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第一章
第三話 新たなる調味料…
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僕は街の中を血の付いた大きな袋を担いで移動していた。
行く先々の住人達が、僕を見ていた。
僕はこの街では、ある意味…有名人だった。
なので、物珍しさから来る物だろうと思って無視して歩いているのだが…?
明らかにいつもと様子が違って、僕を指さして笑う者が居なかった。
僕は気にせずに冒険者ギルドに入った。
「よぉ、調味料! 今日の収穫は?」
…という、毎度お馴染みの声が無かった。
いつもヤジを飛ばす冒険者はいるが…全く言って来なかったのだ。
「なんか…やけに静かだな?」
僕はギルドの受付に行くと、ライラさんに声を掛けた。
「依頼達成の品と、討伐証明部位をお願いしたいのですが…」
「…テッド君…よね?」
この冒険者で僕と同じ年頃の子はいない。
皆ほとんどが、成人かそれより上の大人達だからである。
それに僕は、毎日冒険者ギルドに来ているから…見間違える事は無いと思うのだけど?
「とりあえず、依頼の品の納品と討伐証明部位の買取をお願いしたいのですが…」
「その前に、裏に井戸があるからそれを何とかしてきなさい!」
僕はライラさんに言われるまで気付かなかったが…体中魔物の血だらけになっていたみたいだった。
顔も体も…ほぼ全身に浴びていた。
そういえば、解体もそうだけど…魔物にトドメを刺す時は、結構返り血を浴びていたっけ?
それでか、街の中や冒険者ギルドが静かだったのは…
僕は依頼の品や解体した肉の袋をカウンターの横に置かせてもらってから、冒険者ギルドの裏に回って…井戸で水浴びをするのだった。
そしてさっぱりした後で、改めて依頼の品の納品や討伐証明部位を提出したのだった。
「では、確認致しますので見せて下さい。」
「えっと…? まずは採取依頼の薬草が18個で…ホーンラビットの角が14本、ドリエリアドッグの右耳が13個をお願いします!」
「…え? テッド君、討伐依頼なんかしていましたっけ?」
ライラさんは、驚いた表情で僕を見た。
「実は…薬草採取の際に、ドリエリアドッグと出くわしまして…」
「テッド君の体では、ドリエリアドッグを相手には辛かったでしょう?」
「はい、何度か死を感じました。 ですが、その時に…以前ニコライさんとの会話を思い出しまして…」
冒険者ニコライという30代後半の男は自分を指さした。
「塩が魔法の様に放てるのを思い出して、塩を放ったら相手が苦しみだしたので、その隙にトドメを刺す…というやり方を何度か繰り返していたら、これだけ狩る事が出来ました! もっとも、全てが上手く行った訳ではありませんが…」
「そうだったのね…討伐依頼ではないので、この魔物の証明部位は半額になってしまいますが…ですが、Hランクからの昇格条件は満たしていますので、Gランクになる事が可能ですが如何致しますか?」
「もちろん、お願いします!」
ライラさんは僕のギルドカードを受け取って、クリスタルで手続きを行っていた。
すると、何かに気付いた様だった。
「テッド君、レベルが上がっていますよ?」
「あ、本当だ! レベル3か…」
僕はギルドカードをライラさんから受け取って確認した。
すると、新たな調味料と特殊効果を覚えていた。
「レベル2で放出量アップ! だから、少し離れた魔物にも塩が届いたのか…それと、新たな調味料が………ビネガー?」
「酢の事ですね。 ワインビネガーやバルサミコ酢といった調味料の類ですね。 肉と一緒に煮込むと肉質を柔らかくしてくれます。」
「だとすると、今日解体したドリエリアドッグの肉には有効かな?」
「え?」
僕は血の付いた大きな袋の中身を見せた。
綺麗に解体されている為に、袋の中はそれほど血の量は多くはない。
保存の為に、塩を振り掛けていたので駄目になっている物は無いと思ったんだけど…?
