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最終章 異世界召喚が8回目って…マジかコレ⁉︎

第六話 違和感のある村

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 魔族は基本的に、闇属性の魔法を用いる。
 その他だと、陰属性や魔属性という物もある。
 闇属性や魔属性、陰属性にも四大元素に関する魔法も存在する。
 闇炎・闇土・闇風・闇水といった物だ。
 何でこのような話をしたかというと…俺が覚えた魔法が闇属性だからだ。
 人の中でもたまに闇属性を持って生まれる者もいる。
 ただ、その場合は…大体が迫害の対象になるのである。

 「余計ないざこざを避ける為に魔法は人前では使えんな…」

 うっかり闇魔法を人前で使おう物なら、魔族と疑われても仕方が無くなる。
 こんな事ではキレる事は無いが、使い勝手が難しい所である。
 まぁ、闇属性だけしか使えないのならキレるかもしれないが…。
 それでなぜこのような話をしたのかというと…?
 闇魔法を村人の前で見せた事で誤解を生んでしまったからだった。
 何故こうなったのか…それは少し前に遡る。

 ~~~~~2時間前~~~~~

 大陸に上陸した俺は、とにかくひたすら歩いて人がいる場所を探していた。
 魔王軍に侵攻されているとは聞いていたが、行く先々の村はほとんど攻め滅ぼされていたのだった。
 そして滅ぼされた村に魔王軍の残党が蔓延っていたので、片っ端から斬り捨てた。
 道具造りで経験値を得るのとは違い…魔物を倒すと恐ろしい程に経験値を入手し、レベルが上がって行った。
 その際に魔法を覚えて行ったのだが、それが全て闇属性魔法だった。
 収納魔法を覚えた時点で大体予想していたが…。
 収納魔法は主に闇属性なので、次に覚えるのは闇属性だと思っていた。
 それから他の属性も覚えていくのだろうと思いたいが。

 「それにしても全く人に会わないな…ここがどんな大陸で、他にはどんな大陸や街があるとか聞きたかったが…」

 ここまで人に会わないと、俺は魔大陸に上陸したのではないかと疑わしくなっていく。
 それから3日ほど川沿いを歩いていると、そこで大陸に来てから初めて人…少女に出会った。
 俺は声を掛けようとして近付こうとすると、その少女は声を上げて逃げて行った。
 まぁ…見知らぬ者に警戒するのは当たり前か!
 俺は少女が逃げて行った方角に向かって歩いた。
 すると、高い石垣に囲まれた村の入り口を発見したのだった。
 ただ、初めての大陸に来たと言うのに…その村の入り口を見て懐かしさを覚えたのだった。
 そんな事がある筈がないのに。
 俺は村に近付こうとすると、入り口に立っている兵士に槍を向けられた。

 「止まれ! 貴様は何者だ⁉」
 「俺は…別大陸から来た者で、この大陸は何処なのかとか色々尋ねたいと思っているんだ。」

 嘘は言っていないのだが、兵士は明らかに疑いの眼差しを向けて来た。
 まぁ、それが当然の反応だろう。

 「この村の事をどうやって知った?」
 「先程川沿いを歩いていたら、少女を見掛けてね。 それで後を追わせて貰ったんだ。」
 「野盗の類では無いと証明は出来るか?」
 「この大陸の野盗は、1人で行動するのか?」
 「先に村の様子を窺ってから、後で仲間を呼び寄せる可能性もあるからな!」
 「確かにそう疑われたら、証明出来る物はないな。」

 このままでは追い返されるだろうな。
 何とか村に入れては貰えないかな?
