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第十八話 休暇日

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 私とメナスはカフェに来てケーキや紅茶を楽しみながらまったりとしていた。

 今日は休暇日で日頃の疲れを癒す為の大事な時間だった。

 「最高だね!休暇日って…ファスティアが加入する前だったら考えられない物だったのに。」

 「ドレクス達は宵越しの金を持たないって感じだったものね。」

 「多少の蓄えはあるんだけど、雑貨や薬品の購入や宿代と食事代でほぼ消えちゃうからね。」

 「でも、今はそんな心配もいらないわよね?」

 「あれだけ荒稼ぎしているからね…」

 ここ最近の討伐は依頼料の高い魔獣討伐のみで、初めの頃は私に頼り切ったおんぶに抱っこ状態だったけど、ドレクス達も慣れてきたのか…最近では私の出番も少なくなってきている。

 更に…今迄に使用していた宿屋を引き払い、浴槽付きの高級宿屋に拠点を移して生活をしている。

 「郊外なら家も買える値段だとは思うんだけど…」

 「私達はこの国の出身ではないから、ある程度稼いだら他の街に移動するから…家は憧れるけどね。」

 今の所…まだ他の大陸に移動しようという話は無い。

 いずれは…という話は上がっていた。

 「それにしても、数日前にファスティアはなんかニヤニヤしていたけど…もう理由を聞いても良いかな?」

 「あぁ、それはね…」

 メナスだけには私の素性は話していた。

 元はレントグレマール王国の侯爵令嬢で、第一王子との婚約を破棄されて国を出たという話を。

 「北方のノースファティルガルドって…随分遠くを選んだわね?」

 「私の元婚って…頭が悪い癖に、妙な所が鋭くてね。 あのまま行き先を告げずに逃亡を続けていると、何処かで嗅ぎ分けられるのかが心配で…」

 「なるほどね、ならハッキリと居場所が分からないなら…敢えてその場所を教えておいた方が反らせるには良い口実だもんね。」

 「それに、ノースファティルガルドだったら下手なちょっかいをかけようとすることもしないでしょうし…」

 「あそこの国王様は、素手でバドルグリズリーの首を捩じ切る程の猛者で…下手な事をして怒らせたりでもしたら、簡単に処刑すると言う話で有名だからね。」

 「だから、王族に迎え入れられて懇意にして貰っていると書いたの。」

 「王族と結婚とは書かなかったのね?」

 「それだと…各国に通達が行くからね。 そんな嘘はすぐにバレちゃうし…」

 私は何故こんな事を知っているのかと言うと、カリオスから毎日の様に任されていた書類整理で事情を知った。

 この世界には通信用の魔道具は存在するけど、その理由は主に脅威を報されるだけに使われていて…例え国王であっても私的利用で使うことは出来なかった。

 だから私は敢えて…レントグレマール王国の王族に手紙を出して、私はノースファティルガルドにいると書いたのだった。

 確認の為なら現地に赴く事で確認する術がないからだった。

 「でも、誰か使者に任せて赴かせるって思わなかったの?」

 「それは無いわね、今回の件はカリオスが私と婚約破棄をした所為でこの様な事態になっている訳だし、多分本人が向かう筈よ。 あの男なら自分の説得なら…とか思っているだろうし。」

 「それにしても、ノースファティルガルドかぁ…? あそこは1度行った事があるけど、全大陸で一番広い場所だし…港から王都までかなりの距離があるからねぇ?」

 「どんなに急いでも年内で辿り着けるかは微妙だろうしねぇ? ノースファティルガルドはこれから寒冷期を迎える筈だから、天候が荒れて碌に移動出来る日も多くはないだろうから…」

 「本当に策士よね? ファスティアって…」

 カリオスの移動手段は、レントグレマール王国から西方のダルンデス港から船で行く手段しかない為にそこまでの移動手段で約二週間、それから船に乗って約1ヶ月半、大陸に着いてから王都までは天候次第だけど約三ヶ月は掛かる。

 なので、年内に辿り着けられる可能性がないとはそう言う事だった。

 「なら、間違ってもフレマアージュ王国に来る事はないわよね?」

 「フレマアージュ港からでもノースファティルガルド迄の船は出ているけど、こっちからだと乗り替えもあるし、逆に日数が掛かるから選ばないでしょう。」

 流石のカリオスもそこまでは愚かでは無い…と思う。

 「そう…思っていたんだけどねぇ?」
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