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第五章 動き出す…?
第十二話 ダン…?(誰…?)
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今回は、賢斗の視点です。
ダンは目を覚ました…だが、何か様子がおかしい。
皆は喜んだ…のだけど、いつもとダンの様子がおかしい事に気付いた。
それはダンの目だった。
仲間を見る時の眼付ではなく、鋭くて近寄りがたい感じだった。
「腹が減った…」
そういってダンは出て行った。
僕達はダンを追った。
途中、ガイウスさんとクリスさんが合流した。
僕等はダンの後を追い掛けた。
すると、ダンは街の外に出て行った。
「あれは、本当にダンなのか?」
「いつもと様子が変じゃない?」
ダンは素早く街道を走って行った。
あまりの速さに追いつけない程の早さだった。
僕はメンバーにアクセル魔法を展開してダンを追った。
ダンに追いついたが、ダンはグレートホーンブルを相手にしていた。
小型タイプでダンより体格は大きいのだが、ダンはグレートホーンブルの頭を左手で掴むと、右手の手刀で首を落とした。
掴んでいた首を遠くに投げてから、腹に手を当てると首から血が一瞬で吐き出された。
ダンは僕等を見てこう言った。
「お前等も喰うか?」
ダンは腰の辺りをまさぐった。
どうやらアトランティカを探している様子だった。
アトランティカは僕が持っていた。
ダンはこちらを見て右手を前に出すと「来い!」と叫んだ。
すると、僕の手からアトランティカが飛んで行き、ダンの手元に吸い寄せられる様に受け取った。
そしてダンはグレートホーンブルを細切れにしてからその生肉を貪った。
僕等は唖然としていた。
普段のダンとは掛け離れていたからだ。
「さて、腹も満たされたし…遊ぶか!」
グレートホーンブルの血の匂いが、他の肉食魔獣を呼び寄せていたみたいだった。
熊の魔獣、虎の魔獣×3がダンの目の前に迫っていた。
僕等は戦闘態勢を取ろうとした瞬間に、ダンは4匹の魔獣の首を落とした。
「なんだ、弱いな…」
「ガイウスさん、翔也…ダンの今の動きは見えたか?」
「いや、全く見えなかった…」
「黒い閃光が走った様にしか見えなかった…」
ダンは突然高笑いをした。
そして僕等の方を向いて言った。
「これからちょっとマシな奴が来るから、お前等は手を出すなよ! あれは俺の玩具だ! くっくっく…」
「ダンが俺…だと?」
「ダンは基本的に戦いを嫌うのに、まるで楽しんでいる様に振舞っているな⁉」
ダンの言う通り、黒く大きな狼が姿を現した。
それはかつて、ダンがフェンリルを騙して太古の島に送り、進化してデスウルフとなったオルシェスだった。
『見付けたぞ! 貴様はあの時の人間だな? ようやく復讐を果たせるぞ‼』
「お前…あの時の犬か。 生きていたんだな。」
『我はな、貴様のふざけた文章で頂点の怒りにより、フェンリルからデスウルフへと進化したのだ! もう、貴様の悪ふざけに引っ掛からんぞ‼』
「ただでさえ汚い犬っころが、余計に汚い犬っころに進化したところでたかが知れてるさ、御託は良いからさっさと掛かって来い!」
デスウルフはダンを頭からかみ砕こうと飛び掛かって来た。
ダンはそれを横に躱すと、裏拳でデスウルフの顔を殴り飛ばした。
「なんだ、この程度か…進化したと言っても、所詮は犬だな。」
『馬鹿な! 貴様…本当に人間か⁉』
「おい犬! まだ強くなれるのなら、この場は見逃してやるから…尻尾を巻いて負け犬の様に遠吠えしながら逃げろ。」
『貴様…どこまで我を愚弄にすれば気が済むんだ⁉』
デスウルフは猛攻撃でダンを攻めて行ったが、ダンは紙一重で全て避けて行った。
そして、アトランティカで体を浅く斬った。
『攻撃を躱すとは見事だが、我の皮膚にその剣では傷をつけられまい!』
