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番外編
第三話 貴族からの誘い
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魔王ヴァルサリンガを討伐してから2週間後のある日の午後、俺とテッドは家の庭になる調味料ラボで調味料を瓶に詰めていた時に、来客が来た。
「英雄キッド・リターンズ殿…もしくはテッド・リターンズ殿は御在宅か?」
「どっちもいますけど、何か?」
「グランベリオン公爵からの使いの者です。 こちらをお渡しする様にと。」
テッドは招待状らしき物を受け取ると、使いの者は帰って行った。
「テッド、何て書いてある?」
「グランベリオン公爵家でパーティーがあるから、僕とキッド、それに勇者3人の御令嬢は参加して欲しいと…」
「ああ…やっぱり来たか。」
平民とはいえ、国民…上からの呼び出しには応じなければならない。
それにグランベリオン公爵様には、家の庭に調味料ラボを建てて貰ったので断る事も失礼に当たる。
いつか何かしらのお呼びが掛かるとは思っていたけど、まさかこんなに早くに来るとはな。
「あ、続きがある! 僕かキッドにセリア様のエスコートを頼みたいってさ。」
「なるほど…盾役か。」
「盾役?」
「公爵家の令嬢ともなれば、近付いて婚約を希望する者が後を絶たない。 その為の対抗策だろ?」
「平民の僕等で務まるのかな?」
「俺は魔王を倒した英雄、テッドは冒険者殺しを倒した英雄だ。 貴族ではない平民とはいえ、逆らおうとする者はいないだろう。」
「他にも妹達の参加というのは?」
「魔王を倒した勇者という肩書があっても、この国の国民だからな。 恐らくはお披露目も兼ねているんだろ?」
「言い寄って来る人は…?」
「結構いるぞ。 勇者の力を取り込もうとする者もな。」
まぁ、リット達なら大丈夫だとは思うが、一応注意をしておいた方が良いだろう。
それよりも…?
「なぁテッド、開催日は何時だ?」
「1週間後…になってる。 それと服装は冒険者としての服装で帯刀は許可だってさ。」
「まぁ、ドレスやタキシードではないから良いか。」
「妹達なら、貴族のパーティーと聞けばドレスとか着たがると思うけど?」
「着慣れないドレスやタキシードでは、多分浮くぞ。 俺は前世でも着ていたから慣れてはいるが、着慣れないと明らかに不自然に見えるからな。」
「着ていた…って、まさかドレス?」
「タキシードの方だ!」
まぁ、平民がドレスに袖を通す機会なんてほとんど無いからな。
妹達からは不満が出るだろうが…
「ねぇ、キッド…セリア様のエスコートなんだけど、キッドがしてくれないかな?」
「セリア様って、ティーダス公爵様のご息女だろ? お前がマーダーグリズリーから救ったという…お前の方が適任じゃないのか?」
「社交的な場では、僕よりキッドの方が慣れていると思ってさ。」
「それでも別に構わないんだが、マーダーグリズリー討伐時の記憶を見ただけだからな。 詳しい説明を要求されると俺には答えられそうにも無いし、何より…」
「面倒くさいんだね?」
「あぁ、そうだ。 どうせ魔王討伐時の話を聞かせてくれと押し寄せて来るだろうから、セリア様が近くにいると躱し辛いからな。」
理由はそれだけではない。
俺が妹達の近くに居れば、妹達に余計なちょっかいを出して来る者も上手くあしらえるから、貴族令嬢のエスコートよりは楽だろうしな。
「それにしても貴族のパーティーか…どんな料理が出て来るんだろう?」
「あまり期待しない方が良いぞ。 平民では口に出来ない高級食材を使用しているだろうけど、高級食材が決して美味い訳では無いからな。 俺達の調味料をグランベリオン公爵家に卸して調理法を伝えてはいるけど、近くにいて教えている訳では無いから、多少まともな料理は出るだろうけど、期待するほどの料理ではないだろうからな。」
「リットの料理の方がマシという事?」
「俺が近くで教えながら作っているからな。 リットの料理の腕は、下手すると王宮の料理人よりも格段に上だろう。」
「楽しみにしていたんだけどなぁ…?」
俺とテッドは家に入ってから、妹達にパーティーの事を話した。
するとルットとロットが、ドレスやタキシードではないにしても、貴族の前に出ても恥ずかしくない装飾品や服を作ると言って雑貨屋に生地を買いに行った。
そしてルットとロットが試行錯誤の末に作った服がパーティーの前日に完成したのだった。
「お前達の服は良いとして…俺とテッドの服はデザインが一緒だが色はテッドが白で俺は黒なんだが…?」
