特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス

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第一章

第十八話 僕の言い分と親達の言い分

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 僕はトール達の親達に開口一番言われたのは?

 「テイト、よくお前だけ村に帰って来れたな‼︎」

 …だった。
 それからは僕にギャーギャーと罵声を浴びせているので、僕は耳栓をしながら武器の手入れをしていた。
 そしてようやく静かになったと思ってから耳栓を外すと、トールの親が皆を代表して言った。

 「噂では、お前の所為でトールは勇者を剥奪されたという話だが⁉︎」

 僕の所為…というのは、あながちハズレではない。
 僕がパーティーから離脱した所為で、トール達のレベルが下がって勇者を剥奪されたので間違ってはいない。
 だが、そもそもトール達が僕を追い出さなければこうならなかった訳だし、僕だけ責められるのは筋違いだった。

 「はぁ…何も知らない癖に知った様な口を聞くな‼僕だけがこの村に帰った理由が聞きたいのか?それはな、長年一緒にいたのに、トール達は僕の事を一切仲間として見ていなかった事だよ‼」
 「そ…それはどういう事だ⁉」
 「息子の活躍の新聞なら捨てずに持っているよな?」
 「あぁ、全て残してあるが…」
 「その記事に1つでも僕の名前が書いてあるのか確認してみろ!それが答えだよ‼」
 
 するとカルネアの父親が家に帰って、新聞を持って帰って来た。
 その新聞を広げて親達は目を通したが、僕の名前が書かれている項目は1つも無かった。

 「トールに言われたのはこうだ!テイトは戦いに参加していないサポーターで、戦いに参加していない奴の名前を書く必要はない!…と僕はトールにハッキリそう言われたんだ!」
 「そりゃあ…戦いに参加してなければ、名前が載らないのは当然だろう?」
 「僕はサポーター業務をしながら、パーティースキルを発動していた所為でレベルが上がらなくても、仲間だと思っていてくれる…そしていつかは!そう思っていたんだけど、ある程度レベルが上がった時に、お前のスキルはもう必要ないから出て行けと言われたんだ‼」
 「だが、テイトのスキルは…仲間の経験値を大幅に上げる物だよな?そしてその経験値は、固定する事も出来たのではないか?」
 「あぁ、出来たよ。」
 「なら、何故だ‼」
 「その新聞だよ。最初は何かの手違いで名前が書いて居ないと思っていた。次に出された新聞には、メンバー紹介の欄があっても僕の名前が書かれていなかった。それ以降の新聞を全て確認したが、何処にも僕の名前が書かれていなかった。それでパーティーを追い出されて、何故あいつ等に僕のスキルの恩恵を授けなければならないんだ‼」

 どんなに待遇が悪くても、仲間扱いをされていたら考えてやっても良かった。
 だが5つ目の新聞を見ても、どこにも僕の名前が書かれていなかったのを見て恩恵を譲渡するのは辞めたんだ。

 「それからは僕は僕だけのパーティーを結成して旅をする事にしたんだ。話は以上だ‼」
 「なら、そのパーティーを解散してからテイトは息子のパーティーに戻れ‼」
 「何を馬鹿な事を言っているんだよ!あそこ迄の扱いをされて戻る訳ねぇだろ!頭おかしいのか?」
 「テイトが抜けた所為でトールが勇者を剥奪されて、そのパーティーの親達は周りから非難を浴び続けていたんだよ!」
 「そんなもん、出来損ないの息子の自業自得だろ?僕が攻められる筋合いじゃない‼」
 「お前が息子たちの元に戻ってパーティーでスキルを使えば、また息子は勇者に返り咲くだろう。その為に役に立って見せろ‼」
 「それこそ冗談じゃない!さっきまでの話を聞いていなかったのか?この村から出発する時に一緒に頑張ろう…最初はそう言われたよ。だがな、アイツらは出世する度に態度がデカくなり、僕に酷い扱いをする様になった。そんな所に戻る事は一生ない‼」
 
 この親共は一体何を言っているんだ?
 あ…そうか、汚名返上の為に息子達に勇者に返り咲かしてから、その恩恵で優遇される為にか!
 だから僕にトール達の元に戻れと言っていたのか。

 「わかったよ、良いよ戻ってあげても。」
 「お、そうか!なら今すぐ…」
 「ただし、僕も冒険者なので依頼を出させて貰う。その依頼の条件に達していない場合は受理しないのでそのつもりで。」
 「なら、その条件を言ってみろ!」
 「依頼の条件、報酬は白金貨1000枚で前金は白金貨700枚で、残りは成功報酬で白金貨300枚で受けてあげますよ。」
 「は…白金貨だと⁉」
 「言っておきますが、僕のレベルもランクもトール達より遥か上に居ますからね。上位ランカーが下位ランカーの依頼を請けるにはそれ相応の金額が必要ですが、払えますか?」

 払える訳が無いと思っていて吹っ掛けたのだった。
 白金貨1000枚なんて、大国の年間予算位の金額だから、息子達の恩恵で稼げたとはいってもそこまでの金額を持っている訳はなかった。

 「どうします?払いますか?払えませんか?」
 「そんな金額…ある訳ないだろ‼」
 「では、交渉決裂です。お帰り下さい。」
 「だが、息子たちが再び勇者に返り咲けば!」
 「そうですか、ではトール達に頑張って勇者に返り咲いて下さいと伝えておいて下さい。僕達は僕達で旅を続けますので。」
 
 僕はそう言うと、離れた所で聞いていたブレイドとダーネリアとルーナリアは、ぷっと吹いた。
 僕は確かにそう伝えた筈なのに、トール達の親達はまだ帰ろうとしなかった。
 あれ?僕の意図は伝えたと思ったんだけどな?

