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第一章

第五話 シオンの評価(うなぎ上りみたいです!)

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 チーム【疾風の戦乙女】のメンバー達は、冒険者ギルドの酒場の席に座って伏していた。
 それを見た受付嬢が、何事かと思って声を掛けて来た。

 「シーリス、何かあったの?」
 「あぁ、ミザリアか…実はシオンという少年について腑に落ちない事があるというか…規格外というか…」
 「シオン君? あの子がどうかしたの?」
 「ミザリアはシオンの事は何か知っているのか? 知っていたら教えてくれ!?」
 「こっちにも守秘義務があるんだけど…」
 「そこを曲げて頼む! 彼には絶対に漏らさないから!」
 「まぁ、シーリスと私の中だからここだけの話よ。」

 ミザリアはシオンの依頼達成率を見て不審に思い、独自で調査した事を話した。

 「ええと…シオン・ノート、15歳でFランク、依頼達成率100%…」
 「依頼達成率100%だと!?」
 「話の腰を折らないで! 依頼達成率100%の内、そのほとんどが採取と生産で討伐経験はなし。 ここまではギルドに来た時の話でそれ以降は調査の結果を話すわね。」
 「頼む!」
 「本名シオン・ノート・グラッド…グラッド伯爵の次男で、神託の儀で攻撃が一切出来ないという事により家を追い出されているわ…」
 「騎士一家のグラッド家か…確かにシオンの攻撃が当たらない呪いでは、騎士一家では邪魔扱いされても不思議ではないが…それにしても追い出されるとは…」
 「グラッド家の者だったのか…通りで強いと思ったよ。」

 シーリスとクレアは拳を握って、テーブルを叩いた。
 ミザリアは何があったのか聞いてきた。

 「一体どうしたの? シオン君が強いって?」
 「今日の朝の稽古でな、彼は寸止めで私は本気で相手をしたにもかかわらず、一度の当てる事も出来ずに敗北をした。 それも3度もだ!」
 「オレも本気で向かって行ったが、敗北した後にシーリスと2人で挑んで2人共敗北した…」
 「ただのFランクだったら納得がいかないが、グラッド家の者だったのなら納得の強さだ! 私は何度挑んでも勝てる気がしない…」
 「あなた達で勝てないって…彼はどれだけ強いのよ!?」
 
 ミザリアは考えた…もしもシオンが攻撃が出来る事が出来ていたのなら、どのランクにいてもおかしくはないと…
 そもそも、攻撃が当てられるのなら冒険者ではなく、騎士団に在籍しているか…
 
 「ミザリア、他に情報は無いのか?」
 「いえ、まだあるわ! シオン君はね、以前所属していたチームで、ダンジョン探査の時にダンジョンスタンピードで足の腱を斬られて囮にされて置き去りにされたのよ!」
 「それは許せないな…」
 「シオン…」
 「だけどシオン君は、魔物の群れに殺されそうになって覚悟をした瞬間に、魔法に目覚めて魔物達を拘束の魔法を使い、回復魔法を施してから自力で冒険者ギルドに帰り、その事を報告してチームは全員逮捕されて処刑になったわ。」
 「そんな過去があったのか…」
 「その後、クエストを片っ端からクリアしていき、ある程度お金を貯めた後にこの街に来て、新たなスタートを始めた…これで全部よ!」
 
 チームの4人にしばらくの間…沈黙が続いた。 
 そしてナルディアが思い出したようにミザリアに聞いてきた。

 「シオンはこのギルドに来てから、魔力量の測定はしたの?」
 「いえ、してないけど? シオン君の魔力量ってそんなに多いの?」
 「私は魔法の事に関しては良く解らないが…彼の使った移動魔法のお陰で、レグルス山に半日で着いた。」
 「え? 半日!? あ、そういえば…あなた達が出発したのって確か昨日だったわよね?」 
 「行きは半日、帰りは一瞬だった。」
 「一瞬って…シオン君は転移魔法が使えるの?」
 「彼が言うには転移魔法では無いと言っていたよ。 帰還魔法で、どんなに遠い場所でも一瞬でベイルードに戻って来れるんだとさ…」
 
 ミザリアは頭を手で押さえて悩んでいた。
 ありえない事が次々と聞けたからである。

 「それだけじゃないのよ、ミザリア!」
 「一体どうしたのよ、ナルディア?」
 「シオン君はね…多数属性同時出現や複合統一魔法に、召喚生物とのユニゾンレイド合体魔法を使用したの! 他にも一晩中グリーンドラゴンを拘束する魔法や、グリーンドラゴンのブレスを無効化するバーニングウォールを展開したり…」
 
 ミザリアは驚いて、他の3人を見ると…彼女達は無言で頷いた。
 
 「は…はは…その話が本当だったら、シオン君はFランクではおかしいわ! Sランクでもおかしくないわよ!?」
 「だから言ったろ! 規格外というか、異常だと。」
 
 多数属性同時出現なんて真似が出来るのは、世界でも数人しかいないのに…更に複合統一魔法?
 召喚生物とのユニゾンレイドにグリーンドラゴンを拘束にブレスの無効化って…
 さすがに頭がキャパオーバーだわ…

 「そういえばシオン君はここに最初に来た時に言っていたわ…トドメが刺せないから、魔物を生け捕りにして持って来る事なら出来ると…あれ、本当の話だったのね…?」
 「だから、シオンがFランクのままなんておかしいと思うだろ?」
 「でも、シオン君がランクを上げる事を望んでないからねぇ? シオン君の意思が無いと、こちらも対処は出来ないし…」

 さすがにこれ以上は、シオン君の意思を聞かない限り前には進めない。
 魔物討伐が出来ないシオン君がランクを上げたいと…どうしたら良いのかしら?

 「あの…もう無いわよね?」
 「そうだなぁ? 寝る時に見張りをする必要がない事や、風呂に入れた事に…キャンプで開放的になれた事くらいか?」
 「え…うん? どういう事なのシーリス?」
 「シオンの魔法でな、守護結界というドラゴンの一撃でも破壊出来ない様な結界魔法を使用し、その中で風呂を用意してくれて入ったり、食事が豪勢だったり、寝床が最高の環境だったり…他には…あぁ、武具の手入れもしてくれたな! 結界のお陰で朝まで見張りを立てずに熟睡出来てな…」
 「他にも洗濯してくれたじゃないか!」
 「ん? んんっ? キャンプでお風呂に入れて、食事が豪勢で洗濯をしてくれて…?」

 ありえないわ!
 本当にあり得ない事だわ!?
 ドラゴンの一撃でも破壊出来ない程の守護結界!?
 あーーーーーシオン君って何者なのかしら?
 もう…サポーターの域を越えているわ!

 「これからギルマスに報告しようと思うんだけど、あなた達も証言をしてくれないかしら?」
 「シオンの待遇が変わるのか?」
 「それはギルマス次第かもしれない…元のままなのか、少しは待遇が変わるかは…ね。」

 ミザリアは、【疾風の戦乙女】を連れてギルマスの部屋に訪れた。
 ミザリアはギルマスに、聞いた話をそのまま伝えたのだが…案の定、信じられない話ばかりなので話は難航して行った。
 その後…シオンの待遇に変化が起きたかどうかは…
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