 俺はそう思いながら、収納魔法からイノシシの肉の塊を取り出した。

 「こんな物で良ければ、幾つかストックがあるが…村に入れては貰えないか?」
 「それは肉か? どこから出した⁉」
 「俺は少しだが魔法が使えるのでな。 収納魔法…と言って分かるか?」
 「空間魔法の類か? それならこの村にも使い手がいるからな!」
 「わかった、村の代表に聞いて来よう。」

 そういって、兵士は村の中に入って行った。
 その間、門は閉ざされて行ったので中を窺う事は出来なかった。
 それから1時間近く待たされたが、兵士が帰って来る様子が無かった。
 俺は肉を薄く切ってから火で炙り、食べながら待っていた。
 すると扉が開いて…村の代表者らしき50代前後の男が兵士と一緒に出て来たのだった。

 「貴方が旅の方ですか。」
 「えぇ、この大陸の情報や街の情報を聞きたくてね。」
 「食料を提供して下さりますか?」
 「ここに来る前に何匹か狩って来たので…満腹に出来る程の量は無いとは思うが、村全体の1食分の量くらいはあると思う。」
 「そうですか…では村に案内しましょう! ようこそ、旅人さん。 アーレイタスの村へ!」
 
 俺は村の名前が少し気になったが、代表の男と一緒に村に入った。
 村に入ると家は石壁の方に寄っていて、中央は大きな広場になっていた。
 俺は村の広場で収納魔法から肉の塊を取り出して、村人達に渡した。
 ただ…?
 この村の作りというか、雰囲気に妙な違和感を感じていた。

 「遅れました、私はこのアーレイタス村の村長のバシュカーと申します。」
 「俺はサクヤという。 この大陸には1週間ほど前に着いたばかりでな…できればこの大陸の情報を聞きたいのだ。」
 「おぉ! こんな御時世に他の大陸からいらっしゃったと!」

 大陸とは言っていないが、余計な詮索をされるのも面倒なので話を合わせる事にした。
 
 「ここは壱の大陸と申しまして、これが地図になっております。 そしてここより10日ほど行った場所に、王都ダルキアンがあります。」
 「王都ダルキアン…?」

 王都ダルキアンという名前は聞き覚えがあった。
 そしてこの村のアーレイタスという名前と村の作りも…。
 俺は確認の為に、バシュカーに尋ねてみた。

 「王都ダルキアンに、四聖騎士というのはいるか?」
 「懐かしい名前ですね…彼らは魔王軍の侵攻に迎え撃って、今では2人しか残って無いという話です。」
 「そうか…では、この村にレイダリアンとサフラーという冒険者はいたか?」
 「その者達は、魔王軍の侵攻時にこの村を救う為に戦闘になって戦い…先程お見掛けした少女と兄を残してこの世を去りました。 ですが、旅人さんは良く御存知でしたね?」

 なるほど…違和感の正体が分かった。
 ここは第一の異世界召喚で訪れた事がある村だった。
 唯一違うのは、あの時よりも年数が経っているという事だ。
 計算すれば、第一の異世界召喚から少なくとも…20年くらいは経過しているという事だった。
 ただ、俺がこの村に来た時にバシュカーという奴には会った事がないし…他にあの時に会った事がある奴がいるとしたら?

 「他にランドルフという男と、メイネアという女はいないか?」
 「その者達なら居りますが…旅人さんはどうしてその者達の事を?」
 「可能なら会わせて貰えないか?」
 「はぁ…」

 バシュカーは近くにいる者に2人を呼びに行って貰った。
 数分後…2人の男女が俺の前に現れた。
 まさか…とは思っていたが、あの頃の子供が成長したらこんな感じになると思った通りの姿だった。

 「旅人さん、あんたか? オレ達に用があるというのは?」
 「突拍子の無い事を聞くが…お前達が12歳くらいの頃に、レイダリアンとサフラーと共に一緒に来た子供の事は覚えているか?」
 「悪いな…正直覚えていない。 10数年前の出来事だからな…」
 「なら、これは覚えているか?」

 俺は収納魔法から木の棒を取り出すと、それを曲げてから輪を作ってフラフープみたいに腰で回転して見せた。

 「この遊びを教えたら、ランドルフは不器用だったが、メイネアはいち早く上手く出来ていた。」
 「あぁ、この遊びなら覚えて…⁉」
 「貴方…もしかしてサクヤ⁉」
 「やはり…この村はあの時の村だったのか!」

 ランドルフとメイネアが驚くのは無理もない。
 俺と2人とでは時間の流れが違ったのだ。
