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最終章

最終回 物語の結末…

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 「やっぱり…マジックバックもただのウエストバックになってる。 どうしたら良い?」

 僕は家に帰るなり、もしもの可能性を考えてバックの中を見た。
 異世界では、青い猫型ロボットの様な四次元みたいな収納になっていたのに、元の世界に戻ればその機能は失われていた。
 僕は横になってペンダントを外してから、見ながら言った。
 
 「メーモ…僕は必ず戻るからね!」

 僕はこの家の者達に見付からない様にペンダントをマジックバックに入れてから、鞄の奥底の方に入れた。
 ところが、それをこの家の年下の長女に見付かっていたのだった。

 ・・・・・・・・・この家の長女の高美・・・・・・・・・

 「何よアイツ…誰から貰ったのよ、あんな綺麗なペンダント? アイツには勿体ないし、私が貰っておくわ!」

 高美は輝斗が寝ている隙を見て、鞄の中からバックを取り出した。
 そしてバックを開けると、中のペンダントを抜き取ったのだった。
 高美は自分の部屋に行ってから鏡を見ながら言った。

 「ほら、私に似合っているじゃない! アイツよりも私の方が似合うから、これはもう私の物よ!」

 ・・・・・・・・・輝斗・・・・・・・・・

 輝斗は朝起きると、早々に学校に行くのだった。
 だがこの日は違った。
 朝起きてから鞄に入っていたバックが、鞄のすぐそばに落ちていた。
 そして中に入っていたペンダントが抜き取られていた。

 「こんな事をするのは高美か…迂闊だった! 今まで奪われた物は大した物じゃなかったけど、このペンダントは別だ‼」

 僕はウエストバックを身に付けると、居間の方に顔を出した。
 そして高美を探すと、自分の母親にペンダントを見せびらかしていたのだった。

 「高美、それを返してくれ!」
 「あら、これは私のよ? 返してくれなんておかしなことを言うのね。」
 「それは大事な人から貰った物なんだ! 返してくれ‼」
 「あなたには似合わないから私が貰ったのよ!」
 「本当に大事な物なんだ、返してくれ‼」
 「しつこいわね…お兄ちゃん、輝斗が生意気なんだけど!」
 「おい、妹に絡んでんじゃねぇよ‼」

 僕はこの家の長男の孝也に殴られて吹っ飛んだ。
 それを見ていた高美は、殴られて倒れている僕にこう言った。

 「お兄ちゃんに勝てる訳ないでしょ! 身の程を知りなさいよ!」
 「本当に大事な物なんだから返してくれ!」
 「お兄ちゃん!」
 「お前…本当にしつこいぞ‼」
 
 僕は顔を殴られて、腹に蹴りを喰らった。
 この家の母親は、僕が気に入らないみたいで止めようとはしない。
 そして娘の横暴を許し、息子の暴力も笑いながら見ているのだった。
 僕は土下座をして、高美に頭を下げて願った。

 「それは本当に大事な物なんです、返して下さい!」
 「はい、だめでぇ~す! これは私の物になったから~きゃはははは!」
 「妹の物を返せってよぉ…まるで妹がお前から盗ったみたいな言い方じゃねぇかよ! 妹がそんな真似する訳ないだろうが‼」

 そして僕は何度も蹴られ、殴られて…身を挺して庇った。
 
 「本当に返してくれ!」
 「しつこいなぁ…」
 「お前…自分の立場が解っているのか?」
 
 高美は綺麗な物に目が無いが、すぐに飽きる癖がある。
 いつもなら飽きるまで待つところだが、今回のはそうはいかない。
 僕は手を出して返す様に言った…が?

 「何度も言うようだけど、これは私の物になったのよ。 返す事も無いから諦めなさい!」
 
 僕はこの世界には本当に帰って来たくなかった。
 僕を同情して引き取ってくれたが、家族の事を見て見ぬふりをする叔父、碌に食事もくれずに子供の横暴をみているだけの叔母、欲しがりだけどすぐに飽きて勝手に捨てる娘、すぐに暴力を奮う息子…
 そして…この原因を作ったあの馬鹿女…
 僕は激しい怒りと共に叫び声を上げたのだった。

