貴女のストレージの中に私が作った魔道具を入れておきましたので、それらを売っても構いませんし、何に使うかは貴女にお任せ致します。

 追伸…
 今すぐは会う事は出来ませんが、貴女が何か偉業を達成した暁には此方から会いに行くかも知れません。
 それまで頑張ってね。】
 
 「グランマ…」

 私はストレージの中に入っているリストを見ると、全てを調べるだけでかなりの時間を要するほどの量が収納されていた。

 「冒険者だけ…というのはねぇ?」

 「お方様からお聞きしたのですが…レオナリア様はポーション作りが出来るというお話でしたが?」

 「確かにポーション作りは出来るけど…」

 「でしたら、ポーションを作って販売するというのは如何でしょうか? ベルシュナーデ王国ではダンジョンが幾つかありますし…薬品関係は売れると思いますよ。」

 別な道を模索する…と聞いて思い付いたのはポーションを作成して売るというのは思い付いていた。

 「だけど、下手にポーションを作って売ると…足が付く可能性があると思ってね。」

 「でしたら…名前を変え、姿を変えて販売をしたら如何でしょうか? ポーションを作っている者はあくまでもその方で、販売をしているのは別な者…という設定にすれば素性を聞き出そうとする者は決して居なくはないですが…ある程度は誤魔化せると思いますよ。」

 そういう考えには及ばなかったわ。

 名前を変えるというのはいいアイデアだけど、姿を変えるってどうしたら良いのだろう?

 私はその事をブリオッシュに聞いてみた。

 「薬品で髪の色を変化させたり…あ、髪も切った方が良いかも知れませんね。 あまり長い髪だと貴族だとバレる可能性もありますし…」

 この世界では、貴族が髪を伸ばすのは優雅さや気品を表す象徴の為で平民はショートヘアーが主だった。

 平民の中にも髪を伸ばす者はいるけど、貴族令嬢と違って資金的に余裕が無くて手入れや維持が難しいので、あまり長く伸ばそうとする者はいなかった。

 私もポーション作りの最中に髪が長すぎて何度か切ろうとした事があったけど、あまり私に関心がない母親だったがその行為だけは禁止した。

 長くなければ貴族としての意味を成さないというのが理由なのと、第三王子との婚約した手前…切る事は許されなかった。

 「なるほど、髪を切るという考えも回らなかったわ。」

 私は近くにあったナイフを手に取って首の後ろに結んだ髪をバッサリと切った。

 「言っておいてなんですが…躊躇とか無いんですか?」

 「うん、別に…私も長くて鬱陶しかったし、これでスッキリしたわ!」

 そうなると後は見た目と名前変える事だけど…?

 私はポーション作成の際に実験をした時に、色を変化させる液体を開発に成功した事があった。

 それは物体に振りかける事によって色を変えるというものだったけど、服用した事はなかった。

 「別に危険な物を入れている訳じゃ無いし、飲んでも平気よね?」

 私はストレージに入っている色を変化させる薬品を飲み干してから鏡を見ると、髪と目が赤く変化する事が出来た。

 この状態で仮に自国に戻って知り合いに会ったとしても、私だと一目で分かる人はいないだろう。

 「後は名前を変え…偽名ですね。」

 「偽名か…」

 これに関してはすぐには思い付かなかった。

 今すぐこの家から旅立つ訳じゃ無いし、中の書物を読んでからゆっくりと考える事にしましょうか!

 私は早速…グリモアールに追加されたページを読む事にした。
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