聖女になんかなりたくない！ 聖女認定される前に…私はバックれたいと思います。

新天地の章

第八十一話

　私達はこの大陸で人が他の大陸に移住したくなる発生源を見つけた。

　其処には地面に巨大なクレーターがあり、其処から瘴気が噴き出されて蔓延していたのだった。

　「まるで伝承にある地獄に通じる穴の様な感じね？」

　「その認識は間違いないと思います。これでは大気が侵食されるのが分かりますね。」

　「リゾート地で地形を弄ったのは無関係？」

　「いえ、そうとも言い切れないでしょう。地形を弄った際に地脈のツボに影響を与えて堰き止めた結果、行き場の失ったものがこの場に集結して…という感じでしょうか？」

　これを鎮めることが出来れば、この大陸も元に戻るかもしれないけど…？

　穢れの浄化をするよりも骨が折れるのは目に見えている。

　土地の浄化をするのとは訳が違うからだ。

　「穴の底に何かいますね？」

　「なら瘴気を生み出しているのはそいつが原因？」

　「いえ…瘴気が穴の底で纏まって出来た何かという感じでしょうか？」

　「つまりは瘴気の塊みたいなものかぁ。大きな岩みたいなもので攻撃をしてこなければ良いんだけど…」

　「いえ、何か蠢いていますね。魔物…いえ、魔獣か何かと思った方が良いかも知れません。」

　私には穴の底に蠢く様なものは見えなかった。

　ならば動き出す前に殲滅させる！

　「先手必勝！セイントスプレッド‼︎」

　私は大量の聖水で作り出した水を穴の中に放り込んだ。

　瘴気が呼吸をしているかどうかは分からないけど、穴の中に聖水を満たせば溺死…させられるかな？

　「ある意味有効な手ではあると思いますね、聖水の効果は瘴気を払うことが出来ますから…」

　「中で何が蠢いているかわからないけど、戦いを回避出来るのであればそれに越したことは無いからね。」

　聖水が瘴気を払っている…のなら、水が濁ってきているのはどういう事だろう？

　まさか瘴気の方が優勢なのかな？

　「お前…何をしている⁉︎」

　私は声がした方を振り向くと、其処には私と同じ年頃の少年が立っていた。

　この大陸に住んでいた者は全て逃げ出した訳じゃなかったんだ？

　そしてこの少年こそが後に私にとって生涯の掛け替えのない人物になるのだった。

　…多分ね？