 「何を叫んでいるんだよ、うっせぇぞ!」

 僕はまた殴られた…が、今迄の攻撃に比べたら全然痛くなかった。
 僕は孝也を見ると、気に入らないのか孝也は言った。

 「おい、何睨み付けてんだよ!」
 
 そうして孝也が殴ろうとすると、その動きがまるでスローモーションの様に遅かった。
 孝也の拳が届くところで僕が孝也の拳を握ると、力が強過ぎて孝也の拳を握り潰していた。

 「ぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 「どうしたの、お兄ちゃん?」
 
 僕の体は今迄の痛みが嘘の様に無くなっていた。
 そして凄く調子が良かった。
 その状態は、異世界にいた時の様な感じを保っていた。
 
 「もしかして…」
 
 僕はそう思って、腰のバッグに手を入れると…空間の揺らぎを感じたのだった。
 そう、怒りによって力が戻っていたのだった。

 「高美…もう次は無いから、早く返せ!」
 「だからこれは私のだって…お兄ちゃん!」
 「お兄ちゃんって、コイツか!」

 僕は孝也の元に行くと、さっきまでと立場が違う事を思い知らせる為に言った。

 「おい、孝也…さっきはよくも散々殴ってくれたな?」
 「な…何を呼び捨てにしているんだ! 貴様如きが…ぐあっ!」

 僕は孝也の腹に蹴りを入れた。
 その後に、今迄の仕返しをする様に…左ひざをへし折ってから、右ひざもへし折った。
 次に両腕もへし折ってから、後頭部を掴んで床に何度も頭を打ち付けた。
 そして顔がぐちゃぐちゃになり、泣いて謝っていると…その首を持ってから高美に見せた。

 「はい、君のお兄ちゃんです。 ペンダントを返さないと、次はお前がこうなる番だよ!」
 「ひ…ひぃ! これは私ので…お母さん!」
 「あんた、何をやってい…」
 「うるさい!」

 僕は裏拳で叔母の顔を殴ると、遠くに吹っ飛んで行った。
 僕はコンロの前に行って、沸かしてあったやかんを取ると…高美の元に行って言った。

 「はい、あなたの母親もいなくなりました。 次は高美の番ですが、返してくれませんか?」
 「これは私のだって!」
 「あっそ。」
 
 僕は高美の腹に蹴りを入れると蹲っていたので、首の後ろに手をやってからペンダントを抜き取った。
 高美は抜き取られたペンダントを取り返そうと手を伸ばすと、僕は高美の顔に熱湯を掛けたのだった。

 「ぎゃぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 「熱いだろ? お前も僕にこれをやったよなぁ、消毒とか言って…」

 僕はやかんに入っている熱湯の全てを高美にぶっ掛けた。
 ここまでしたら、もうこの家にはいられない。
 まぁ、力が戻ったのならもういる気も無いけど…
 あとは、本当に力が戻ったのかを確認する為に、この家には実験台になって貰いましょう。
 僕はまず、救急に電話をした。
 火事が家の中で起きていると話したら、救急が駆け付けるという話を聞いた。
 そして僕はブーツを履いてから、マジックバックの中から鉄球を取り出してリフティングを開始した。
 
 「鉄球も取り出せたし、炎も纏っているな!」

 僕は鉄球に大玉の火炎を纏わせると、家の中に向かって蹴り込んだ。
 この家では殺されこそしなかったが、召喚前は結構危険な状態だった。
 その100分の一でもこの家族に味合わせたかった。

 「安心してよ、すぐに消防も来るから…この国の消防は優秀だからね!」

 ところが蹴り込んだ場所が悪かったのか、ガスに引火して大爆発を起こしたのだった。
 炎の勢いは凄いが、家に燃え移ったばかりなら消化をすればすぐに消えるだろう。
 すでに消防車の音がするしね。
 僕は最後まで見届けずにその場を去った。
 
 「後は2人の兄ちゃん達に会えれば…だけど、確か△△高校の制服だったから…今頃は、いた!」

 僕は高校生達が学校に入ろうとしている所に、江尾と世相がいたので呼び止めた。
 そして玖華香はいなかったのかが幸いだった。

 「輝斗君は…無事だったのか? いま、君の家の方で爆発が起きたって…」
 「おい、輝斗…お前なんだその姿は?」
 「あ、殴られたままでこんな姿だったね。」
 「やはりあの家で暴力を奮われていたのか!」 
 「なので、仕返しをしたよ。 火炎球を蹴り込んだ。」
 「火炎球って…輝斗は力が戻ったのか?」
 「話したい所だけど、ここでは目立つから移動できないかな?」

