5 / 36
第一章
第二話 国王陛下の策略(結構悪どい事を考えているそうです。)
しおりを挟む
慱が牢屋に入れられてから数時間後…
「国王陛下、何故慱を牢屋になんか入れたのですか⁉」
華奈は物凄く怒って国王陛下を問い詰めた。
怒っていたのは華奈だけではない。
「余だって本来はこんな事はしたくはなかったのだが、無能と判断された以上、国民に公表する訳には行かぬからの手段なのだ。」
「答えになっていません! 慱は私達の大事な友達なんです‼」
「華奈…落ち着いてくれ。 ですが、確かに…慱にジョブが表示されなかったからとはいえ、牢屋行きはあまりにも酷過ぎる‼」
華奈と賢斗は抗議したが、国王陛下は首を横に振るばかりだった。
国王陛下は言った。
「この救世主召喚は、人の命が掛かった召喚の儀だという事は知っているかな?」
「人の命…?」
「この召喚の儀は、テルシア王国の国民がアルカディア王女に魔力と希望を込めて救世主様達を呼び出したのだ! その時に、国民の何人かは命を落とした者もいるのだ。 それなのに、呼び出した中に無能が混じっていたとなれば、国民に何といえば良いか…余の気持ちも汲んでくれ。」
救世主召喚は、後日…勇者が誕生した事を国民に知らせなければならない決まりがある。
そこで勇者以外の救世主達も紹介しなければならないのだが…?
「でしたら、慱の名前は伏しても構いませんから、せめて牢屋から出しては貰えませんか?」
「華奈…」
国王は、聖女の華奈と勇者の翔也の関係を見て察した。
もしかすると、これはあの無能を始末出来ると睨んだのだ。
「済まないが、彼を牢から出せない理由が他にもあるのだ。 救世主召喚で無能が現れた事は、ほぼ城の中に伝わっているのだ! 今彼を牢から出して城内を歩かせると、騎士や兵士からいらぬ迫害を受ける可能性があるから、幽閉という形を取ったのだ。」
華奈はそう言われて悲しそうな顔をした。
翔也は華奈の悲しそうな顔を見て面白くなかった。
「でしたら、魔王の討伐の旅に慱を同行させるのは宜しいですか?」
「あんな無能でも役に立つ事でもあるのか?」
「慱は、様々な料理や元いた世界でのスキルが数多くあります。 この世界で開花はしませんでしたが、戦闘以外のサポートは出来る筈です!」
「ふむ…?」
国王陛下は正直、魔王の討伐に無能を同行させるのは賛成し兼ねるのであったが、ここで拒否をすれば勇者達パーティが魔王の討伐に行かなくなるという懸念が出てくるのも困るので、あえて許可を出した。
ただし、条件付きで…
「解った! ただし、同行させるには条件がある。」
「その条件とは何ですか?」
「まず、旅に出来るかどうかの判断をさせるのだ! 現在、魔王の配下の魔物がこの付近にいるのでな、彼を同行した勇者パーティで調査して欲しいのだ!」
「では、それで調査が完了すれば?」
「無論、同行を許可しよう!」
華奈は嬉しそうな顔をしてはしゃいだ。
賢斗も飛鳥もやる気を出していたが、翔也は華奈の表情を見て喜ぶフリをしながら複雑そうな顔をした。
幼馴染4人が部屋を出ようとすると、翔也だけ話があるといって呼び止められた。
「翔也殿は、聖女の華奈殿がお気に入りなのだな?」
「何故、その事を…?」
「だが、華奈殿はあの無能の事を好いておるみたいだが?」
「そうですね…」
「なら、翔也殿…あの無能を消したいとは思わぬか?」
「な! 何を言っているんだ⁉ 慱は友達だぞ⁉」
「だが、彼が生きている限り…華奈殿は翔也殿に一生相手にされないがそれでも良いのか?」
「そ…それは!」
国王陛下は、もう少しで勇者を崩せると踏んでいた。
国王陛下は、極め付けの1手を提示して来た。
「魔物の調査というのは、獰猛な肉食の獣が多く存在する場所でな…そこにあの無能を置き去りにすれば、確実に葬る事が出来る。 華奈殿はしばらく悲しむであろうが、その際に翔也殿が華奈殿を慰めればどうだ?」
「俺に傾く可能性があるか…」
翔也の中では悪くない考えだった。
だが、慱は友達で幼馴染でもある。
簡単にそんな真似は出来るとは思えないと感じるのだが…?
「元の世界に、あの無能は家族がいるのか?」
「いえ、慱は天涯孤独な身なので、待っている家族はいません。」
「なら丁度良いではないか…待っている家族がいないのでは、元の世界に帰る必要もないだろう…」
「だが…慱は…」
国王陛下は、更に翔也を追い詰めて行った。
「あの無能を同行させて、好きな女子を振り向く事が出来ずに見ているか、あの無能を消して好きな女子を手に入れるか…答えは決まっていると思うがな!」
翔也は考えた。
悩み…考えて出した答えは?
