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第五章
第一話 手がかり…?(まだ主人公は出ません)
しおりを挟む 俺は槍を持った色黒の男達に捕まって、コイツ等のアジト?に向う為に森の中を歩かされていた。
そして大きな2本の大木の間で止まると、俺の前に歩いていた男が何かの言語を発していた。
すると中央に現れた小さな光が広がって行き、中には先程にはなかった家が出現したのだった。
「なるほど…結界の一種か?」
「詳しいな…そうだ、これは結界なので中で逃げ出そうとしても此処で阻まれるので覚えておけ!」
「へいへい!」
そして俺は、集落の中央で見張りと共に待たされると、目の前の大きな屋敷から装飾が派手な色黒の戦士が階段を降りて来た。
頭上には小型のドラゴンも一緒だった。
「貴様が報告にあった素性を明かさぬ少年か?」
「いや別に…素性を明かすのは構わないんだが、信じて貰えないと思ってな!」
「まずは…貴様が信用出来る者かどうかを見定める為に戦って貰おう!」
そう言って派手な装飾の戦士は槍を構えた。
その構えを見て俺は、逃げられないと思っていた。
何故なら、先程の奴等とは強さが別格だと感じたからだ。
俺は戦いの道を避けて何とか話し合いに持ち込めないか交渉してみた。
「戦いたくても武器が無いので…」
「その腰の物は飾りか?」
「はい、飾りです。 鞘から抜いてもこの通りの刀身が無い物で…」
「なるほどな…入り口に居た者が言ったと思うが、俺達は嘘や真実を見抜く精霊の加護がある。 俺らの前では嘘や偽りは通用しないぞ!」
「そうだったな…厄介だな!」
仕方ないから適当な調味料を刀身化させるか。
相手の素性が解らない以上、手札はなるべく隠した方が良いからな!
俺はソルトセイバーを発動すると、白い刀身が現れたのだった。
「面白い剣だな…魔剣の類か?」
「まぁ、そんなところだ。」
族長は槍を構えて向かって来た。
動きはかなり早い…が、この程度なら対処出来ると思って迎え撃った。
だが、族長の槍捌きはかなり早かった。
だけど、躱せない程では無かった。
「ほぉ…少年の割にはやるな!」
「そりゃどうも…」
「なら少し本気でやるかな!」
「お手柔らかに…」
族長の槍の速度が上がった…だが、この程度ならまだ躱せる余裕はある。
だが…たまに知った技を混ぜられて攻撃をされていた。
《これは落葉か? 次に秋雨で時雨…今度は炎刃か⁉》
全く知らない技だったら受けや受け流す事が出来ずに喰らったが、さすがにこれらの技をまともに受ける程、俺は未熟では無かった。
「ほぉ…これらを躱す事が出来たのは、姉弟子と英雄くらいな物だ!」
「そりゃどうも!」
この世界の英雄や姉弟子というのは、俺の居た世界の奴等の誰かなのか?
オリジナルだったとしても、あまりにもうちの流派の技と似過ぎている!
「ならば…本気を出そう! この技を凌げたら貴様の勝ちとする!」
「今迄も十分危なかったが、それ以上に本気を出されると…」
「行くぞ! 紅蓮院流槍術…」
「やっぱりうちの流派の技か!」
「炎牙崩蓮鎗!」
炎牙崩蓮鎗は百裂突きの技だ。
一度放てば軌道は変えられない!
