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第二章

第十二話 旅のお約束…・後編

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 あれから1週間…
 俺は工房でパクって来た砥石で、玉鋼の刀を完成させるべく研いでいた。

 「それにしても、このパクった砥石は本当に仕上がりが良いな。」

 この砥石に鑑定魔法を施してみると、パルーファルの石と表示されていた。
 俺はこのパルーファルという石を知る者がいないか聞き取り調査を行ったが、誰も聞いた事がないと言う答えばかりだった。
 鑑定魔法も使用回数をこなせば、この石の産地とかを知る事ができるようになるのだろうか?
 この石を最後の研ぎに使うと、恐ろしい精巧に仕上がる事が出来る。
 だったら、何がなんでも欲しいと思っても仕方が無いだろう。

 「この辺の者が知らない…いや、普通の人間は石なんかに興味はないか。」

 …そう、石を詳しく知るものは…研究者や鉱石を取り扱う者位だろう。
 この石が、店では高値で取引されている…と言うのであれば、普通の人間でも認知度はあるだろうが?

 「仕方ないな、レクシアード大陸に着いたら…米の行方と共に、この青みがかったパルーファルの石も尋ねてみるか。」

 街から離れた静かな小屋を探すのが本来の目的だったが、いつの間にか…目的が変わってしまっていた。
 衣食住の住が一番の最優先事項なのだが、生きていく為には食も同じ位に重要だ。
 衣に関しては、別にちゃんと洗えば…1年間同じ物でも、俺は気にしないさ。
 だって、街から離れたご近所すら居ない場所だったら、人と会う機会はそうそうないからだ。

 「良し、完成だ!前回よりも、更に完成度と強度が増したな。」

 俺は段々と、異世界での炉の使い方がわかってきていた。
 この様子だと、余程変な間違いを犯さない限り、失敗する事は殆ど無いだろう。
 メルクリウスの鉱石以外は。
 メルクリウスの鉱石を一般の鉄鉱石の様に火を入れてみた。
 すると、この鉱石は溶け始めたのだった。
 そこでこの鉱石を知る者が居ないかと、冒険者達に声を掛けた。
 すると、俺を兄貴と慕う冒険者からこんな話を聞いた。

 「水のメリクリウスと風のミスリルの加工が出来るのは、伝え聞いた話によると…エルフ族ですね。火のオリハルコンと地のアダマンタイトは、ドワーフ族の腕力でしか加工は出来ないと聞いた事がありましたが…」

 この世界では、これ等の鉱石の加工の仕方が分かるのか。
 ドワーフ族はなんと無く予想はついていたが、まさか鍛治関連に縁が無いと思っていたエルフ族に関係があるとは思わなかった。
 ドワーフ族には、ロザリアの街で会っている…が?
 エルフ族には全く会った事がない。
 そういえば、伝え聞いていた話…とか言っていたな?
 俺は再び、兄貴と慕う冒険者に話を聞いた。

 「ドワーフ族は大抵の街の中には必ず居ますが、エルフ族は殆んど見掛けません。悪徳商人がエルフ族を捕らえてきて、奴隷として販売していると聞いた事がありますが、そう言う時以外では全く会えるかどうかという種族ですね。オレも今迄の人生で、一度も見かけた事すらありません。」
 「そうなのか…」

 俺は人里の離れた場所で、工房を構えるのが目的だが…?
 俺だけで勇者の武器を造るのは、正直言ってキツい。
 そこで考えるのは、従業員の存在だ。
 ドワーフ族は交渉次第では、雇用する事が出来るという。
 ならば、もしもオリハルコンやアダマンタイトを入手した時に、加工を任せられるかも知れないな。

 「しかしオリハルコンって、二種類存在するとは知らなかった。」

 神の世界にあるという青い色を放つオリハルコンと、溶岩の中で様々な金属が溶けて1つになった赤いオリハルコンという物が存在するらしい。
 
 「後はエルフ族か…」

 船長に話を聞くと、このメリクリウスの鉱石は…持って行っても構わないという話だった。
 何故なら、エルフ族ではないと加工出来ない鉱石なんて、あっても宝の持ち腐れという話だからだ。
 
 「冒険者の話によると、エルフ族は一見みると綺麗ではあるが、性格はキツくて人間を下に見るという位に鼻持ちならない種族だというが、こんな種族と果たして…雇い入れる事とかは可能なのだろうか?」

 ミスリルやメリクリウスを加工出来るというのであれば、是非とも雇用したい。
 仮にそれが無理な場合でも、通うという感じでも構わない。
 だが、エルフ族って実際はどんな姿なのだろうか?
 美の女神に匹敵する程の美貌とラノベで表示されてはいるが、作者の設定によって異なるからだ。
 あるラノベでは、エルフ族は非常に美しいが…身体が細身で、凄く華奢と書かれているのもあれば?
 他のラノベでは、美しい顔にボン・キュッ・ボンの肉付きの良い身体をしている…というのもあれば、キャベツの様な頭をして、身体は枝の様に細い体型をしていると書かれている本もある。
 俺の意見からすれば、ボン・キュッ・ボンのエルフ族が好ましいところだな。

 「まぁ、実際に会えてから確かめるか。それよりも、あと3日くらいか…」

 クラーゴンの襲来以降、あれから特に大きなイベントは発生していない。
 それどころか、本来は潮の流れが激しくて、海が物凄く荒れると聞いていたのに、穏やかな海で航海も順調そのものだった。
 そして残りは、成長促進数○倍の日課をしながら過ごそう…と思っていたのだが、もう少しでお別れという事で、残り3日は宴会をする事になった。
 まぁ、酒や肴は嫌いではないので、その誘いは遠慮無く乗っかる事にした。
 …と油断していたからなのか、酒を飲んだ後の残りは…物凄い潮の流れが襲って来て、二日酔いと船酔いに悩まされる事になった。
 そしてレクシアード大陸に到着した時には、揺れない地面に感謝を捧げたのだった。

 ~~~~~それから数日後~~~~~

 この客船は有名になっていた。
 海の魔獣であるクラーゴンを討伐した、英雄…剣士テルヤの話で持ち切りだった。
 その噂を広げたのは、テルヤを兄貴と慕っていた冒険者達だった。
 
 本人の全く知らないところで、そんな話になっていたとは…。
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