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第四章 別大陸での活動の章

第十話 トリア村の生け贄少女(今時、生け贄で村が救われるって…あ、ここは異世界だったな!)

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 サーテイルの港街より北東に位置する場所に、トリア村がある。
 聖竜国グランディオより離れたこの未開な村には、80人弱の人が住んでいた。
 最近のトリア村では、干ばつで作物が育たず、井戸が枯れて壊滅的な被害をもたらしていた。
 トリア村ではこうした現象が50年に一度起きていた。
 その為に村では家族がいない少女を山へ生贄にする事により、村を繁栄させていた。
 そして今年も生贄の少女が選ばれた…。

 「ラグディ、駄目よ! 私は生贄に選ばれたの。 村から逃げるなんて出来ないわ!」
 「だがアスティ…俺は君を失いたくない! 君の事は子供の時から好きだったんだ! 生贄なんかにされてたまる物か!!」

 ラグデイという少年は、アスティと呼ばれる今年の生贄の少女を連れて村から逃げ様としていた。
 背後には、村人たちが生贄の少女を取り返そうと追って来ていた。
 ラグディは村長の息子で、アスティは両親を流行り病で亡くし、1人で暮らしている少女だった。
 捕まったらアスティは生贄に出されてしまう…
 それを避ける為の行動だったのだが、足の速い村人がアスティを捕らえて村へと連れて行かれた。
 ラグディは村人に抵抗したが、殴られて黙らされた。
 
 「村が危機的な状況なのに、いくら村長の息子だからって我儘な事を言ってるんじゃねぇよ!!」

 ラグディは呆然と立っていたが、生贄までの期日は残り13日…2つの月が出た時にとり行われる。
 それまでに助け出そうと、5日掛かる街に馬を飛ばした。
 村には冒険者ギルドはないが、街にいけば冒険者ギルドがあるので人を雇い生贄を阻止出来ないか頼もうと思っていた。
 ラグディは馬を休ませる事なく飛ばしていた。

 その頃ダンは、修業の場所を求めて彷徨っていた。
 ゼイギア山で十六鬼影衆の1匹を倒す事が出来て、新たな場所を求めての旅だったのである。
 魔王はどうも、ダンを狙っている節があった。
 なので、いつでも迎えられる様に街から外れた場所を彷徨っていた。
 
 「ゼイギア山から既に4日経つけど、一向に襲ってくる気配がないね…?」
 《向こうも警戒しているんじゃないか? 立て続けに3匹も倒されていれば、あちらさんも警戒はするだろう…》

 僕は納得しながら、街道を歩いていた。
 すると馬が倒れていて、その横を何かを引き摺った跡があった。

 「これは何を引き摺ったんだ?」
 《おそらく…人だろうな。 近くに足跡があるだろ? 亜人の類だろうな…》

 僕はその跡を追ってみた。
 すると、森に続いていて少し広い場所に出た。
 その中で気絶しているであろう少年が4匹のオーガに喰われそうになっていた。
 僕はオーガを斬り伏せると、少年にヒールを掛けた。

 「これで目を覚ましてくれると良いのだけど…」
 《気絶しているだけだろうから、時期に目が覚め…たみたいだな。》

 少年はゆっくりと目を開けた。
 そして辺りを見て、オーガの死体があるのを見て怯えていた。

 「あいつ等は、馬に乗っていた俺を襲ってきた…」
 「もう、倒したから平気だよ。 君は何でこんな所にいたのかな?」
 「アスティが生贄にされるから、冒険者ギルドで原因を突きとめて貰おうと街に向かっていたんだ。 オーガを倒せるという事は、貴方は冒険者か!?」
 「アスティとか、生贄とか何のことかな? 詳しく教えてくれないか?」
 「俺の名はラグディ、実は村で最近井戸が枯れたり作物が育たないという事が起きているんだ。 備蓄している食料で細々と暮らしていたけど、その食料も尽き掛けていて村では生贄を捧げれば助かるといって、幼馴染のアスティを生贄にすれば村も助かると。」
 「生贄を捧げれば、村は豊かになるのか?」
 「50年前も一度村が危機的な状況があったんだけど、山に生贄を捧げる事で村が助かるという話で…俺はどうしたら…」 
 《どうみる?アトランティカ…》
 《恐らくその地に住む妖魔の仕業だろうな。 悪戯半分で村を壊滅的な危機を襲わせて、生贄を要求する事で…そうだな、魔法を使って呪いを掛けてから村に被害を演出して、生贄を捧げる事で解呪するという性質の悪い妖魔の様だ。》
 《村人はその事は?》
 《恐らく知らんだろうな…50年前にも1度という事は、これは50年毎に1度行っていると考えても良いだろう。 妖魔奴等は、無駄に寿命が長いから、自分の遊びの為に性質の悪い悪戯を仕掛けて遊んでいるのだろう》
 《捧げられた生贄は…って、聞くまでもないか。 本来なら助ける必要もないが、事情を聴いてしまうとなぁ…》
 《そうだな、奴等を野放しにしていても、村に被害を与えるだけで他には影響はないだろう。 奴等にそこまでの力はないから、退治するというのも1つの手でもある。》

