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第一章

序章

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 ボクの名前は、ファスト・ヴァーミリオン12歳です。

 現在ボクはギルドのミッションでとある貴族が管理する奴隷がいる牢獄に捕まっています。

 周りを見ると、13歳以下の貴族の令嬢や令息が身を寄せ合って泣いています。

 ボクもギルドのミッションで貴族の令息を装い、上手く捕まって潜入に成功しました。

 「そろそろ時間だけど…合図はまだかな?」

 ボクはそう言い終わった次の瞬間、牢獄が激しく縦揺れしました。

 これが合図…なのですが、少々使用した爆薬の量が多い気がします。

 きっと仲間の爆弾娘のサリィの仕業だと思いますが…あの子には後で文句を言ってやらないと。

 そんな事を考えていると、他の仲間達が見張りの兵士を倒しながらボクの牢までやって来ました。

 {ファスト、ここは既に制圧した! お前も行動を起こせ!}

 {了解!}

 ボクは体に手を当てると、変装していた貴族服が溶けて1匹のスライムに変化した。

 そのスライムは真っ黒で、目と口のある喋るスライムだった。

 「ファスト、仕事を始めるんだね?」

 「あぁ、メタル! 早速だけど…御飯の時間だよ!」

 すると後ろにいた貴族の子供達は「ひっ!」っという悲鳴を上げた。

 ボクは貴族の子達に言った。

 「この子の食事は人間じゃないよ、この鉄格子がこの子の食事なんだ…けど、鉄格子が多いね?」

 「なら分裂するね!」

 スライムのメタルは4匹に分裂すると、それぞれの鉄格子の前に行ってから鉄格子を溶かしながら捕食して行った。

 そして全ての鉄格子を食べ終わると、融合してからボクの所に戻って来た。

 「この鉄は純正じゃないから少し不味かったよぉ。」

 「ここを出たら口直しを上げるから我慢してくれ…さぁ、皆! この人達に着いて行って‼」

 ボクの掛け声で貴族の子供達は、通路にいた仲間と一緒に通路を駆け抜けて行った。

 ボクも脱出をしたい所だけど…仲間の後始末をしなければならないね。

 「ねぇ、ファスト…コイツ等も食べちゃって良い?」

 「メタルの食べたいのは兵士の武具でしょ。 死体も片付けないといけないから、カーカスを出してくれる?」

 「うん、わかった!」

 メタルは体の中から真っ赤なスライムを出した。

 真っ赤なスライムの名前はカーカス、ミッション中に始末した者の痕跡を消す為に肉や骨を好むスライムだった。

 「カーカス、メタルの食べ残しを処理して。」

 カーカスは兵士の死体を見て不満を漏らしていた。

 「またおっさんの死体かよ! オレは若い女の死体が好みだって言ったのに‼」

 「今回はこれで我慢してくれよ、次のミッションでは希望に添えるミッションを受けるからさ!」

 「仕方ねぇなぁ…今回はこれで我慢してやるよ!」

 メタルが兵士の武具を食べ終わった後に、カーカスは不満を呟きながらも兵士の死体を捕食して行った。

 カーカスは…自分の好み以外の死体だとすぐに愚痴をこぼすが、不満を言いながらも忠実に従ってくれていた。

 ボクは通路にあった死体を全て処理を済ませると、仲間を追って外に出た。

 するとギルドの副ギルドマスターと貴族が数人待ち構えていた。

 この貴族達が今回の依頼者達だろう。

 「副マス、これで終わり?」

 「あぁ、主犯以外の他の奴等は全て始末した。」

 「主犯は取り逃がし?」

 「いや…そろそろだな。」

 「ん?」

 地下牢獄の上に建っていた屋敷が木っ端微塵に吹っ飛んだのだった。

 それはもう…跡形もなく。

 「副マス…あそこの中から主犯を見付けられます?」

 「サリィの奴…爆発物の量を抑えろと何度も注意したのに!」

 副マスは頭を押さえて溜息を吐いた。