「ハッ! 態と浅く斬っているのも見抜けないのか? お前なんかいつでも殺せるというのに、おめでたい奴だ…」
『何だと貴様‼』
デスウルフは体を固定しながらダークブレスを放って来た。
ダンは避けようとすらしなかった。
デスウルフのダークブレスをダンはモロに喰らった。
『見たか‼ 貴様は避けようともせずにまともに喰らったな! 人間がまともに喰らえば、もはや生きてはいま…い⁉』
「ダークブレスねぇ…他の人間ならヤバかったかもしれないな。 言っておくが、俺は闇属性の持ち主だぞ…ダークブレスなんぞ喰らっても何ともないし、避けるまでもないと思って避けなかっただけだ!」
『馬鹿な⁉ 人間が闇属性を持つだと⁉』
「おやおや、どうやらもう後がないみたいだな…まぁ、それなりに楽しめたし、犬っころ…お前に面白い物を見せてやるよ!」
ダンはアトランティカを僕の方に放り投げた。
アトランティカなしにデスウルフを倒すつもりなのか⁉
ダンは体を震わせると、狼の遠吠えの様に吠えた。
「ウオォォォォォォォォォォ‼」
ダンの体が変化をしていき、全身から青い毛が生えてきて…
体が巨大化して、まるで青いフェンリルの様な姿になった。
『ウオォォォォォォォォォン!!!』
『貴様、その姿は我と同族なのか⁉』
『お前の様な出来損ないの犬と一緒にするな!』
『最初に貴様と会った時に、貴様から同族の気配がしたと思ったのはこういう事だったのか⁉』
『さぁ、掛かって来い! 犬と真のフェンリルの違いをみせてやろう…』
『ぬかせ‼』
ダン・フェンリルとデスウルフ・オルシェスの戦いが始まった。
2匹は光速に近い速さで移動していて、僕達の目では到底追い付けなかった。
だけど1つだけ分かった事があった。
「翔也…あの青い狼は、あの時の奴だよな?」
「あぁ、ダンの首元に喰らいついて殺した奴にそっくりだ…」
僕と翔也は、あの時の光景を思い出した。
僕達が野犬だと思っていたのは、実は狼だったという事に。
そして…ダンとデスウルフの戦いも終わりが見えそうになっていた。
ダンにはかすり傷1つないが、デスウルフは傷だらけの状態だった。
『貴様…貴様が我に対する余裕の取れる態度の正体がようやく解った…貴様は強い! だが、我の最後の攻撃を喰らえ!』
デスウルフは最大級のダークブレスを放った。
ダンは避ける事なく、ダークブレスをその身に受けると気合と共に吹き飛ばした。
そしてダンの額から光の柱が現れると、凄まじい量の青い雷がデスウルフを貫いた。
『やはり…勝てなんだか…最初から戦わずとも我の負けだったのに今頃気付いたわ‼︎』
『お前に情けを掛けてやるよ! もう俺に挑まないのであれば、この場は見逃してやる!』
『良いのか? 我は数多くの魔物を屠って来たんだ、倒せばかなりの経験値を得られるというのに…』
『俺より弱い奴の経験値なんかいるか‼ 見逃してやるんだ、さっさと失せろ!』
『最後に…貴様の名を教えては貰えぬか?』
『ん? まぁ、良いだろう…俺の名は、ダン…ダン・スーガーだ!』
『ダン・スーガー…我はそなたの名を生涯忘れぬ! さらばだ‼』
デスウルフ・オルシェスは黒き闇を纏って走り去って行った。
ダンは、フェンリルから人型に戻ると、その場で倒れて眠りについた。
僕は事の真相を尋ねようと、アトランティカを介して慱の元に行った。
………漆黒の空間………
「慱、あれは一体どういう事なんだ?」
「それが僕にも良く解らないんだ? ただ、中に流れて来た魔力が多すぎて、ダンの意識は回復したのだけど、態度や仕草がいつもと様子が違っていて…」
「もしかすると…?」
「何か心当たりでもあるのか?」
「アトランティカ、ダンの体の方はいまどうなっている? 抉れた痕の傷とか治っていたりしてないか?」
《確かに、相棒の体にいくつかの皮膚が蘇っている感じだな。 もしやこれは、相棒の体に刻まれた呪いの様な物なのか?》
ダンの…というか、僕もか…。
僕等の体は一体どうなっているんだろう?
