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第五章
第二話 参ったな…(まだ主人公は出ません。)
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「そうか、この世界の愽君は亡くなったのか…」
この世界では、飛鳥達が召喚されてから100年経過しているという話だった。
まぁ…大方の予想は出来ていた。
元いた世界と異世界では、時間の流れが違うと何かの話で見た事がある。
俺が死んでから、元いた世界では何年経過しているのだろうか?
まぁ、気にした所で戻れないのだから別に良いか。
「それで、向こうに戻った皆はどうしている?」
「俺が生きていた時の記憶しかないが…慱君は華奈ちゃんと早くに結婚をしたな…子供が2人いたよ。 翔也君はしらないが、賢斗君と飛鳥は付き合っているみたいだが…結婚にはまだ発展していないな。」
「そうか…彼らが元の世界に帰っての動向が解らないので、聞けて満足した。」
この世界で数年くらい共にした者達の動向なら気になるだろう。
会いたくても会える場所にいる訳ではないからな。
「ところでガイウス、1つ聞きたいのだが?」
「おぅ、何だ?」
「俺も聞かれたのでつい答えていたが…こんな敵の前でする話か?」
「別に問題無かろう? 俺もそうだが、キッドも苦戦している様には見えんぞ?」
「そりゃな…魔王に比べたら、この程度は大した事は無い…が、後ろにいるお前の部下がへばっているぞ!」
「この程度で音を上げる様な鍛え方はしていないつもりだったが、もう少し鍛えた方が良いかな?」
現在、俺とガイウスの目の前には…災害級の魔獣であるベヒーモスがいる。
ベヒーモスには何種類か存在している。
ベヒーモスは基本、猛牛がベースの物が多いが…中には像の様なベヘモスと呼ばれる個体もいる。
他にもカバの様ば個体もいれば、サイの様な個体もいる。
そして見た目とは違い、全て肉食なのだ。
…で、現在目の前にいるのは猛牛の様な個体のベヒーモスだった。
「ガイウス、草原には他に獲物がいるだろう…何故コイツなんだ?」
「ベヒーモスの革や尾や角は、素材として良く売れるんだ。 それ以外にも、この大きさなら集落の頭分の食料にもなるからな!」
「つまり…俺の為か?」
「お前が仕留めればな、俺が仕留めたら俺の物になる。」
「なるほど…」
俺は魔剣シーズニングにテクニカルセイバーを発動すると、ベヒーモスの側面に行ってから断頭斬で首を斬り落とし
た。
「見事!」
「お前なぁ…魔王を倒した俺らに、この程度の奴が苦戦する相手だと思うか?」
「まぁ、それもそうだな。 おい、コイツの解体をしろ!」
ガイウスは部下達の命じて解体をさせた。
するとガイウスが俺に角を寄越した。
「これを売れというのか?」
「いや、これは冒険者ギルドに登録する際の土産だ。 これを持って行けば、高ランクで登録が出来る様になるだろう。 要らんのなら、Fランクから上げるという手もあるがな…」
「辞めてくれ、当の2人に会うまでに何年掛かるか分からなくなるだろ!」
「まぁ、肉はこちらで処理をする事になるが、その他の素材はお前の物だ。」
「感謝する! これで、旅費くらいは稼げただろうしな。」
俺はマジックバックにベヒーモスの角を入れていると、ガイウスが俺を見て首を傾げていた。
「本当にお前は何の種族なんだろうな?」
「少なくとも、向こうの世界では俺は普通の人間だった。 角も尻尾も生えていなかったしな。」
「お前が前にいた世界で、【何持たぬ民】と言っていただろう…その種族の本来の姿とか?」
なるほど、そう考えるとそうなのかもしれないな。
最初は神の悪戯で勝手に生やされたと勘違いしていたが、そういう種族だという可能性もある訳か。
俺が前にいた世界には、何持たぬ民の生き残りは俺1人という話だし、特徴が書かれていた文献も無いらしいからな。