俺は寸前で躱すと反撃に出た。
「紅蓮院流剣術・七之太刀 紅牙蓮華斬!」
「何だと⁉」
俺の放った連撃は、族長に全て叩きこんだ。
すると族長は、槍を持ったまま吹っ飛んで行った。
勝負は俺の勝ち…だが、族長がやられているにも拘らず、呆けている者は無く俺に向かって槍を構えている奴がいた。
普通ならリーダーがやられたら駆け寄る物なのだが、ここの戦士達は良く鍛えられていると思った。
そして族長は槍を杖代わりに立ち上がると、俺の胸倉を掴んで言って来た。
「何故、紅蓮院流剣術を知っている⁉」
「それは、俺の方が聞きたい! あんたは何故、うちの流派の技を知っている⁉」
「うちの流派の技だと! 俺はこの世界を救った英雄ダンと剣聖飛鳥から習った!」
「ちょ…ちょっと待て! 剣聖…誰だって?」
「剣聖飛鳥…俺の姉弟子だ!」
なるほど…確かにこの世界は俺の所縁のある場所だ。
まさか…妹の飛鳥の名前が出て来るとは思わなかった。
それにダンってまさか…洲河君の事か⁉
俺は頭を押さえて溜息を吐いた。
「おい貴様…質問に答えろ!」
「質問には答える。 代わりに俺の質問にも答えてくれ!」
俺は族長に連れられて、集会場の様な場所に案内をされた。
そして俺は話をした。
「俺の名前は、キッド・リターンズ…だがこの名前は転生後の名前で、元いた世界での名前は、紅蓮院喬介という。 あんたが先程言っていた飛鳥とは、紅蓮院飛鳥の事だろ?」
「あぁ、そうだ!」
「紅蓮院飛鳥は、俺の妹だ。」
「妹? 妹にしては年は貴様の方が幼く見えるが?」
「転生したといっただろ! 俺は元いた世界で事故に遭って死に、この世界とは別の世界に転生した。 そして俺はその世界で魔王を倒し、その世界の女神からこの世界の魔王をある者と協力して倒せという使命を受けてこの世界に来たんだ。」
「ふむ…嘘は言ってない様だな? なるほど…飛鳥の兄上殿だったか!」
嘘を吐く必要は無いからな。
しかし…コイツの話を聞くと信じられない事ばかりだな。
この世界に以前いた魔王サズンデスを倒したのは、異世界から召喚された者達で…そのメンバーが、慱君に翔也君、賢斗君に華奈ちゃんに飛鳥だったとは…?
飛鳥の奴が急に大人びた感じがしたのと、やたらと強くなっていたのはこの世界で魔王と戦っていたからか。
しかし…聞いていると何か矛盾を感じるな?
「なぁ、族長…えーと?」
「俺の名はガイウスだ!」
「ならガイウスに聞きたいんだが、飛鳥は確かに俺の元いた世界に帰って来た。 だが、お前達の言うダンという子はこの世界に残ったと言っていたが…飛鳥と共に慱君もいたがどういう事だ?」
「この世界に残ったダンとキッドのいう慱は同一人物だ。 ダンの話によると、もう1人の慱は…7歳の頃に狼の群れに襲われた時に慱が恐怖や痛みを回避する為に生み出したもう1つの人格という話だ。」
「ややこしい話だが理解はした。 なるほど…狼の群れに襲われる前と後であんなに性格が変わったのは、別な人格がいたという事か。 そして元の人格の慱君が元いた世界に帰って来て、もう1つの人格のダン君がこの世界に残ったのか…」
何か自分で言っていて頭がおかしくなってきそうだな…。
賢斗君と慱君がこの世界でホムンクルスを作りだして、ホムンクルスにダンという人格を移したという話か。
元いた世界では夢物語に聞こえるが、この世界ではホムンクルスはありなのか?
「なるほど、大体理解出来た! それで今度はこちらから質問だ!」
「あぁ…こちらの質問には答えて貰ったからな。」
「俺は前の世界の女神に、この世界には魔王が7人いてその内の1人は倒されたと聞いたが本当か?」
「あぁ、本当だ。」
「その魔王を倒したのは、双子の男女の男の方という話だが?」
「それも本当だ。 双子の名前は、男がリュカで女がリッカだ。」
「俺は前の世界の女神に、その双子の…リュカとリッカだっけか? そいつ等に協力して魔王を討伐しろと言われてこの世界に来たのだが…その2人にはどうやって会える?」
ガイウスは天井を見上げながら考えていた。
かつての仲間のクリアベールからは、リュカ達は旅に出ても頻繁に村に帰っているという話を聞いた。
村に行けば会えない事は無いのだが?
