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第二章 エルヴ族での生活の章

第六話 悪魔になったダン!(やり方が非常にセコイですね。)

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 まず、作戦はこうです!
 ガイウスに集落に帰らせ、人手を集めて貰います。
 エルヴ族が30人くらい集まりましたので、それぞれにガイウスが集落に行っている間に作った耳栓を配ります。
 次にロープと薪を用意します。
 ロープを太い枝に引っ掛けてから、片方は木の幹に結びます。
 もう片方は垂れ下がったままですが、これは後で使います。
 次に、オークウッドの子供に少し下に狙いを定めて【球体魔法】を使って、土を回収してオークウッドの子供の根元をあらわにします。
 横になってジタバタと動いているオークウッドの子供の頭に垂れ下った紐で縛ってから吊るします。
 その下に薪を組み上げて、次の過程に入ります。
 
 次に、近くにある倒れた大木(切り倒してしばらく経った)に【創造作製】で巨大なメガホンとそれを支える土台を作ります。
 そしてそのメガホンに拡声器をイメージして音魔法を込めます。
 よし、これで準備完了です。
 エルヴ族が初めて見るであろうメガホンに目線が集中しています。
 使い方かい? こうやるのさ!

 『この森にいるオークウッド達よ、聞け! お前達の仲間の子供は預かった! 子供に手荒な真似をされたくなければ、大人しく姿を現せ!!』

 まぁ、こんな方法で姿を現すとは思えない。
 だが、オークウッドは仲間思いのモンスターという話なので、この方法には必ず食いついてくるし、知恵があるのなら次の工程で姿を見せるだろう。
 僕はオークウッドの子供の恐らくここが口だろうと思うところを確認した。

 『これは脅しじゃないぞ!! 姿を見せぬのなら、コイツの声を聴くがいい!!』

 僕はこう言うと、メガホンをオークウッドの子供の口に向けてから、薪に火を付けた。 
 薪が徐々に燃え始めると、勢いを増して来てオークウッドの子供の根元に火が届く距離になった。
 オークウッドの子供は、堪らずに叫び声を上げた。
 たしかに馬鹿でかい声だったが、メガホンで更に森に響き渡る様な声になった。
 声が一瞬止まってから、メガホンを僕に向けて叫んだ。

 『オラオラ良いのか? お前らの大事な子供が丸焼きになるぞー! しかも、こっちにはまだ子供を捕らえている。 コイツの次は、その子供が犠牲になる番だ! 早く姿を現せないとコイツが炭になるぞーーー!!』

 ガイウス含め、エルヴ族の民達は…僕の行なっている行為に思いっ切り引いた。
 エルヴ族の民は、こんな方法で誘き出すなんて思い付きもしないからだ。
 僕は叫んだ後に再びオークウッドの子供の口にメガホンを向けた。
 オークウッドの子供の根元の先が少しコゲてくると、更に大きな声で叫んでいる。
 すると森の奥から地響きを立てて、オークウッドの群れが来た。
 表情は良く解らなかったが、物凄い怒りと殺意を感じた。
 メガホンを再び僕に戻して叫んだ。

 『おっと、子供が大事なら動くなよ! 必要なのはお前らの樹液だけだ! 命までは奪わないが少しでも奇妙な動きをしよう物なら、子供は助からないぞ!!』

 僕は強火を子供に向けて近づけた。
 オークウッド達は、動けずにいた。

 『よしよし良い子だ。 言っておくがこれは交渉ではない! 命令だ!!』

 僕は悪魔の様な悪い顔をして、低い声で叫んだ。
 エルヴ族の民達に合図を出すと、エルヴ族の民はツボと尖った鉄の棒を用意して樹液を抜き始めた。
 オークウッド達は大人しく言う事を聞いているように思えたが、2匹ほど動きを見せたので…?

 『おい、そこ! お前達は…まだ自分の立場が分かってないみたいだな! 動くなと言っただろうが!』

 僕はそういうと、オークウッドの子供の根元に強火で焦がした。
 オークウッドの子供は、堪らずに更にデカい声で泣き叫んだ。

 『ケーケッケッケッケッケー!! ほら…泣け! 叫べ! お前の仲間に悲痛な声を聞かせてやれ! 立場をわからせる為になぁ!』

 樹液を搾り取られたオークウッド達は、少し萎んでいて元気が無さそうだった。
 エルヴ族の民は、樹液のツボを持って退散した。

 『良し、子供は開放してやるがまだ動くなよ!』

 僕は火を消して、ロープから開放してやると大量の水を掛けてあげた。
 そして、「ゴメンな」と声を掛けるとその場から離脱した。

 演技とはいえ、この方法は少し心が痛んだ。
 相手はモンスターだから別に良いかという問題ではない。
 オークウッドもまだ他にもいるとは思うが、あの数を一気に駆除してしまったら、生態系に影響が出てしまう可能性があるからだ。

 集落に帰ると、樹液を入手したツボが並んでいた。
 これだけあれば、タイヤはスペアも数多く作れるだろう!
 お礼を言おうとエルヴ族を見ると、少し怯えた表情をしている。

 「ダン…お前は本当にダンだよな?」
 「なんだよガイウス、説明したろ? アレは演技だって…」
 「いや、精霊の加護に全く反応が無かったから、あれがダンの本性かと思ったんだ。」
 「ははっ…ガイウスでも冗談は言うんだな?」
 
 僕は笑って済ませたが、ガイウスは笑って無かった。
 そしてしばらくの間…僕の評価はかなり低い評価になった。
 一部では、悪魔じゃないかと囁かれたりもした。
 食事番の女の子達も僕を見て怯えていたり、レイヴンの様子も暫くおかしかったり…