 「なぁ、ラグディ…君は生贄の事はどう考えている?」
 「アスティを助ける為には…」
 「いや、そうじゃなくて…50年前にも村が壊滅的な被害に遭った時に生贄を出した話をだ。」
 「恐らくだけど、村に災いをもたらす何かの仕業じゃないかと考えている。 昨年前までは問題ないから、急にこんな事が起きるのはおかしいと感じているけど、山は立ち入り禁止になっていて行った者はいないんだ。」
 「なら、生贄を要求って誰から言われたんだ?」
 「ガスダァという村で一番長生きしている爺さんが言っていたんだ。 生贄を捧げる事で村は救われると。」

 本来なら、村の住人でもない僕がしゃしゃり出るのはお門違いだが、事情を聴いてしまった以上無視は出来ない。
 僕はラグディに言って、村に案内してもらう事にした。
 
 「村からは、ここから3日ほど行った場所にあるんだ。 今からだと馬もいないし、辿り着くまでに3日では着かない。」
 「あ、その事なら心配ない。」

 今回事情が事情なので、僕はシルロンダーを出した。
 ラグディは初めて見るシルロンダーに驚いていた。

 「さぁ、乗ってくれ! 村までの案内を頼むよ。」
 「あぁ、村はこっちの方角だ。」

 僕はシルロンダーで全速力で村に向かった。
 ラグディの案内で村の近くまで行くと、シルロンダーを収納した。
 そして村に入った。
 村に入ると、ラグディは村長の家に案内した。
 
 「ラグディ! どこに行っていたんだ!? それに、そいつは何者だ!?」
 「父さん実は…」

 ラグディは事情を話した。
 シルロンダーの中で妖魔の仕業という話をしたので、それも一緒に含めて話をした。

 「そんな事があったのか…冒険者様、ありがとうございました。」
 「礼は不要です。 ところで、そのガスダァという人にお会いする事は出来ませんか?」
 「わかりました、連れてきましょう。 ガスダァの爺さんを連れて来てくれ。」
 「わかりました。」

 村長は、家の中にいた執事に命じた。
 20分後にガスダァという老人を連れてやってきた。
 長生きをしている爺さんにしては、体格も良いし年齢にしては若い感じがした。

 「なんですかな? ワシは忙しいんですが…」
 《相棒、こいつは人間じゃない!》
 「用があるのは僕です、すいません聞きたい事があるのですが…」

 僕はアトランティカを抜いて、ガスダァの腕を切り落としいた。
 すると、斬られた腕から青い血を流していた。
 
 「やはり貴様が妖魔か…」
 「小僧、何故解った!?」

 村長やラグディは、ガスダァを見て驚いていた。
 そしてガスダァは変身を解いて、上半身は4本の腕、下半身は蛇の様な胴体に姿を変えた。
 
 「貴様からは人ならざる者の気配がしたんだよ。(本当はアトランティカのお陰なんだけど…)」
 「ちっ…!」

 ガスダァはそういうと、家を飛び出した。
 僕もその後を追って、村の広場に出た。

 「もう少しで、あの小娘を生贄として喰えると思っていたのに…」
 「どうせ、その子の両親も貴様が手に掛けたんだろう? その子を手に入れる為に!」

 広場に騒ぎを聞きつけた村人が集まってきた。
 ラグディと村長も広場に来ていた。

 「まぁ、バレちまったのなら仕方ない! 冒険者風情がワシに勝てると思うなよ!」
 「最近の妖魔風情は、言葉の使い方も知らんらしいな。 それにもう少し人を学べよ! いくら長生きな人間に化けようとしてもアレで爺さんにしては若過ぎだ。」
 「その忠告は、貴様を倒してから参考にしておこう。 別な村で役立たせる為にな!」
 「ぬかせ!!」