まぁ…それは別に良いや。
気にした所で角や尻尾が消える訳ではないし、人類の敵…という種族でなければ大した問題は無い。
それよりも問題は、ベヒーモスの買取金額がどの程度の物かだ。
インフレが未発達な世界では、乗り物の金額は馬鹿高い。
前にいた世界では英雄と名乗り、ギルドカードを見せれば大抵の乗り物はパスできたのだが…
俺とガイウスと集落の住民達は、倒したベヒーモスを持って集落に帰った。
すると、予想以上に早く行商人の馬車が到着していた。
「これはガイウス様…」
「マルザリィか、頭目は元気か?」
「はい、ここ最近忙しくてガイウス様に宜しくと。」
「うむ…それで今日なのだがな。」
「その獲物からすると、ベヒーモスですか?」
「それと、この子供をサーディリアン聖王国まで乗っけて行って欲しいのだ。」
俺はマルザリィという男と目が合った。
年齢は生前の俺と同じ30歳前後か…
「この坊ちゃまをですか?」
「それと、サーディリアン聖王国に着いたら冒険者ギルド迄の案内も頼む。」
「この坊ちゃまは冒険者志望ですか?」
「腕なら俺が保証する。 実は、このベヒーモスを討伐したのはそいつだからな。」
マルザリィはジロジロと俺を見ていると、ガイウスは屋敷に戻ってからすぐにやって来た。
「キッドにはこれを渡しておく。 サーディリアン聖王国に着いて冒険者ギルドに行ったら、その紹介状を受付に出すと良い。」
「何から何まで済まんな!」
「なぁに、気にするな! それと全てが終わったらまたここに来てくれないか?」
「この世界の管理者という者が魔王を倒したその後すぐに元の世界に返す事が無ければ会いに来るさ。」
こればかりは本当に解らん。
未だに会えぬ管理者がどんな性格なのかが全く解らないからだ。
魔王を倒した!
では、元の世界に帰れ!
そんな事を勝手に行う奴だとも限らないし、下手すると俺の事を忘れて元の世界に帰れない場合もある。
元いた世界の兄妹達には悪いが、この世界は俺に馴染みがある世界だからたとえ帰れなかったとしても構わない。
会えなくなるのは寂しいけどな!
「では参りましょうか、キッドさん!」
「じゃあな、ガイウス! 世話になった!」
俺はマルザリィの馬車に乗ると、馬車はエルヴの集落を出発した。
サーディリアン聖王国までに1週間は掛かった。
その途中に何度か魔物の襲撃はあったが、さすがに大きな商会の護衛だけあって手練れだった。
だが、巨大な虎の魔獣だけは別だった。
次々に冒険者達が怪我を負って倒れて行ったのだ。
俺は見るに見かねてテクニカルセイバーで始末すると、マルザリィから回復ポーションを貰って怪我を治していた護衛達は目を丸くしていた。
そしてサーディリアン聖王国に着くと、俺はマルザリィにお礼を言った。
「キッドさん、道中は本当にありがとうございました!」
「あの程度でお礼を言われる必要は無いよ。 俺もお礼を貰ったしな!」
俺はロンベルタイガーの革や討伐証明の尻尾を貰った。
「我が商会としては、キッドさんの大変素晴らしい能力も惜しい気がするのですが…」
俺は旅の最中に料理と調味料を振舞った。
俺は料理は絶望的だと思ったが、この世界に来て料理スキルが増えていたのだ。
恐らくは女神アルテナの仕業なのだろう。
「機会があったら顔を出すよ。 確かベルクドルフ商会と言ったか?」
「左様で御座います! ではいつでもお待ちしておりますので、来られた際には是非!」
俺はマルザリィと握手すると、護衛の冒険者に着いて行った。
護衛の冒険者は、今回の護衛の依頼の報告をすると言っていたので、ついでだから着いて行ったのだった。
「ここが冒険者ギルドになります、キッドさん!」
「俺に敬語は不要ですよ。 皆さんの方が年上なんですから…」
「そういう訳には参りません! うちらの業界では、強者は年が下であっても敬えと…」
俺はたかが虎の魔獣を倒しただけなんだが?