スキル調味料の塩が料理の味付けと攻撃に使えるという以外に、こういう使い方もあるのかと思わなかった。
「綺麗に解体されているわね?」
「これは、以前父さんに教えて貰いましたので…」
「なるほど、通りで…」
僕はライラさんとの会話が終わると、報酬を貰ってギルドから出ようとした。
その時に、冒険者の方々から「ランクアップおめでとう!」という声を掛けられた。
僕はお礼してからギルドを出た。
「今日は…? 肉はこれだけあるから、肉屋には寄らなくても良いかな? その分、パン屋に行って耳ではない普通のパンの分にまわせるな! 後は野菜だけど…?」
僕は帰りにパン屋に行って、主人から普通のパンを購入した。
そして八百屋に行き、クズ野菜と果物を購入した。
この世界では、スィーツはあるのだが…砂糖が物凄く高いので貴族くらいしか口に入らず、平民には手が出ない。
その代わり、平民にも手が届く果物を購入したのだが…当然、甘みの強い物はそれ相応の値段がする為に、僕は安めのリンガ(林檎)を購入したのだった。
そして家に帰ると、妹達が迎えてくれたのだ。
「お兄ちゃん…何か大きな袋を持っているわね? それに血?」
「あぁ、今回は討伐で肉が入ったので…肉屋には寄らなかった。 これで料理をお願い!」
「うわぁ、お肉たくさんあるね…それに、パン? 耳じゃない! あと果物も…」
「今日くらい良いだろう! それと報告が2つある! リット、壺を用意してくれないか?」
リットはキッチンから壺を持って来た。
僕は蓋を開けると、そこには塩が入っていた。
「あ、これじゃなくて…空の壺を。」
「これで良いのかな?」
僕はリットが持って来た空の壺に、酢を並々と注いだのだった。
そのむせる様な臭いに、リットは一瞬顔をしかめたが…それが酢だと解ると急に笑顔になった。
「これって…酢だよね?」
「そう、これが魔物討伐で新たに覚えた調味料だよ。 それと、Gランクに昇格しました!」
「わぁ! おめでとうお兄ちゃん!」
リットはそう言って、僕に抱き着いて来ると…頬に軽くキスをしてくれた。
そしてすぐに離れると、妹達にも報告に行った。
妹達も僕の所に来てから、祝福をしてくれた。
その日の夕食は、久々にガッツリとした肉料理が食卓に並んだ。
ラビットステーキにドリエリアドッグのシチュー、パンに…デザートには果物付きだ!
こんな豪勢な食事は、両親が生きていた頃でしか無かった為に久々の腹に溜まる料理だった。
それに肉はまだあるが…毎日食べるには少し足りない。
「よし! この方法で、どんどん討伐依頼をして行くぞ!」
「私達は嬉しいけど、あまり無理はしないでね。」
僕は無理をしない事を妹達に約束してから、その日は肉の余韻に浸りながら眠りに就いた。
翌日…何だか体が充実するぐらいに漲っている感じがした。
僕はいつも通りに朝食を済ませると、家を出ようとした。
「待ってお兄ちゃん! 昨日のお肉で作った干し肉があるから持って行って!」
「ありがとう、リット! お兄ちゃんは今日も頑張って来るからな!」
僕は干し肉を受け取ってから、冒険者ギルドに今日の依頼をこなす為に家を出たのだった。
そして冒険者ギルドに着いてから、依頼用のボードを見ていると後ろから声が掛かった。
振り向くとそこには…人相の悪い髭面の大男が立っていたのだった。
「おぅ! お前に話があるんだが…」
「すいません、僕は貧乏なのでお金はありませんよ…」
僕がそう言うと、人相の悪い男は僕を睨み付けながらこめかみをピクピクとさせていた。
僕の態度が悪かったのかな?
人相の悪い男は怒った表情をしていた。
さて…この人相の悪い髭面の男は一体誰なのか?