魔力の多さが体に刻まれた呪い?に反応して自我が目覚めたとか?
「もう、良く解んない。 とりあえず、僕はルキシフェルの封印を解いてからダンを本来の姿に戻せる様に専念するから、賢斗は賢斗の出来る事に全力を注いでくれる?」
「慱が解らないのでは、僕にはお手上げだよ。 僕は僕でこれからもサポートするから…そういえば、今後はどうやって連絡を取ろうか?」
「本来この現象はあってはならない事だし、これ以上の僕への干渉はアトランティカにも負担を掛ける事になるから…そうだな、時期が来たらダンを介して連絡を入れるよ。」
「わかった、その時を待っているよ!」
………現在………
僕は元の体に戻った。
残念ながら、アトランティカの声はもう聞こえなくなっていた。
しばらくすると、ダンが目を覚ました。
そしてダンは嘔吐をした。
「何で僕は生肉なんて食べているんだ?…というか、何があったの?」
「ダンで間違いないんだよな?」
「僕は確か…そうだ! ダンジョンスタンピードでゴーレムと戦ってから…その後どうしたんだっけ?」
僕はダンを発見した後の事を説明した。
ダンは信じられない様な顔をしていた。
「なるほど、慱と会ったのか…だけど、その話はくれぐれも飛鳥と華奈には内緒にしておいた方が良い。」
「それは勿論だ! 話をしたら余計にややこしい話になる。」
「それとホムンクルスを作るという話は賛成だ! ホムンクルスに人格を移すのは僕の人格にして、慱には本来の体に戻って貰った方が良いからね。」
「融合するという話は良いのか?」
「慱は僕を弟と言ってくれたんだろ? なら現実の世界で兄の慱に会ってみたいじゃないか! そうなると、慱が2人になるな…?」
「なるべく秘密裏に進めてみるよ。 大っぴらには出来ない事だからね。」
「できれば魔王との戦いの前には完成していて欲しいかな?」
「ダンも協力してくれよ?」
それにしても、ダンの体は一体どうなっているんだろう?
スキルがやたら多いし、ジョブはレベル1だし、フェンリルに変身するし…
まぁ、慱本人が解らないのに、他者の僕が知る由もないから考えない様にしよう。
とりあえず、僕はホムンクルスを作る為に必要な注射器を取り出した。
ダンから血液のサンプルを貰う為に…
「ダン、ちょっと良いか?」
「何、賢斗…って⁉」
「君の血液を…って、ダンはどこに行った?」
「注射器を見た瞬間にダッシュで逃げた。」
「あいつは子供か…」
僕はダンを追い掛けた。
追い掛けている時にふと思い出した。
「そういえばダンは注射だけはダメだって以前から言っていたっけな…服の下は皮膚が無いから針で刺されるのに異常な痛みに襲われると言って。」
ダンの体は子供の頃に狼との戦闘でズタズタにされて首から下で手以外の皮膚が無い状態だった。
…とは言っても血管が剥き出しになっているというわけではなく、薄い膜のような物が体を覆っているような感じだった。
結局…ダンを捕まえることができたのは宿屋の中で、翔也やガイウスが取り押さえて血液を入手に成功したのだった。
「今までダンは何度も激戦を繰り広げて来た筈なのに…まさか注射針を刺しただけで大泣きするとは思わなかった。」
ダンは目を覚ました…だが、何か様子がおかしい。
皆は喜んだ…のだけど、いつもとダンの様子がおかしい事に気付いた。
それはダンの目だった。
仲間を見る時の眼付ではなく、鋭くて近寄りがたい感じだった。
「腹が減った…」
そういってダンは出て行った。
僕達はダンを追った。
途中、ガイウスさんとクリスさんが合流した。
僕等はダンの後を追い掛けた。