そんな物で感謝されるとは思ってはいなかった。
「キッドさんはいずれ、名のある方になるのは間違いない! かつての英雄ダン・スーガーの様な。」
「はは…ははは…」
俺は笑って誤魔化した。
元いた世界では、慱君は俺より年下だったのだが。
俺は冒険者達と握手をしてからギルドの中に入り、それぞれ受付が分かれていたので、依頼関連の受付ではなく登録カウンターに行った。
「すいません、冒険者登録をしたいのですが…」
「では、こちらの用紙に記入をお願いします。」
俺は用紙を見ると、俺らの世界では違う言語で書かれていたが読む事が出来た。
この世界に渡る時に得られるギフトなのだろうか?
一通りを記入したが、どうしても記入出来ない項目があった。
それはジョブについてだった。
俺には魔法は使えない。
調味料もスキルであって魔法では無いのだが、見方によっては魔法に見えない事もない。
色々考えた結果、魔剣シーズニングを奮う剣士という事で魔剣士と記入した。
「確認しますね。 キッド・リターンズ様、年齢12歳、ジョブは魔剣士ですか?」
「腰にある剣が魔剣なんでね。」
「そう…ですか。 その年齢で魔剣を持っている方はあまりおられないので…では、キッド様はFランクからのスタートで…」
「あ、ちょっと待って! そういえばガイウスから紹介状を貰っていたんだった。」
俺は受付嬢にガイウスからの紹介状を渡した。
すると受付嬢は、何処かの部屋に走って行った。
そして数分後に背の高いおっさんを連れて来た。
元いた世界のテスタに似ている感じがするこの男は、多分ギルドマスターだろう。
「オレの名はヴェルガー、このギルドマスターだ。」
「初めまして、キッドと申します。」
俺は最初のイメージを良くする為に敬語で話したが、敬語は不要だと言われた。
「英雄ガイウスからの紹介状を持って来た奴なんて、今まで居なかったからな! お前は何者なんだ⁉」
「その説明が一番し難い…ガイウスからの紹介状には何が書いてあった?」
「キッドは俺が認める数少ない男だから宜しく頼むと…」
「あの野郎…もう少し言葉を足せよ。」
まぁ、物を考えるのが苦手そうな奴だったし仕方が無いか。
ただ、こんな文章で紹介状になるのかね?
俺は事情を尋ねられたので、以前いた世界の話を含めて全て話した。
「お前さんが生まれ変わる前は、あの勇者パーティーの剣聖飛鳥の兄で…別世界に転生してから兄妹と共に魔王を倒したと?」
「まぁ、こんな荒唐無稽な話は普通信じられないよな?」
「普通はな…何か討伐した証明の品とかあるか?」
「あぁ、これがある。」
俺はそう言ってマジックバックから、ベヒーモスの角とロンベルタイガーの革と尻尾を出した。
ギルドマスターも受付嬢も目を丸くしていた。
「ベヒーモスにロンベルタイガーだと⁉ これをお前が討伐したという証明は出来るか?」
「ベヒーモスはガイウスと共に狩ったから本人じゃないと証明は出来ないが…ロンベルタイガーの方は、ベルクドルフ商会のマルザリィと横にいる冒険者達が証人になってくれる。」
ギルドマスターは護衛の冒険者達に話を聞くと、俺の方に戻って来た。
そして手で頭を抱えながら言った。
「普通なら、子供に倒せる魔獣では無いんだがな…」
「だから言ったろ、前の世界の魔王に比べたら大した事が無いと。」
「俄かに信じられなかったが、どうやら本当の話だったんだな?」
「それで、俺はどのランクでベヒーモスとロンベルタイガーの賞金は幾らになる?」
