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第二章 エルヴ族での生活の章

第二章・最終回 エルヴ族の集落からの旅立ち!(やっと…旅が再開出来ます。)

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 僕の送別会は大宴会だった。
 僕の送別会の筈なのに、何故か僕が料理を作らされた。
 4人の弟子達も手伝ってくれたが、作り終わった後に4人の弟子達は僕を抱きしめてくれた。
 彼女達の方が身長が高いので、僕は足が浮いていてバタバタとさせている状態だったが。
 満漢全席を作る…と言っては見たが、ただ単に肉と魚と野菜の盛り合わせである。
 まぁ、中華料理を知る訳じゃないんだし、適当でも良いかと作った物だったが、エルヴ族の民には好評だった。
 僕は、ガイウスとレイヴンが居ないことに気付いた。

 「あれ? 2人はどこだろ?」

 僕は薄めに割って貰ったミードのジョッキを持ちながら探した。
 ガイウスはずっと視線を逸らしたままだったし、声を掛けても素っ気なかった。
 このエルヴ族の集落では、ガイウスと同年代くらいの年齢の男性はいない。
 他の男性は、ガイウスより10も20も離れている。
 
 「もしかして僕と別れる事に寂しさでも感じているのかな?」

 ガイウスと別れるのは、寂しくないと言えば嘘になる。
 たった2ヶ月の付き合いだったが、とても楽しかった。
 むしろ仲間として付いてきて欲しいとも思っている位だ。
 でも、ガイウスはレイヴンの子だ。
 いずれ族長として、エルヴ族の民を率いる立場にある。
 僕の我儘で付き合わせる訳にはいかないだろう。

 「ダン、少し良いか?」
 「あぁ、ガイウス探して…」

 ガイウスがいつに無く真剣な目で僕をみた。
 ガイウスは一言「着いてこい」というと、歩き出した。
 エルヴ族の集落で禁止エリアとされていて、族長と一部の者しか入れない場所に案内された。
 そこには巨大な水晶に入っている裸の少女がいた。

 「ダン、これを見てくれ…」

 僕は水晶にいる彼女を見る…。
 見る…見る…見る…エヘ♡
 それに勘づいてか、「見るな!」と言われて蹴られた。
 
 「見ろって言ったり、見るなと言ったり…どっちなんだよ!?」
 「その…邪な目付きがなぁ… もういい!」
 「すまないなダン、この子はオレの娘でガイウスの双子の妹のレイリアだ。」

 双子…?
 双子の妹にしては、少し幼くないかな?
 エルヴ族も男女では、身長に差が出る。
 …とは言っても、決して女性の方が低すぎると言う訳ではない。
 厨房にいる弟子達も僕より年齢が3つ位低いけど、身長は僕より高い。
 けど、水晶の少女…レイリアは、僕よりも身長が低い…。
 それでも発育が………ムフ♡
 僕はまたガイウスに蹴られた。

 「やっぱり俺は、ダンに任せるのは不安だ!!」
 「任せる? 何の事だ?」
 「実はレイリアはな…」

 レイヴンは話始めた。
 ガイウスとレイリアは仲の良い兄妹だった。
 ところが12歳の時にジョブを獲得する儀式の時に、ガイウスは【槍術士】を。
 レイリアは、【魔人】を取得してしまった。
 だが、その日は何も起きなかったのだが、翌日にレイリアから爆発的な魔力が噴き出たのだ。
 エルヴ族の民は本来、精霊魔法が使える筈なのだが…?
 レイリアは精霊の力ではなく、魔力を宿してしまった。
 ただそれだけなら良かったのだが、日に日に強くなって行くレイリアの魔力に集落の者達は手が無くなっていった。
 レイヴンは、取り引き先のテルシア王国に相談をして、テルセラから魔封じの水晶を貰ってレイリアを封じ込める事に成功した。
 だが、この水晶も限界が近付いてきている様だった。
 そこで目を付けたのが僕だったらしい。
 空の球体に魔法を込められるのであれば、レイリアはダンの旅のお供にピッタリだと思ったのだ。
 レイリアをこのままにしておけば、水晶は限界が来て砕かれ、集落も崩壊する。
 自分の大事な娘を知り合いとはいえ、他人に預けるのは断腸の思いだ。
 だが、集落も守らなければならない。
 