すると、ダンは街の外に出て行った。
「あれは、本当にダンなのか?」
「いつもと様子が変じゃない?」
ダンは素早く街道を走って行った。
あまりの速さに追いつけない程の早さだった。
僕はメンバーにアクセル魔法を展開してダンを追った。
ダンに追いついたが、ダンはグレートホーンブルを相手にしていた。
小型タイプでダンより体格は大きいのだが、ダンはグレートホーンブルの頭を左手で掴むと、右手の手刀で首を落とした。
掴んでいた首を遠くに投げてから、腹に手を当てると首から血が一瞬で吐き出された。
ダンは僕等を見てこう言った。
「お前等も喰うか?」
ダンは腰の辺りをまさぐった。
どうやらアトランティカを探している様子だった。
アトランティカは僕が持っていた。
ダンはこちらを見て右手を前に出すと「来い!」と叫んだ。
すると、僕の手からアトランティカが飛んで行き、ダンの手元に吸い寄せられる様に受け取った。
そしてダンはグレートホーンブルを細切れにしてからその生肉を貪った。
僕等は唖然としていた。
普段のダンとは掛け離れていたからだ。
「さて、腹も満たされたし…遊ぶか!」
グレートホーンブルの血の匂いが、他の肉食魔獣を呼び寄せていたみたいだった。
熊の魔獣、虎の魔獣×3がダンの目の前に迫っていた。
僕等は戦闘態勢を取ろうとした瞬間に、ダンは4匹の魔獣の首を落とした。
「なんだ、弱いな…」
「ガイウスさん、翔也…ダンの今の動きは見えたか?」
「いや、全く見えなかった…」
「黒い閃光が走った様にしか見えなかった…」
ダンは突然高笑いをした。
そして僕等の方を向いて言った。
「これからちょっとマシな奴が来るから、お前等は手を出すなよ! あれは俺の玩具だ! くっくっく…」
「ダンが俺…だと?」
「ダンは基本的に戦いを嫌うのに、まるで楽しんでいる様に振舞っているな⁉」
ダンの言う通り、黒く大きな狼が姿を現した。
それはかつて、ダンがフェンリルを騙して太古の島に送り、進化してデスウルフとなったオルシェスだった。
『見付けたぞ! 貴様はあの時の人間だな? ようやく復讐を果たせるぞ‼』
「お前…あの時の犬か。 生きていたんだな。」
『我はな、貴様のふざけた文章で頂点の怒りにより、フェンリルからデスウルフへと進化したのだ! もう、貴様の悪ふざけに引っ掛からんぞ‼』
「ただでさえ汚い犬っころが、余計に汚い犬っころに進化したところでたかが知れてるさ、御託は良いからさっさと掛かって来い!」
デスウルフはダンを頭からかみ砕こうと飛び掛かって来た。
ダンはそれを横に躱すと、裏拳でデスウルフの顔を殴り飛ばした。
「なんだ、この程度か…進化したと言っても、所詮は犬だな。」
『馬鹿な! 貴様…本当に人間か⁉』
「おい犬! まだ強くなれるのなら、この場は見逃してやるから…尻尾を巻いて負け犬の様に遠吠えしながら逃げろ。」
『貴様…どこまで我を愚弄にすれば気が済むんだ⁉』
デスウルフは猛攻撃でダンを攻めて行ったが、ダンは紙一重で全て避けて行った。
そして、アトランティカで体を浅く斬った。
『攻撃を躱すとは見事だが、我の皮膚にその剣では傷をつけられまい!』
「ハッ! 態と浅く斬っているのも見抜けないのか? お前なんかいつでも殺せるというのに、おめでたい奴だ…」
『何だと貴様‼』
デスウルフは体を固定しながらダークブレスを放って来た。
ダンは避けようとすらしなかった。
デスウルフのダークブレスをダンはモロに喰らった。
『見たか‼ 貴様は避けようともせずにまともに喰らったな! 人間がまともに喰らえば、もはや生きてはいま…い⁉』