 「おかえりはあちらですよ、トール達にあったら頑張って勇者に返り咲いて下さいと伝えて下さいね。」
 「勇者に返り咲く為にはテイトの力が必要だと何度も…」
 「では報酬を下さい!僕も冒険者なので、報酬が無いと動きませんよ。」
 「だから、息子が勇者に返り咲いたら支払うと…」
 「誰が支払うんですか?まさかトールが…とか言いませんよね?アイツが支払う訳ないでしょ!」
 「いや、私が説得をして必ず支払わせ…」
 「ちゃんと話を聞いていなかったみたいですね。僕は報酬の内、前金で白金貨700枚と言ったんですよ。成功報酬で白金貨1000枚といった訳ではありませんので…ちゃんと聞いてました?」

 さて、さすがにここまで聞けばこの馬鹿な親達も理解が出来ただろう。
 これ以上まだ何かを言うつもりなら…あの手を使ってみるか!

 「前金何か…とても払える金額じゃない!」
 「なら話は終わりですね。お帰り下さい!」
 「息子が勇者に返り咲けば、またこの村にも旅人が訪れるんだ!」
 「そして自分は勇者の父親として優遇されるという訳ですか…それが狙いですか?」
 「それのどこが悪い‼」

 うわー開き直ったよ、この親父…。
 なるほどね、それなら…?

 「ブレイド、ダーネリア、ルーネリア!」
 
 僕は3人を呼ぶと、3人は僕の元に来た。

 「僕は最初は乗り気ではなかったけど、今回の事で決めた。僕が勇者になる!みんな、僕に着いて来てくれるか?」
 「テイトが勇者になるのなら、自分は何処までも付き合うさ‼」
 「テイト様が勇者になるのでしたら、私はテイト様をお守り致します。」
 「テイト君が勇者になるのか!私はテイト君の矛となって活躍します!」
 「という事なので、勇者には僕がなります!別にこの村に活気を取り戻すのに、トールが勇者じゃなくても問題ありませんよね?」
 
 僕がそう宣言すると、親達の文句がピタリと止まった。
 別にこの村から勇者が誕生すれば良いだけという話なら、別にトールじゃなくても良いだけの話だ。

 「という訳で、話は以上ですよね?お帰り下さい。」
 「テイトに勇者が務まると思っているのか‼」
 「現在のトールのレベルとランクが幾つかは解りませんが、僕のレベルは現在231で、ランクはAランクです。そしてマクファーレン港の英雄という称号もありますので、勇者には近い位置に居ますよ?」
 「な…何だと⁉」
 「それで、他にまだ何かありますか?」

 僕はそう言うと、トールとその親達は肩を落としながら宿から出て行った。
 こうまで言えば、もう僕に突っ掛かって来る事は無いだろう。
 すると父さんが来て言った。

 「テイトが勇者になる…というのはあの場限りの冗談だよな?」
 「当然、僕は勇者になる気なんか全く無いよ。勇者になると、その国の雑用や揉め事を一手に引き受けならないといけないからね。」
 「まぁ、ダールの奴は息子がまた勇者になって有名になる事を望んでいたみたいだったがな。」
 「それで僕に戻れと強く言って来たのか…あんな待遇されていて戻る訳が無いだろうに。」
 
 これでこの村での厄介事は片が付いた。
 僕達は久々に両親の手作り料理を食べていたのだが?

 「あの…この紫色の塊は何?」
 「これはね、ダーネリアちゃんがテイトの為に作ったのよ。」
 「じゃあ、こっちの赤黒くてボコボコという音がするこれは?」
 「それは、ルーナリアちゃんがテイトの為に作ったスープだよ。」
 
 こ…これは喰い物なのか?
 おかしいなぁ?
 山越えの時にキャンプをした時は、ちゃんとまともな物が作れていたと思ったのに?
 僕は光魔法のフラッシュで目くらましさせてから、紫色の物体と赤黒いスープをブレイドの口の中に放り込んだ。
 そして光が収まると、僕の隣にいたブレイドが「ゴトッ!」という重い音をしながらテーブルに頭を打って気を失っていた。
 その姿を見て僕は食べなくて良かったと思った。
 だが、一応言うべきことは言おうと思って…

 「ダーネリア、ルーナリア、味見はした?」
 「ううん、してないよ?」
 「いいえ、してませんわ!」
 「そう、なら自分の作った物を食べてみると良い…」

 2人は首を傾げながら自分の作った料理を口に入れると、ブレイドと同じ様にテーブルに頭を打って気を失った。
 一体何を食べたらこうなるのだろうか?
 僕は料理を出された時に鑑定を使ったが、正体不明としか表示されていなかったので口に入れたくは無かったのだ。
 というか、何の食材を組み合わせたら正体不明と表示されるのかが謎だった。

 「これからの旅の課題が決まったな!極力2人にはまともな物が作れる様に特訓させよう!」

 これを旅先でやられたら堪った物ではない。
 だけど、他の3人の料理はまともでセンスがあると思った。
 これならヤーレイ達もすぐに馴染むだろう。
 食事が終わると、僕は3人にステータス障害治癒魔法を掛けてあげてから眠りに就いた。
 翌日…3人は酷く優れない表情をしていた。
 だけど今日が出発の日ではないので、体調が良くなるまで寝ている様に伝えたのだった。

 「さて、僕は何をしようかな?」

 久々に故郷に帰ってきた僕は、村の中を見て回ろうと思っていた。
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