その村までは、別大陸なので相当時間が掛かる。
「リュカ達は、リッカという妹が聖女になる為の巡礼の旅に出ているのだが…結構な頻度で生まれ故郷のカナイ村という場所に帰っているという話だ。」
「結構な頻度で…という事は移動する魔法か何かを使っているのか?」
「あぁ、リュカは転移魔法の使い手だ。」
「転移魔法か…そういえばルットも使えていたな。」
「何の話だ?」
「前の世界での話だ。 それで…その故郷の村なんだが、ここからだとどうやって行ける?」
「少し待ってろ、地図を用意してやる!」
ガイウスはそう言うと、本棚から地図を取り出して広げて見せた。
「現在俺達がいる場所は、この場所でフレアニール大陸のエルヴ大森林で、リュカの故郷はゴルディシア大陸のカナイ村という場所だ。」
「別大陸にあるのか⁉ しかも…港からかなり離れているな。 このフレアニール大陸から、ゴルディシア大陸までは船でどれ位だ?」
「風にうまく乗れれば10日間で、それ以外なら2週間は掛かる。」
「それで、そのゴルディシア大陸からカナイ村という場所まで何日掛かる?」
「馬車で2週間だ!」
「合計1か月か…いや、待て! ガイウス、この世界の通貨があったら見せてくれないか?」
「ん? あぁ…これだ。」
ガイウスからこの世界の通貨を見せて貰った。
この世界と前の世界と共通しているのは、通貨が銅貨、銀貨、金貨、白金貨という点は一緒なのだが、懸念した通りに形や模様が違っていた。
「思った通りか…前の世界の通貨では、こっちの世界の通貨としては使えないな。 という事は、しばらくの間は路銀稼ぎから始まるのか…」
俺はガイウスを見た。
ガイウスは俺の視線に対して不思議そうにしていたが、その目的が解るとすぐに通貨を財布にしまったのだった。
「やっぱりタダではくれないか…」
「当たり前だ! ただ、何かと交換出来る物があれば考えてやっても良いが…」
「交換ねぇ? この集落で不足している調味料とかは無いか?」
「次の行商人の馬車が来るまでに…塩や砂糖が残り少ないな。」
「なら、これでどうだ?」
俺は左手から塩を、右手から砂糖を放出したのだった。
ガイウスはその光景を見て驚いた表情をした。
「なんだそれは? お前のスキルか⁉」
「あぁ、俺のスキルは調味料で…あらゆる調味料を出す事が出来る。」
「塩と砂糖以外には何を出せる?」
「何が欲しいかにもよるが…調味料なら大抵の物は出せるし、酒や一部の食材なんかも出せたりもする。」
「便利な能力だな! なら必要な物を出した分だけそれらを買い取ろう。 だが…」
「だが?」
「キッドよ、お前も前の世界では冒険者だったんだよな?」
「あぁ、ランクは最高ランクだったが…」
俺はそう言って前の世界のギルドカードを見せた。
するとガイウスはこの世界のギルドカードを見せてくれた。
通貨と同じで、やはりこの世界のギルドカードとは違う物だった。
そしてこの世界では前の世界のギルドカードは起動しなかった。
「エルヴ大森林から草原に戻ってから北に向かうと、サーディリアン聖王国という場所がある。 その街に冒険者ギルドがあるので登録をすると良い。」
「だな…今後の事を考えると、冒険者ギルドに登録した方が良いか!」
「それと、そこまでの道のりだが…現在集落にある馬車は出払っていてな、帰って来るのが先か…行商人の馬車が来るのが先かという感じだ。」
「ちなみにサーディリアン聖王国まで徒歩だと?」
「馬車で3日で、徒歩だと1週間は掛かる。 だが、キッドはこの世界での土地勘が無いだろ?」
「この世界に来てからまだ10日だからな!」
「だとすると、徒歩で行くと迷うぞ。」
「だろうな。 どうするかねぇ?」
集落の慌ただしい様子を見る限りでは、人を貸してくれというのは忍びない。
素直に移動手段を確保するまで待つのが正解か?
「ガイウス、この集落で滞在は可能か?」
「お前の滞在は許可してやろう。 だが、対価は払ってもらうぞ!」
「対価ってまさか…体で支払えって事か?」
「体で払うというのは正解だが…お前の様な邪な考えの意味ではないぞ! 労働力としてならという意味だ。 ここは働かざる者、喰うべからずだからな!」
「調味料と食材の提供では足らんか?」
「それでも構わないが…お前の腕だと、狩りの要員にも役立ちそうだしな!」
「報酬は出るのか?」
「それに見合った働きをすればな!」
こうして俺は、行商人の馬車が来るまでの間…このエルヴの集落で世話になる事になった。
目的の双子のリュカとリッカという子達に会えるのは、いつになるのだろうか?