「テッドお兄ちゃんは聖剣の所持者のイメージで、キッドのは魔剣の所持者のイメージで作ったんだけど。」
「まぁ、良いか。 それと、何故未だに俺だけ呼び捨てなんだ?」
「そっちで慣れたから。 パーティーではちゃんとお兄ちゃんを付けるよ。」
「家でも付けてくれ。 見た目はテッドと一緒だけど、精神年齢ではテッドより遥かに上だからな。」
「考えとく。」
そしてパーティー当日…
家の前に大きな馬車が迎えに来た。
馬車の中にグランベリオン公爵家の者達は乗って無く、パーティー会場で合流するという話だった。
俺達は馬車に乗り込んでから揺られる事1時間…グランベリオン公爵家に着いてから部屋に通された。
「皆様! ようこそいらっしゃいました。」
「これはセリア様…本日はこの様なパーティーにお誘い頂き誠にありがとうございます。」
俺はそう言うと、他の4人は並んで頭を下げた。
そして俺は、テッドの腰を叩いて合図した。
「セリア様のエスコートを致します、テッド・リターンズです。 本日は…」
「あの馬鹿…挨拶の順番を間違えたな。」
「あんなに練習したのにね…」
「どうかなさいましたか、テッド様?」
「いえ、セリア様は本日も大変美しく、思わず美の女神エカテリーナ様が目の前に現れたのかと思う位に息をするのを忘れて見惚れていました。」
テッドは慌てて取ってつけたようなセリフを言った。
本来なら、相手を褒めた後にエスコートの話をする手はずだったのだが…
「テッドの奴は焦って余計な言葉を足したな。」
「でも結果的に良かったんじゃないかな? セリア様の顔が真っ赤になっているし…」
俺とリットはテッドの後方で見守っていた。
まぁ、結果オーライだから良いと言えば良いのだが…
俺達は、会場内に入ってからティーダス公爵様から魔王討伐した者としてその場に居る者達に紹介された。
会場内には…サウシュヴァウント王国の国王陛下と王妃殿下、それ以外に各国の王や側近達がいた。
俺や妹達は、各国の国王や側近に挨拶をして行き…その後は貴族達から質問攻めにあった。
テッドはセリア嬢と共に行動しているので、大して人に囲まれるという事は無かった。
「はぁ…これはいつまで続くんだ?」
しばらくした後にティーダス公爵が助け舟を用意してくれて、一時貴族達から開放された。
話疲れで小腹も空いたので料理を皿によそっていると、妹達が各国の国王から何か言われていたので皿を置いて向かった。
「だから! 武の勇者の紋章を持つ者は、我がティスタニア公国が所持するのが…」
「それを言ったら、魔の勇者の紋章を持つ者は、魔導国ヴィラバリアスの…」
「知の勇者の紋章を持つ者は、ジルスタニア王国が管理する…」
「一体、何の話をしているんだ?」
「あ、キッド…お兄ちゃん! 助けて!」
妹達は各国の王の側近に捕まっていた。
俺は近くにいる者から話を聞いた。
「あのな…勇者の紋章を持つ者がその国の所有物という訳じゃないんだよ。 魔王ザイリンドーガの時代も魔王ヴァルサリンガの時もたまたまその国から誕生したというだけで、他の土地で新たに勇者の紋章を持った者は元の勇者が生まれた国に所属しないとならないという決まりは無いんだよ!」
「なら魔王を倒した英雄殿に聞こう。 その話を裏付ける証明は出来るのか?」
「あぁ、女神アルテナ様から聞いた話だ。 勇者の紋章を持つ者が生まれた場所が前回と今回と同じ場所というだけで、その者達が死んだ場合…新たな勇者が別な場所で生まれた場合は、その国の国民という事になるから、元の国で生まれた勇者とは全く関係ないという話だ。」
俺はそう言うと、妹達を開放させた。
妹達は俺の後ろで服にしがみ付いていた。
「だがな! 我々三国は勇者を祭っている国として…」
「それはあんたらが勝手に決めたって言う話だろ? それとも何か、神の発言を否定するのか?」
まぁ、国の事を考えれば分からなくもない。
今迄そういうしきたりに縛られて来たのだから、いきなり違うと言われても素直に納得が出来ないのであろう。
まぁ、少しきつめのお灸を据えてやるか…
「そもそも…お前等三国の勇者だが、勇者の自主性に任せて成長を疎かにした所為が招いた結果だろ? 口ばっかで実力が伴ってなくて、態度だけはやたらデカい。 その癖、魔王に戦いを挑んだら瞬殺されるという…あいつらが真面目に勇者としての使命を全うしていたのなら、魔王ヴァルサリンガを倒したのはあいつらだったんじゃないのか?」
「「「うぅ………」」」
本当にくだらない事で揉めやがって…少しは自分達の行動を反省しろ!
