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第一部

第二十一話 お約束的な…逆恨み?

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 俺はならず者どもの道を抜けてから酒場に来た。
 そして中に入るといつもの合図をしようとしたが…!

 「不要ですぜ、旦那!」
 「そうか…」
 「調査の方がまだ完全では無いのですが、今日はどの様なご用件で?」
 「これは別件で追加で調べて欲しいんだが?」
 「統括がおりませんが…話だけは聞きましょう。」
 「ふむ、サンデルマン伯爵令息という奴の素性を知りたい。」
 「サンデルマン伯爵の令息という事は、あの成金デブの事ですか?」
 「知っているのか?」
 「この王都では有名な話ですよ。気に入った女や物を見付ければ、金の力でなんでも物にしようとする成金デブですが、何故こんな小物の事が知りたいので?」
 「あぁ、実はな…」

 俺はサンデルマン伯爵令息から雇われた野盗崩れの女から、俺を連れて来いと頼まれたという話だった。
 そして俺は、人を斬ることが出来ない臆病者と…。
 なので、その場にいた奴等を全員始末したのだが。

 「何故、貴族令息が俺に用事があるのかが気になってな。俺が忘れているだけで、そいつと以前に何かがあったとも思えんしな。とてもじゃ無いが、接点を感じなくてな。」
 「嫌がる女の前に割って入って助けた…とかは無いですかい?」
 「あったかも知れんが覚えてねぇ!情報屋とかなら、絵の上手い奴もいるだろ?」
 「ですね、シードル!」
 「あいよ、あの成金デブですよね?」

 シードルという男が描いてくれた似顔絵を見たのだが?
 確かに髪がボサついていて、顔にはソバカスで、全身がパンパンに膨らんだ醜いデブが貴族の服を着ている様な男の姿だった。
 だが…全く見覚えがなかった。

 「誰だ、コイツ?」
 「コイツが成金デブ…サンデルマン伯爵令息です。」
 「いや…それは分かるんだが、俺はこんな奴と関わった記憶はないぞ?」
 
 俺は基本的に、物事が過ぎれば余程記憶に残るような出来事ではない限り覚えている事はない。
 忘れっぽい…というか、他にも覚えなければならない事がある為に、いちいち記憶の容量を無駄にはしたくない。
 ただ、幾ら忘れるとは言っても…こんな特徴的な成金デブオークプリンスを忘れる事はないと思うのだが?
 そんな事を考えていると、いつの間にか居なくなっていた情報屋の少年が現れた。
 すると、こんな事を話してくれた。

 「この成金デブの情報を仕入れて来ました。」
 「どうだった?」
 「旦那がクエストで負傷を負って入院している際に、あの成金デブが妹様を見て一目惚れしたらしく…貴族の名を名乗って無理やり連れて行こうとしたのですが、お仲間様に阻まれて…」
 「そんな事を言われた事はなかったぞ?それに王国に仕える勇者を無理やりって、幾ら貴族でも許されないだろ?」
 「それで妹様は、リーダはテクト・バーグライドだと言って…」
 「ならそいつと話をさせろとなった時に、入院していない事を告げると、その場はそこから立ち去ったらしいです。」

 そして後日にそいつの使いが俺のところに来て、俺を連れて行こうとしたのか…。
 俺がその時に居ないで入院していたという話を聞いて弱いと勘違いしたのか…。
 どおりで会ったことも見覚えが無いと思ったよ。
 俺は報酬代わりに、金貨を一枚ずつ渡した。
 
 「旦那、こんなに良いんですかい?」
 「あ、つりがあるなら…サンデルマン伯爵家の場所を教えてくれ!」
 「まさか旦那…襲撃でも掛けるんですかい⁉︎」
 「流石に貴族を敵回そうとは思わないが、理不尽な理由で俺を襲って来た責任くらいは取りたくてな。」
 「なら…御案内しましょう。それと、影は要りますか?」
 「戦闘面では必要ないが、中の偵察には欲しいな。」
 
 俺は二人に少年を借りた。
 どちらも闇に紛れやすそうな格好をしていた。

 「さて、行くとするか…あ、もう一つ聞きたいんだが、サンデルマン伯爵というのはまともか?」
 「いえ、あんな成金デブを溺愛していて、金と権力を使って無かった事にするというクズです。」
 「なんでそんな奴が伯爵を名乗っていられるんだ?普通ならとっくに王国から潰されてもおかしくないだろう?」 
 「上位貴族に太いパイプを持っているそうです。なので迂闊に逆らう事が出来ずに、男爵家や子爵家を…」

 男はそういうと、血が出るくらいに拳を握り締めた。
 俺は追加で、ビジョンスフィア映像収録ボイススフィア音声録音を借りた。

 「よし、行くぞ!」
 「旦那、お気を付けて!」
 「あぁ、それと報酬は…伯爵家の資産と手土産を用意しておくから楽しみにしてろ。」

 元勇者の前にやる事が増えてしまったが…妹に関する事なら黙っている場合ではないな!
 さて…掃除の始まりだ‼︎
 
 

 
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