そして大きな2本の大木の間で止まると、俺の前に歩いていた男が何かの言語を発していた。
すると中央に現れた小さな光が広がって行き、中には先程にはなかった家が出現したのだった。
「なるほど…結界の一種か?」
「詳しいな…そうだ、これは結界なので中で逃げ出そうとしても此処で阻まれるので覚えておけ!」
「へいへい!」
そして俺は、集落の中央で見張りと共に待たされると、目の前の大きな屋敷から装飾が派手な色黒の戦士が階段を降りて来た。
頭上には小型のドラゴンも一緒だった。
「貴様が報告にあった素性を明かさぬ少年か?」
「いや別に…素性を明かすのは構わないんだが、信じて貰えないと思ってな!」
「まずは…貴様が信用出来る者かどうかを見定める為に戦って貰おう!」
そう言って派手な装飾の戦士は槍を構えた。
その構えを見て俺は、逃げられないと思っていた。
何故なら、先程の奴等とは強さが別格だと感じたからだ。
俺は戦いの道を避けて何とか話し合いに持ち込めないか交渉してみた。
「戦いたくても武器が無いので…」
「その腰の物は飾りか?」
「はい、飾りです。 鞘から抜いてもこの通りの刀身が無い物で…」
「なるほどな…入り口に居た者が言ったと思うが、俺達は嘘や真実を見抜く精霊の加護がある。 俺らの前では嘘や偽りは通用しないぞ!」
「そうだったな…厄介だな!」
仕方ないから適当な調味料を刀身化させるか。
相手の素性が解らない以上、手札はなるべく隠した方が良いからな!
俺はソルトセイバーを発動すると、白い刀身が現れたのだった。
「面白い剣だな…魔剣の類か?」
「まぁ、そんなところだ。」
族長は槍を構えて向かって来た。
動きはかなり早い…が、この程度なら対処出来ると思って迎え撃った。
だが、族長の槍捌きはかなり早かった。
だけど、躱せない程では無かった。
「ほぉ…少年の割にはやるな!」
「そりゃどうも…」
「なら少し本気でやるかな!」
「お手柔らかに…」
族長の槍の速度が上がった…だが、この程度ならまだ躱せる余裕はある。
だが…たまに知った技を混ぜられて攻撃をされていた。
《これは落葉か? 次に秋雨で時雨…今度は炎刃か⁉》
全く知らない技だったら受けや受け流す事が出来ずに喰らったが、さすがにこれらの技をまともに受ける程、俺は未熟では無かった。
「ほぉ…これらを躱す事が出来たのは、姉弟子と英雄くらいな物だ!」
「そりゃどうも!」
この世界の英雄や姉弟子というのは、俺の居た世界の奴等の誰かなのか?
オリジナルだったとしても、あまりにもうちの流派の技と似過ぎている!
「ならば…本気を出そう! この技を凌げたら貴様の勝ちとする!」
「今迄も十分危なかったが、それ以上に本気を出されると…」
「行くぞ! 紅蓮院流槍術…」
「やっぱりうちの流派の技か!」
「炎牙崩蓮鎗!」
炎牙崩蓮鎗は百裂突きの技だ。
一度放てば軌道は変えられない!