そして何故、こんなに怒った表情をしているのか…?
それは次回に判明します…
行く先々の住人達が、僕を見ていた。
僕はこの街では、ある意味…有名人だった。
なので、物珍しさから来る物だろうと思って無視して歩いているのだが…?
明らかにいつもと様子が違って、僕を指さして笑う者が居なかった。
僕は気にせずに冒険者ギルドに入った。
「よぉ、調味料! 今日の収穫は?」
…という、毎度お馴染みの声が無かった。
いつもヤジを飛ばす冒険者はいるが…全く言って来なかったのだ。
「なんか…やけに静かだな?」
僕はギルドの受付に行くと、ライラさんに声を掛けた。
「依頼達成の品と、討伐証明部位をお願いしたいのですが…」
「…テッド君…よね?」
この冒険者で僕と同じ年頃の子はいない。
皆ほとんどが、成人かそれより上の大人達だからである。
それに僕は、毎日冒険者ギルドに来ているから…見間違える事は無いと思うのだけど?
「とりあえず、依頼の品の納品と討伐証明部位の買取をお願いしたいのですが…」
「その前に、裏に井戸があるからそれを何とかしてきなさい!」
僕はライラさんに言われるまで気付かなかったが…体中魔物の血だらけになっていたみたいだった。
顔も体も…ほぼ全身に浴びていた。
そういえば、解体もそうだけど…魔物にトドメを刺す時は、結構返り血を浴びていたっけ?
それでか、街の中や冒険者ギルドが静かだったのは…
僕は依頼の品や解体した肉の袋をカウンターの横に置かせてもらってから、冒険者ギルドの裏に回って…井戸で水浴びをするのだった。
そしてさっぱりした後で、改めて依頼の品の納品や討伐証明部位を提出したのだった。
「では、確認致しますので見せて下さい。」
「えっと…? まずは採取依頼の薬草が18個で…ホーンラビットの角が14本、ドリエリアドッグの右耳が13個をお願いします!」
「…え? テッド君、討伐依頼なんかしていましたっけ?」
ライラさんは、驚いた表情で僕を見た。
「実は…薬草採取の際に、ドリエリアドッグと出くわしまして…」
「テッド君の体では、ドリエリアドッグを相手には辛かったでしょう?」
「はい、何度か死を感じました。 ですが、その時に…以前ニコライさんとの会話を思い出しまして…」
冒険者ニコライという30代後半の男は自分を指さした。
「塩が魔法の様に放てるのを思い出して、塩を放ったら相手が苦しみだしたので、その隙にトドメを刺す…というやり方を何度か繰り返していたら、これだけ狩る事が出来ました! もっとも、全てが上手く行った訳ではありませんが…」
「そうだったのね…討伐依頼ではないので、この魔物の証明部位は半額になってしまいますが…ですが、Hランクからの昇格条件は満たしていますので、Gランクになる事が可能ですが如何致しますか?」
「もちろん、お願いします!」
ライラさんは僕のギルドカードを受け取って、クリスタルで手続きを行っていた。
すると、何かに気付いた様だった。
「テッド君、レベルが上がっていますよ?」
「あ、本当だ! レベル3か…」
僕はギルドカードをライラさんから受け取って確認した。
すると、新たな調味料と特殊効果を覚えていた。
「レベル2で放出量アップ! だから、少し離れた魔物にも塩が届いたのか…それと、新たな調味料が………ビネガー?」
「酢の事ですね。 ワインビネガーやバルサミコ酢といった調味料の類ですね。 肉と一緒に煮込むと肉質を柔らかくしてくれます。」
「だとすると、今日解体したドリエリアドッグの肉には有効かな?」
「え?」
僕は血の付いた大きな袋の中身を見せた。
綺麗に解体されている為に、袋の中はそれほど血の量は多くはない。
保存の為に、塩を振り掛けていたので駄目になっている物は無いと思ったんだけど…?