「ダークブレスねぇ…他の人間ならヤバかったかもしれないな。 言っておくが、俺は闇属性の持ち主だぞ…ダークブレスなんぞ喰らっても何ともないし、避けるまでもないと思って避けなかっただけだ!」
『馬鹿な⁉ 人間が闇属性を持つだと⁉』
「おやおや、どうやらもう後がないみたいだな…まぁ、それなりに楽しめたし、犬っころ…お前に面白い物を見せてやるよ!」
ダンはアトランティカを僕の方に放り投げた。
アトランティカなしにデスウルフを倒すつもりなのか⁉
ダンは体を震わせると、狼の遠吠えの様に吠えた。
「ウオォォォォォォォォォォ‼」
ダンの体が変化をしていき、全身から青い毛が生えてきて…
体が巨大化して、まるで青いフェンリルの様な姿になった。
『ウオォォォォォォォォォン!!!』
『貴様、その姿は我と同族なのか⁉』
『お前の様な出来損ないの犬と一緒にするな!』
『最初に貴様と会った時に、貴様から同族の気配がしたと思ったのはこういう事だったのか⁉』
『さぁ、掛かって来い! 犬と真のフェンリルの違いをみせてやろう…』
『ぬかせ‼』
ダン・フェンリルとデスウルフ・オルシェスの戦いが始まった。
2匹は光速に近い速さで移動していて、僕達の目では到底追い付けなかった。
だけど1つだけ分かった事があった。
「翔也…あの青い狼は、あの時の奴だよな?」
「あぁ、ダンの首元に喰らいついて殺した奴にそっくりだ…」
僕と翔也は、あの時の光景を思い出した。
僕達が野犬だと思っていたのは、実は狼だったという事に。
そして…ダンとデスウルフの戦いも終わりが見えそうになっていた。
ダンにはかすり傷1つないが、デスウルフは傷だらけの状態だった。
『貴様…貴様が我に対する余裕の取れる態度の正体がようやく解った…貴様は強い! だが、我の最後の攻撃を喰らえ!』
デスウルフは最大級のダークブレスを放った。
ダンは避ける事なく、ダークブレスをその身に受けると気合と共に吹き飛ばした。
そしてダンの額から光の柱が現れると、凄まじい量の青い雷がデスウルフを貫いた。
『やはり…勝てなんだか…最初から戦わずとも我の負けだったのに今頃気付いたわ‼︎』
『お前に情けを掛けてやるよ! もう俺に挑まないのであれば、この場は見逃してやる!』
『良いのか? 我は数多くの魔物を屠って来たんだ、倒せばかなりの経験値を得られるというのに…』
『俺より弱い奴の経験値なんかいるか‼ 見逃してやるんだ、さっさと失せろ!』
『最後に…貴様の名を教えては貰えぬか?』
『ん? まぁ、良いだろう…俺の名は、ダン…ダン・スーガーだ!』
『ダン・スーガー…我はそなたの名を生涯忘れぬ! さらばだ‼』
デスウルフ・オルシェスは黒き闇を纏って走り去って行った。
ダンは、フェンリルから人型に戻ると、その場で倒れて眠りについた。
僕は事の真相を尋ねようと、アトランティカを介して慱の元に行った。
………漆黒の空間………
「慱、あれは一体どういう事なんだ?」
「それが僕にも良く解らないんだ? ただ、中に流れて来た魔力が多すぎて、ダンの意識は回復したのだけど、態度や仕草がいつもと様子が違っていて…」
「もしかすると…?」
「何か心当たりでもあるのか?」
「アトランティカ、ダンの体の方はいまどうなっている? 抉れた痕の傷とか治っていたりしてないか?」
《確かに、相棒の体にいくつかの皮膚が蘇っている感じだな。 もしやこれは、相棒の体に刻まれた呪いの様な物なのか?》
ダンの…というか、僕もか…。
僕等の体は一体どうなっているんだろう?
