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第二章

第十二話 デスブリンガーとしての活動(二足のわらじは大変です。)

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 今日は久々に、デスブリンガーとしての活動をしようと思った。
 なので、当然バトラーには孤児院での守りの警護を命じていた。
 ただし、それ以外は…ある事以外は何もするなと命じていた。
 孤児院内に入れば…キキやリリやネネは問題無いのだけど、バトラーは子供が苦手なのか…すぐに手を上げようとするとか、畑を手伝わせれば以前の二の舞になったりとか、料理をさせれば…何処かしらを破壊する。
 そうじゃなくても、リリに料理を教えている際にバトラーが見に来た事があった。
 バトラーは自分より初心者なリリには、レパートリーが無い物だと思って自慢気にしようとか考えていたようだったが、実際に目をするとバトラーの料理のレパートリーよりも遥かに数が多かった。
 バトラーは負けず嫌い…なのか、リリより多くのレパートリーを増やしたくて教えてはみたのだが…?
 
 「畑にいるネネから、この野菜を持って来てくれ!」

 そう言って、ほうれん草を見せると…すぐに外に向かって取って来た物と言えば?
 見た目はほうれん草とよく似た雑草だった。
 
 「僕は畑にいるネネから聞いて野菜を持って来いと言ったはずだが?」
 「聞くまでもありませんよ、その証拠に同じ物を持って来たではありませんか!」
 「これは、外壁の辺りにある雑草だけどな! だからネネにちゃんと聞けと…」
 「むぅ…」

 バトラーの良いところは、行動が早い事なんだが…?
 せっかち過ぎるのが玉にキズだった。
 
 「ですが…ステーキもパンも目玉焼きも既に極めました! なので、それ以上の種類を覚えたいのですが…」
 「何にも極めていねぇよ! 肉は相変わらず表面だけは焼けていて中は生焼けだし、パンは焦げていて炭のようだったし、目玉焼きは焼き過ぎていて子供の顎では喰うのに苦戦するだろう。」

 子供達がはじめて孤児院に来た時にバトラーから振る舞われた料理は、全て上手くいっていたわけではなかった。
 だけど、子供達は一切の文句は言わずに食べていたのだが…?

 「ですが、グレムリンは喜んで食しておりましたぞ!」
 「それは魔物だからだ! 人間があんな物を喰ったら腹を壊すんだよ‼」

 さすがに…孤児院の警備だけを命じていても飽きて何かしらの行動を起こすのだろうなぁ?
 なので、孤児院から離れた外壁のそばにかまどを用意した。

 「バトラー、ステーキを極めたいのなら…数をこなして焼いてみろ! 採点はリリに任せる!」
 「リリから合格を貰えれば良いのですな!」
 「リリ、上司とか関係無しに遠慮なく罵ってやれ! どうせバトラーの腕では、極める域に達するまでに数か月か数年は掛かるだろうからな!」
 「バトラー様を…ですか⁉︎ かしこまりました、主様…」

 それからという物…バトラーは僕が不在の間は、孤児院の警護以外にステーキを極める為に励むのだった。
 リリがどこまでバトラーに対して物言えるか…だが、リリの料理に関してだけは妥協する事が無い事は分かっているので、生半可な事は言わないだろう。

 さてさて…此方は此方で久々にデスブリンガーとしての活動をする訳なのだが…?
 ゲルギグス大陸のグラロザの街の様な大きな街は、このフレアニール大陸にはテレシア王国とサーディリアン聖王国を抜かすと殆どない。
 小さな町や村があるだけで、そんな所に三元将の地位がある者が出向く訳には行かない。
 他の大陸まで足を延ばすというのも考えたのだが、あまり孤児院から離れるのは得策ではない。
 何かあったら…と考えると、すぐに帰還出来る距離が好ましいからだ。
 なので、今回はデスブリンガーとしての活動は辞めて、周辺でも狩って食材でも手に入れようか…何て考えていると、テレシア王国から騎士団が馬に乗って駆けて行くのが見えた。
 
 「今日は特にやる事が見つからないし、テレシアの騎士団が何処に向かうかというのを探るのも良いかもな!」

 僕はそう思いながら、騎士団の後を着いて行く事にした。
 そして尾行を続けていると、騎士団は慟哭の森に入って行くのが見えた。

 「あの場所は慟哭の森か? あんな場所に騎士団を差し向けてどうするんだ?」

 あの場所は、僕にとっても忌まわしい場所だった。
 親友だったと思っていた幼馴染達に裏切られて、始末されそうになった場所だからだ。
 今日は特に何もする事が無いと思っていたが、騎士団を始末出来るのなら丁度良いだろう。
 テレシア騎士団の実力の程度も分かるし、冒険者よりは良い経験値稼ぎにもなるしな。
 僕のジョブに関係するのか、魔物や魔獣を倒す以外にも、人間を殺しても経験値を得られる上にレベルも上がるからだ。
 
 「だけど、奴等は一体何処に向かっているんだ?」

 しばらく進んで行くと、見覚えのある場所に着いた。
 其処は僕が殺されそうになった場所だった。
 すると、男性騎士と女性騎士の二人が僕が横たわっていた場所を念入りに調べ始めた。

 「やはり…痕跡はないか!」
 「そうだね、慱はやっぱり…」
 「ん? この声は…?」

 忘れる筈もない、翔也と飛鳥の声だった。
 そういえばあの時は、翔也は僕に魔道具を使って麻痺をさせてから、何かの血を僕に掛けてから二人は華奈と賢斗を担いでその場を後にしたんだっけか?
 だから今になって確認をしに来たんだな。
 
