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最終章・ノワール、貴女は幸せになれましたか?

第十五話 淵東黒樹と5人のノワール

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 まぁ、魔王アンノウン…ダークマターからすれば、私は生みの親になるけどさぁ…?
 同じくらいの年齢のイケメンにママ呼ばわりされるのはどうかと思う訳よ。
 しかも甘ったるい表情に、頬を赤く染めて…正直言って、かなりキモイ。

 「あの…アンノウン?」
 『アンノウン…それがママから貰ったボクの名前…』
 「その…ママって呼ぶのをやめてくれないかな?」
 『ママはママだよ。 ボクの世界で一番好きなママ~!』

 アンノウンは私に近付いて来て抱き付こうとしたが、私はそれを躱すと…アンノウンは地面にぶっ倒れたのだった。

 『何で避けるの? ねぇ、ママ⁉』
 「だから、ママじゃないつーの‼」

 魔王アンノウンは、地面に座り込んだまま上目遣いで私を見た。
 これが人間の男にされるのなら…ドキッとしたかもしれないけど、その仕草をしているのは元は正体不明の黒い塊である。
 なので、何の感情も沸か無かった。

 『ママ…ボクにときめいた?』
 「そんな言葉…何処で覚えたのよ?」

 ときめくなんて事は無い。
 それをモジモジとしながら言って来る…ただ、ウザさしかなかった。
 結論からすると…こいつの言動や仕草を考えると、まだ子供なのだという事が判明した。
 それが演技なのかは解らない。
 ただ、不自然に演技をしている様には見えなかった。
 私は少し考えてから、魔王アンノウンに命じてみた。

 「ねぇ、アンノウン…私をママと呼ぶのはもうこの際どうでも良いわ!」
 『本当? ママって呼んでも良いの?』
 「呼んで良い代わりにお願いがあるんだけど、いい?」
 『ママの望みなら!』
 「下の階にいる私の仲間達が戦っているんだけど、魔物達に命令して攻撃するのを止めてくれないかな?」
 
 すると、魔王アンノウンは首を傾げて言った。

 『何でママ? ボクはママさえいれば、他には何にも要らない! だから、ママと仲良くするアイツらもいらない!』
 「私には彼女達が必要なの!」
 『ママ…何でそんな事を言うの? ママにはボクがいるのに! ボクが唯一の存在なのに…』
 「お願いだからいう事を聞いて! 今すぐ戦いを止めて!」
 『ママ…ママはボクを拒絶するの?』
 「拒絶なんかしないわよ! でもね、彼女達は大事な仲間であり、友達だから…」
 『ママには…ママには…ボクだけで充分だ! 他のトモダチはいらない! ママ以外誰もいらない‼』

 魔王アンノウンはそう言うと、体から巨大な魔力が吹き荒れた。
 それは何とも禍々しい魔力だった。
 そして魔王アンノウンは、腕が槍の様に変化すると…私の体を貫いたのだった。
 だけど、痛みや怪我は全く無かった。
 代わりに、体中に溢れていた力が無くなった感じがした。

 『それが…ママの本当の姿なんだね?』
 「本当の姿?」

 私は近くにあった鏡を見ると、私は女子高生の淵東黒樹の姿に変わっていた。
 そして魔法を発動しようとしても、法術を発動しようとしても発動をしなかった。
 力も非力な女子高生の状態のままだった。

 「アンノウン、何をしたの⁉」
 『ママの不要な物をバイバイしたの! これでママはボクに逆らう事は出来ないよ!』
 
 私は武器を探したけど、ガンドムに作って貰っていた聖剣も消えていた。
 そしてアンノウンは、形をスライムの様な姿に変わると、私を包み込む様に包んだ。

 『これで…ママとずっと一緒! ママ…』
 「くっ…体が動かせられない!」

 アンノウンに包まれて、非力な私は動けずにいた。
 私は何故…女子高生の体になってしまったのか?
 考えられるとしたら、私の今迄の転生した力が失われたのだと思った。

 ・・・・・・・・・20階のアルマは?・・・・・・・・・

 アルマは騎士のゴーレムを着々と倒して行った。
 だが、禍々しい魔力が騎士のゴーレムに降り掛かると…破壊した筈のゴーレムが復元して立ち上がったのだ。

 「全く…格好をつけたのは良いけど、まさか復活するとは⁉ このままだと…」
 「何を弱気な事を言っているの⁉ 騎士なら勇敢に立ち向かいなさい‼」

 アルマの背後から5つのソニックブームの刃が騎士のゴーレムを粉砕した。
 アルマは振り返ると、そこには騎士の姿のノワールがいた。

 「ノワール! 上に行ったのではなかったのか⁉」
 「私はノワール…ノワール・イクティノスよ!」
 「ノワール・イクティノス⁉ あの伝説の騎士の⁉」
 「詳しい説明は省くわ! 今はコイツ等を倒すわよ‼」