スキル調味料の塩が料理の味付けと攻撃に使えるという以外に、こういう使い方もあるのかと思わなかった。
「綺麗に解体されているわね?」
「これは、以前父さんに教えて貰いましたので…」
「なるほど、通りで…」
僕はライラさんとの会話が終わると、報酬を貰ってギルドから出ようとした。
その時に、冒険者の方々から「ランクアップおめでとう!」という声を掛けられた。
僕はお礼してからギルドを出た。
「今日は…? 肉はこれだけあるから、肉屋には寄らなくても良いかな? その分、パン屋に行って耳ではない普通のパンの分にまわせるな! 後は野菜だけど…?」
僕は帰りにパン屋に行って、主人から普通のパンを購入した。
そして八百屋に行き、クズ野菜と果物を購入した。
この世界では、スィーツはあるのだが…砂糖が物凄く高いので貴族くらいしか口に入らず、平民には手が出ない。
その代わり、平民にも手が届く果物を購入したのだが…当然、甘みの強い物はそれ相応の値段がする為に、僕は安めのリンガ(林檎)を購入したのだった。
そして家に帰ると、妹達が迎えてくれたのだ。
「お兄ちゃん…何か大きな袋を持っているわね? それに血?」
「あぁ、今回は討伐で肉が入ったので…肉屋には寄らなかった。 これで料理をお願い!」
「うわぁ、お肉たくさんあるね…それに、パン? 耳じゃない! あと果物も…」
「今日くらい良いだろう! それと報告が2つある! リット、壺を用意してくれないか?」
リットはキッチンから壺を持って来た。
僕は蓋を開けると、そこには塩が入っていた。
「あ、これじゃなくて…空の壺を。」
「これで良いのかな?」
僕はリットが持って来た空の壺に、酢を並々と注いだのだった。
そのむせる様な臭いに、リットは一瞬顔をしかめたが…それが酢だと解ると急に笑顔になった。
「これって…酢だよね?」
「そう、これが魔物討伐で新たに覚えた調味料だよ。 それと、Gランクに昇格しました!」
「わぁ! おめでとうお兄ちゃん!」
リットはそう言って、僕に抱き着いて来ると…頬に軽くキスをしてくれた。
そしてすぐに離れると、妹達にも報告に行った。
妹達も僕の所に来てから、祝福をしてくれた。
その日の夕食は、久々にガッツリとした肉料理が食卓に並んだ。
ラビットステーキにドリエリアドッグのシチュー、パンに…デザートには果物付きだ!
こんな豪勢な食事は、両親が生きていた頃でしか無かった為に久々の腹に溜まる料理だった。
それに肉はまだあるが…毎日食べるには少し足りない。
「よし! この方法で、どんどん討伐依頼をして行くぞ!」
「私達は嬉しいけど、あまり無理はしないでね。」
僕は無理をしない事を妹達に約束してから、その日は肉の余韻に浸りながら眠りに就いた。
翌日…何だか体が充実するぐらいに漲っている感じがした。
僕はいつも通りに朝食を済ませると、家を出ようとした。
「待ってお兄ちゃん! 昨日のお肉で作った干し肉があるから持って行って!」
「ありがとう、リット! お兄ちゃんは今日も頑張って来るからな!」
僕は干し肉を受け取ってから、冒険者ギルドに今日の依頼をこなす為に家を出たのだった。
そして冒険者ギルドに着いてから、依頼用のボードを見ていると後ろから声が掛かった。
振り向くとそこには…人相の悪い髭面の大男が立っていたのだった。
「おぅ! お前に話があるんだが…」
「すいません、僕は貧乏なのでお金はありませんよ…」
僕がそう言うと、人相の悪い男は僕を睨み付けながらこめかみをピクピクとさせていた。
僕の態度が悪かったのかな?
人相の悪い男は怒った表情をしていた。
さて…この人相の悪い髭面の男は一体誰なのか?
そして何故、こんなに怒った表情をしているのか…?
それは次回に判明します…
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