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第二部

第二話 お約束的に…上手く行かない

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 「海は良いなぁ…」
 「あぁ、広大な大海原だな!」

 俺は現在、ゾルティック大陸に向けて移動している船の甲板にいる。
 そこの縁から海を眺めていた。
 俺の同乗者は、以前村で話した通りにマリーとミュンの三人だった。
 それ以外の乗客と言えば、数人の冒険者と一般人と…?

 「何でお前等がこの船に乗っている?」
 「テクトの行き先は知っていたからな、後は来るのを見計らって乗り込んだんだよ。」
 「お前等の行き先は、ムーア大陸だったろ?」
 「その筈だったんだが、国王陛下に申請して行き先を変えさせて貰った。」

 そう、この船には他にアーヴァイン達が乗っていた。
 アーヴァインとティルティアにガイアスとリールーだった。
 他のパーティーが見当たらないので尋ねてみると、戦力になりえない他のメンバーは王都に置いてから他の勇者達に合流してもらい、かつての冒険者時代の仲間で構成されたパーティーになっていた。

 「良く国王陛下が許したな?」
 「俺のパーティーやティルティアのパーティーもそれ相応の戦力なのだが、だがそれは魔物や魔獣に対処が出来るという事で、魔王軍や魔族との戦いになると足を引っ張られる可能性があるからな。」
 「それで再編成してこの面子か…まぁ、一番長い付き合いの奴等の方が戦いの癖も熟知しているだろうからな。」
 「そういう事だ!それでテクト達だが、他のメンバーはどうした?」
 「とりあえず俺達がまず先にゾルディック大陸の状況を把握してから、その後に合流する手筈になっている。」
 「それでか、妹と…王の間でも見掛けたが、そのフードを被っている子は誰だ?」
 「俺の奥さんだ、結婚したんだよ。」
 「「「「!?」」」」

 俺はミュンを呼ぶと、ミュンは俺の隣に来てから軽く会釈をした。
 四人は俺達に釘付けになっていた。

 「まさか…一番年下のテクトに先を越されるとは⁉」
 「それで、何故フードやマントで姿を隠しているんだ?」
 「他の奴の目に触れさせたくないからだ!俺の奥さんは、世界一可愛い子だからな。」
 「何だノロケか?」
 「テクトって、そんなに独占欲強かったっけ?」
 「それには少し理由があってな。今すぐという訳にはいかないが、その内にちゃんと紹介するよ。それで少しの間でいいので、マリーを頼んでも良いか?」
 「妹?別い構わないが、どうしたんだ?」
 「俺と嫁さんは新婚だからな、夫婦でやる事と言えば言わなくても分かるだろ?ほんの小一時間で良いのでな。」

 アーヴァインとガイアスがニヤケついた顔をして、ティルティアとリールーは顔を赤くしていた。
 本来の目的とは違うのだが、勝手に勘違いしているみたいなのでそれに便乗して、俺はミュンの肩に手を回してから船室の方に移動した。
 
 「日にちをずらして乗り込んだのに、まさか奴等が乗っていたとはな。」
 「結婚した事の報告をする事自体は別に構わないんだけど、今すぐというのはね。」
 「そうだな、事情が事情だしすぐには話せないが…だが、一か月間船にいるのだからいつかはバレる可能性が高いな。」
 
 ミュンとの結婚自体は別に公表しても構わない。
 だが、それは仲間達ならという事で…さすがにギルマスを知っている者達には気軽に話しても良い話ではなかった。
 マリアネートにもその事は伝えてあるので、ミュンの事は上手く隠してくれるだろう。

 「それでしばらくはどうやって誤魔化すの?」
 「奴等の勝手な勘違いに便乗して誤魔化せるとは思う。半月近くミュンには船室で待機して貰う事になるが構わないか?」
 「船室にいる事自体は構わないけど…勘違いって?」
 
 俺は頭の中で思いっ切り卑猥な妄想を展開した。
 ミュンは顔が真っ赤になり、更には鼻血を垂らしていた。
 ミュンはハンカチで鼻を押さえながら言った。

 「何て卑猥な映像を見せるのよ!でも、確かにこれなら誤魔化せるわね。」
 「俺的には、妄想ではなく実際に行ってみたいが?」
 「いずれは構わないけど、今は嫌よ。だって…壁だって薄いかもしれないし。」
 「遮音結界で外には声が漏れないから平気だ。」
 「確かにそれなら…って、他に何を考えているの⁉」