 俺達はあの時は同じ年の12歳だったが、今では2人は30歳前後で俺は20歳位だったからだ。
 俺達は久々の再会に喜んだ…が、2人は俺に疑いの目を向けて来た。
 俺は事情を説明すると、2人も話をしてくれた。

 「なるほど…この世界はあの時の世界だが、世界の名前はアヴェリシアではないのか。」
 「あぁ、どういう訳か俺達の世界は…グヴェリオンという世界に来たらしい。」
 「そして倒されたはずの魔王が復活して侵攻を始めたというの。 それも他にも魔王が存在していて…」
 「第一世界の魔王は、確かハルセイアスという名前だったな?」
 「サクヤの話が本当なら、4人の英雄の1人がサクヤという話よね?」
 「あぁ、その戦いの後に俺は元の世界に戻った…が、他の世界にも召喚されてな。 以降数回、他の世界を救ったという訳だ。」
 「今度もこの世界を救ってくれるんだよね?」
 「そのつもりで来たんだが…今回はどういう訳か、あの当時の力が使えないんだ。 使える力がこの闇の力という位で…」

 俺は闇魔法を発動して見せた。
 すると、それを見た村人達は武器を持って俺を囲んだのだった。
 ランドルフとメイネアも俺から離れて武器を構えていた。

 「サクヤ…姿が俺達と違うのはやはり、お前は魔族だったのか⁉」
 「違うわ! だからさっき説明しただろ!」
 「お前が魔族では無いという証拠はあるか⁉」
 
 俺は近くにいた村人の槍の先端を持ってから手を斬ってみせた。
 その傷口から赤い血が垂れている所を見せると、村人達は俺が魔族では無いと確信して武器を降ろしたのだった。
 俺は闇魔法の回復魔法で傷を塞いだ。
 一部の村人は警戒をしていたが、ランドルフとメイネアの説明で誤解が解けたのだった。

 「サクヤはこれから…やはり魔王を倒す為に旅を続けるのか?」
 「この大陸に侵攻している魔王軍の筆頭は、魔王ハルセイアスなんだろ?」
 「あぁ…」
 「あのトカゲ野郎とまた戦わないといけないのか…アイツ、回復能力が高くて厄介だったんだよな。」

 第一の異世界召喚での魔王はハルセイアスといって、リザードマンの様な見た目の魔王だった。
 そこを切断しても再生するという厄介な能力を持っていて、あの当時はかなり苦戦させられた。

 「なぁ、ランドルフ…あの当時の英雄の所在はどうなっているか分かるか?」
 「魔王軍の侵攻で皆殺されたという話だった。」
 「まぁ、自分を倒した存在を真っ先に狙うよな。 復活を果たしても、警戒して天敵をいつまでも生かしておく事は無いか。」

 そうでなくても、戦士とヒーラーはともかく、20年も経過していたら魔術師の爺さんは寿命でくたばっているだろう。
 そうなると、魔王を倒す為に新たにメンバーを集めないと行けなくなる訳だが。
 しかしいるのかねぇ、そんな強者が…?

 「グヴェリオンが今回の魔王討伐に時間が掛かるという意味が解った気がする。 一度倒した奴と再び戦わないといけない事と、恐らくだが七魔王だけではなさそうだな。」
 「オレ達もサクヤの力になりたいと思うが、俺もこの村に子供がいるからな。」
 「メイネアと結婚したんだろ? あの頃に宣言していたもんな、俺は将来メイネアと結婚するって…」
 「あぁ、そうだ! そして今はこの村で自警団に入りながら魔王軍を討伐している。 だからオレはこの村から離れる訳にはいかないんだ。」
 「それが解っていて一緒に来てくれとは言えんよ。 まぁ、何とかしてみるさ。」

 これからやる事は2通りある。
 1つは仲間を集めて魔王ハルセイアスを倒すという事と、もう1つはレベルを鬼の様に上げて1人で立ち向かうという方法だ。
 ただ…レベルが上がっても闇魔法しか使えないとハッキリ言って詰む。
 ハルセイアスは闇属性の使い手だからだ。

 「とりあえず、今日は俺達の家で泊って行ってくれよ。」
 「こちらとしてはありがたいが…良いのか?」
 「久々に会った友だからな。 俺もメイネアも断る理由はないさ!」
 「なら、世話になる!」

 俺はランドルフの家に厄介になった。
 そして食材を提供して、久々に手料理を食べる事が出来た。
 さらにベッドの1つを貸して貰って熟睡をする事が出来たのだった。
 
 翌日…
 俺はこのアーレイタスの村でさらに懐かしい顔に出会う事になる。
 それは…あまり会いたくない顔だった。
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