ギルドマスターは俺の顔を見ながら、ベヒーモスの角とロンベルタイガーの革を見た。
そして顔を真っ赤にしてから考え込んでいると、答えが出たみたいで言った。
「本来ならSランクと言いたい所だが、Sランクはある特定の条件が無いとなれない決まりなのでな、キッド・リターンズはAランクとする!」
「Aランクか…まぁ妥当だな! それで、金額の方は?」
「金に不自由している服装には見えないが?」
「装備品が立派なだけで、金はあまりない。 前の世界の通貨がこちらでも使えたら、金には困らない金額はあるが…」
俺は前の世界の通貨を見せた。
「これは金貨で…こっちは白金貨か⁉」
「なぁ、形も模様も違うだろ?」
「なるほど…白金貨まであるのなら、こっちで使えたら金に困らないという話は本当だったか。 それで何故金が必要なんだ?」
「さっきも言ったろ、前の世界の女神からこの世界の魔王を倒した双子に合流しろと…」
「あぁ、そうだったな…となると、ゴルディシア大陸のカナイ村か。」
「そういう訳で急ぎたいからさっさと清算をしてくれないか? そうじゃなくても船旅だと急ぎたくても急げないからな。」
「わかった、清算を急がせよう。 その間はギルド内で待つか…街に繰り出してくれていても良い。」
俺はギルドマスターの言葉に従って街に出た。
その後に俺は厄介事に巻き込まれる事になるのだが…?
この世界では、飛鳥達が召喚されてから100年経過しているという話だった。
まぁ…大方の予想は出来ていた。
元いた世界と異世界では、時間の流れが違うと何かの話で見た事がある。
俺が死んでから、元いた世界では何年経過しているのだろうか?
まぁ、気にした所で戻れないのだから別に良いか。
「それで、向こうに戻った皆はどうしている?」
「俺が生きていた時の記憶しかないが…慱君は華奈ちゃんと早くに結婚をしたな…子供が2人いたよ。 翔也君はしらないが、賢斗君と飛鳥は付き合っているみたいだが…結婚にはまだ発展していないな。」
「そうか…彼らが元の世界に帰っての動向が解らないので、聞けて満足した。」
この世界で数年くらい共にした者達の動向なら気になるだろう。
会いたくても会える場所にいる訳ではないからな。
「ところでガイウス、1つ聞きたいのだが?」
「おぅ、何だ?」
「俺も聞かれたのでつい答えていたが…こんな敵の前でする話か?」
「別に問題無かろう? 俺もそうだが、キッドも苦戦している様には見えんぞ?」
「そりゃな…魔王に比べたら、この程度は大した事は無い…が、後ろにいるお前の部下がへばっているぞ!」
「この程度で音を上げる様な鍛え方はしていないつもりだったが、もう少し鍛えた方が良いかな?」
現在、俺とガイウスの目の前には…災害級の魔獣であるベヒーモスがいる。
ベヒーモスには何種類か存在している。
ベヒーモスは基本、猛牛がベースの物が多いが…中には像の様なベヘモスと呼ばれる個体もいる。
他にもカバの様ば個体もいれば、サイの様な個体もいる。
そして見た目とは違い、全て肉食なのだ。
…で、現在目の前にいるのは猛牛の様な個体のベヒーモスだった。
「ガイウス、草原には他に獲物がいるだろう…何故コイツなんだ?」
「ベヒーモスの革や尾や角は、素材として良く売れるんだ。 それ以外にも、この大きさなら集落の頭分の食料にもなるからな!」
「つまり…俺の為か?」
「お前が仕留めればな、俺が仕留めたら俺の物になる。」
「なるほど…」
俺は魔剣シーズニングにテクニカルセイバーを発動すると、ベヒーモスの側面に行ってから断頭斬で首を斬り落とし