 そうだった…ミュンにはサトリの能力で考えを読まれるんだった。
 手を拘束した後に沈黙魔法で魔法を封じてから、魔法弱体効果で耐性を弱らせてから筋力低下魔法を施して、更に感覚強化魔法で感じやすくさせてから行為に及ぶ…という手順を見事に読まれてしまった。
 ミュンにはサトリの能力があるので、不意を突く様な真似は結構不可能に近い。
 ミュンが自ら裸になって誘いでもしない限り、僕の嫁さんはかなりガードが堅い。

 「そんな事する訳ないでしょ!」
 「さすが、300年死守して来た鋼鉄の処女アイアンメイデンだけの事はあるな!」
 「どこでそんな言葉を覚えて来るのよ?」
 
 僕は実力行使に出た。
 無理矢理力でベッドに押し倒してミュンの両手を押さえ付けてから…?
 普通なら女性は耳を攻められれば抵抗できずに落ちるというが、栗鼠族の耳は頭の上にある。
 そして人間とは違い、いきなり不意を突いて触れば感じるという事はあるが性体感ではない。
 
 「テクト君、辞めて!」
 「ミュン、身体の力を抜いて…」

 俺は左手でミュンの両手首を掴みながら、右手で裾を捲ってお腹を撫で回した。
 以前、透視魔法で見た通りのスベスベとした感触に吸い付くような質感が手に感じる。
 ミュンは口では嫌がってはいるが、本気で拒んではいない。
 なら…俺はそのまま手を上に移動して…ミュンの胸の方に移動させてから、指先が胸に当たった瞬間!
 ミュンが高速詠唱により、俺は壁まで吹っ飛ばされてから拘束魔法で縛り上げられた。

 「私は辞めてって言ったよね!」
 「抵抗する気配が無かったから、行けるかと思ったんだけど…」
 「私は言ったわよね?此処ではしたく無いって…」
 「確かに言っていたけど、ならいつまでお預けなんだよ?」

 国王陛下に結婚を認められて、その後にした行為といえばキスと尻尾をモフれたくらいだった。
 そして流れで身体に手を触れようとすると、拒まれていつもお預け状態だった。

 「俺達は夫婦だろ?」
 「私にはその気にならないの。もう少し女の子の事を理解するのね!」

 ミュンは見掛けは可愛い女の子だが、獣人族の栗鼠族だった。
 獣特有の発情期でもあるのだろうか?
 確かにそのタイミングを狙えば、何をしても許されるのだろうが…それがいつなのかが全く分からない。
 シーリアにもそんな兆候があったのは見た事ないしな…というか、アイツを女としては見られないから参考にはならんが。
 発情中…と鑑定魔法に表示されれば問題は無いのだが、ミュンに鑑定魔法を使っても弾かれるから意味がない。

 「何をしても許せる訳じゃ無いけどね。」
 「分かったよ、それまで我慢するさ。」

 獣特有の発情期は、種族によって期間が異なる。
 兎人族は毎週に発情期が来るという話だが、実際にどうなるかまではよくわからん。
 兎人族の大半は娼館で働いているので、入らない限り良くは知らんし…そもそも娼館なんかに入ったことが無い。
 栗鼠族にも似たような習性が有るのなら、それは女性特有の月の物の事なのだが…妹は毎月来るという話なのでなんとなくその兆候はわかるが、栗鼠族だとどれくらいのスパンで起こるのだろうか?

 「テクト君…君が悩むのはそこなの?」
 「結婚した妻に求めるのはそれしか無い‼︎」
 「はぁ…ムードも何も無いわね。なんで私はテクト君との結婚を許可したんだろ?」

 ミュンが呆れた顔で言った。
 大陸横断まで、後一ヶ月位あるので…その間に何とか調べてみるか!
 なのだが、結局一ヶ月程度では見つけることが出来なかった。
 ミュンと交われる日は本当に来るのだろうか?

 そして、それとは別に厄介な事が俺達に近付きつつあった。
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