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自由なスローライフの章

第七十四話

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 私の言う罪悪感が一切湧かない奴隷になるツテとは?

 無能の烙印を押されて侯爵家の中で幼少の頃から私にされて来た事を代わりに受けている者を思い出した。

 そう、テリガン侯爵家の長女リアナの事だった。

 現在のリアナは…自殺でもしてない限りは幼少の頃からの虐待をされている筈。

 私の時は両親と姉と使用人達が含まれていたが、使用人達は疫病で死んだという話だし、今は両親からの攻撃しかされていない筈?

 そんな状況下から救い出せば…リアナも感謝して来る事はないだろうけど、少しは恩を感じるだろう。

 以前は挑発した様な別れ方をしたけど、不憫になって迎えに来たと言えば手をとってくれるだろう。

 まぁ、その手を取った瞬間に奴隷として売られる訳なんだけど…少なくともテリガン侯爵家で一生を過ごすことに比べれば遥かにマシだろうね。

 まぁ、どんな変態の主人に買われていくかは分からないけど…?

 少なくとも両親の虐待や暴力に比べたら、遥かに良い待遇で可愛がってくれるだろう。

 それにリアナが死んだところで私の全く心は傷まない上にお金まで手に入るという…一石二鳥な話だからだ。

 私はSランク取得の為に魔獣を狩まくったお陰で、レベルが信じられない位に上昇していたので…転移魔法も使える様になっていた。

 私は奴隷商の商人と打ち合わせをした後に、テリガン侯爵家の上空に転移した。

 「相も変わらず荒れ果てているわね?」

 「マスターがこの地で行ったのは土地の浄化であって豊穣の実りではありませんからね。」

 「元父親はその辺の事を勘違いしている節があったけど…その皺寄せがリアナに向かっている筈なんだけど?」

 私は姿消しの魔法を発動してから浮遊魔法で、かつて放り込まれていた牢獄の様な部屋を覗いてみた。

 すると壁に設置された鉄の鎖で繋がれていたリアナの姿を発見した。

 私の時はここまで酷くは無かったけど…裕福なお嬢様から一転して奴隷の様な扱いを受けているリアナにとっては地獄の様な状態だろう。

 その所為でリアナの目の輝きは殆ど失われていた。

 「傷の具合から見て…今日の分は受けたみたいだね。」

 「マスターは幼い頃からこんな仕打ちをされていたのですか…」

 「ほぼ毎日だったわ…家族が旅行に行っていた時も使用人に甚振られていたし。」

 あの頃の事は思い出したくもない。

 私は部屋に入ってから遮音結界と不可侵結界を施してから姿消しの魔法を解除した。

 「まるでかつての私を見ている様ね。」

 「リ…アラ?」

 「生きていたのねリアナ。」

 私の姿を見てリアナは意識を取り戻し始めた。

 そして次は私に向かって来た。

 「リアラ、豊穣の実りを施したんじゃ無かったの⁉︎貴女が現れた以降は全く作物が育たなくて…」

 「私は土地に蔓延っていた穢れを浄化しただけで、豊穣の恵みなんか一切施してなんかいないわよ?」

 「リアラが中途半端な事をしたお陰で作物が育たないと言って、私に振るう暴力が増えていったのよ‼︎」

 「そんなのは元父親が勝手に勘違いしているだけだし…それに暴力を振るわれているって言っても元両親くらいだから良いじゃん!私の時は元両親と使用人達とリアナに毎日の様に暴力を振る舞われていたんだから、それに比べたらはるかに楽でしょ?」

