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第三章

第一話 元勇者パーティーは?

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 元勇者パーティーのトール達は、テイト達が出発する時まで戻る事は無かったので…もしか死んだのかと思っていたら?

 「クソッ!このダンジョンは何階層迄あるんだ⁉」
 「今で三層目よね?」
 「敵もおなつよ位だし、さっきからレベルが上がってはいるけど。」
 「テイト達が俺達が宿で爺さん達にボコボコにされていた位の時間で戻って来れたんだから、その内に着くだろう!」

 トール達は生きていた。
 だが、トール達は何処にいるのだろうか?

 「この最下層にクラスチェンジが出来る石碑があるんだよな?」
 「俺達のレベルだと、ここのダンジョンの敵の強さは苦戦するレベルだが、テイト達のレベルならこのダンジョンのレベルは低いのだろ?」
 「あの手前の扉の先でクラスチェンジを果たしたって事は無いかな?」
 「あの扉の先のスプリガンを見たろ?1体かと思ったら、数に合わせて増える上にあの強さを考えると、テイト達でも恐らく勝てないから、奴等はこのダンジョンを利用したんだ!」

 …という勘違いをしていた。
 火山洞窟には2種類ある。
 1つはテイト達が利用したクラスチェンジの石碑と…?
 もう1つは、ダンジョンの最下層に眠る石碑の2種類だった。
 テイト達が利用した石碑の場所は上級者用で、トール達の利用しているダンジョンは中級者用だった。
 上級者用は、扉を開ければいきなりボス戦。
 中級者用は、上級者用では倒せない者達がダンジョン攻略をしてレベルを上げて挑む用となっていた。
 その為に中級者用のダンジョンは10階層あり、その階層によって敵の強さが違っているのだ。
 1階層目にはレベル10位までの敵しか出ないが、2層目にはレベル20位までで、3階層目にはレベル30位までの魔物がいる。
 トール達のレベルは20代後半なので、この階層が同じ位か少し上の強さだった。
 なので当然、この状態で4階層目に行くと、全滅する可能性があるのであった。
 そしてこれは上級者用と中級者用に関係なく、石碑のある場所はレベル100位の守護者が待ち構えている。
 だから、相当レベル上げに精を出さないと…?

 「こいつ、とてつよだ!」
 「なんなんだ、このダンジョンは⁉」

 …という事になる。
 先程からトール達が敵の強さを言っている、おなつよとかとてつよというのは強さのランクがある。
 鑑定魔法にもランクがあり、上級の鑑定魔法だと相手のレベルや弱点が表示されるのだが…?
 下級や初心者の鑑定魔法だと、敵の強さが漠然と表示されるのである。

 1.計り知れない強さだ!…勝てるかどうかはほぼ博打。強い奴もいれば、相性によっては勝てる場合もあるが…?
 2.とてもとても強い相手だ!…ほぼ、歯が立ちません。
 3.とても強い相手だ!…工夫次第では勝てる可能性がある。
 4.強そうな相手だ!…自分より若干上の相手なので、勝てない事は無い。
 5.同じ位の強さだ!…ソロなら五分、パーティーなら問題ない。
 6.丁度良い強さだ!…ソロでも撃破可能でパーティーだと楽勝。
 7.弱そうな相手だ!…まず勝てない事は無いレベル。
 8.練習相手にすらならない!…倒しても経験値が得られないレベル。

 なら、このダンジョンはレベル上げをするのには最適なダンジョンではないか?
 そう思う者もいるだろうが、このダンジョンは他のダンジョンと違い…ドロップアイテムが全く出ない上に宝箱も無い。
 セーフティーゾーンという、魔物が近寄って来ない魔法陣が張ってある場所がない。
 回復の泉という、ポーションが湧き出る泉もない。
 つまりこのダンジョンは、レベル上げには向いてはいるが…ドロップアイテムが出ないので、入れば入る程に武具の消費やアイテムを消費する為に、赤字のダンジョンとして知れ渡っている為に人気が無いのだった。
 それを知らないトール達は、必死にセーフティーゾーンを探していたのだが?

 「このダンジョンは何かおかしいぞ⁉」
 「セーフティーゾーンも回復の泉もない!」
 「クラスチェンジが出来るから、試練向けのダンジョンなんだろう。」
 「…という事は、自力で進めという感じなのね。」

 更に…セーブポイントと呼ばれるダンジョンの転送装置もない為に、途中でダンジョンを離脱してもその場所から再開できるという事もない。
 入る時は1層から入り、どんなに下層まで行っても戻る時は来た道を戻るしかないのだった。

 「おい、武器の破損やアイテムの備蓄はどうなっている?」
 「武器はまだ問題はないが、アイテムや食料が心もとなくなっている。」
 「こんな時にテイトが居ればな…」
 「いない奴の事を言っても仕方ないでしょ!それにテイトは、私達がクラスチェンジしたら戻って来ると言っていたんだし!」

 そんな事は言ってない。
 獲得経験値数〇倍の効果を得たいのなら、せめてクラスチェンジをして来いと言ってあっただけで、戻るなんて一言も言ってはいない。
 どうやらトール達の中で都合良く変換されている様だった。

 「ちっ…仕方ない!一度戻るぞ‼」
 「あぁ、一度戻ってからテイトにダンジョンの事を吐かせよう!」
 「テイト達はあんな短期間で戻って来れたのだし、何か裏道でもあるのよきっと!」
 
 トール達は、まだ自分達の方が立場が上の様な発言をしていた。
 どこまで行っても、どうしようもない奴等だった。
 トール達は何とかダンジョンから帰還して、テイト達を探したが見当たらなかった。
 そして気乗りはしないが、老夫婦の元に行きテイトの所在を尋ねた。

 「テイトならしばらくの間はこの村で滞在をすると言っていたから、この村の冒険者ギルドの依頼を請けてくると行って出掛けておるぞ!」
 「…という事は、アイツ等はまだこの村にいるのか!なら無理に探す必要もないな。」

 テイト達はとっくにテオドール温泉村から旅立っていた。
 何故、老夫婦がテイト達がまだこの村にいるという嘘を言ったのかというと、テイトと事前に打ち合わせをしておいたからだった。
 下手に旅立った事を知られたら、トール達はまた追い掛けてきてテイト達が迷惑をすると考えていた。
 ならばいない理由を、ギルドの依頼で周辺に出掛けている事にすれば、トール達を足止め出来ると踏んでいたのだった。

 「テイトには会えないが、この村にいるという事なら…」
 「ダンジョンの事を吐かせようと思っていたけど、いないのなら仕方ないわね。」
 「とりあえずアイテムを揃えてダンジョンに戻るぞ!すぐにクラスチェンジをしてやる!」

 レベル30手前が何を言っているんだか…!
 3層如きで歯が立たない魔物に遭遇していて倒せない癖に、10層のクリアなんて1年あっても足りはしない。
 トール達は食料とアイテムを揃えてから、再びダンジョンに突入した。

 さて、トール達は無事にクラスチェンジが出来るのだろうか?
 そしてテイト達がいない事に気付くのはいつになるのだろうか?
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