 「…という訳で、ダンにお願いしようと思うのだ。 どうか娘の同行を頼む…」
 「まぁ、そういう事情なら構いませんが… レイリアさんは、どういった性格の方ですか?」
 「妹は気立が良く、お淑やかで優しい子だ。 こんな事情じゃ無ければ、親友のお前には頼みはしない!」
 「なるほど、ガイウスはシスコンなのか。」
 「ダンよ、シスコンとは何だ?」
 「妹を大事に大切に思うという略語です。」
 「おい、ダン…俺には精霊の加護があると言っていただろう!」

 ヤッベ…ガイウスにはバレるんだったな…。
 僕は水晶に手を触れて言った。

 「今はこんな水晶の外からで申し訳ないけど、これからの旅のお供として宜しくね!………ふふっ♡」

 ヤバい…顔を見て言ったつもりが目線は下に向いてしまう。
 それを察知したかの様にガイウスから3度目の蹴りが飛んで来た。
 僕はガイウスに胸倉を掴まれた。

 「ダン、きっさまなぁーーー!!」
 「いや、仕方ないだろ男なんだし。 こうなる事は自然だ!」
 「ダン、誓え! 絶対に妹には手を出しません…わかったな?」
 「わかった、親友に誓おう! 絶対に手は出さないと!」
 《向こうから手を出してきたら約束は出来ん!》
 「貴様………!!」
 「そんなに妹が心配なら、ガイウスも一緒に行こうよ!」
 「そんな事が許されるか!? 俺には俺の役割が…」
 「じゃあ、妹は手を出させて貰う。 次にこの集落に来る時は、僕とレイリアさんの赤ん坊を一緒に連れて来よう。」
 「ダン…それをやったら命は無いと思え!!」
 「ガイウスが近くに居ないなら、何をしても僕に罪はない! それに僕を殺せば、レイリアさんは助からないぞぉ~!」
 「ふっ… ダン、ガイウスを挑発するのはよせ! ダンよ、息子と娘を頼む!」
 「母さん、何を?」
 「ダンがレイリアに手を出す事は全くという訳では無いが大丈夫だろう。 ガイウスはダンの親友なんだろう? なら親友と一緒に旅をしながら妹も護り、見聞を広めて来い!」
 「謹んでその役目をお引き受けします。」

 ガイウスはレイヴンに対して、膝をついて誓った。
 僕も同じ様に習って挨拶をした。
 
 ~~~~~翌日~~~~~
 
 ガイウスは、隣にいる妹と共に屋敷から出て来た。
 その光景にエルヴ族の民は、歓声で送り出していた。
 レイリアの姿を見て、泣いている女の子達も居た。

 「ダン、これからもよろしくな!」
 「おう、期待してるぜ相棒!」
 「ダン様、これから宜しくお願いしますわ。」
 「堅いなぁ… ダンで良いよ。 レイリアさん、もっと親しくなる為にガイウスには内緒で仲良く…」

 ガイウスから4度目の蹴りを喰らった。
 
 「ふふっ…レイリアで良いですわ。」
 「よし…ガイウス、レイリア…行くぞ!!」

 僕らは、アーベント高原に向かって歩き出した。
 そこからシルフィンダーに乗り、カイナンに向かうのだった。

 第二章・完


 『中々骨が折れるなこの結界は…!?』
 「魔王様…幹部が揃いました。」
 『うむ… 我が幹部達よ! 結界が弱まって来たので、久々に出られるぞ! そうしたら、好きに暴れると良い!!』
 「「「ハハッ!」」」
 『三元将よ!』
 「「「ハッ!」」」
 『四天王達よ!』
 「「「「ハッ!」」」」
 『八魔将共よ!』
 「「「「「「「「血が騒ぐぜ!!」」」」」」」」

 しかし彼らが出れるのは、次の章ではない。
 結界が思った以上に堅かったである。

 第三章に続く…
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