上 下
22 / 35
本編

第二十一話 長年の習慣

しおりを挟む
 長年の習慣というには恐ろしい。

 王宮から公爵家に帰って来て、何も束縛されずに自堕落な生活に洒落込もうと思っても…長年の習慣がそれを見事に邪魔してくれたのでした。

 現在は朝の4時…屋敷の中では厨房と一部の者達以外はまだ寝ている時間でした。

 「参ったなぁ…惰眠を貪る筈だったのに。」

 「王宮にいる時はこの時間には起きていたからね。」

 ちなみにパケットは普段は影の中に潜んでいるけど、寝る時は普通に隣のベッドで寝ています。

 「よし、二度寝しましょう!」

 「パッチリ目が冴えているのに?」

 「ですよね~?」

 私はベッドメイクをしてから洗顔をした後に、クリーン魔法を掛けた後にチュニックに着替えてから部屋を出た。

 私の家族はあまり服装の事は言わないけど、普通の家庭なら令嬢がこんな服装をしていたら多分注意されるでしょう。

 中庭に向かう為に廊下を歩いていると、パケットも一緒に着いて来た。

 「パケット、別に屋敷の敷地内なら護衛は不要だと思うけど?」

 「離れていたら護衛の意味がないでしょ。」

 「それもそうか…」

 私は家族がいる時は令嬢らしく振る舞う為に丁寧語を使っているけど、パケットといる時は普通に会話をしていた。

 これも…ルーナリア先生の影響だったのかも知れない。

 「中庭到ちゃーく!」

 「リア、誰かいるよ。」

 パケットが指を刺した方をみると、そこにはジャミル兄さんが剣を持って素振りをしていた。

 いずれ商人になるのに剣術は必要無いかと思うかも知れないけど、貴族が商いをする場合は結構狙われやすいという話だった。

 なので最低限の自衛の為…らしい。

 「おや? リアか…おはよう! どうしたんだい、こんな朝早くに…」

 「おはよう、ジャミル兄さん。 王宮にいた時はいつもこの時間に起きていてね、少し身体を動かそうかと…」

 「なら、一緒に素振りでもするかい?」

 「部屋からここに来るまでに軽い運動はしていたから、私は良いわ。」

 「そうか…」

 「パケット、今日も良い?」

 「ん、分かった。」

 パケットはピケットと違って…人前で話す事をあまり得意とはしていない。

 私の前だと遠慮無いけど、誰かが居る前ではこんな喋り方だった。

 私は地面に手を置いてから創造魔法でレイピアとマインゴーシュを作り出すと、パケットに向かって構えた。

 パケットはクナイと呼ばれるダガーを2本構えた。

 「今日こそはパケットから1本取ってみせるから!」

 「ん、まだ無理。」

 私は身を低く構えてから、パケットに向かってレイピアで突きを入れようとするも…クナイで軽く受け流された。

 次に5段突きを放つけど、それも軽く受け流された。

 「ん、舐めてる?」

 パケットは私が一切魔法を使っていない事を指摘した。

 私は魔法を使わずに1本を取ってみたかったんだけど、やはりプリズムナイツには通用はしなかった。

 「なら、魔法を使うよ!」

 「ん、それでも届かない。」

 私は魔法でダブルキャストを使用した。

 ダブルキャストは私をもう1体作り出す魔法だった。

 それから私は身体強化魔法を使用した。

 そして私はパケットに攻撃をする…けど、パケットは余裕で攻撃を受け流している。

 私は下がってから攻撃はもう1人に任せて、拘束魔法のチェーンバインドを放った。

 だけどパケットはチェーンバインドを躱しながら、もう1人の私の攻撃を受け流していた。

 そう…いつもの手合わせでここ迄は普段通り、だけど今日は風魔法のストリームアローを放ってみた。

 無数の風の矢がパケットに向かって飛んでいくんだけど、パケットは素早く回転をすると…ストリームアローを全て弾き返した。

 私は次の魔法を仕掛ける為に地面に触れながらパケットを見た。

 するとパケットのマントだけ宙に浮いていて、本人は私の背後にいて…私の首元にダガーの先が触れていた。

 「ん、悪く無い攻撃。」

 「またダメだったかぁ~」

 私はダブルキャストを解除してからレイピアも消した。

 そして収納魔法からタオルを取り出してからパケットに放り投げた。

 パケットは受け取る為に腕を伸ばした…と同時に、タオルでパケットの視界を塞がっていたのを利用してマインゴーシュで狙って突きを入れたんだけど?

 パケットはマインゴーシュの刀身を手で避けてから私の腕を取って懐に入って来ると、一本背負いをして私は地面に投げられた。

 「いたたたた…」

 「ん、詰めが甘い。」

 やはり見抜かれていたみたい。

 私は立ち上がると互いに礼をした。

 これは稽古の感謝の意に対しての行動だった。

 私とパケットは屋敷の中に戻ろうとした時にジャミル兄さんを見ると、ジャミル兄さんは呆けていた。

 私とパケット、王宮の騎士団達の前では普段通りの行動だったんだけど…ジャミル兄さんには理解がキャパオーバーだったみたいだった。

 「ん、放っておく?」

 「その方が良いかも…」

 何故私は声を掛けなかったのかというと…?

 気が付いたら質問攻めにあうからでした。

 そして食事の時間に、私はジャミル兄さんから色々質問されるハメになりました。

 「さて、今日は何をしようかしら?」

 私はそんな事を考えている時間と同時刻…

 聖女ダイアが神殿から脱走したという話で騎士団が探し回って騒ぎになっていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃ですが、明らかに側妃よりも愛されていないので、国を出させて貰います

ラフレシア
恋愛
 王妃なのに、側妃よりも愛されない私の話……

影の薄い悪役に転生してしまった僕と大食らい竜公爵様

佐藤 あまり
BL
 猫を助けて事故にあい、好きな小説の過去編に出てくる、罪を着せられ処刑される悪役に転生してしまった琉依。            実は猫は神様で、神が死に介入したことで、魂が消えかけていた。  そして急な転生によって前世の事故の状態を一部引き継いでしまったそうで……3日に1度吐血って、本当ですか神様っ  さらには琉依の言動から周りはある死に至る呪いにかかっていると思い━━  前途多難な異世界生活が幕をあける! ※竜公爵とありますが、顔が竜とかそういう感じては無いです。人型です。

村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。 彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。 ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。 その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。 そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。 彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。 紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。 すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。 しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

式前日に浮気現場を目撃してしまったので花嫁を交代したいと思います

おこめ
恋愛
式前日に一目だけでも婚約者に会いたいとやってきた邸で、婚約者のオリオンが浮気している現場を目撃してしまったキャス。 しかも浮気相手は従姉妹で幼馴染のミリーだった。 あんな男と結婚なんて嫌! よし花嫁を替えてやろう!というお話です。 オリオンはただのクズキモ男です。 ハッピーエンド。

ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません

詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。 苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。 ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m *・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・* 顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。 周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。 見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。 脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。 「マリーローズ?」 そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。 目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。 だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。 日本で私は社畜だった。 暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。 あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。 「ふざけんな___!!!」 と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。

処理中です...