た。
「見事!」
「お前なぁ…魔王を倒した俺らに、この程度の奴が苦戦する相手だと思うか?」
「まぁ、それもそうだな。 おい、コイツの解体をしろ!」
ガイウスは部下達の命じて解体をさせた。
するとガイウスが俺に角を寄越した。
「これを売れというのか?」
「いや、これは冒険者ギルドに登録する際の土産だ。 これを持って行けば、高ランクで登録が出来る様になるだろう。 要らんのなら、Fランクから上げるという手もあるがな…」
「辞めてくれ、当の2人に会うまでに何年掛かるか分からなくなるだろ!」
「まぁ、肉はこちらで処理をする事になるが、その他の素材はお前の物だ。」
「感謝する! これで、旅費くらいは稼げただろうしな。」
俺はマジックバックにベヒーモスの角を入れていると、ガイウスが俺を見て首を傾げていた。
「本当にお前は何の種族なんだろうな?」
「少なくとも、向こうの世界では俺は普通の人間だった。 角も尻尾も生えていなかったしな。」
「お前が前にいた世界で、【何持たぬ民】と言っていただろう…その種族の本来の姿とか?」
なるほど、そう考えるとそうなのかもしれないな。
最初は神の悪戯で勝手に生やされたと勘違いしていたが、そういう種族だという可能性もある訳か。
俺が前にいた世界には、何持たぬ民の生き残りは俺1人という話だし、特徴が書かれていた文献も無いらしいからな。
まぁ…それは別に良いや。
気にした所で角や尻尾が消える訳ではないし、人類の敵…という種族でなければ大した問題は無い。
それよりも問題は、ベヒーモスの買取金額がどの程度の物かだ。
インフレが未発達な世界では、乗り物の金額は馬鹿高い。
前にいた世界では英雄と名乗り、ギルドカードを見せれば大抵の乗り物はパスできたのだが…
俺とガイウスと集落の住民達は、倒したベヒーモスを持って集落に帰った。
すると、予想以上に早く行商人の馬車が到着していた。
「これはガイウス様…」
「マルザリィか、頭目は元気か?」
「はい、ここ最近忙しくてガイウス様に宜しくと。」
「うむ…それで今日なのだがな。」
「その獲物からすると、ベヒーモスですか?」
「それと、この子供をサーディリアン聖王国まで乗っけて行って欲しいのだ。」
俺はマルザリィという男と目が合った。
年齢は生前の俺と同じ30歳前後か…
「この坊ちゃまをですか?」
「それと、サーディリアン聖王国に着いたら冒険者ギルド迄の案内も頼む。」
「この坊ちゃまは冒険者志望ですか?」
「腕なら俺が保証する。 実は、このベヒーモスを討伐したのはそいつだからな。」
マルザリィはジロジロと俺を見ていると、ガイウスは屋敷に戻ってからすぐにやって来た。
「キッドにはこれを渡しておく。 サーディリアン聖王国に着いて冒険者ギルドに行ったら、その紹介状を受付に出すと良い。」
「何から何まで済まんな!」
「なぁに、気にするな! それと全てが終わったらまたここに来てくれないか?」
「この世界の管理者という者が魔王を倒したその後すぐに元の世界に返す事が無ければ会いに来るさ。」
こればかりは本当に解らん。
未だに会えぬ管理者がどんな性格なのかが全く解らないからだ。
魔王を倒した!
では、元の世界に帰れ!
そんな事を勝手に行う奴だとも限らないし、下手すると俺の事を忘れて元の世界に帰れない場合もある。
元いた世界の兄妹達には悪いが、この世界は俺に馴染みがある世界だからたとえ帰れなかったとしても構わない。
会えなくなるのは寂しいけどな!