 妖魔は腕を伸ばして攻撃してきた。
 僕は横に躱して腕を斬り落とすと、そのまま懐に入り胴を切断した。
 これが冒険したての頃なら手こずっていたかもしれないが、経験を積んだ今なら大した敵ではないのであった。
 
 「何か言い残したい事があれば聞いてやるよ! 言え!」
 「ワシ如きを倒した所で自惚れるなよ…山にはワシより強い方がいらっしゃる…」
 「そうか、なら山にいる奴も始末するさ!」
 「貴様なんぞに出来るとおもわ…」

 僕は妖魔の頭にアトランティカを突き立てた。
 妖魔は灰となって消えて行った。
 村を見渡しても特に変化がない。
 だとすると、村の呪いはこいつの仕業では無いみたいだった。
 
 《どう思うアトランティカ…村の呪いが解けた様には思えないんだけど?》
 《だな、山にはこいつより強い奴がいると言っていたから、そいつの仕業なんだろう。》
 「ねぇ、山ってどっちにあるの?」
 「俺が案内します!」

 僕はラグディの案内で山に来ていた。
 その山を登って行くと、そこには生贄用の祭壇があった。
 
 『ちっ、ガスダァーグルの奴は失敗したか…妖魔にしてはそれ相応の力があると見て駒にしようとしたのだがな…』
 「今日は喋る奴に良く合うな…姿を見せろ!」

 暗闇の中からソイツは姿を現した。
 体長は3m位でブクブクと太った体に、牛の様な下半身に尻尾があり、頭には巨大な角があった。
 腕は丸太の様に太いが、筋肉というよりは、ぜい肉で浮腫んだ感じだった。
 ラグディは木の陰に姿を隠して、様子を窺っている。

 『我が名は、十六鬼影衆が一角…ホワイナァだ!』
 「ホワイナァ…って、確か…?」
 《どういう意味なんだ?》
 「ホワイナァ…って確か、泣き言とかメソメソするという意味だったが…」
 《なるほど、では見た目通り大した事なさそうだな》
 「お前、本当に十六鬼影衆なのか? アイマァフールやシンプルトンの方がまだ強そうだったぞ?」
 『その名を知っているという事は、貴様が英雄ダンか!?』

 木の陰から見ていたラグディは驚いた。
 未開な村でも、魔王の配下を倒した英雄の話は行商人から聞いていたりしていた。
 村にいた妖魔もあっという間に倒した所を見ると、冒険者って皆がそうだと思っていたのだが、英雄と聞いて納得した。

 『魔王様、今の状況に感謝致します! これで貴様を倒せば、我の手柄は間違いない!!』
 「はぁ…冗談は名前と実力を合わせてから言えよ。」

 僕は呆れて下を向いた瞬間に、ホワイナァは火球を飛ばしてきた。
 火球をアトランティカで弾くと、ホワイナァは次々の火球を放ってきた。
 全て弾き返すと、ホワイナァは体当たりしてきた。
 僕は躱して背中を斬りつけると、分厚い脂肪で剣が弾かれた。
 
 「おや、意外と厄介だなあの皮下脂肪…」

 ホワイナァは、また体当たりをしてきたが、動きが遅く躱せるので次は剣を突いてみた。
 だが、またも脂肪に弾かれた。
 弱そうに見えた外見とは裏腹に、意外と厄介な相手だった。
 ただし、こちらも弱そうな外見だったのでスキルは全く使っていなかったのだが…

 『貴様の攻撃は我には効かん! 残念だったな、死ね! 英雄ダンよ!』
 
 ホワイナァは息を吸い込んで体を大きくして、体当たりをしてきた。
 先程と違い、体が大きくなった為に逃げ道を塞いできたみたいだった。
 だが、別に逃げなくても向かい打てば問題は無かった。
 僕はアトランティカの新たなスキルである刀身に熱を帯びるヒートブレードで、奴の脂肪を切り裂いた。
 そして何度も切り裂いていくと、その度に油臭い脂肪が飛び散って行った。