俺は寸前で躱すと反撃に出た。
「紅蓮院流剣術・七之太刀 紅牙蓮華斬!」
「何だと⁉」
俺の放った連撃は、族長に全て叩きこんだ。
すると族長は、槍を持ったまま吹っ飛んで行った。
勝負は俺の勝ち…だが、族長がやられているにも拘らず、呆けている者は無く俺に向かって槍を構えている奴がいた。
普通ならリーダーがやられたら駆け寄る物なのだが、ここの戦士達は良く鍛えられていると思った。
そして族長は槍を杖代わりに立ち上がると、俺の胸倉を掴んで言って来た。
「何故、紅蓮院流剣術を知っている⁉」
「それは、俺の方が聞きたい! あんたは何故、うちの流派の技を知っている⁉」
「うちの流派の技だと! 俺はこの世界を救った英雄ダンと剣聖飛鳥から習った!」
「ちょ…ちょっと待て! 剣聖…誰だって?」
「剣聖飛鳥…俺の姉弟子だ!」
なるほど…確かにこの世界は俺の所縁のある場所だ。
まさか…妹の飛鳥の名前が出て来るとは思わなかった。
それにダンってまさか…洲河君の事か⁉
俺は頭を押さえて溜息を吐いた。
「おい貴様…質問に答えろ!」
「質問には答える。 代わりに俺の質問にも答えてくれ!」
俺は族長に連れられて、集会場の様な場所に案内をされた。
そして俺は話をした。
「俺の名前は、キッド・リターンズ…だがこの名前は転生後の名前で、元いた世界での名前は、紅蓮院喬介という。 あんたが先程言っていた飛鳥とは、紅蓮院飛鳥の事だろ?」
「あぁ、そうだ!」
「紅蓮院飛鳥は、俺の妹だ。」
「妹? 妹にしては年は貴様の方が幼く見えるが?」
「転生したといっただろ! 俺は元いた世界で事故に遭って死に、この世界とは別の世界に転生した。 そして俺はその世界で魔王を倒し、その世界の女神からこの世界の魔王をある者と協力して倒せという使命を受けてこの世界に来たんだ。」
「ふむ…嘘は言ってない様だな? なるほど…飛鳥の兄上殿だったか!」
嘘を吐く必要は無いからな。
しかし…コイツの話を聞くと信じられない事ばかりだな。
この世界に以前いた魔王サズンデスを倒したのは、異世界から召喚された者達で…そのメンバーが、慱君に翔也君、賢斗君に華奈ちゃんに飛鳥だったとは…?
飛鳥の奴が急に大人びた感じがしたのと、やたらと強くなっていたのはこの世界で魔王と戦っていたからか。
しかし…聞いていると何か矛盾を感じるな?
「なぁ、族長…えーと?」
「俺の名はガイウスだ!」
「ならガイウスに聞きたいんだが、飛鳥は確かに俺の元いた世界に帰って来た。 だが、お前達の言うダンという子はこの世界に残ったと言っていたが…飛鳥と共に慱君もいたがどういう事だ?」
「この世界に残ったダンとキッドのいう慱は同一人物だ。 ダンの話によると、もう1人の慱は…7歳の頃に狼の群れに襲われた時に慱が恐怖や痛みを回避する為に生み出したもう1つの人格という話だ。」
「ややこしい話だが理解はした。 なるほど…狼の群れに襲われる前と後であんなに性格が変わったのは、別な人格がいたという事か。 そして元の人格の慱君が元いた世界に帰って来て、もう1つの人格のダン君がこの世界に残ったのか…」
何か自分で言っていて頭がおかしくなってきそうだな…。
賢斗君と慱君がこの世界でホムンクルスを作りだして、ホムンクルスにダンという人格を移したという話か。
元いた世界では夢物語に聞こえるが、この世界ではホムンクルスはありなのか?
「なるほど、大体理解出来た! それで今度はこちらから質問だ!」
「あぁ…こちらの質問には答えて貰ったからな。」
「俺は前の世界の女神に、この世界には魔王が7人いてその内の1人は倒されたと聞いたが本当か?」
「あぁ、本当だ。」
「その魔王を倒したのは、双子の男女の男の方という話だが?」
「それも本当だ。 双子の名前は、男がリュカで女がリッカだ。」
「俺は前の世界の女神に、その双子の…リュカとリッカだっけか? そいつ等に協力して魔王を討伐しろと言われてこの世界に来たのだが…その2人にはどうやって会える?」
ガイウスは天井を見上げながら考えていた。
かつての仲間のクリアベールからは、リュカ達は旅に出ても頻繁に村に帰っているという話を聞いた。
村に行けば会えない事は無いのだが?