俺はそう言ってその場を去ろうとすると、三国の側近から剣を向けられた。
「何の真似だ?」
「魔王を倒した英雄殿とはいえ、王に不敬な態度は目に余る!」
「三国の王よ、これはお前等の相違か?」
王達は何も言わなかった。
揃いも揃って馬鹿ばかりだな?
俺は前世時代に親父から習った覇気を放った。
すると側近達は武器を落として気を失った。
俺は魔剣シーズニングを抜いてからテクニカルセイバーを発動して、三国の王達に剣を向けて言った。
「人を殺そうとしたのだから、自分達もやられる覚悟はあるんだよな?」
「我らは王だぞ!」
「知った事か! 魔物や魔獣に剣を向けて殺気を放っていれば襲われる…そんな事も知らないのか?」
俺は覇気を再び放ちながら三国の王達を威圧した。
二国の王は気絶し、ジルスタニアの国王は失禁をした。
すると、サウシュヴァウントの国王陛下が割って入った。
「英雄殿、此度の件は我に預けては貰えぬか?」
「わかりました。 私達はこれで失礼致します。」
俺と妹達は、パーティー会場を後にした。
あの三国の王が今後何かしら仕掛けて来るかもしれないが…我が国の国王陛下なら何とかするだろう。
それにしても案の定、パーティーを楽しむ余裕は無かったな。
俺達が馬車に乗り込もうとすると、テッドも走って来た。
「遠くから見ていたけど、キッドも無茶したね。」
「まぁ…少し腹が立ったからな。 あの位は許されるだろ?」
「それよりも、今後が大変じゃないのかな? 他国とはいえ、国王に手を出したんだから…」
「まぁ、なる様になるだろう。」
俺達は家に帰り、食事にありつけられなかったので家で料理を楽しんだ。
翌日…懸念していた事件だったが、何のお咎めが無かった。
恐らくサウシュヴァウント王国の国王陛下が上手く収めてくれたのだろう。
もう…こういったパーティーは遠慮したいな。
今回の件で誘われる事はもう無いだろうけど。
「英雄キッド・リターンズ殿…もしくはテッド・リターンズ殿は御在宅か?」
「どっちもいますけど、何か?」
「グランベリオン公爵からの使いの者です。 こちらをお渡しする様にと。」
テッドは招待状らしき物を受け取ると、使いの者は帰って行った。
「テッド、何て書いてある?」
「グランベリオン公爵家でパーティーがあるから、僕とキッド、それに勇者3人の御令嬢は参加して欲しいと…」
「ああ…やっぱり来たか。」
平民とはいえ、国民…上からの呼び出しには応じなければならない。
それにグランベリオン公爵様には、家の庭に調味料ラボを建てて貰ったので断る事も失礼に当たる。
いつか何かしらのお呼びが掛かるとは思っていたけど、まさかこんなに早くに来るとはな。
「あ、続きがある! 僕かキッドにセリア様のエスコートを頼みたいってさ。」
「なるほど…盾役か。」
「盾役?」
「公爵家の令嬢ともなれば、近付いて婚約を希望する者が後を絶たない。 その為の対抗策だろ?」
「平民の僕等で務まるのかな?」
「俺は魔王を倒した英雄、テッドは冒険者殺しを倒した英雄だ。 貴族ではない平民とはいえ、逆らおうとする者はいないだろう。」
「他にも妹達の参加というのは?」
「魔王を倒した勇者という肩書があっても、この国の国民だからな。 恐らくはお披露目も兼ねているんだろ?」
「言い寄って来る人は…?」
「結構いるぞ。 勇者の力を取り込もうとする者もな。」
まぁ、リット達なら大丈夫だとは思うが、一応注意をしておいた方が良いだろう。
それよりも…?