「では参りましょうか、キッドさん!」
「じゃあな、ガイウス! 世話になった!」
俺はマルザリィの馬車に乗ると、馬車はエルヴの集落を出発した。
サーディリアン聖王国までに1週間は掛かった。
その途中に何度か魔物の襲撃はあったが、さすがに大きな商会の護衛だけあって手練れだった。
だが、巨大な虎の魔獣だけは別だった。
次々に冒険者達が怪我を負って倒れて行ったのだ。
俺は見るに見かねてテクニカルセイバーで始末すると、マルザリィから回復ポーションを貰って怪我を治していた護衛達は目を丸くしていた。
そしてサーディリアン聖王国に着くと、俺はマルザリィにお礼を言った。
「キッドさん、道中は本当にありがとうございました!」
「あの程度でお礼を言われる必要は無いよ。 俺もお礼を貰ったしな!」
俺はロンベルタイガーの革や討伐証明の尻尾を貰った。
「我が商会としては、キッドさんの大変素晴らしい能力も惜しい気がするのですが…」
俺は旅の最中に料理と調味料を振舞った。
俺は料理は絶望的だと思ったが、この世界に来て料理スキルが増えていたのだ。
恐らくは女神アルテナの仕業なのだろう。
「機会があったら顔を出すよ。 確かベルクドルフ商会と言ったか?」
「左様で御座います! ではいつでもお待ちしておりますので、来られた際には是非!」
俺はマルザリィと握手すると、護衛の冒険者に着いて行った。
護衛の冒険者は、今回の護衛の依頼の報告をすると言っていたので、ついでだから着いて行ったのだった。
「ここが冒険者ギルドになります、キッドさん!」
「俺に敬語は不要ですよ。 皆さんの方が年上なんですから…」
「そういう訳には参りません! うちらの業界では、強者は年が下であっても敬えと…」
俺はたかが虎の魔獣を倒しただけなんだが?
そんな物で感謝されるとは思ってはいなかった。
「キッドさんはいずれ、名のある方になるのは間違いない! かつての英雄ダン・スーガーの様な。」
「はは…ははは…」
俺は笑って誤魔化した。
元いた世界では、慱君は俺より年下だったのだが。
俺は冒険者達と握手をしてからギルドの中に入り、それぞれ受付が分かれていたので、依頼関連の受付ではなく登録カウンターに行った。
「すいません、冒険者登録をしたいのですが…」
「では、こちらの用紙に記入をお願いします。」
俺は用紙を見ると、俺らの世界では違う言語で書かれていたが読む事が出来た。
この世界に渡る時に得られるギフトなのだろうか?
一通りを記入したが、どうしても記入出来ない項目があった。
それはジョブについてだった。
俺には魔法は使えない。
調味料もスキルであって魔法では無いのだが、見方によっては魔法に見えない事もない。
色々考えた結果、魔剣シーズニングを奮う剣士という事で魔剣士と記入した。
「確認しますね。 キッド・リターンズ様、年齢12歳、ジョブは魔剣士ですか?」
「腰にある剣が魔剣なんでね。」
「そう…ですか。 その年齢で魔剣を持っている方はあまりおられないので…では、キッド様はFランクからのスタートで…」
「あ、ちょっと待って! そういえばガイウスから紹介状を貰っていたんだった。」
俺は受付嬢にガイウスからの紹介状を渡した。
すると受付嬢は、何処かの部屋に走って行った。
そして数分後に背の高いおっさんを連れて来た。
元いた世界のテスタに似ている感じがするこの男は、多分ギルドマスターだろう。
「オレの名はヴェルガー、このギルドマスターだ。」
「初めまして、キッドと申します。」
俺は最初のイメージを良くする為に敬語で話したが、敬語は不要だと言われた。
「英雄ガイウスからの紹介状を持って来た奴なんて、今まで居なかったからな! お前は何者なんだ⁉」
「その説明が一番し難い…ガイウスからの紹介状には何が書いてあった?」
「キッドは俺が認める数少ない男だから宜しく頼むと…」
「あの野郎…もう少し言葉を足せよ。」
まぁ、物を考えるのが苦手そうな奴だったし仕方が無いか。
ただ、こんな文章で紹介状になるのかね?
