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第二章

第五話 間抜けな勇者2人

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 クレーメルの街のある場所は、6つの大陸から離れた場所に位置する…サウシュヴァウント王国の管轄にある島なのである。
 島と言っても、1日で回れるほど狭くは無く…北海道位の大きさの島なのであるが…?
 他の大陸が大きすぎる為に、この大きさでも島と認定されるのであった。
 クレーメルの街がある場所が大体函館あたりだと思って欲しい…
 それ以外の個所は、村はいくつか存在はするが…基本的には未開の地なのである。

 そして…知の勇者と魔の勇者とそのパーティーはクレーメルの街の港に降り立ったのだった。
  
 「なんというか…建式が古い建物ばかりだな…?」
 「まぁ、都会から離れていますからね。」

 2人の勇者は、情報集めの為にパーティーを残して歩いていたのだが…?

 「ウィンザー…なんで僕の横を歩くんですか?」
 「仕方ないだろジーニアス! 俺は本来隣に歩くのは女と決まっているんだが、初めての土地というのは慣れなくてな…」
 「嫌なら1人で他を歩けば良いでしょ! 貴方は仮にも勇者なのですから…」
 「仮にもって何だ! 仮にもって…まぁ、同じ勇者のよしみで良いじゃねえかよ!」

 2人は悪態を吐きながら冒険者ギルドを目指していた。
 とは言っても?
 女好きのウィンザーは、街に歩く女性に声を掛けたり、ジーニアスに至っては…手駒になりそうな冒険者を物色しているという勇者にあるまじき物だった。
 そしてなんだかんだと時間が経過して…やっとの事で冒険者ギルドに辿り着いたのだった。

 「冒険者ギルドは…普通なんだな?」
 「そりゃそうでしょう…冒険者ギルドの建物は、世界の冒険者協会の規定で決められていますからね。 地方によっては多少大小は合っても、大きさ的には変わりませんよ。」

 2人の勇者は、冒険者ギルドの中に入って行った。
 すると、冒険者ギルド内の冒険者達は一斉に2人を見た。
 この街では無い服装の勇者達に冒険者達は声を掛けて来た。

 「あんたらは…他所から来たな?」
 「あぁ…この街に剣聖が誕生したと聞いてね。 勧誘しに来たんだが…」
 「剣聖は女という話だろ? いい女なのか?」

 ジーニアスとウィンザーは、冒険者ギルドに入った瞬間に好き勝手な事ばかり言っていた。
 その話を聞いた冒険者達は、大声で笑った。

 「何だよ、何がおかしいんだよ⁉」
 「不快ですね…やはり辺境の冒険者は下品ですね。」
 「下品か…まぁ、上品ではないわな。 それにしてもお前等は、何も知らないで来たのか?」
 「何をですか?」
 「この島で生まれたのは、剣聖だけじゃねぇんだよ。 聖女と魔人も生まれたのさ!」
 「治癒術士の最高位の聖女と、魔道士の最高位の魔人もですか…それは3人を招き入れたら大きな戦力になりそうですね。」
 「魔人は俺様と被るが…聖女という事は女だな。 魔人も女なら、俺様のパーティーに入れてやろう!」

 2人の勇者は好き勝手な事を言っていた。
 だが、それを遮る様にある冒険者は言った。

 「それは無駄だな! 剣聖も魔人も聖女も英雄様のパーティーメンバーだ。」
 「この島で生まれた英雄ですか…どの程度の魔物を倒して英雄なんですか?」

 ジーニアスは呆れながら言った。
 ウィンザーも隣で笑っていた。

 「マーダーグリズリーっていう魔獣の変異種だよ。 コイツが現れてから他所の国にも要請をしてCランクパーティーやBランクパーティーが挑んで行ったが、生きて帰って来た者はいなかった。」
 「それで…その英雄と呼ばれた方のパーティーに剣聖や魔人や聖女がいたのですね。 その英雄というのがどの程度の強さは知りませんが、所詮上位ジョブの力を借りての勝利だったのでしょう?」
 「いや、英雄様は単騎討伐で倒したぞ! その時はまだパーティーが居なかったしな…」
 