 僕達は高校の裏の空き地の方に行って話をした。
 家に帰ってから今迄の事全てを…

 「なるほどね、怒りによって力が戻ったと?」
 「何かのアニメみたいな覚醒の仕方だが、力が…戻ったのは良かったな!」
 「それでね、僕は今度こそ異世界に帰ろうと思っているんだけど…いないよね?」
 「あぁ、玖華香か…今日は見てないな。」
 「もしも来たとしても、今度は自分等で押さえておくから気にするな!」
 「ありがとう、兄ちゃん達!」

 僕はバックの中から魔石を取り出した。
 そしてリフティングを開始した。

 「輝斗君、魔力込めは20回ほどで良い筈だ。 計算ではそれで…5秒くらいは維持出来るから!」
 「わかった! 兄ちゃん達、ありがとう!」

 僕はリフティングを終えると、光と闇を纏わせてから前方に蹴った。
 すると時空の扉が開く瞬間に、玖華香が来ていたのだった。
 江尾と世相は玖華香が来るのを止めて、僕に言った。

 「今の内だ、早く行け‼」
 「今度こそお別れだけど、元気でな‼」
 「待って輝斗君…ダメェェェェェェェェ‼︎」
 
 僕は開いた穴に飛び込んだ。
 そして向こう側で手を振ると、時空の扉はゆっくりと閉じて行ったのだった。

 「あぁ…戻って来れた! …で、ここは何処だ?」

 辿り着いた場所は、エルフの集落では無かった。
 大きな森が広がった場所に出ていたのだった。
 だけど、この場所には見覚えがあった。
 
 「ここって確か…?」

 僕は足元を見ると、足にツタが絡まっていた。
 思い出される悪夢再び…と思った瞬間に僕は引き摺られてその先にはウツボカズラが口を開けて待ち構えていた。

 「またここかぁ~~~~!!!」

 だけど、あの時とはもう違う。
 僕はウツボカズラに喰われる前に、蹴り飛ばして破壊したのだった。
 そして鉄球を取り出してから氷玉で一面を凍結させたのだった。

 「本当にこの植物は絶滅させてやろうか?」
 
 僕はそう言い終わると、エルフ集落に向けて出発したのだった。
 そして走る事数分でエルフの集落に辿り着いたのだが…?
 
 「お主…テト殿か?」
 「ハウザー戻って来れたよ! ところでメーモは?」
 「その前に…テト殿が元の世界に帰ってから、既にこちらでは半年過ぎているんだ。」
 「半年も? そうだったのか…こちらと向こうでは時間の流れが違うのか…それで、メーモは?」
 「テト殿の帰る時間が遅くてな、もしも来たらドワーフ族の集落にいると伝えて欲しいと…」
 「ギル父さん達の集落だね!」
 「いや、違っ!」

 僕は集落と聞いて向かおうとしていたが、ハウザーが何か言ったみたいだが気にせずにエルフの集落から飛び出して行った。
 そして1時間弱で集落に着いたのだが…そこは無人で誰も居なかった。
 僕は家の扉を開けて中を確認したが、家具とかは一切なくなっていた。
 酒場を見ても、酒瓶も無く…工房を見ても仕事道具は一切なかった。

 「どうなっているんだ⁉ あ、シルビア母さんの集落かな?」
 
 僕は更に加速してシルビアの集落に向かった。
 だが、この集落も…中は無人だった。
 家の中を見ても、家具やその他も一切が無くなっていた。
 
 「父さん達やメーモなら、僕が戻って来た時の為に何かの痕跡を残している筈?」

 僕は再び父さん達の集落に戻ると、以前僕が使っていた家に入った。
 先程は見てなかったが、僕の家の中の家具はそのままになっていた。
 だとしたら…?
 何処かに何かを残している筈…そう思って探したが、置手紙すら見付からなかった。

 「父さん達も母さん達もメーモもどこに行ったんだ⁉」

 2つの集落はもぬけの殻で家具類も一切ない。
 それに半年は経過しているし、そう考えると集落を引っ越したという可能性があるけど…何処に引っ越したんだ?
 この魔凶大森林は、一部の地域を除けば…ほぼ未開の地に等しい。
 その中をしらみ潰しに歩き回って探すというのはほぼ不可能に近い。

 「やっとこの世界に帰って来れたのに…」

 僕はメーモがもしも痕跡を残しているとしたらと思い付く場所の中で、とある場所に行った。
 その場所とは温泉で、壁に何か彫られてないかと思って探したが…やはり何も見つからなかった。
 僕は温泉に浸かり考えた。

 「新しい集落の場所は、ハウザーが何かを知っているだろう。 明日ハウザーの元に尋ねて…」

 僕はそのまま眠ってしまった。
 そして顔を突かれている事に気付き、目を開けるとそこには…?