 「翔也と飛鳥がいるなら丁度良い…あの時の怨みを晴らすには良い機会だ!」

 僕は魔剣ネクロイシスを抜いてから近付こうとすると、慟哭の森の中に甲高い鳴き声が響いた。
 すると、翔也のいる場所の奥の方から数体のヴェロキスライサーと一際大きな個体のメガロスライサーが姿を現した。
 メガロスライサーは、言ってみればティラノサウルスの様な見た目で…騎士団を見て涎を垂らしていた。
 僕は殺気を抑えながら少し下がった。

 「これは面白そうな見物だな! 騎士団はともかく、翔也や飛鳥には勝ち目が無いだろうな。 自分が喰われそうになる恐怖を思い知るが良い!」
 
 始めは自分であの時の始末が出来るものだと喜んだりもしていたが、別に食われている姿を見るのもまた一興だろう。
 騎士団達は一斉に剣を抜いてヴェロキスライサーに向かって立ち向かって行った。
 流石は騎士といった所か、ヴェロキスライサーに対しては引けを取らなかった…が、メガロスライサーに関しては別で、騎士達は次々とメガロスライサーの尾で薙ぎ払われて行った。
 このまま行けば…メガロスライサーが全てを始末してくれるが?
 僕は再び、魔剣ネクロイシスを抜いてから「助太刀してやる!と言って、メガロスライサーに向かって行った。
 騎士達は感謝の意を表明したが、僕はあのままメガロスライサーに好き勝手されると 騎士達を始末出来ずに経験値を失うのが嫌だっただけなので、礼を言われる筋合いは無かった。
 騎士達がヴェロキスライサーを抑えていてくれたので、僕はメガロスライサーに集中で来た。
 流石にメガロスライサーとヴェロキスライサーを同時に相手するには苦労しそうだったからだ。
 そして…僕はメガロスライサーの心臓に魔剣ネクロイシスを突き立てると、メガロスライサーは血を吐いて倒れたのだった。

 「見た目はあまり美味そうには見えないが…喰えるのかな?」
 「冒険者殿、助太刀感謝致します! あのままですと、我々も危なかった…」

 騎士の1人がそう言って、感謝の意を表す為に一礼をしてから手を出してきた。
 握手が礼を表す表現なのだろうか?
 だが僕はその手を払いのけてから、一刀両断で斬り伏せた。
 すると、他の騎士達は予想外の事で焦り始めた…が、僕はその隙に全ての騎士達を斬り伏せて行った。

 「流石に騎士だけの事はあるな! 冒険者と違って結構な分を稼がせて貰ったぞ‼」
 「な…お前は味方では無かったのか⁉」

 僕に対して翔也は、剣を構えながら言って来た。
 飛鳥も突然の事で頭が理解出来ていなかった。

 「味方だと…違うな! あのまま獣達に殺されていたら、稼ぎ分が減ったから始末しただけだ‼」
 「まさか、俺達の事も手に掛けようというのか⁉」
 
 翔也は何処となく震えていた。
 すると飛鳥が僕の前に躍り出て、剣を振り下ろして来たのだが…?
 僕は飛鳥の剣を魔剣ネクロイシスで破壊すると、飛鳥の腹に蹴りを入れて吹き飛ばした。

 「女は後で始末してやる…だが、まずはお前だ!」

 僕は翔也に向かって魔剣ネクロイシスで斬りかかろうとした…が、突然翔也の身体が光りだしてから、翔也の目の前に光の盾が現れると…魔剣ネクロイシスの一撃を防いだのだった。
 
 「な、なんだ…この力は⁉」
 「ほぉ…無自覚で発動したのか!」

 翔也の外道な行いで忘れていたが、翔也は一応勇者のジョブを手に入れていたので…この光の盾は勇者に関係する物なんだろう。
 勇者とは縁遠い行いをしているしている癖に…どういう訳かはわからないが、勇者の加護が働いたのだろう。
 すると翔也は飛鳥の元に駆け寄ってから、背中から出した杖の様な物を取り出してから言葉を発して掲げると…二人は光に包まれてその場から姿を消したのだった。

 「翔也と飛鳥の気配が無い…という事は、あれは王国に帰還する魔道具という訳か!」

 二人を始末出来なかった事は残念だったが、いずれチャンスもあるだろう。
 一先ず僕は、先程倒したメガロスライサーを収納魔法に締まってからその場を後にした。
 そして報告を兼ねて、魔王城に赴いてからサズンデス様にメガロスライサーを見せたのだが…?

 『これは地龍か…目にしたのは初めてだな!』
 「サズンデス様、これは…喰えるのでしょうか?」
 『我は食した事は無いが、デスブリンガーなら料理が出来るだろう?』
 「捌いて見ない事には分かりませんが、そうですねぇ…?」

 せっかくのドラゴンを塩だけで調理するのは勿体ない気がして、調味料を揃えたら振舞うので少し待っていてくださいとお願いした。
 サズンデス様はその時が来るのが楽しみだと言って、それ以外に起きた事を話してから孤児院に戻った。
 …のだが、孤児院の門を開こうとした時に何故か悪寒が走った。
 
 「まさか…とは思うが?」

 畑こそは問題は無かったのだが、それ以外の庭が半分以上が焼き焦げていた。
 何故こうなった…かというより、誰がやったかは明白だった。
 僕はバトラーを問い詰めてから、長い説教をする事になったのだった。

 一方そのころ…?
 テルシア王国に帰った翔也と飛鳥は、国王陛下に騎士団が全滅した事を話した。
 流石の国王も、その事実に驚きを隠せなかったという。

 「一体…何があったのだ‼」
 「それはですね…」

 翔也からその報告を受けた国王は、一刻も早くに勇者パーティーを鍛え上げる構想を練り始めるのだった。
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