「なぁテッド、開催日は何時だ?」
「1週間後…になってる。 それと服装は冒険者としての服装で帯刀は許可だってさ。」
「まぁ、ドレスやタキシードではないから良いか。」
「妹達なら、貴族のパーティーと聞けばドレスとか着たがると思うけど?」
「着慣れないドレスやタキシードでは、多分浮くぞ。 俺は前世でも着ていたから慣れてはいるが、着慣れないと明らかに不自然に見えるからな。」
「着ていた…って、まさかドレス?」
「タキシードの方だ!」
まぁ、平民がドレスに袖を通す機会なんてほとんど無いからな。
妹達からは不満が出るだろうが…
「ねぇ、キッド…セリア様のエスコートなんだけど、キッドがしてくれないかな?」
「セリア様って、ティーダス公爵様のご息女だろ? お前がマーダーグリズリーから救ったという…お前の方が適任じゃないのか?」
「社交的な場では、僕よりキッドの方が慣れていると思ってさ。」
「それでも別に構わないんだが、マーダーグリズリー討伐時の記憶を見ただけだからな。 詳しい説明を要求されると俺には答えられそうにも無いし、何より…」
「面倒くさいんだね?」
「あぁ、そうだ。 どうせ魔王討伐時の話を聞かせてくれと押し寄せて来るだろうから、セリア様が近くにいると躱し辛いからな。」
理由はそれだけではない。
俺が妹達の近くに居れば、妹達に余計なちょっかいを出して来る者も上手くあしらえるから、貴族令嬢のエスコートよりは楽だろうしな。
「それにしても貴族のパーティーか…どんな料理が出て来るんだろう?」
「あまり期待しない方が良いぞ。 平民では口に出来ない高級食材を使用しているだろうけど、高級食材が決して美味い訳では無いからな。 俺達の調味料をグランベリオン公爵家に卸して調理法を伝えてはいるけど、近くにいて教えている訳では無いから、多少まともな料理は出るだろうけど、期待するほどの料理ではないだろうからな。」
「リットの料理の方がマシという事?」
「俺が近くで教えながら作っているからな。 リットの料理の腕は、下手すると王宮の料理人よりも格段に上だろう。」
「楽しみにしていたんだけどなぁ…?」
俺とテッドは家に入ってから、妹達にパーティーの事を話した。
するとルットとロットが、ドレスやタキシードではないにしても、貴族の前に出ても恥ずかしくない装飾品や服を作ると言って雑貨屋に生地を買いに行った。
そしてルットとロットが試行錯誤の末に作った服がパーティーの前日に完成したのだった。
「お前達の服は良いとして…俺とテッドの服はデザインが一緒だが色はテッドが白で俺は黒なんだが…?」
「テッドお兄ちゃんは聖剣の所持者のイメージで、キッドのは魔剣の所持者のイメージで作ったんだけど。」
「まぁ、良いか。 それと、何故未だに俺だけ呼び捨てなんだ?」
「そっちで慣れたから。 パーティーではちゃんとお兄ちゃんを付けるよ。」
「家でも付けてくれ。 見た目はテッドと一緒だけど、精神年齢ではテッドより遥かに上だからな。」
「考えとく。」
そしてパーティー当日…
家の前に大きな馬車が迎えに来た。
馬車の中にグランベリオン公爵家の者達は乗って無く、パーティー会場で合流するという話だった。
俺達は馬車に乗り込んでから揺られる事1時間…グランベリオン公爵家に着いてから部屋に通された。
「皆様! ようこそいらっしゃいました。」
「これはセリア様…本日はこの様なパーティーにお誘い頂き誠にありがとうございます。」
俺はそう言うと、他の4人は並んで頭を下げた。
そして俺は、テッドの腰を叩いて合図した。
「セリア様のエスコートを致します、テッド・リターンズです。 本日は…」
「あの馬鹿…挨拶の順番を間違えたな。」
「あんなに練習したのにね…」
「どうかなさいましたか、テッド様?」
「いえ、セリア様は本日も大変美しく、思わず美の女神エカテリーナ様が目の前に現れたのかと思う位に息をするのを忘れて見惚れていました。」
テッドは慌てて取ってつけたようなセリフを言った。
本来なら、相手を褒めた後にエスコートの話をする手はずだったのだが…
「テッドの奴は焦って余計な言葉を足したな。」
「でも結果的に良かったんじゃないかな? セリア様の顔が真っ赤になっているし…」
俺とリットはテッドの後方で見守っていた。
まぁ、結果オーライだから良いと言えば良いのだが…
俺達は、会場内に入ってからティーダス公爵様から魔王討伐した者としてその場に居る者達に紹介された。
会場内には…サウシュヴァウント王国の国王陛下と王妃殿下、それ以外に各国の王や側近達がいた。
