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怪盗リアラの章

第二十九話

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 あれから1週間が経った。

 攻撃魔法を学ばされているんだけど、私はこの世界では珍しい全属性持ちだったのでやる事が多すぎで覚えるのが大変だった。

 そして同時に進行しているのが怪盗リアラとしての活動で、薬草の種をパクったり、厨房の菓子をパクってガラス瓶を入手したりと。

 調合機材に関してはテルミガンが代用してくれるので必要は無いんだけど、他にもう1つ肝心な物を入手するのを忘れていた。

 それはこの世界での通貨だった。

 ただ…流石に通貨をパクるのは薬草園の種をパクるのとは違って罪悪感が凄まじい。

 神殿内にはお布施や寄付で集まった通貨の金庫室はあるんだけど、この部屋だけは警備が厳重過ぎて侵入する事自体が不可能に近い。

 相変わらず、私の育てた薬草や畑の野菜類の売り上げを司祭から貰えるけど、大した金額は貰えない。

 なので手持ちのお金では神殿からバックれたとしても大した生活には程遠かった。

 「でもなぁ…流石に金庫室の中の金をパクったら絶対にバレるだろうしなぁ?」

 薬草園の保管室の種とは違って、金庫室の金は厳重に計算して管理されている為に銅貨1枚でもなくなればすぐにバレる。

 私は今迄に学んだ魔法技術である実験を計画した。

 金庫室を警備している神殿騎士達に魔法を放ってから行動不能に出来れば、中に潜入してお金をパクれば問題ないと思ったのだ。

 パクった後に収納魔法に入れておけばバレる事はない。

 私が収納魔法を取得しているのを知っているのはテルミガンしか知らない。

 更に魔法で行動不能にされてから盗まれたとしても、その責任は警備をしている神殿騎士になすり付けることが出来る!

 私は念の為に成功率はどれくらいなのかをテルミガンに聞いてみた。

 《マスター…流石にそれは人の道に外れた行為だとは思いませんか?薬草園の種に関しては、管理がズサンでズボラなので自業自得で済むでしょうが…》

 「でも、私の今までの功績を考えれば…司祭様から貰った報酬は少な過ぎないんじゃないかな?」

 《確かにマスターが育てた野菜や薬草の値段が報酬と釣り合ってないのは分かりますが…それでも薬草の種を貰うというのとは訳が違いますよ。》

 薬草の種が良くてお金がダメな理由がよくわからない。

 私は別に金庫室の中のお金をすべて盗むというわけではない。

 今までに働いた分の正当な報酬の引かれた分を回収するだけなのだから。

 《それに神殿騎士の鎧には魔法を除外する効果のある魔道具を所持しておりますので、例えマスターの魔法がどれほどの威力があるかは分かりませんが…魔法の効果があったとしても、効果が切れるのも早いかも知れませんから成功率は低いと思った方が良いですよ。》

 そうだった…魔法の効果で行動不能にしても、耐性がどの程度かによって意識が早く覚める場合もあるんだった。

 行動不能にして金庫室内で物色している時に目覚められたら厄介だし、リスクは犯せられないかなぁ?

 《幸い、薬草園から拝借した種はゴッソリあるのですから…それを土魔法と樹魔法で早めに成長させてから薬草を作った後にポーションを作って店に売るといった方が危険を犯す必要はなくて安全な方法で稼げると思いますよ。捕まったりしたらマスターの野望は一生叶わない事になりませんからね。》

 聖女の旅に出るのを回避する話なのか、肉を食べるという目的が潰えるのかは分からないけど、確かに捕まったらその可能性はある。

 お金…諦めるしか無いのかなぁ?
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