 騎士ノワールとアルマは、共闘して騎士のゴーレムを討伐して行ったのだった。

 ・・・・・・・・・21階のファティマは?・・・・・・・・・

 「なんなの? さっきの禍々しい魔力は⁉ 壊滅寸前になっていたマジックゴーレムが…」

 ファティマの倒した筈のマジックゴーレムが、魔王アンノウンの魔力の波動により復元したのだった。
 残り数体のマジックゴーレムだけなら、現存している魔力で倒せた筈だったのに、復活した事により魔力があまり残っていなかった。

 「姉様は危なくなったら逃げる様に言われたけど…囲まれては逃げる事も出来ないわ。 ごめんなさい、姉様!」
 「何を諦めているの!」

 ファティマは声がした方を振り向くと、そこには魔女の衣装を纏ったノワールが立っていた。

 「え? 姉様…? それに、その懐かしい姿は?」
 「説明は後よ! 今はコイツ等を倒すわよ! インディグネーション‼」

 ノワールは、マジックゴーレムの半数を雷魔法で消滅させた。
 そしてファティマに近付いて背中合わせになると、杖を構えて言った。

 「残りをチャッチャと倒して合流するわよ!」
 「その口調…魔女時代の姉様?」
 「話は後よ、行くわよファティマ!」
 「はい、姉様!」

 魔女ノワールとファティマは、魔法を繰り出してマジックゴーレムを倒して行ったのだった。

 ・・・・・・・・・22階のチヨは?・・・・・・・・・

 チヨは先程まで優勢だった。
 だが、魔王の強大な魔力により立場が一変して、現在ではかなりの重傷を負っていた。

 「なんなの? このづよざは⁉」
 「あらら…どうしたのかしら狐ちゃん! 急に弱くなっちゃって…」
 「所詮は狐だ! わらわ達の様に長期戦には向かないのであろう。」
 「きゃはは~~~可哀想だから、もうトドメを刺しちゃった方が良いかもね!」
 「ここまで戦った褒美だ! 楽にトドメをさしてやれ!」

 動けないチヨだが、構えだけは解かなかった。
 2人の獣人はチヨに向かって行った…が?

 「何なのよ、この壁は⁉」
 「これは…結界か⁉」
 「いっだい…何が?」
 「よく頑張ったわね! もう大丈夫だから!」

 チヨが振り返ると、其処には聖女の法衣を見に纏ったノワールがいたのだった。

 「ノワァ?」
 「もう大丈夫だから、安心して! リザレクション!」

 ノワールの回復魔法で、チヨの怪我は全快した。
 チヨは何が起きているのか解らない表情をしていた。

 「ノワァ…だよな?」
 「私はノワール・ウルティラスよ。」
 「ウルティラス…伝説の聖女の⁉」
 「そうそう、私達が来たからもう安心して!」
 「何を勝手に盛り上がっているの~? 今更1人増えた所で、その狐ちゃんの立場は変わらないのにぃ~」
 「そうじゃな! お前は戦う事は出来まい? 戦えぬ者が増えた所で…」
 「あれ? 聞いてなかったの? 私達…って言ったわよw」
 「「何⁉」」

 すると、チヨと聖女ノワールの後方から手榴弾が飛んで来て、2人の獣人に炸裂した。
 チヨは振り返ると、其処には…メイド服姿に銀色の銃を持ったノワールが立っていた。
 チヨは聖女のノワールとメイドのノワールを交互に見ながら混乱していた。

 「えっど? ノワァ⁉」
 「私はノワール・オルティランよ! チヨ、貴女に加勢しに来たの。」

 メイドのノワール・オルティランは、銃で2人の獣人を撃った。
 その銃弾は、2人の獣人の太腿を貫いたのだった。

 「これで機動力は殺せたかな?」
 「舐めるなよ! わらわ達は獣人、この程度の怪我は…」
 「チヨ、一緒に戦ってくれる? 私は口やかましいパンサーの獣人を相手するから、チヨはチーターの方をお願い。」
 「援護は私に任せて! 好きに戦って良いからね!」

 聖女のノワール・ウルティラスは2人に言うと、チヨは頬を叩いてからチーターの獣人に向かって行った。
 こうして、聖女ノワールとメイドノワールとチヨの共闘が始まったのだった。