 「テト君、やっと起きた!」
 「メーモ…?」
 
 僕の目の前にはメーモが立っていた。
 湯あたりして幻を見ているとかじゃないよね?

 「メーモ…本当にメーモだよね?」
 「そっちでは何日経過していたか解らないけど、私だよ。」
 「だって…メーモの胸が大きくなっているし!」
 「最初に見る場所はそこなの⁉」

 僕はメーモに抱き着いてから感触を確かめた。
 すると、若干の違和感を感じたのだった。

 「メーモ…少し大きくなった?」
 「それは胸がって事?」
 「いや、身長も…」
 「そりゃ、私だって成長期だから!」
 「メーモ…」
 「テト君ちょっと待って!」
 「待てないよ!」

 僕はそう言って、遮る腕を退かしてメーモにキスをした。
 そして何度も何度もキスをしてから、バスタオルに手を掛けると今度は本気で怒られた。
 
 「何で怒るんだよ⁉」
 「テト君、入り口の方を見て…」

 僕は入り口の方を見ると、父さん達と母さん達がにんまりとした笑顔でこっちを見ていた。
 
 「にひひ…見たぞ、テトよ!」
 「あらら~とっても情熱的なぶちゅーだったわ!」
 「見られていたのか…メーモが止めた原因はこれか!」
 「だから待ってと言ったのに…」

 僕達は服を着てから、新しい集落の場所に行った。
 そこは魔凶大森林から入ってすぐの場所だった。

 「他のハーフリング達が噂を聞いて来た場合、以前の場所だと辿り着ける者もあまりいないと思うてな、場所を移動したんじゃ!」
 「そして私達は旦那とも共に暮らす道を選んだのよ。」
 「そうだったのか…そして、メーミちゃんも…耳と尻尾が大きくなったね?」
 「はい、これだとハーフリングというよりも狐人族と呼ばれるかもしれません。」
 「そして…体つきも。」
 
 僕がメーミちゃんの胸元に目線が行くと、メーモが僕の目に突きを入れた。
 久しぶりだな…この痛み。
 僕は心から反省したのだった。
 そして僕は背後から視線を感じた。
 振り返ってみると、そこにはナーニヌ卿が僕の事を睨みながら言った。

 「お前が帰って来なければ、メーモは自分の婚約者に戻る筈だったに…」

 なるほど、全ての人達が僕が帰還したのを歓迎していたわけではないのか。
 僕はナーニヌ卿を見ながら、メーモとメーミを抱き寄せてからドヤ顔を決めた。
 するとナーニヌ卿は剣の柄に手を掛けて震えていた。
 僕はやり過ぎたかと思ったけど、先程の発言に一矢は報いたはずだ。
 その横に居たルーレさんが僕を見て言ってくれた。

 「ラリーロ・ルーレはテト様を信じていました。 おかえりなさいませ!」
 「ルーレさん、ただいま! また宜しくね!」
 「はい、テト様を新たな主人としてお仕え致しますわ。」

 ん? 主人って…?
 僕はメーモとメーミを見ると顔を赤くしていて、ナーニヌ卿は僕を殺気の放った目で見ていた。

 「テトよ、お前が戻ったらやりたかった事があるんだが…やっても良いか?」
 「皆からはおかえりや歓迎されたけど、それ以外にあるの?」
 「あぁ、あるぞ! まずはお前の家に案内してやる!」

 そう言って僕はギムに連れられて家の前に来た。
 その家は2階建てで、異常なまでに広い家だった。

 「大きい家だね! でも、皆で住むには少し狭くない?」
 
 僕はギムを見ると、ギムは笑って言った。

 「この家は、お前とその家族の為だけの家だ。 ワシらは別な家があるし、今度はシルビアも一緒に住むのでな!」
 「家族の為のって…?」
 「そんな物決まっているだろ、テトとメーモとメーミとルーレ嬢のじゃよ。」
 