 …と、あまり過去の話を持ち出して言いたい放題言っていると計画が狂って来るから、此処は話を進める為に。

 「まぁ、最初の頃はザマァ見ろと思って傍観していたけど…リアナと私の違いとしては回復魔法が使えない事だから様子を見に来たんだけど…」

 私はリアナに回復魔法を施してから、用意していた野菜のスープとチーズやパンを出した。

 そして拘束を解いてあげると、リアナは食事にがっつき始めた。

 リアナは食事を平らげると、少し落ち着いたのか話をして来た。

 「様子を見に来たと言っていたみたいだけど、こんな施しをされただけではただの気休めよ…此処から出られなければ。」

 「此処から脱出する為に誘いに来たんだけどね。貴族の暮らしは戻れないけど…新天地でやり直せる機会を設けてあげようと思ってね。」

 「新天地ねぇ?まぁ、此処から抜け出せるのならどこでも良いんだけど…」

 「リアナを此処から救い出して、私の用意した船である者達と一緒に別大陸に行ける様に手配をしているのよ。この大陸にいたら…この部屋から逃げ出したリアナを元父親が何が何でも捕らえに来るでしょうからね。」

 「行き先は何処よ?」

 「北の大地のフェンブラート大陸の何処かということくらいしか?」

 「正確な場所が分からないのなら、とてもじゃないけど怪しくてついて行く気がしないわ!」

 「なら此処にいて暴力を奮われる毎日に戻りたいの?リアナが自殺をするか死なない限りは永遠にこの地獄が続くわよ?」

 こうまで言われればリアナの性格なら私の案には乗っかって来る筈。

 リアナは目先の欲に簡単に縋り付く性格だから断る様な真似はしない筈?

 「分かったわ、なら私をとっととこの場から救ってよ!」

 相変わらずこの姉は昔から態度がデカいけど、私は我慢して従うフリをした。

 この先に待っているのは、下手すると此処より過酷な地獄かもしれないからだ。

 私はリアナの手を取ってから転移魔法でトルーデ港に着いた。

 久々の明かりのせいか目が眩んでいる様子だったけど、あの部屋から開放されてとっても良い笑顔をしていた。

 「リアナこっちよ、この先の港で船が待っているから。」

 「一等客船とかじゃない限り乗る気はしないわよ!」

 この女は何処まで身勝手なんだろうか?

 まぁ、別に良いか。

 私はフェイクで変身した姿になってから奴隷商の商人に会う為に船に行った。

 すると船から体格に良い男が出てきてリアナの腕を掴んでいた。

 「ちょっと、どういう事よ!」

 「こんな感じのイキがいい侯爵令嬢をお渡し致します。幾らになりますか?」

 奴隷商人はリアナの顔や体を見てから金貨を寄越してきた。

 あの頃のリアナに比べたら多少痩せてはいるけど、私の時の様な体型では無いから少し色を付けてくれたみたいだった。

 「結構良い金額で売れたわ!」

 「売れたって…」

 「リアナを売ったのよ奴隷商にね!あまり逆らう様な真似をすると…あの部屋と同じ目に遭うから気をつける事ね!」

 「新天地に連れて行くというには嘘だったの⁉︎」

 「新天地で北の大地の方に行くのは確かだよ。リアナを買う人がどんな人かまでは知らないけどね。」

 「リアラ~~~~~‼︎」

 「せいぜい従順でお淑やかにしておく事ね。そうすれば…ひもじい思いをしなくても良い生活を送れる筈よ、どんな変態に買われていくかは分からないけど。」

 私はリアナに向かってハンカチをヒラヒラさせながら別れを告げた。

 リアナはそのまま船の奥の方に連れて行かれて箱に放り込まれた。

 テリガン侯爵家から救い出してあげたんだから感謝して欲しいし、私もリアナには感謝しているからね。

 だってリアナのお陰で大金が手に入った訳だし…。

 「マスターの境遇を考えればこれで良いのかもしれませんが…やっている事は決して褒められたものでは無いですよ。」

 「それなら…リアナの今後に対して祈りでもしてあげるわ!リアナのお陰で儲けさせて貰ったし、船に馬車を持ち込めるのだからね。」

 「それでマスターは次はどちらに向かうおつもりで?」

 「ゾイディック大陸には行かないし、北の大地に行く気もないので…南の大陸にでも行ってバカンスでも楽しもうかしら?」

 私は南大陸のオーランダスに向かう船に乗った。

 そしてそのオーランダスで私は運命的な人と出会う事になる…筈?

 ~次回はその後のテリガン侯爵家をお楽しみに!~
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