 『貴様…やめろ! やめて! お願いします、もう辞めて下さい!!』
 「なんだ? 急に泣き言を言い出し…あ、だからホワイナァか…」

 会った事は無いが、下っ端も見る目があるなと感じていた。
 ホワイナァは先程の勢いとは違い、土下座をしながら震えている。

 『許して下さるのであれば、この地の呪いを解除します。 お願いします、助けて下さい!』
 「いや、別にお前を殺せば呪いは解ける訳だし、経験値も手に入るので逃す気は全くないんだが…」

 あのカバが言っていたけど、アイマァフールは十六鬼影衆の中で一番弱いと言っていたが、こいつの方が弱いんじゃないかと思えてきた。
 どう見ても演技には見えなかった。
 すると、ホワイティは立ち上がり、周囲の自分の油に火球を飛ばして燃やし始めた。
 そして笑いながら僕に言い出した。

 『油断したな、英雄ダンよ! これで貴様は焼け死んで終わりだぁぁぁぁ!!!』
 「はぁ~…」

 僕はアトランティカの剣圧で当たりの炎を消した。
 勝ちを確信していたホワイナァは、笑い声を止めた。

 「…で? もしかして、これが奥の手か?」
 『本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁ! 命ばかりはお助けを~~~!!」

 僕は馬鹿らしくなって、トドメを刺した。
 するとホワイナァの体から光が散乱して、村の方に飛んで行った。
 これで呪いは解除出来ただろう。

 「ラグディ、村に帰ろう!」
 「は、はい!」

 僕等は村に帰った。
 すると、村に呪いが解けていて、井戸が沸き、作物が急に成長していった。
 村人は沸き上がり、村長からはお礼を言われた。
 そして…

 「ダン様、彼女がアスティです! ありがとうございました!」
 
 ラグディは涙を浮かべて感謝をしてきた。
 アスティと呼ばれた少女は、中々可愛らしい女の子だった。
 その少女からも泣いてお礼を言われた。
 今回はギルドの依頼でもないし、無報酬だったのだが。
 この村の状況を見る限りでは、報酬を要求するのも気が引けた。
 村では宴が行われ、ささやかな食事が振舞われた。
 そして、翌日…

 『我々は英雄ダン様のお陰で村は救われました! 誠にありがとうございました!!』
 
 僕は村の出口で、村人全員に見送られた。
 今回は無報酬だったが、十六鬼影衆の1匹を倒す事が出来たので、まぁ良しとした。
 そして僕は歩き出すと、次の場所を目指しいた。

 「ところでさ、ホワイナァの経験値はいくつくらいだったの?」
 《あいつ…アイマァフールより少なかった。 全くではないが、レベルアップには少し足りないな…》

 ダンは次の強敵を求めて旅を続けたのだった。
 トリア村を旅立ってから2日後、ダンは原因不明の体調不良に襲われた。
 ダンは今まで、重病と呼ぶような病気には掛かってなかった。
 だが、今回ばかりは身体の怠さが重くのしかかっていた。
 額を触るが別に熱くは無い。
 熱ではない様なのだが、原因が解らない。
 洞穴を見付け、その中に入って【結界】を張った。
 【結界】は、ダンが睡眠で眠っていても解ける事は無い。

 ~~~~~漆黒の空間~~~~~

 「どうやら、僕が送った呪いは効果あったみたいだなw」

 観察者は、ダンの体に呪いを放ったのだ。
 慱のスキルに対する封印解除が出来ない事に腹を立てた観察者は、別の手段として呪いという付加を与えたのだ。
 
 「君はここ最近、活躍しっぱないしじゃないか! 君は弱いのが良いのだから、活躍なんかしちゃだめだよ。」

 観察者は不敵に笑うと、次なる呪いの準備を始めた。
 次の呪いは、体に激痛が走るという呪いだった。

 「さて、どの程度の苦しみを与える事が出来るかな?」