 もう、全部演技だよ!
 僕は集落で大声で叫んだが、信じてもらう為にかなり時間が掛かった。
 そして僕は集落の人達から白い目で見られていた。
 まだ…悪魔的な行為の尾を引いているというわけでは無い。
 あれは説得に時間が掛かったが、あれに関しては納得してもらった。
 現在のはあれとは関係なく…右足の指で箸を使い、左足で茶碗をもってご飯を食べている。
 何故こんな奇妙な事をしているというと…?
 ある実験の為である。

 ~~~~~オークウッドから樹液を貰って…いや奪ってから1週間後~~~~~

 宿舎の自室で、新たなシルフィンダーの設計図を作っていた際に気付いた事がある。
 まず、普通の車の運転席では、魔力を満遍なく供給出来ないのだ。
 なので運転席は、レーシングカーの様に車の真ん中に作らなければならないという事だ。
 普通の車の様に、エンジンを操作するならば、右ハンドルでも左ハンドルでもどちらでも良いのだが…?
 シルフィンダーは完全に風魔法という魔力での操作になるので、運転席が左右どちらかでは供給バランスが狂うのである。
 それで、運転席の後ろに後部座席を設ければ、ちょっと変わった車になる訳なのだが…?
 僕以外だと、他の幼馴染4人しか元の世界の車を知らない訳だから、多少の車の変化でも気にしないだろう。
 なぜ、真ん中ではないと行けないのか…?
 運転席が右ハンドルの場合は、両手から繰り出させる風魔法が、右だと普通に送り込んでも良いのだが、左側の方が距離が少し長い為に必要量が多少増えるのである。
 つまり…どういう事かというと、10で言えば右ハンドルの場合、右は3で済むのを左側には7を送らないと前進できないのである。
 左ハンドルの場合は、同じく左は3で右に7という感じで魔力を送らないといけない。
 ハンドル操作しながら前に進む場合、いちいちそんな制御をするのは面倒だからだ。
 なので運転席を真ん中にして、魔力の供給を5対5にすれば面倒がなくて済むのである。

 ……と、ここまでは良かったのだが……?

 問題はここから先である。
 ギアチャンジ 
 【P】はタイヤ4本にロックが掛かる。
 【R】はバック。
 【D】前に進む。
 付けるのはこの3つである。
 ブレーキは、右のレバー。
 ギアチャンジレバーの手前にフライトモードレバー。
 そして足をどうしようかと考えた時、アクセルやブレーキは無いので、ただ添えるだけと考えたのだが、どうせなら足から魔法を放てば、手はあくのでハンドル操作が出来ると考えたのだ。
 
 魔法は手を還して発動されるが、足から発動させるという考えはあまりない。
 …とはいえ?
 肉体強化魔法のブーストは体全身から魔力は発してする魔法だし、移動速度を上げるアクセルは足から放たれる魔力で素早く動けるものであるので、基本的には可能なのであるが…?
 なので、足を手と同じ様に使えるようにする為の特訓として、足で箸を取り扱える様にすれば器用に魔法を発動できると考えたのだ。
 足で魔法を使うのは簡単そうだと思うだろう?
 これが結構難しい。
 簡単な風魔法だけなら出来なくはないのだが、複合統一魔法の類が出来ない。
 シルフィンダーを早く走らせようとするためには、足で完璧に魔法を使いこなせないと駄目なのだ。
 それにしても、足で箸を使うのは久しぶりである。
 7年前のあの出来事で、腕より足の完治が早かったのだが、手で箸を掴んで食べる事が出来なかった。
 なので、しばらくは足の指に箸を掴んで食べていた。
 無論、それを見ていた医師や看護婦たちは食べさせてあげると言ってくれたのだが、あまり動けずにいる病院の中では暇なのでこの位の遊びが丁度良かった。
 
 ~~~~~それから1週間後~~~~~

 僕はもう足の指を手の指の様に使いこなしていた。
 最初は子供の頃と違い、足のサイズも変わっていたので戸惑っていたが、いまでは理解して使いこなしていた。
 足で結ぶ蝶結び、足で遊べるあやとり、更には足で針の糸通しまで出来る様になっていた。
 最初は白い目で見ていたエルヴ族だったが、僕が器用に足を使いこなしているのをみて、真似する人に何人かいた。
 
 「よし、練習してみるか…」

 その場でジャンプをして反動を付けたら、体をネジって回転しながら蹴りを出す技…

 「竜巻〇風脚!」

 足の平から風魔法を発生させ連続回し蹴りが出来た。
 ゲームの世界でしか出来ない技が出来て、ちょっと嬉しかった。
 でも、こんな事を試す為に足を鍛えていた訳じゃない。
 
 「風魔法放出!」

 足の平から風魔法を発動させて、空高くまで飛び上がった。
 これなら出来るのだが、問題はここで維持出来るかどうかだ。
 重心が少しでもズレると、態勢を崩して頭から落ちかねない。
 空中で足を少し開いて安定を取る…。
 よし、安定している…はず?
 足を手と同じ様に使いこなせていなければ、多分ここまでの安定は出来ていなかっただろう。
 僕は一度、地上に降りた。
 そして、もう1度…

 「右足から豪風、左足から豪風、複合統一魔法・テンペストストーム!」
 
 僕は一瞬で空高くまで上昇した。
 そして空中で高さを維持し、風魔法を弱めてゆっくりと地上に降りた。
 ……?……
 これが使えるのであれば、いずれ空も飛べるようになるのではないか?
 そうすればシルフィンダーも作らなくても。
 …と思ったが、シルフィンダーは僕の夢でもあるし、レイヴンとの約束でもある。
 そして僕は靴を履いてから試してみた。
 問題はなさそうだったので、さっそくシルフィンダー製作に取り掛かる事にした。
 
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