俺は事情を尋ねられたので、以前いた世界の話を含めて全て話した。
「お前さんが生まれ変わる前は、あの勇者パーティーの剣聖飛鳥の兄で…別世界に転生してから兄妹と共に魔王を倒したと?」
「まぁ、こんな荒唐無稽な話は普通信じられないよな?」
「普通はな…何か討伐した証明の品とかあるか?」
「あぁ、これがある。」
俺はそう言ってマジックバックから、ベヒーモスの角とロンベルタイガーの革と尻尾を出した。
ギルドマスターも受付嬢も目を丸くしていた。
「ベヒーモスにロンベルタイガーだと⁉ これをお前が討伐したという証明は出来るか?」
「ベヒーモスはガイウスと共に狩ったから本人じゃないと証明は出来ないが…ロンベルタイガーの方は、ベルクドルフ商会のマルザリィと横にいる冒険者達が証人になってくれる。」
ギルドマスターは護衛の冒険者達に話を聞くと、俺の方に戻って来た。
そして手で頭を抱えながら言った。
「普通なら、子供に倒せる魔獣では無いんだがな…」
「だから言ったろ、前の世界の魔王に比べたら大した事が無いと。」
「俄かに信じられなかったが、どうやら本当の話だったんだな?」
「それで、俺はどのランクでベヒーモスとロンベルタイガーの賞金は幾らになる?」
ギルドマスターは俺の顔を見ながら、ベヒーモスの角とロンベルタイガーの革を見た。
そして顔を真っ赤にしてから考え込んでいると、答えが出たみたいで言った。
「本来ならSランクと言いたい所だが、Sランクはある特定の条件が無いとなれない決まりなのでな、キッド・リターンズはAランクとする!」
「Aランクか…まぁ妥当だな! それで、金額の方は?」
「金に不自由している服装には見えないが?」
「装備品が立派なだけで、金はあまりない。 前の世界の通貨がこちらでも使えたら、金には困らない金額はあるが…」
俺は前の世界の通貨を見せた。
「これは金貨で…こっちは白金貨か⁉」
「なぁ、形も模様も違うだろ?」
「なるほど…白金貨まであるのなら、こっちで使えたら金に困らないという話は本当だったか。 それで何故金が必要なんだ?」
「さっきも言ったろ、前の世界の女神からこの世界の魔王を倒した双子に合流しろと…」
「あぁ、そうだったな…となると、ゴルディシア大陸のカナイ村か。」
「そういう訳で急ぎたいからさっさと清算をしてくれないか? そうじゃなくても船旅だと急ぎたくても急げないからな。」
「わかった、清算を急がせよう。 その間はギルド内で待つか…街に繰り出してくれていても良い。」
俺はギルドマスターの言葉に従って街に出た。
その後に俺は厄介事に巻き込まれる事になるのだが…?
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現在の鍛治職人達が創り出した武器では、とても魔王討伐が可能とは思えない程に衰退してしまっていて、ならば…勇者以外に新たに鍛治職人を地球から呼び出そうとして、瑛夜が召喚されたのだった。
神々達も魔王を倒してくれる者達の選考は、疎かにはしていない。
勇者達は正義感の強い若者達が選ばれた。
そして鍛治職人には厳選なる選考の末に、在園路家第二十七代刀工士の瑛夜が呼び出されたのだった…のだが?
この辺は神の誤算的部分があった。
瑛斗は刀鍛冶士の家系だけど、刀匠ではなく、刀工である。
※この世界では、刀工は刀匠より下の立場という意味である。
刀造りの技術は有してはいるが、まだ師匠から認められた訳では無い。
瑛夜よりも上の刀匠を呼びたかったが、その刀匠の年齢が年配過ぎて耐えられないと思っての瑛斗だったのだった。
果たして瑛夜は、魔王を倒せられる様な武器を作り出す事は出来るのだろうか?
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