 ・・・・・・・・・最上階・女子高生のノワール…淵東黒樹は?・・・・・・・・・

 魔王アンノウンは焦っていた。
 ノワールを貫いた時に、ノワールに宿っていた力を遠くに飛ばしたと思っていたからだ。
 だが、思ったほど遠くには飛ばせていなかった。
 それどころか、すぐ下の階に居てノワールの仲間の手助けをしているのだった。

 『何故だ! 何故ボクの邪魔をする⁉ ボクはママと一緒にいたいだけなのに…ぐわぁ!』
 
 魔王アンノウンは身体を切り裂かれた。
 そしてその中にいた女子高生の淵東黒樹を助けだした女性がいた。

 『ママ? それと、ママ⁉ なんで…?』
 「大丈夫? 黒樹…」
 「貴女は…私?」
 
 女子高生の私の目の前には、先程までの姿だったノワール・エルティナスがいたのだった。
 
 「えっと…どういう事?」
 「魔王アンノウンの攻撃によって、私達は本体である貴女から離れて別な場所に飛ばされたの。 そしてこの先は良く解らないんだけど…私達はそれぞれ意識を持ってね。 貴女を助ける為に個々が動いているのよ。」
 「えっと…? という事は、聖女だったノワールや騎士のノワールも意識を持っているの?」
 「いまね、アルマやファティマやチヨと共闘して…まもなくここに来るはずよ!」
 「頭が混乱しそう! どうなっているのよ、一体⁉」
 「考えるのは後にして…とりあえず私の後ろにね。」

 女子高生の私は、勇者であるノワール・エルティナスの後ろに隠れた。
 自分に守られる…何だか妙な感覚だった。

 『お前は…ママじゃない! 本当のママは、お前の後ろに!』
 「私はママじゃないわよ! 何度言わせるのよ!」
 『ママは…ママだぁ~~~~!!!』

 魔王アンノウンは、無数の腕を伸ばして勇者ノワールを攻撃し始めた。
 勇者ノワールは聖剣で攻撃を防いでいた。
 だが、本来のノワールとしての力が無く、徐々に劣勢になっていった。
 そして勇者ノワールが片膝を付いたその時、勇者ノワールの怪我が回復したのだった。

 「遅れちゃったかな?」
 「本当に聖女時代の私がいる…」
 「私もいるわよ!」
 
 そう言って、メイドのノワールは銃を乱射して魔王アンノウンを遠ざけた。
 チヨも勇者ノワールと女子高生の黒樹を見て驚いていた。

 『くっ…何でママとボクの邪魔をするの⁉』
 「うわ…何コイツ、気持ちわる!」
 『お前等なんか…いらない~~~~!!!』

 魔王アンノウンは、巨大な魔力を放出してから3人のノワールに放った。
 だが、部屋に入って来た魔女ノワールとファティマが、魔王アンノウンの魔力を相殺したのだった。

 「今度は魔女時代の私か…」
 「えっと? 姉様が…5人⁉」
 
 チヨ同様に、ファティマもこの光景を見て混乱をしていた。
 魔王アンノウンは、呆けて動きを止めているチヨとファティマを狙って無数の腕を伸ばした。

 「何を呆けているの! ソニックブレイド!」
 
 部屋に入って来た騎士のノワールが魔王アンノウンの腕を斬り飛ばしたのだった。
 そしてこの部屋に全てのノワールが揃ったのだった。
 だが…その光景を目の当たりにしたアルマは、完全に思考が停止していたのだった。
 同時に、女子高生の私も何が起きているのか理解出来なかった。

 「転生した時の私が揃っている…のは良いとして、これ元に戻るのかな?」
 「「「「「私達が全て揃った時、1つになるから大丈夫よ!」」」」」
 「全員で一斉に喋らないでよ! そうか…元に戻るのね。」
 「「「「「でもその為にはね、彼女達の協力も必要なの。」」」」」
 「彼女達って…アルマやファティマやチヨ?」
 「「「「「そう…私達が1つになる間、時間稼ぎをして貰いたいのよ。」」」」」
 
 すると、アルマとファティマとチヨは、ノワール達の声を聞いて魔王アンノウンに立ち向かっていったのだった。
 そして女子高生の黒樹と5人のノワール達は、輪になって向かい合っていた。
 
 「「「「「これから私達は元に戻る。 でも、以前の様なノワールではなく、黒樹…私達は黒樹の中に入るのよ。」」」」」
 「私の中に? それって…」
 
 私と5人のノワールは身体が光りだした。
 そして…私達は1つになる。
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