 僕はメーモとメーミを見ると、2人は頷いていた。
 僕は訳が分からなかった。
 するとドワンゴがギムに言った。

 「これは2番目のサプライズじゃろう? 最初をすっ飛ばすんじゃない!」
 「あ、そうじゃったな! 最初を忘れてたわい!」

 すると、メーモとメーミはシルビア達に連れられて別な場所に連れて行かれた。
 僕はギム達に連れられて大きな建物の部屋に入れられた。

 「ねぇ、ギム父さん…最初のって何?」
 「教える前に…ワシらがテトに送った鎧とマントはあるよな?」
 「うん、バッグに入っているけど…着れば良いの?」
 「そうじゃ! それを着て、ある場所に向かうんじゃよ。」
 「一体…何がどうなっているのかを教えてよ?」
 「教えたらサプライズにはならんじゃろう!」

 僕は訳が分からないまま、鎧を着てからマントを羽織った。
 そしてギムに連れられて大きな2枚扉の前に立つと、その扉が開かれた。
 床には真っ赤な絨毯があり、その奥にはステンドグラスの窓から光が差し込んでいた。
 その奥の壇上の上に白い装束にベールを纏ったメーモとメーミが立っていた。
 僕はギムに押されて壇上に上がった。
 すると2人の間に居たギルが声を上げて言った。
 
 『お集まりの皆よ、此処に我が息子のテトと我が娘達のメーモとメーミの結びの儀を執り行う‼︎』
 「え、結びの儀⁉︎」

 僕は改めて2人を見た。
 2人には化粧がされていて、いつもよりもずっと可愛かった。
 そして、白の装束は…元いた世界のウェディングドレスとは違うけど、似た様な衣装だった。
 僕は突然の事で固まってしまった。

 『テトよ、宣誓せよ! この2人に永遠の愛を誓い、どんな困難でも乗り越えると誓えるか?』
 「あぁ、誓うよ!」
 『次にメーモとメーミよ、テトに永遠の愛を誓い、その身を捧げることを誓うか?』
 「「はい、誓います!」」

 元いた世界では指輪の交換とかするのだろうけど、この世界では違った。
 僕の手の甲に、花嫁が跪いてキスをするのだった。

 『これによってこの者達の結びの儀は完了した! 居ないとは思うが…異論のある奴は名乗りあげよ!』

 ギルの言葉により、ナーニヌ卿が手を挙げようとした。
 だが、ギルは続けてこう言った。

 『ワシらの息子と娘達の結びの儀に異論なんかを唱えようとするものなら、ワシらが全力で相手をする事になるが…それでも名乗り上げると言う勇気のある者は名乗り出よ‼︎』

 ギム達5人のドワーフは、僕達の前で皆に向かって構えた。
 すると、手を挙げようとしていたナーニヌ卿だったが、ドワーフ達の迫力に押されてすぐに引っ込めた。

 『ふむ…居ないか? つまらん…』
 「父さん達が相手で文句を言う人はいないと思うけど…」
 「さて、テトよ…夫となる者は、皆に今後の抱負を伝えるのじゃが…何かあるか?」
 「なら、1つだけ…僕は2人を幸せにする! でも、今はまだ2人にとっては半分の幸せでしかない。 僕はこれから旅に出て、2人の母親と弟を見つけて此処に戻ってくる! その時に改めて僕は2人に愛を誓う…少し先になるけど、良いかな…メーモ、それにメーミ?」
 「その旅には、私達も同行して良いわよね?」
 「私も姉様も夫を支えて、母と弟を探し出します!」

 会場からは拍手が湧き上がり、ルーレとナーニヌ卿は僕の前に跪いた。

 「その旅には、私も同行をお許し下さい。」
 「今後は貴方を主人として仕えさせて頂きます!」
 「なら、その旅にワシらも同行するぞ!」
 「人手は多い方がいいじゃろ?」
 「勿論だよ、父さん達が一緒なら百人力だ!」
 「なんじゃ、ワシらの評価はたったの百か?」
 「そういうなギムよ、テトよ…必ず見つけ出そうな!」
 「父様達…ありがとう!」
 「父様達、宜しくお願いします!」

