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第一章

第三話 は?

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 「は?」

 「だから、今回のミッションはとある伯爵令嬢の護衛なんだよ。」

 ボクは仕事内容に対して疑問のあまり変な声で返事をしてしまった。

 暗殺者ギルドが護衛の依頼なんておかしいでしょう。

 「狙われている伯爵令嬢を護衛して、消しに来た刺客を返り討ちにするんですか?」

 「いや、単純に…伯爵令嬢の護衛なんだ。」

 「それって普通…冒険者ギルドか騎士団が動く案件では?」

 「本来ならな! だがその伯爵令嬢の父親である伯爵がウチのギルマスと懇意の中でな。 それで伯爵令嬢を護衛という形で守って欲しいという事らしいのだ。」

 「事情は分かりました…が、護衛対象の伯爵令嬢とはどういう令嬢なのでしょうか?」

 「淑やかで気立ての良い心優しい令嬢という話だ。」

 「それは誰目線です?…っていうか、いるかそんな女!」

 「伯爵様の話ではそうらしい。」

 「どうせその伯爵様が自分の娘とは碌に会話もしていないで、本性を隠した猫被りの娘を見てそう思っているだけでは? 本来の姿は傲慢で高飛車な性格の悪い令嬢という可能性は無いんですか?」

 「その可能性も無くはないな。 親から見て娘の本質を知る者はあまりいないだろうからな。」

 「目にフィルターでも掛かっているんでしょうかね? 仮に伯爵様の話が本当なら良いですが、接触するにしてもツンデレなら何とかなるでしょうけど、取り付く島の無い我儘な令嬢なら接触自体が無理ですよ。」

 「別に接触はしなくてもいいので、それとなく令嬢に近付いて警護してくれれば良いという話なんだ。」

 「良く解りませんねぇ? 狙われている訳でもないのに、この護衛にどんな意味があるのですか?」

 「伯爵様の話によるとだな、令嬢は容姿や性格上に虐められないかが心配だそうだ。」

 「はぁ…くっだらない! そこまで心配なら、学園になんか通わせないで屋敷で保護すれば良いでしょうに…」

 「それがそうも言っておられないんだそうだ。 貴族令嬢は一定の年齢になると、王国が管理する学び舎に入学させないといけないという決まりがあるらしい。」

 王国が管理する…となると、上位の貴族でもない限りは逆らえないのか。

 伯爵という地位だと微妙な立場だろうしな。

 「娘可愛さの護衛ですか…まさか期間は卒業までとかではないでしょうね?」

 「入学から半年間の護衛を頼みたいそうだ。 伯爵令嬢が学園で上手く立ち回れるかどうかを確認出来たら…という話でな。」

 「半年って…さすがに長く無いですか? 1か月もすれば大体把握出来るでしょうに。 それにですよ、仮に伯爵様のいう通りの性格の女性なら心配は不要なのでは? まぁ、その令嬢を妬む他の貴族令嬢も中にはいるでしょうけど…」

 たかが娘可愛さで護衛しろって…暗殺者ギルドを何だと思っているんだろう?

 それにしても公爵令嬢や侯爵令嬢というのなら護衛の意味も分かるけど、伯爵令嬢に護衛が必要なんだろうか?

 「副マス、この内容以外に他に何か隠していませんか?」

 「俺がギルマスから聞いた内容はそれだけだ。 後は学園に潜入してから臨機対応で対処して欲しいという話だ。」

 なんだろう…?

 何かまだ他に隠している気がするが…まぁ、やってみればわかるか。

 ボクはこうして女学園に潜入する事になるのだけど、肝心の伯爵令嬢が予想していた通りの…

 半年間も憂鬱ですよ。
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