魔力の多さが体に刻まれた呪い?に反応して自我が目覚めたとか?
「もう、良く解んない。 とりあえず、僕はルキシフェルの封印を解いてからダンを本来の姿に戻せる様に専念するから、賢斗は賢斗の出来る事に全力を注いでくれる?」
「慱が解らないのでは、僕にはお手上げだよ。 僕は僕でこれからもサポートするから…そういえば、今後はどうやって連絡を取ろうか?」
「本来この現象はあってはならない事だし、これ以上の僕への干渉はアトランティカにも負担を掛ける事になるから…そうだな、時期が来たらダンを介して連絡を入れるよ。」
「わかった、その時を待っているよ!」
………現在………
僕は元の体に戻った。
残念ながら、アトランティカの声はもう聞こえなくなっていた。
しばらくすると、ダンが目を覚ました。
そしてダンは嘔吐をした。
「何で僕は生肉なんて食べているんだ?…というか、何があったの?」
「ダンで間違いないんだよな?」
「僕は確か…そうだ! ダンジョンスタンピードでゴーレムと戦ってから…その後どうしたんだっけ?」
僕はダンを発見した後の事を説明した。
ダンは信じられない様な顔をしていた。
「なるほど、慱と会ったのか…だけど、その話はくれぐれも飛鳥と華奈には内緒にしておいた方が良い。」
「それは勿論だ! 話をしたら余計にややこしい話になる。」
「それとホムンクルスを作るという話は賛成だ! ホムンクルスに人格を移すのは僕の人格にして、慱には本来の体に戻って貰った方が良いからね。」
「融合するという話は良いのか?」
「慱は僕を弟と言ってくれたんだろ? なら現実の世界で兄の慱に会ってみたいじゃないか! そうなると、慱が2人になるな…?」
「なるべく秘密裏に進めてみるよ。 大っぴらには出来ない事だからね。」
「できれば魔王との戦いの前には完成していて欲しいかな?」
「ダンも協力してくれよ?」
それにしても、ダンの体は一体どうなっているんだろう?
スキルがやたら多いし、ジョブはレベル1だし、フェンリルに変身するし…
まぁ、慱本人が解らないのに、他者の僕が知る由もないから考えない様にしよう。
とりあえず、僕はホムンクルスを作る為に必要な注射器を取り出した。
ダンから血液のサンプルを貰う為に…
「ダン、ちょっと良いか?」
「何、賢斗…って⁉」
「君の血液を…って、ダンはどこに行った?」
「注射器を見た瞬間にダッシュで逃げた。」
「あいつは子供か…」
僕はダンを追い掛けた。
追い掛けている時にふと思い出した。
「そういえばダンは注射だけはダメだって以前から言っていたっけな…服の下は皮膚が無いから針で刺されるのに異常な痛みに襲われると言って。」
ダンの体は子供の頃に狼との戦闘でズタズタにされて首から下で手以外の皮膚が無い状態だった。
…とは言っても血管が剥き出しになっているというわけではなく、薄い膜のような物が体を覆っているような感じだった。
結局…ダンを捕まえることができたのは宿屋の中で、翔也やガイウスが取り押さえて血液を入手に成功したのだった。
「今までダンは何度も激戦を繰り広げて来た筈なのに…まさか注射針を刺しただけで大泣きするとは思わなかった。」
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