 こうして結びの儀は終わり、会場を出ると集落にいたドワーフ達とエルフ達を招いて宴会になった。
 そして、エルフの戦士達も旅に同行する事になった。
 父さん達にエルフの戦士達…
 これなら、目的の人たちも早くに出会えるだろう。

 「テト君…本当にありがとう!」
 「テト様が旦那様で本当に良かった。」
 「全てが終わったら…今度こそ、良いよね?」
 「テト君は本当にスケベね!」
 「テト様は本当にエッチです!」

 そうして僕達は笑い合うと、長く続いた宴会の夜もお開きになるのだった。
 そして翌日…僕達は準備をして集落から旅立つのだった。

 「さぁ、行こう! 2人の母親と弟を探しにね!」
 「はい、頼りにしてるよテト君!」
 「援護はお任せ下さい!」
 「テトよ、ワシらも忘れるなよ!」
 「テト殿、我らもお忘れなき様に!」

 総勢20人の皆は集落を旅立ったのだった。

 「僕の名前は、タチツテト…異世界に召喚されたと思ったら、不要と言われて崖から突き落とされ、ゴブリンに喰われそうになり、食人植物に捕食されそうになり、巨大な熊に襲われたところをドワーフに助けられる。 そして5人のドワーフは僕の父親になってくれて、さらに母親も出来て恋人も出来た。 そしてその恋人は結婚をして妻になった。 元の世界では碌な事がなかったけど、今ではこの世界で幸せになる事ができた!」

 僕の…いや、僕達の旅は始まったばかりだ!
 この先どんなに辛い事が起こっても、3人で乗り越えてみせる!
 僕はやっと幸せを手に入れたのだった。

 ~fin~

 話はこれで終わりですが…
 次回では、それぞれの人物達のその後が描かれますので、夕方かな?の更新までお待ち下さい♪
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アノマロカリス
ファンタジー
ちょっぴり身長の高い女の子のグロリアの身長は196㎝… それってちょっぴりなのか⁉ グロリアはそう言っているが、周りからは【壁女】とか【要塞】と呼ばれている。 何故そんな呼ばれ方をしているかというと、グロリアのジョブの特性から来る物だった。 グロリアのジョブは【アリスガーディアン】 【アリス】と呼ばれるジョブは、想像力を具現化して戦えるというものだ。 そしてグロリアの具現化能力は、主に兵器であり…戦場に出ると彼女がいれば自軍は負け知らずだった。 だがグロリアは、そんな恋愛には向かない能力を気に入ってはいなかった。 どうせだったら、魔法を生み出して攻撃出来る能力が欲しかった。 だけど、これは諦めるしかないけど…身長が低くなれば世間の見方も変わる筈? そんな時に彼女が目にしたある新聞記事が彼女に希望を与えた。 「今度の王国主催の武道大会で優勝をして、優勝者に送られる神の恩恵を手に入れて小さくなったら…誰からも見向きのされる女の子になれる!」 グロリアは燃えだしてから武道大会に参加する事になる。 だが、グロリアの需要を考えると…所属している騎士団からはグロリアの優勝を阻止すべく動き出した。 何故なら現在の身長で兵器を操るグロリアだからこそ、相手を怯ませるのであり…需要が高いからだ。 グロリアの容姿は…普通サイズなら間違いなく男にモテる。 顔は美人でスタイルは良く…気立てが良くて、誰にでも優しい。 だが、身長が高すぎてそれが敬遠される原因になっている。 何故グロリアはそんなに身長が高いのか? それは両親からの遺伝であるからだ! グロリアの父親は巨人族、母親はラミア族だった。(どうやって子供を作ったのかは詮索しない様に…) グロリアの両親は種族間戦争で戦場でお互い出会い、一目惚れをしてから2人で戦場を放棄して結婚をした。 グロリアの身長は父親譲りで、容姿やスタイルは母親譲りだった。 そう…グロリアは人間ではなくてデミだったのだ。 そしてグロリアは、極度の興奮をするとラミア族に変化が出来る能力も兼ね揃えていた。 そんな彼女が望むのは、武道大会で優勝をして神の恩恵というアイテムで小さくなる事! はたしてグロリアは無事に武道大会で優勝できるのか? アノマロカリスワールドの新作です。 アノマロカリスの作品の登場人物が数名出て来ますよw

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