その村までは、別大陸なので相当時間が掛かる。
「リュカ達は、リッカという妹が聖女になる為の巡礼の旅に出ているのだが…結構な頻度で生まれ故郷のカナイ村という場所に帰っているという話だ。」
「結構な頻度で…という事は移動する魔法か何かを使っているのか?」
「あぁ、リュカは転移魔法の使い手だ。」
「転移魔法か…そういえばルットも使えていたな。」
「何の話だ?」
「前の世界での話だ。 それで…その故郷の村なんだが、ここからだとどうやって行ける?」
「少し待ってろ、地図を用意してやる!」
ガイウスはそう言うと、本棚から地図を取り出して広げて見せた。
「現在俺達がいる場所は、この場所でフレアニール大陸のエルヴ大森林で、リュカの故郷はゴルディシア大陸のカナイ村という場所だ。」
「別大陸にあるのか⁉ しかも…港からかなり離れているな。 このフレアニール大陸から、ゴルディシア大陸までは船でどれ位だ?」
「風にうまく乗れれば10日間で、それ以外なら2週間は掛かる。」
「それで、そのゴルディシア大陸からカナイ村という場所まで何日掛かる?」
「馬車で2週間だ!」
「合計1か月か…いや、待て! ガイウス、この世界の通貨があったら見せてくれないか?」
「ん? あぁ…これだ。」
ガイウスからこの世界の通貨を見せて貰った。
この世界と前の世界と共通しているのは、通貨が銅貨、銀貨、金貨、白金貨という点は一緒なのだが、懸念した通りに形や模様が違っていた。
「思った通りか…前の世界の通貨では、こっちの世界の通貨としては使えないな。 という事は、しばらくの間は路銀稼ぎから始まるのか…」
俺はガイウスを見た。
ガイウスは俺の視線に対して不思議そうにしていたが、その目的が解るとすぐに通貨を財布にしまったのだった。
「やっぱりタダではくれないか…」
「当たり前だ! ただ、何かと交換出来る物があれば考えてやっても良いが…」
「交換ねぇ? この集落で不足している調味料とかは無いか?」
「次の行商人の馬車が来るまでに…塩や砂糖が残り少ないな。」
「なら、これでどうだ?」
俺は左手から塩を、右手から砂糖を放出したのだった。
ガイウスはその光景を見て驚いた表情をした。
「なんだそれは? お前のスキルか⁉」
「あぁ、俺のスキルは調味料で…あらゆる調味料を出す事が出来る。」
「塩と砂糖以外には何を出せる?」
「何が欲しいかにもよるが…調味料なら大抵の物は出せるし、酒や一部の食材なんかも出せたりもする。」
「便利な能力だな! なら必要な物を出した分だけそれらを買い取ろう。 だが…」
「だが?」
「キッドよ、お前も前の世界では冒険者だったんだよな?」
「あぁ、ランクは最高ランクだったが…」
俺はそう言って前の世界のギルドカードを見せた。
するとガイウスはこの世界のギルドカードを見せてくれた。
通貨と同じで、やはりこの世界のギルドカードとは違う物だった。
そしてこの世界では前の世界のギルドカードは起動しなかった。
「エルヴ大森林から草原に戻ってから北に向かうと、サーディリアン聖王国という場所がある。 その街に冒険者ギルドがあるので登録をすると良い。」
「だな…今後の事を考えると、冒険者ギルドに登録した方が良いか!」
「それと、そこまでの道のりだが…現在集落にある馬車は出払っていてな、帰って来るのが先か…行商人の馬車が来るのが先かという感じだ。」
「ちなみにサーディリアン聖王国まで徒歩だと?」
「馬車で3日で、徒歩だと1週間は掛かる。 だが、キッドはこの世界での土地勘が無いだろ?」
「この世界に来てからまだ10日だからな!」
「だとすると、徒歩で行くと迷うぞ。」
「だろうな。 どうするかねぇ?」
集落の慌ただしい様子を見る限りでは、人を貸してくれというのは忍びない。
素直に移動手段を確保するまで待つのが正解か?
「ガイウス、この集落で滞在は可能か?」
「お前の滞在は許可してやろう。 だが、対価は払ってもらうぞ!」
「対価ってまさか…体で支払えって事か?」
「体で払うというのは正解だが…お前の様な邪な考えの意味ではないぞ! 労働力としてならという意味だ。 ここは働かざる者、喰うべからずだからな!」
「調味料と食材の提供では足らんか?」
「それでも構わないが…お前の腕だと、狩りの要員にも役立ちそうだしな!」
「報酬は出るのか?」
「それに見合った働きをすればな!」
こうして俺は、行商人の馬車が来るまでの間…このエルヴの集落で世話になる事になった。
目的の双子のリュカとリッカという子達に会えるのは、いつになるのだろうか?
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