 まぁ…屋敷が木っ端微塵に吹っ飛ばされれば、仮に中に誰かいたとしても一緒に吹っ飛んでいるだろう。

 「依頼者からの報酬以外に、奴等のアジトの金庫からも拝借したかったのに…」

 「それはダートとブレイドが上手くやっているだろう。」

 「あの2人なら抜け目はなさそうだね。」

 そんな事を話していると、牢獄の通路から小太りの男が牛鬼と馬鬼を連れて出て来た。

 「あれが主犯かな…良くあの爆発で生きていたね?」

 「言っている場合か! 主犯以外は始末しろ!」
 
 「今回は潜入で牢の中にいただけで暇だったし…久々に体を動かしますか!」

 ボクは小太りの男の前に出ると、小太りの男はボクを見て笑みを浮かべた。

 「貴様程度の小童に何が出来る‼」

 「おっさんは生かしてあげるよ。 だけど、背後の2匹は始末させて貰うよ!」

 「やれる物ならやってみろ‼」

 「うん…メタル、武装!」

 「武器は何にする?」

 「あれなら…ソードウィップで良いかもね。」

 「牛の大斧と馬の槍を貰っても良いかな?」

 「良く食べるね…構わないよ!」

 メタルは刃の付いた鞭に姿を変えた。

 そして牛鬼と馬鬼が向かって来ると同時に、ボクは2匹の間を駆け抜けると…牛鬼と馬鬼は細切れになった。

 「な…何が起きたんだ⁉」

 ボクはメタルを解除すると、メタルは2匹に分裂して大斧と槍を捕食して行った。

 「残ったのはおっさんだけです。 大人しく捕まる事をお勧めしますよ…」

 「何だと‼ 貴様1人位なら…」

 「おっさんお目は節穴ですか? 此方にいるのが1人に見える何て…」

 ボクの背後には暗殺者ギルドのメンツが揃っていた。

 「ダートもブレイドもこんなおっさんを取り逃すなんて珍しいね?」

 「牛鬼と馬鬼に手古摺ってな…」

 「狭い通路じゃなければ…もっと優位に戦えたんだがな!」

 「そうなの? ボクは一瞬で倒したけど?」

 「「お前の強さと俺達の強さを一緒にするな‼」」

 ダートはギルド序列では8位、ブレイドは序列6位だった。

 すると牢獄から上がって来た1人の女の子がボクの後ろに来た。

 「見っ付けたぞ~デブおやじ! 今度こそアタイの爆弾で木端微塵にやってやる!」

 「「「「やめぃ‼」」」」

 女の子は副マスを含めたボク等にチョップを喰らっていた。

 女の子の名前はサリィ、序列9位のメンバーだ。

 サリィは頭をさすりながら涙目になっていた。

 「副マス、コイツはどうします?」

 「拘束してクライアントに引き渡すとしよう。」

 「なら…メタル、スレッドを!」

 メタルから黄色いスライムが現れた。

 スレッドは糸やロープを生み出すスライムだった。

 「あるじ、おまた!」

 「スレッド、このおっさんに亀甲縛り!」

 「あいよ~!」

 スレッドスライムは、小太りのおっさんに亀甲縛りをして拘束した。

 拘束しろと言われたが、ただ結ぶのでは芸がないので亀甲縛りにした。

 ちなみに亀甲縛りは、スレッドスライムの十八番芸だった。

 誘拐犯の主犯であるおっさんにとっては、もっとも羞恥なプレイだと言えるだろう。

 何故なら裁判所迄の道のりでは、王都の城下をその格好で晒されながら歩かなければならないのだから…。

 「拘束しろとは言ったが…まさかこれか!」

 「犯罪者には最も適した罰だと思ったので…」

 「まぁ、良いだろう! 皆も御苦労だった!」

 副マスの掛け声でボク達は一斉に散開した。

 これから次のミッション迄の間は自由な時間だからだ。

 ボクの名前はファスト・ヴァーミリオンで年齢は12歳。

 暗殺者ギルドヴァーミリオン一家で、ギルドでのボクの序列は1位だ。

 …とは言っても初めっから序列1位という訳ではない。

 序列1位の座に就くまでは色々あった。

 まぁ、その話はいずれ話すとして…その前に!

 ファストの物語のはじまり~はじまり~!
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