俺や妹達は、各国の国王や側近に挨拶をして行き…その後は貴族達から質問攻めにあった。
テッドはセリア嬢と共に行動しているので、大して人に囲まれるという事は無かった。
「はぁ…これはいつまで続くんだ?」
しばらくした後にティーダス公爵が助け舟を用意してくれて、一時貴族達から開放された。
話疲れで小腹も空いたので料理を皿によそっていると、妹達が各国の国王から何か言われていたので皿を置いて向かった。
「だから! 武の勇者の紋章を持つ者は、我がティスタニア公国が所持するのが…」
「それを言ったら、魔の勇者の紋章を持つ者は、魔導国ヴィラバリアスの…」
「知の勇者の紋章を持つ者は、ジルスタニア王国が管理する…」
「一体、何の話をしているんだ?」
「あ、キッド…お兄ちゃん! 助けて!」
妹達は各国の王の側近に捕まっていた。
俺は近くにいる者から話を聞いた。
「あのな…勇者の紋章を持つ者がその国の所有物という訳じゃないんだよ。 魔王ザイリンドーガの時代も魔王ヴァルサリンガの時もたまたまその国から誕生したというだけで、他の土地で新たに勇者の紋章を持った者は元の勇者が生まれた国に所属しないとならないという決まりは無いんだよ!」
「なら魔王を倒した英雄殿に聞こう。 その話を裏付ける証明は出来るのか?」
「あぁ、女神アルテナ様から聞いた話だ。 勇者の紋章を持つ者が生まれた場所が前回と今回と同じ場所というだけで、その者達が死んだ場合…新たな勇者が別な場所で生まれた場合は、その国の国民という事になるから、元の国で生まれた勇者とは全く関係ないという話だ。」
俺はそう言うと、妹達を開放させた。
妹達は俺の後ろで服にしがみ付いていた。
「だがな! 我々三国は勇者を祭っている国として…」
「それはあんたらが勝手に決めたって言う話だろ? それとも何か、神の発言を否定するのか?」
まぁ、国の事を考えれば分からなくもない。
今迄そういうしきたりに縛られて来たのだから、いきなり違うと言われても素直に納得が出来ないのであろう。
まぁ、少しきつめのお灸を据えてやるか…
「そもそも…お前等三国の勇者だが、勇者の自主性に任せて成長を疎かにした所為が招いた結果だろ? 口ばっかで実力が伴ってなくて、態度だけはやたらデカい。 その癖、魔王に戦いを挑んだら瞬殺されるという…あいつらが真面目に勇者としての使命を全うしていたのなら、魔王ヴァルサリンガを倒したのはあいつらだったんじゃないのか?」
「「「うぅ………」」」
本当にくだらない事で揉めやがって…少しは自分達の行動を反省しろ!
俺はそう言ってその場を去ろうとすると、三国の側近から剣を向けられた。
「何の真似だ?」
「魔王を倒した英雄殿とはいえ、王に不敬な態度は目に余る!」
「三国の王よ、これはお前等の相違か?」
王達は何も言わなかった。
揃いも揃って馬鹿ばかりだな?
俺は前世時代に親父から習った覇気を放った。
すると側近達は武器を落として気を失った。
俺は魔剣シーズニングを抜いてからテクニカルセイバーを発動して、三国の王達に剣を向けて言った。
「人を殺そうとしたのだから、自分達もやられる覚悟はあるんだよな?」
「我らは王だぞ!」
「知った事か! 魔物や魔獣に剣を向けて殺気を放っていれば襲われる…そんな事も知らないのか?」
俺は覇気を再び放ちながら三国の王達を威圧した。
二国の王は気絶し、ジルスタニアの国王は失禁をした。
すると、サウシュヴァウントの国王陛下が割って入った。
「英雄殿、此度の件は我に預けては貰えぬか?」
「わかりました。 私達はこれで失礼致します。」
俺と妹達は、パーティー会場を後にした。
あの三国の王が今後何かしら仕掛けて来るかもしれないが…我が国の国王陛下なら何とかするだろう。
それにしても案の定、パーティーを楽しむ余裕は無かったな。
俺達が馬車に乗り込もうとすると、テッドも走って来た。
「遠くから見ていたけど、キッドも無茶したね。」
「まぁ…少し腹が立ったからな。 あの位は許されるだろ?」
「それよりも、今後が大変じゃないのかな? 他国とはいえ、国王に手を出したんだから…」
「まぁ、なる様になるだろう。」
俺達は家に帰り、食事にありつけられなかったので家で料理を楽しんだ。
翌日…懸念していた事件だったが、何のお咎めが無かった。
恐らくサウシュヴァウント王国の国王陛下が上手く収めてくれたのだろう。
もう…こういったパーティーは遠慮したいな。
今回の件で誘われる事はもう無いだろうけど。
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