 ~~~~~洞穴の中~~~~~

 ダンは、体中の痛みで苦しみ始めた。
 体に治療魔法を試してみるが、全く効果が無かった。
 ダンは痛みのあまり、叫び声を上げた。
 その様子を見ていた魔剣アトランティカは、ダンが苦しんでいる様子を見て原因が何かを模索していた。

 《相棒の苦しみ方だと、十六鬼影衆が何かやったというのは考えにくいな? 相棒の干渉的には、外的からではなく内側から何かを感じる…まさか、ルキシフェルか!?》

 魔剣アトランティカは、まだ相手の精神世界に自由に行き来できる能力はない。
 だが、干渉するという位になら出入りする事は出来る。
 魔剣アトランティカは、ダンと同調を始めた。
 認められていない物への干渉は、魔剣アトランティカといえども簡単な事ではない。
 下手すると、魔剣アトランティカ自体もリスクを負うという可能性があるからだ。
 だが、せっかく巡り合った相棒を失いたくないという強い気持ちで、ダンの中に入り込む事が出来た。

 ~~~~~漆黒の空間~~~~~

 魔剣アトランティカは、漆黒の空間では長髪の体格の良い中年の姿になっていた。
 その前方に、黒いフードとローブを纏った男が操作台をいじっていた。
 魔剣アトランティカより左側に、ダンと同じ顔をしているが体の小さい子供を見付けた。

 「なるほど、これが相棒の言っていた慱か…」
 「何者だ!?」

 魔剣アトランティカは、うっかり声を出してしまった事を後悔した。
 観察者は魔剣アトランティカを見て言った。

 「そうか…君は彼の剣だな? 主人が苦しんでいる姿をみて干渉して来たか…だが、今の不安定な君に何が出来るんだいw?」
 「オレが貴様に何か出来様な事は今のオレにはない。 貴様を屠りたい所だが、その力は無いからな…だからこうするのさ!」

 魔剣アトランティカは、小さな慱の封印を解いた。
 慱は封印の衣を砕いて復活した。

 「もう少しで自力で封印が破れる筈だったんだけど、助かったよ! 最後だけが中々しぶとくてね…」
 「慱よ、ちと協力を願えないか?」
 「勿論! アトランティカだよね? 力を貸してくれる?」
 「無論だ、いまは慱の剣となろう!」

 魔剣アトランティカは、人の姿から剣の姿に戻ると慱は手に取った。
 観察者は、予想外な事が起きて焦っていた。

 「君はまた封印すれば良いだけさ! そんな物を持っていた所で役に立たないよ!」
 「それはどうかな?」

 観察者は封印の魔法を放ったが、慱は魔剣アトランティカで魔法を切り裂いた。
 そして慱が魔法で光を出現させると、観察者を包んでいった。
 観察者を包み終わると、何十もの透明な結界を施した。
 今はまだ観察者を倒す事は出来ないので、封印するしかなかった。

 「魔剣アトランティカ、もう1つ力を貸してくれないか?」
 「よかろう、相棒よ! 隙に振るえ!!」

 慱はダンに掛けられている呪いをアトランティカで解除した。
 そして、ダンに封印されていたスキルの【無属性魔法】と【闇魔法】と【修復】、シルフィンダーも解除した。
 しかし、それが最後だった。

 「すまん、今のオレの力ではこれが精一杯だ。」
 「ありがとう、無理をさせてしまった。」
 「構わない、戦いの中でもしも本来の力を取り戻したら、その時は観察者…いや、ルキシフェルを葬ろう!」
 「うん、その時はお願いね。 それまではダンを宜しくね!」

 魔剣アトランティカは、消えて行った。
 慱は彼に感謝をして、観察者が色々弄っていた操作を解除する為に作業に入った。

 ~~~~~洞穴の中~~~~~

 僕の体は嘘だったみたいに体が軽くなった。
 そして魔剣アトランティカは、僕の中での出来事を話してくれた。

 「そうか、慱に会ったんだね。」
 《相棒と違って謙虚な奴だったな。 また会えるのが楽しみだ!》
 「はいはい、僕は謙虚とは無縁な人間ですよ。」
 《そうむくれるな! 次に慱と会う時には…》
 「あぁ、ルキシフェルを倒そう!」
 《あいつは完全に消滅させよう!》

 僕と魔剣アトランティカは、そう誓うのだった。
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