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最終章
第七話 本当にいい加減にしてくれ!
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俺は部屋で考えていた。
「魔王達がこの魔剣シーズニングを恐れる理由は何なのだろうか?」
第一の封印解除の剣のテクニカルセイバーは、緑の刀身で素早さを上げる剣だ。
第二の封印解除の剣のアメージングセイバーは、青の刀身で力を上げる剣。
第三の封印解除の剣のドレインセイバーは、赤い刀身で全てではないが、物質以外を吸収するを持つ剣。
第四の封印解除の剣のエレメンタルセイバーは、黄色の刀身であらゆる属性を纏う剣。
第五の封印解除の剣のエターナルセイバーは、光の刀身で全てを斬る剣…だと思う。
「封印解除時の剣の力を恐れている…のか?」
これらの封印解除の剣の効果って、調味料と関係があるのだろうか?
封印解除の力を恐れるのは分かる。
だが、封印解除前に恐れていた理由って…あぁ、そういう事か!
「戦う度に刀身に宿る属性が変化するんじゃ対応が出来ないよな?」
この世界の聖剣や魔剣の資料をギルマスに見せて貰った事があった。
聖剣は主に聖属性や光属性を宿している。
魔剣は刀身の色によって属性が違う。
例えば、赤い刀身なら炎、紫の刀身なら雷、青い刀身なら水か氷の様に。
だが、魔剣シーズニングには刀身その物が無い。
他の聖剣や魔剣の様に刀身の土台が金属ではなく、調味料で固められた物…なので、敵も見ただけで属性を判断するのは不可能に近いのだろう。
「残り5日ほどでどれだけ試せるか…だが?」
テクニカルセイバーは良く使用している。
使い勝手が良い所為もあるが、比較的に魔力消費量が低いというのもあるからだ。
エターナルセイバーを使用した時は、魔力を半分以上ゴッソリもってかれたのであまり使用したくはない。
その他の物も…まぁ、別な理由があるが…今は話すのは止めよう。
「とりあえず、冒険者ギルドに顔を出してから討伐クエストでも受けるか…」
この島には…全てではないが目に付く魔獣の類は殆ど倒してしまった。
だが、魔獣に近い魔物もいるので事は足りる。
リット達も魔王決戦の為に、森の奥の方で魔物討伐をするといって朝早く出て行った。
少しでもレベルを上げておきたいそうなのだが、リットはレベル70でルットとロットはレベル60なので、森の奥に入ってもそれ相応に強い魔物はいるのだろうか?
まぁ、レベル上げ自体が強さに繋がる訳ではなく、経験や実戦がレベル上げより功を成す場合もあるので…
俺は冒険者ギルドの扉の前に行くと、ギルド内がいつもと違って騒がしい事に気が付いた。
扉を少し開けて中を見ると、豪華な装備を身に付けたパーティーが騒いでいた。
「テッド・リターンズはまだ来ないのか⁉」
「だからテッド君はまだ来ていないんです!」
豪華な装備の男は、ライラに突っ掛かっている様だった。
テッド…は俺か!
俺はあんな奴は知らんが?
思い当たるとしたら…俺を倒して名声を上げようとする輩か、昨日ボッコボコにした貴族が仕返しに呼んだのか?
このまま去ろうとかとも思ったのだが、このままではライラが気の毒なので助ける事にした。
「テッド・リターンズは俺だが、何の用だ?」
「あ、テッド君! この人達は…」
「お前がテッド・リターンズか! 待ちわびたぞ‼ 俺と戦え!」
またか…昨日の貴族と言い、最近こういう輩が増えて困るな。
この島では俺に戦いを挑もうとする者はいないが、他国から来た者は別だった。
魔王の幹部を倒したのが12歳の少年だと聞くと、なめてかかってくる奴が後を絶たないのだ。
「戦う理由がない! 以上!」
「お前になくても俺にはある!」
「ならギルドカードを見せて、俺も見せるから。」
俺と男のギルドカードを見せ合った。
「レベル41か…妹達より低いな。」
「レベル99だと⁉ 人類最高レベルが86だというのに、それを越すレベルだと⁉」
「これでわかっただろ? あんたが何所の誰だか知らないけど、戦ったらどうなるか位は解るよな?」
「俺は…武の勇者のヴェルガンだ! 魔王討伐の為に…」
「幹部すら倒していないのに、魔王討伐か? 知と魔の勇者の様に殺されるのがオチだぞ?」
「・・・・・・・・・」
俺の言葉により、落ち込んでいる様だった。
豪華そうな装備を身に付けていても実績が無いんじゃ、その鎧もただの飾りだな。
さすがに差を感じたのか、何も言わなくなって地面を見つめている。
そんなのに付き合うほど暇ではないので立ち去ろうとした。
だが…?
「俺を仲間にしてくれ…」
「断る! レベルを上げて出直して来い!」
俺はヴェルガンが言い終わる前に言った。
するとヴェルガンは剣を抜いた。
刀身には光を纏っている所を見ると、ヴェルガンの持つ剣も聖剣みたいだった。
さすがは勇者を名乗るだけはあるとは思ったが…?
「剣を抜いて…どうする気だ?」
「俺と戦ってもらう為だ! 知っているか? ジョブがあるとないとでは、レベル差があってもステータスまではそう違いは無いという事を…」
「勇者というのがどの程度かは知らないけど、それはレベル60の剣聖より性能は上なのか? 俺のレベル99のステータスは、レベル60の剣聖に比べると性能は落ちるが…それでもレベル40の奴よりはまだ高いと思うが?」
ヴェルガンは俺のギルドカードと自分のを見比べているが、差の開きが明らかだった。
これで諦めるか…と思っていたが、まだこの場に留まっていた。
ギルマスがこちらを様子見ている感じが目に付いたが、こちらには来る事はなかった。
ヴェルガンは意思を固めた表情をしてから俺に言った。
「実は俺はな…ティスタニア公国の武の勇者で…お前等の叔父だ!」
「へーそうですか…」
ヴァルガンは呆気に捕らわれた表情をした。
それもその筈、意を決して発言した内容に塩対応だったからだ。
「俺は、お前等の母カノンの弟なんだよ!」
「はいはい叔父さんね…だから何ですか?」
「叔父の頼みでも断るつもりか?」
「俺の母さんは…父さんと一緒になりたいが為に親に相談したら勘当されたと聞いていますので、親族はいないと思っているから、あんたが仮に叔父だとしても俺達には関係ない話だ!」
この話はテッドの幼い頃の記憶を見て知っていた。
両親が死んで困窮な貧困生活を送っているのに手も貸さないで、今更叔父を名乗った所で反応は変わらない。
これはテッドも同意していた事だからだ。
いつか親族が現れるかもしれないが、今迄に何も干渉してこなかった癖に幹部討伐の功績で名乗り上げようとする輩が居るかも知れない…テッドと妹達は一切かかわらないという事にしたのだった。
だが、この男はまだ引き下がらなかった。
「なら、お前の妹達にも合わせろ! それでも話が変わらなければ、この件から手を引こう。」
「無駄だと思うけど、わかった。」
俺とヴェルガンは冒険者ギルド内で待つ事にした。
俺が外に出て妹達と話をして、断る事を阻止する為らしいが…
2時間後…リット達は冒険者ギルドに入って来たのだった。
「リット、どうだった?」
「強敵という程の魔物はいなかったけど、レベルは幾つか上がったよ。 それでね…」
「お前達がテッドの妹達か…なるほど、カノン姉さんの面影があるな。」
「キ…テッド兄さん、この人は誰?」
俺はリットに合図をした。
俺がキッドという事を知っているのは、ギルマスと妹達だけで他の者は知らない。
何もない時はキッド呼びを許しているが、それ以外ではテッドと呼ぶ様にしているのだった。
「この人はティスタニア公国の武の勇者で、母さんの弟で俺達の叔父だってさ。」
「そうなんだ~で、その人が何の用なの?」
「魔王討伐の際に一緒に戦いたいとか言っているけど…」
「レベルは?」
「41だってよ。」
「話にならないね。」
母親の弟が現れて心が動くとも思ったが、リットは冷静に対処した。
まぁ、当然だよな?
「俺はティスタニア公国の公爵家で、お前達の母親も公爵家の人間だったんだ!」
「そうですか…それがどうかしたのですか?」
「俺の親…お前達からだと祖父になるな。 お前達を公爵家に招いても良いと言付かって…」
「興味ないので良いです。」
リットの対応は、俺以上の塩対応だった。
ヴェルガンが気の毒になる位に落ち込んで…はないか。
「何故だ! 公爵家だぞ‼」
「公爵家って、王族に近い立場ですよね?」
「まぁ…そうだな。 俺の親父は、王の弟だ。」
「なら、それだけの権力があれば…私達を探すのも容易い事ですよね?」
「あぁ! なので、幹部討伐がリターンズ家が関わっていると聞いてお前達に声を…」
「なら幹部討伐の話が無ければ、私達は探される事すらなかったという訳ですよね?」
「まぁ…そうなるな。」
「それはただ単に、私達の功績が欲しくて声を掛けただけに過ぎないんじゃないですか? 私達が本当に貧窮な生活を送っている時にすら見捨てた癖に、今更招き入れてやるって…人を馬鹿にするのも大概にしなさい!」
「うん、良く言った!…という訳だ、お呼びじゃないからさっさと帰れ!」
ここまで言われれば、ヴェルガンも…いや、普通の人間なら折れる筈だった。
だが、ヴェルガンはそれでも食い下がって来た。
「わかった…公爵家に招き入れるという話は無しでも良い。 だが、魔王討伐の際には俺達も同行を…」
「それこそ断る! 悪いがお前達の事は一切信用出来ないし、お前達に背中を預ける気にもなれない。 魔王を倒した後に俺達を殺して手柄を横取りして、英雄達は魔王との戦いで命を落とした…なんていう筋書きに付き合う気も無いからな‼」
「いや…俺はそんな事は…」
言い淀んでいる所を見ると、図星を刺されていた感じだった。
まぁ、勇者の立場を考えると分からなくはない。
勇者に選ばれると、国や世界から無条件で優遇されるが…それは功績があってからの事。
魔王の幹部の討伐はしてない、魔王も討伐出来ない…そんな勇者は不要な存在として消され、その国や家族も非難されるか、最悪は始末の対象になるからだ。
そんな勇者が取る最後の手段と言えば、当然…?
ヴェルガンは聖剣を抜いて構えてこう言った。
「なら、俺達と…」
俺はテクニカルセイバーでヴェルガンの聖剣を持っている手首を斬り落とすと、ドレインセイバーで斬った手に突き刺して勇者の紋章を吸い取った。
そして聖剣の光属性も同時に吸い込むと、聖剣はただの剣に成り下がった。
「な…何をした⁉」
「これであんたはもう勇者でも何でもない! 命は見逃してやるからとっとと失せろ‼」
そういうとヴェルガンは、自分の手と聖剣だった物を拾い上げて仲間と共に冒険者ギルドから出て行った。
すると、冒険者ギルド内では歓声が沸いた。
冒険者ギルドの仲間達も勇者の言動に腹が立っていたみたいだった。
「手を斬り落とした時はやり過ぎとも思ったけど、正直清々したわ。」
「まぁ、当然の報いだろ? それよりも、これからが大変だぞ…あのヴェルガンは。」
ヴェルガンは港から本国に向けて船に乗って行った。
ヴェルガン的には、公爵家に助けを求めてテッド達をどうにかしてもらおうと思っているのだろうが、勇者の資格と聖剣を失ったヴェルガンの未来はもう決まっている様な物だった。
「公爵家に招き入れられる…魅力的な話だったけど良いのかな?」
「招き入れられた所で政治の道具に使われるのがオチだ。 もしかしたら次は公爵家その者が来るかもしれないが…まぁ、勇者を失った事で没落する貴族に俺達をどうする力は無い筈だ。」
勇者と聖剣を失ったティスタニア公国は、その後…どうなったかはテッド達は知る由もなかった。
まぁ、例え国が滅んだとしてもテッド達には関係の話だった。
「また…無駄な事で1日が過ぎてしまった。 そろそろ対策を考えないとな…」
魔王討伐まで、残り4日…
「魔王達がこの魔剣シーズニングを恐れる理由は何なのだろうか?」
第一の封印解除の剣のテクニカルセイバーは、緑の刀身で素早さを上げる剣だ。
第二の封印解除の剣のアメージングセイバーは、青の刀身で力を上げる剣。
第三の封印解除の剣のドレインセイバーは、赤い刀身で全てではないが、物質以外を吸収するを持つ剣。
第四の封印解除の剣のエレメンタルセイバーは、黄色の刀身であらゆる属性を纏う剣。
第五の封印解除の剣のエターナルセイバーは、光の刀身で全てを斬る剣…だと思う。
「封印解除時の剣の力を恐れている…のか?」
これらの封印解除の剣の効果って、調味料と関係があるのだろうか?
封印解除の力を恐れるのは分かる。
だが、封印解除前に恐れていた理由って…あぁ、そういう事か!
「戦う度に刀身に宿る属性が変化するんじゃ対応が出来ないよな?」
この世界の聖剣や魔剣の資料をギルマスに見せて貰った事があった。
聖剣は主に聖属性や光属性を宿している。
魔剣は刀身の色によって属性が違う。
例えば、赤い刀身なら炎、紫の刀身なら雷、青い刀身なら水か氷の様に。
だが、魔剣シーズニングには刀身その物が無い。
他の聖剣や魔剣の様に刀身の土台が金属ではなく、調味料で固められた物…なので、敵も見ただけで属性を判断するのは不可能に近いのだろう。
「残り5日ほどでどれだけ試せるか…だが?」
テクニカルセイバーは良く使用している。
使い勝手が良い所為もあるが、比較的に魔力消費量が低いというのもあるからだ。
エターナルセイバーを使用した時は、魔力を半分以上ゴッソリもってかれたのであまり使用したくはない。
その他の物も…まぁ、別な理由があるが…今は話すのは止めよう。
「とりあえず、冒険者ギルドに顔を出してから討伐クエストでも受けるか…」
この島には…全てではないが目に付く魔獣の類は殆ど倒してしまった。
だが、魔獣に近い魔物もいるので事は足りる。
リット達も魔王決戦の為に、森の奥の方で魔物討伐をするといって朝早く出て行った。
少しでもレベルを上げておきたいそうなのだが、リットはレベル70でルットとロットはレベル60なので、森の奥に入ってもそれ相応に強い魔物はいるのだろうか?
まぁ、レベル上げ自体が強さに繋がる訳ではなく、経験や実戦がレベル上げより功を成す場合もあるので…
俺は冒険者ギルドの扉の前に行くと、ギルド内がいつもと違って騒がしい事に気が付いた。
扉を少し開けて中を見ると、豪華な装備を身に付けたパーティーが騒いでいた。
「テッド・リターンズはまだ来ないのか⁉」
「だからテッド君はまだ来ていないんです!」
豪華な装備の男は、ライラに突っ掛かっている様だった。
テッド…は俺か!
俺はあんな奴は知らんが?
思い当たるとしたら…俺を倒して名声を上げようとする輩か、昨日ボッコボコにした貴族が仕返しに呼んだのか?
このまま去ろうとかとも思ったのだが、このままではライラが気の毒なので助ける事にした。
「テッド・リターンズは俺だが、何の用だ?」
「あ、テッド君! この人達は…」
「お前がテッド・リターンズか! 待ちわびたぞ‼ 俺と戦え!」
またか…昨日の貴族と言い、最近こういう輩が増えて困るな。
この島では俺に戦いを挑もうとする者はいないが、他国から来た者は別だった。
魔王の幹部を倒したのが12歳の少年だと聞くと、なめてかかってくる奴が後を絶たないのだ。
「戦う理由がない! 以上!」
「お前になくても俺にはある!」
「ならギルドカードを見せて、俺も見せるから。」
俺と男のギルドカードを見せ合った。
「レベル41か…妹達より低いな。」
「レベル99だと⁉ 人類最高レベルが86だというのに、それを越すレベルだと⁉」
「これでわかっただろ? あんたが何所の誰だか知らないけど、戦ったらどうなるか位は解るよな?」
「俺は…武の勇者のヴェルガンだ! 魔王討伐の為に…」
「幹部すら倒していないのに、魔王討伐か? 知と魔の勇者の様に殺されるのがオチだぞ?」
「・・・・・・・・・」
俺の言葉により、落ち込んでいる様だった。
豪華そうな装備を身に付けていても実績が無いんじゃ、その鎧もただの飾りだな。
さすがに差を感じたのか、何も言わなくなって地面を見つめている。
そんなのに付き合うほど暇ではないので立ち去ろうとした。
だが…?
「俺を仲間にしてくれ…」
「断る! レベルを上げて出直して来い!」
俺はヴェルガンが言い終わる前に言った。
するとヴェルガンは剣を抜いた。
刀身には光を纏っている所を見ると、ヴェルガンの持つ剣も聖剣みたいだった。
さすがは勇者を名乗るだけはあるとは思ったが…?
「剣を抜いて…どうする気だ?」
「俺と戦ってもらう為だ! 知っているか? ジョブがあるとないとでは、レベル差があってもステータスまではそう違いは無いという事を…」
「勇者というのがどの程度かは知らないけど、それはレベル60の剣聖より性能は上なのか? 俺のレベル99のステータスは、レベル60の剣聖に比べると性能は落ちるが…それでもレベル40の奴よりはまだ高いと思うが?」
ヴェルガンは俺のギルドカードと自分のを見比べているが、差の開きが明らかだった。
これで諦めるか…と思っていたが、まだこの場に留まっていた。
ギルマスがこちらを様子見ている感じが目に付いたが、こちらには来る事はなかった。
ヴェルガンは意思を固めた表情をしてから俺に言った。
「実は俺はな…ティスタニア公国の武の勇者で…お前等の叔父だ!」
「へーそうですか…」
ヴァルガンは呆気に捕らわれた表情をした。
それもその筈、意を決して発言した内容に塩対応だったからだ。
「俺は、お前等の母カノンの弟なんだよ!」
「はいはい叔父さんね…だから何ですか?」
「叔父の頼みでも断るつもりか?」
「俺の母さんは…父さんと一緒になりたいが為に親に相談したら勘当されたと聞いていますので、親族はいないと思っているから、あんたが仮に叔父だとしても俺達には関係ない話だ!」
この話はテッドの幼い頃の記憶を見て知っていた。
両親が死んで困窮な貧困生活を送っているのに手も貸さないで、今更叔父を名乗った所で反応は変わらない。
これはテッドも同意していた事だからだ。
いつか親族が現れるかもしれないが、今迄に何も干渉してこなかった癖に幹部討伐の功績で名乗り上げようとする輩が居るかも知れない…テッドと妹達は一切かかわらないという事にしたのだった。
だが、この男はまだ引き下がらなかった。
「なら、お前の妹達にも合わせろ! それでも話が変わらなければ、この件から手を引こう。」
「無駄だと思うけど、わかった。」
俺とヴェルガンは冒険者ギルド内で待つ事にした。
俺が外に出て妹達と話をして、断る事を阻止する為らしいが…
2時間後…リット達は冒険者ギルドに入って来たのだった。
「リット、どうだった?」
「強敵という程の魔物はいなかったけど、レベルは幾つか上がったよ。 それでね…」
「お前達がテッドの妹達か…なるほど、カノン姉さんの面影があるな。」
「キ…テッド兄さん、この人は誰?」
俺はリットに合図をした。
俺がキッドという事を知っているのは、ギルマスと妹達だけで他の者は知らない。
何もない時はキッド呼びを許しているが、それ以外ではテッドと呼ぶ様にしているのだった。
「この人はティスタニア公国の武の勇者で、母さんの弟で俺達の叔父だってさ。」
「そうなんだ~で、その人が何の用なの?」
「魔王討伐の際に一緒に戦いたいとか言っているけど…」
「レベルは?」
「41だってよ。」
「話にならないね。」
母親の弟が現れて心が動くとも思ったが、リットは冷静に対処した。
まぁ、当然だよな?
「俺はティスタニア公国の公爵家で、お前達の母親も公爵家の人間だったんだ!」
「そうですか…それがどうかしたのですか?」
「俺の親…お前達からだと祖父になるな。 お前達を公爵家に招いても良いと言付かって…」
「興味ないので良いです。」
リットの対応は、俺以上の塩対応だった。
ヴェルガンが気の毒になる位に落ち込んで…はないか。
「何故だ! 公爵家だぞ‼」
「公爵家って、王族に近い立場ですよね?」
「まぁ…そうだな。 俺の親父は、王の弟だ。」
「なら、それだけの権力があれば…私達を探すのも容易い事ですよね?」
「あぁ! なので、幹部討伐がリターンズ家が関わっていると聞いてお前達に声を…」
「なら幹部討伐の話が無ければ、私達は探される事すらなかったという訳ですよね?」
「まぁ…そうなるな。」
「それはただ単に、私達の功績が欲しくて声を掛けただけに過ぎないんじゃないですか? 私達が本当に貧窮な生活を送っている時にすら見捨てた癖に、今更招き入れてやるって…人を馬鹿にするのも大概にしなさい!」
「うん、良く言った!…という訳だ、お呼びじゃないからさっさと帰れ!」
ここまで言われれば、ヴェルガンも…いや、普通の人間なら折れる筈だった。
だが、ヴェルガンはそれでも食い下がって来た。
「わかった…公爵家に招き入れるという話は無しでも良い。 だが、魔王討伐の際には俺達も同行を…」
「それこそ断る! 悪いがお前達の事は一切信用出来ないし、お前達に背中を預ける気にもなれない。 魔王を倒した後に俺達を殺して手柄を横取りして、英雄達は魔王との戦いで命を落とした…なんていう筋書きに付き合う気も無いからな‼」
「いや…俺はそんな事は…」
言い淀んでいる所を見ると、図星を刺されていた感じだった。
まぁ、勇者の立場を考えると分からなくはない。
勇者に選ばれると、国や世界から無条件で優遇されるが…それは功績があってからの事。
魔王の幹部の討伐はしてない、魔王も討伐出来ない…そんな勇者は不要な存在として消され、その国や家族も非難されるか、最悪は始末の対象になるからだ。
そんな勇者が取る最後の手段と言えば、当然…?
ヴェルガンは聖剣を抜いて構えてこう言った。
「なら、俺達と…」
俺はテクニカルセイバーでヴェルガンの聖剣を持っている手首を斬り落とすと、ドレインセイバーで斬った手に突き刺して勇者の紋章を吸い取った。
そして聖剣の光属性も同時に吸い込むと、聖剣はただの剣に成り下がった。
「な…何をした⁉」
「これであんたはもう勇者でも何でもない! 命は見逃してやるからとっとと失せろ‼」
そういうとヴェルガンは、自分の手と聖剣だった物を拾い上げて仲間と共に冒険者ギルドから出て行った。
すると、冒険者ギルド内では歓声が沸いた。
冒険者ギルドの仲間達も勇者の言動に腹が立っていたみたいだった。
「手を斬り落とした時はやり過ぎとも思ったけど、正直清々したわ。」
「まぁ、当然の報いだろ? それよりも、これからが大変だぞ…あのヴェルガンは。」
ヴェルガンは港から本国に向けて船に乗って行った。
ヴェルガン的には、公爵家に助けを求めてテッド達をどうにかしてもらおうと思っているのだろうが、勇者の資格と聖剣を失ったヴェルガンの未来はもう決まっている様な物だった。
「公爵家に招き入れられる…魅力的な話だったけど良いのかな?」
「招き入れられた所で政治の道具に使われるのがオチだ。 もしかしたら次は公爵家その者が来るかもしれないが…まぁ、勇者を失った事で没落する貴族に俺達をどうする力は無い筈だ。」
勇者と聖剣を失ったティスタニア公国は、その後…どうなったかはテッド達は知る由もなかった。
まぁ、例え国が滅んだとしてもテッド達には関係の話だった。
「また…無駄な事で1日が過ぎてしまった。 そろそろ対策を考えないとな…」
魔王討伐まで、残り4日…
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