 ジーニアスは鞄の中から懸賞金付きの討伐依頼書を出してみていた。
 すると冒険者が、その依頼書の1つを取り出して見せたのだった。

 「この魔獣を…単騎討伐したのですか⁉」
 「これを上位ジョブの力を無しでか⁉」

 勇者2人は思った。
 自分等でも勝てる確率が極端に低いと思う相手に、たった1人で勝利したという話に…
 ならば、この者も引き入れられれば…そう考えていたのだった。

 「ちなみにその英雄というのは、女か?」
 「男だ。」
 「なら興味は無いな…他の上位の女達は全て貰う!」
 「馬鹿を言うな! 君の所は結構な大所帯だろ? 僕に譲ってくれ…全員な!」

 勇者ジーニアスのパーティーは、ついこの間に付いていけないという理由で2人辞めて行って現在は3人だった。
 反対に勇者ウィンザーは、様々なジョブの女性が8人程いるパーティーだった。

 「お前等…何好きな事をほざいているんだよ? お前等は一体何者なんだ⁉」
 「おっと、名を名乗るのが遅れましたね。 僕はジルスタニア王国の勇者で知のジーニアスという。」
 「俺様は魔導国ヴィラバリアスの勇者で魔のウィンザーだ!」
 「なるほどな。 いまだに魔王の配下すら倒せていない、勇者とは名ばかりのへっぽこか。」
 「あぁ⁉ 誰がへっぽこだって⁉ そこにいるジーニアスはともかく、俺様をそんな風に呼ぶな‼」
 「それは聞き捨てなりませんね…ただ人数だけが多くて討伐数が少ない貴方に言われたくはないですよ‼ 貴方の方がよっぽど、へっぽこという言葉がお似合いでしょう!」

 どっちもどっちという気もするけど…?
 勇者2人は、くだらない理由でいがみ合っていた。
 そこへ冒険者が言った。

 「お前等をへっぽこと呼んだのは理由がある。 この街の英雄様は、魔王の幹部を2人討伐されたのだ。」
 「何⁉ 魔王の幹部をだと⁉」
 「それも上位ジョブの力を借りてですか?」
 「2人目はそうだが、1人目は英雄様と剣聖様で倒したという話だ。」

 テッド達の魔王幹部の討伐は、さすがに2人目ともなると隠す事が出来ずに公表をした。
 その公表は、全ての冒険者ギルドに伝わっていた筈なのだが、勇者2人には伝わってなかった。

 「面白い…やはり全員僕のパーティーに入れるべきだな!」
 「抜け駆けは許さんぞ! 女達は俺達のパーティーに‼」
 「ちなみにその英雄様達はどこにいますか?」
 「この時間なら…多分草原にいるだろうな。 恐らく…」
 「草原か…よし!」

 ジーニアスはそういうと、冒険者ギルドから出て行った。
 それを追う様にウィンザーも出て行ったのだった。

 「アイツ等せっかちだな…? 俺は英雄様としか話していないから、特徴を話すつもりなのに聞く前に出て行きやがった。」
 「お前…態と言わなかったんだろ?」
 「当然だ! アイツ等は何か気に入らん!」
 「同感だ! 人をモノみたいに扱いやがって…」

 ジーニアスとウィンザーは、魔道具でパーティーを呼び出した。
 そして街を出て草原に向かう勇者パーティーだったが…?
 はたして、テッド達に無事に会えるのだろうか?
 それに草原のちゃんとした場所を聞かないと、この島の草原はかなり広い事を勇者2人は知らなかった。
 
 そして…勇者2人のパーティーとテッド達が出会う時!
 とんでもない者とも鉢合わせる事になるのだった。
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