「そうですね、慱には退場してもらおう!」
「よくぞ決心した! では、この場所の詳しい地形と拘束の魔道具を授けよう! これであの無能を留めておいてから置き去りにすれば、確実に息の根を止める事が出来よう!」
「それは、良い作戦ですね!」
翔也の決断は、勇者の物とは思えない決断だった。
そして翔也は、その地形と魔物の配置などを覚えて、更に魔道具の使い方も覚えた。
翔也は部屋を出て行くと、国王陛下は高らかに笑った。
「これで、あの無能を始末出来る上に、勇者も思い通りに動かす事が出来る! これぞ、一石二鳥という物だ‼」
国王陛下は、次の計画に入ろうとしていた。
それは、かなり悪質な計画だった。
「国王陛下、何故慱を牢屋になんか入れたのですか⁉」
華奈は物凄く怒って国王陛下を問い詰めた。
怒っていたのは華奈だけではない。
「余だって本来はこんな事はしたくはなかったのだが、無能と判断された以上、国民に公表する訳には行かぬからの手段なのだ。」
「答えになっていません! 慱は私達の大事な友達なんです‼」
「華奈…落ち着いてくれ。 ですが、確かに…慱にジョブが表示されなかったからとはいえ、牢屋行きはあまりにも酷過ぎる‼」
華奈と賢斗は抗議したが、国王陛下は首を横に振るばかりだった。
国王陛下は言った。
「この救世主召喚は、人の命が掛かった召喚の儀だという事は知っているかな?」
「人の命…?」
「この召喚の儀は、テルシア王国の国民がアルカディア王女に魔力と希望を込めて救世主様達を呼び出したのだ! その時に、国民の何人かは命を落とした者もいるのだ。 それなのに、呼び出した中に無能が混じっていたとなれば、国民に何といえば良いか…余の気持ちも汲んでくれ。」
救世主召喚は、後日…勇者が誕生した事を国民に知らせなければならない決まりがある。
そこで勇者以外の救世主達も紹介しなければならないのだが…?
「でしたら、慱の名前は伏しても構いませんから、せめて牢屋から出しては貰えませんか?」
「華奈…」
国王は、聖女の華奈と勇者の翔也の関係を見て察した。
もしかすると、これはあの無能を始末出来ると睨んだのだ。
「済まないが、彼を牢から出せない理由が他にもあるのだ。 救世主召喚で無能が現れた事は、ほぼ城の中に伝わっているのだ! 今彼を牢から出して城内を歩かせると、騎士や兵士からいらぬ迫害を受ける可能性があるから、幽閉という形を取ったのだ。」
華奈はそう言われて悲しそうな顔をした。
翔也は華奈の悲しそうな顔を見て面白くなかった。
「でしたら、魔王の討伐の旅に慱を同行させるのは宜しいですか?」
「あんな無能でも役に立つ事でもあるのか?」
「慱は、様々な料理や元いた世界でのスキルが数多くあります。 この世界で開花はしませんでしたが、戦闘以外のサポートは出来る筈です!」
「ふむ…?」
国王陛下は正直、魔王の討伐に無能を同行させるのは賛成し兼ねるのであったが、ここで拒否をすれば勇者達パーティが魔王の討伐に行かなくなるという懸念が出てくるのも困るので、あえて許可を出した。
ただし、条件付きで…
「解った! ただし、同行させるには条件がある。」
「その条件とは何ですか?」
「まず、旅に出来るかどうかの判断をさせるのだ! 現在、魔王の配下の魔物がこの付近にいるのでな、彼を同行した勇者パーティで調査して欲しいのだ!」
「では、それで調査が完了すれば?」
「無論、同行を許可しよう!」
華奈は嬉しそうな顔をしてはしゃいだ。
賢斗も飛鳥もやる気を出していたが、翔也は華奈の表情を見て喜ぶフリをしながら複雑そうな顔をした。
幼馴染4人が部屋を出ようとすると、翔也だけ話があるといって呼び止められた。
「翔也殿は、聖女の華奈殿がお気に入りなのだな?」
「何故、その事を…?」
「だが、華奈殿はあの無能の事を好いておるみたいだが?」
「そうですね…」
「なら、翔也殿…あの無能を消したいとは思わぬか?」
「な! 何を言っているんだ⁉ 慱は友達だぞ⁉」
「だが、彼が生きている限り…華奈殿は翔也殿に一生相手にされないがそれでも良いのか?」
「そ…それは!」
国王陛下は、もう少しで勇者を崩せると踏んでいた。
国王陛下は、極め付けの1手を提示して来た。
「魔物の調査というのは、獰猛な肉食の獣が多く存在する場所でな…そこにあの無能を置き去りにすれば、確実に葬る事が出来る。 華奈殿はしばらく悲しむであろうが、その際に翔也殿が華奈殿を慰めればどうだ?」
「俺に傾く可能性があるか…」
翔也の中では悪くない考えだった。
だが、慱は友達で幼馴染でもある。
簡単にそんな真似は出来るとは思えないと感じるのだが…?
「元の世界に、あの無能は家族がいるのか?」
「いえ、慱は天涯孤独な身なので、待っている家族はいません。」
「なら丁度良いではないか…待っている家族がいないのでは、元の世界に帰る必要もないだろう…」
「だが…慱は…」
国王陛下は、更に翔也を追い詰めて行った。
「あの無能を同行させて、好きな女子を振り向く事が出来ずに見ているか、あの無能を消して好きな女子を手に入れるか…答えは決まっていると思うがな!」
翔也は考えた。
悩み…考えて出した答えは?
「そうですね、慱には退場してもらおう!」
「よくぞ決心した! では、この場所の詳しい地形と拘束の魔道具を授けよう! これであの無能を留めておいてから置き去りにすれば、確実に息の根を止める事が出来よう!」
「それは、良い作戦ですね!」
翔也の決断は、勇者の物とは思えない決断だった。
そして翔也は、その地形と魔物の配置などを覚えて、更に魔道具の使い方も覚えた。
翔也は部屋を出て行くと、国王陛下は高らかに笑った。
「これで、あの無能を始末出来る上に、勇者も思い通りに動かす事が出来る! これぞ、一石二鳥という物だ‼」
国王陛下は、次の計画に入ろうとしていた。
それは、かなり悪質な計画だった。
1
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話
Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」
「よっしゃー!! ありがとうございます!!」
婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。
果たして国王との賭けの内容とは――
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる