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本編
第一話 浅はかな聖女
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「マーテルリア・フローレンス、其方との婚約破棄を命ずる!」
今日は王宮内で婚約披露パーティーで会場内には多くの貴族達で溢れていた。
…の筈だったのに、国王陛下と王妃陛下の玉座の前でこのゼーヴェンス王国の第一王子であるファステス殿下は私…マーテルリア・フローレンス公爵令嬢に対して指を刺して告げたのだった。
これに対して憤慨する両親と2人の兄、国王陛下と王妃陛下も声を荒げたのだった。
だけどファステス殿下はそれを無視して会場の扉の方に行くと、銀髪に青い瞳を持つ青いドレスを着た女性をエスコートして玉座の前に連れて来た。
「自分が何故マーテルリアとの婚約破棄を命じたか…それは此方にいるダイア男爵令嬢が聖女の印を授かったからです! 王家の習わしとして…聖女の資格を持つ者は王族との婚姻を結び、繁栄をさせる役目があると!」
この国では聖女が50年に1度生まれる。
聖女の資格を得る者は必ずしも貴族令嬢という訳では無く、歴代の聖女の中には平民もいたという話だった。
聖女となった者は国王や王妃よりは立場が下だが、王族と同じ資格を得ると決められていて…男爵令嬢だったダイアは出世したと言えるだろう。
「自分は聖女であるダイアを新たな婚約者に据えて、この国の繁栄をもたらす事を約束しようと思う!」
ファステスは右腕を高らかに上げて貴族達に宣言した。
ファステスは耳を澄ませて貴族達からの拍手喝采を浴びると思っていた。
だが、この場にいる貴族達は誰も拍手をする者はいなかった。
それどころか国王と王妃は頭を押さえていて、貴族達も溜息を吐いていた。
「な、何故だ! 何故…誰も祝福をしてくれない⁉」
「あの、殿下…ダイア男爵令嬢が先程聖女の印を授かったという話ですが?」
「ダイアの左手の甲を見よ! この通りに聖女の印が刻まれているだろう‼」
ダイア男爵令嬢は笑みを浮かべて左手を上げると、聖女の印が光りだして辺りを照らした。
その神々しい光は確かに聖女を名乗るに相応しい光だった。
だけど、その光を見ても会場にいる皆は何も言わずに口を閉ざしていた。
それどころか、一部の貴族達はダイアを憐みの様な目を向けていた。
「何だというのだ! 聖女が誕生したのだぞ‼」
ファステス殿下が皆にそう言うと、貴族達の中の一部で拍手が巻き起こった。
その拍手の喝采を聞きながら…ファステス殿下は私の元に来て告げた。
「こういう訳だから…マーテルリア、お前との婚約は破棄でも構わないよな?」
「いえ、構わないというか…」
私はそう言いながら口籠っていると、ダイアが私の方に来て耳元でこう言った。
「公爵令嬢が男爵令嬢に婚約者を奪われたなんてうっける~~~、まぁ、これからは私の方が立場が上なのだから逆らわない方が身の為よ~~~‼」
「なっ!」
ダイア男爵令嬢はそれだけ告げると、ファステス殿下の隣に立っていた。
そして再び私の方を見て勝ち誇った様な顔をしていると、何気に腹が立っていた。
ファステス殿下は決して頭が良い方ではない。
そしてダイア男爵令嬢も同様に…?
何故私がそんな事を言うかというと、この国の聖女は悲劇の聖女と呼ばれるだけのある役目があるからだった。
恐らくこの2人にはその事を全く知らないのだろう。
さて、たかが男爵令嬢風情が公爵令嬢にこんな真似をしてくれたお礼として…絶望的なざまぁをプレゼントしてあげましょうか?
「あのファステス殿下…本当に私との婚約を破棄しても良いのですか?」
「勿論だ! 聖女は王族との婚姻を済ませていずれは王妃となり、国を繫栄に…」
「恐らく出来ませんよ?」
「はぁ?」
「何よ、貴女はまだ殿下に未練があるというの?」
「いえ、私自身は別に婚約破棄を受け入れても構いませんが…」
目の前で指刺されて婚約破棄宣言されたら、とっくに気持ちは冷めています。
「なら、どういう意味だ⁉」
「どういうって…ダイア様は聖女の役目については御存じないのですか?」
「何よ、役目って…」
「そうだ、何の事だ⁉」
呆れた…この2人は本当にその事を知らないなんて。
周りの貴族達はその事を知っていて拍手をする者が居なかった…いえ、ファステス殿下が叫んだ後に拍手をした者達は自分の身内に聖女がいない事に安堵しての拍手だったかもしれないわね?
「ではここで歴史の授業です! 聖女が王族の地位と同等と決定付けられたのは今から何百年前の話でしょうか?」
「それは昔だと聞いている!」
「なら質問を変えて…聖女の印を手に入れた者は、例え平民であろうとも王族と同じ地位というのは何故でしょう?」
「そんな事…聖女は誰よりも偉いからでしょ‼」
はぁ、まるで子供みたいな言い分ね…阿呆でしょうか。
多分この会場にいる貴族達は誰もが知っていてもおかしくはないのに、この言葉遣いがなっていない男爵令嬢ならともかく…何故王族のファステス殿下が分からないかなぁ?
「聖女の役目とは、この大陸の中央に位置するギアスの大穴の底から瘴気が噴き出していて、歴代の聖女はそのギアスの大穴の底に向かって瘴気を浄化するのが目的なんですよ。」
「瘴気というのを浄化するだけなんでしょ? 楽勝じゃない!」
「歴代の聖女様達は、瘴気を浄化させる際に命を落としたというのに…ですか?」
「だが、それを成功して王族と結婚をした聖女も過去にいたのだろう?」
「それを可能にした聖女も中にはいたらしいですね。 ただ、今回はそう簡単に事が運ぶとも思えませんけど…」
「ど、どういう意味よ⁉」
現在ギアスの大穴は神殿が管理をしていて、神殿の法具によって穴から瘴気を漏れないように押し留めている。
瘴気を完全に浄化出来るのは聖女しかいなくて、命がけの作業になるのだけど?
「ダイア様の先代と先々代の聖女がバックレたのが原因です。 その為に150年分の瘴気が今にも溢れそうな勢いで…50年分の瘴気の浄化ですら何人の聖女が挑んで命を落として来ましたので、150年分の瘴気を浄化させるにはよほどの浄化能力がないとまず生きては戻れないからです。」
「何をやっているのよ、先代と先々代は‼」
「先々代の聖女様は、聖女の印が出現した際に逃亡を図って他大陸に逃げ延びて聖女の印を喪失し…先代の聖女様も聖女の印が出現した際に逃亡を図ったけど、神殿の者達に捕まってギアスの大穴に向かう際に自害をして…」
「な、なんですって⁉」
「過去にも聖女の印が出現した聖女様達の中にはひた隠しにして公表をしなかった者もいたらしいけど、結局はバレてしまって…なので今期の聖女もひたすら隠して公表をしないと思っていたのですが、まさかダイア様の様に王族の地位に目が眩んで名乗り出てくるとは夢にも思っていなかったんでしょう。」
私はそう言うと、貴族達は私の言っている事に対して頷いたのだった。
そして…ダイアの周りに騎士が取り囲んでいた。
「ちょ、ちょっと近寄らないでよ! これは命令よ‼」
「あ、ちなみにですが…聖女が王族と同じ地位を与えられるのは、聖女としての役目の浄化を終わらせて帰還した場合だけですよ! 現在のダイア様は聖女の印があっても王族の地位はありませんので、命令が出来る立場ではないのです。」
「それを早く言いなさいよ‼」
ダイアは私の話を聞いてからすぐに逃げ出そうとしたが、騎士に囲まれていて逃げる事は叶わなかった。
「ファステス殿下、このままでは私は…」
「すまない…」
ファステス殿下は何も言えずにダイアは騎士に捕まって連行されて行った。
連行されている時にダイアは散々暴言に近い発言をしていたのだった。
「私が死んだら呪ってやる!」とか、「浄化に成功した暁には、お前等は奴隷にして一生コキ使ってやる!」とか…?
聖女は神によって選ばれる…という話だけど、よくあんな性格の人を選んだわね?
人材不足だったのかな?
それとも扱い易くてチョロい人を選んだのかな?
まぁダイアのこれから待ち受ける運命は、物凄く過酷の物になるでしょうねぇ?
そして…1人残されて呆けているファステス殿下は我に帰ると、私の方に振り返ってからまるで何事もなかったかのように振る舞いながら手を差し出して言って来た。
その言動に対して…どうなったのかは次回に続きます。
これより物語は始まります。
今日は王宮内で婚約披露パーティーで会場内には多くの貴族達で溢れていた。
…の筈だったのに、国王陛下と王妃陛下の玉座の前でこのゼーヴェンス王国の第一王子であるファステス殿下は私…マーテルリア・フローレンス公爵令嬢に対して指を刺して告げたのだった。
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だけどファステス殿下はそれを無視して会場の扉の方に行くと、銀髪に青い瞳を持つ青いドレスを着た女性をエスコートして玉座の前に連れて来た。
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聖女となった者は国王や王妃よりは立場が下だが、王族と同じ資格を得ると決められていて…男爵令嬢だったダイアは出世したと言えるだろう。
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ファステスは右腕を高らかに上げて貴族達に宣言した。
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だが、この場にいる貴族達は誰も拍手をする者はいなかった。
それどころか国王と王妃は頭を押さえていて、貴族達も溜息を吐いていた。
「な、何故だ! 何故…誰も祝福をしてくれない⁉」
「あの、殿下…ダイア男爵令嬢が先程聖女の印を授かったという話ですが?」
「ダイアの左手の甲を見よ! この通りに聖女の印が刻まれているだろう‼」
ダイア男爵令嬢は笑みを浮かべて左手を上げると、聖女の印が光りだして辺りを照らした。
その神々しい光は確かに聖女を名乗るに相応しい光だった。
だけど、その光を見ても会場にいる皆は何も言わずに口を閉ざしていた。
それどころか、一部の貴族達はダイアを憐みの様な目を向けていた。
「何だというのだ! 聖女が誕生したのだぞ‼」
ファステス殿下が皆にそう言うと、貴族達の中の一部で拍手が巻き起こった。
その拍手の喝采を聞きながら…ファステス殿下は私の元に来て告げた。
「こういう訳だから…マーテルリア、お前との婚約は破棄でも構わないよな?」
「いえ、構わないというか…」
私はそう言いながら口籠っていると、ダイアが私の方に来て耳元でこう言った。
「公爵令嬢が男爵令嬢に婚約者を奪われたなんてうっける~~~、まぁ、これからは私の方が立場が上なのだから逆らわない方が身の為よ~~~‼」
「なっ!」
ダイア男爵令嬢はそれだけ告げると、ファステス殿下の隣に立っていた。
そして再び私の方を見て勝ち誇った様な顔をしていると、何気に腹が立っていた。
ファステス殿下は決して頭が良い方ではない。
そしてダイア男爵令嬢も同様に…?
何故私がそんな事を言うかというと、この国の聖女は悲劇の聖女と呼ばれるだけのある役目があるからだった。
恐らくこの2人にはその事を全く知らないのだろう。
さて、たかが男爵令嬢風情が公爵令嬢にこんな真似をしてくれたお礼として…絶望的なざまぁをプレゼントしてあげましょうか?
「あのファステス殿下…本当に私との婚約を破棄しても良いのですか?」
「勿論だ! 聖女は王族との婚姻を済ませていずれは王妃となり、国を繫栄に…」
「恐らく出来ませんよ?」
「はぁ?」
「何よ、貴女はまだ殿下に未練があるというの?」
「いえ、私自身は別に婚約破棄を受け入れても構いませんが…」
目の前で指刺されて婚約破棄宣言されたら、とっくに気持ちは冷めています。
「なら、どういう意味だ⁉」
「どういうって…ダイア様は聖女の役目については御存じないのですか?」
「何よ、役目って…」
「そうだ、何の事だ⁉」
呆れた…この2人は本当にその事を知らないなんて。
周りの貴族達はその事を知っていて拍手をする者が居なかった…いえ、ファステス殿下が叫んだ後に拍手をした者達は自分の身内に聖女がいない事に安堵しての拍手だったかもしれないわね?
「ではここで歴史の授業です! 聖女が王族の地位と同等と決定付けられたのは今から何百年前の話でしょうか?」
「それは昔だと聞いている!」
「なら質問を変えて…聖女の印を手に入れた者は、例え平民であろうとも王族と同じ地位というのは何故でしょう?」
「そんな事…聖女は誰よりも偉いからでしょ‼」
はぁ、まるで子供みたいな言い分ね…阿呆でしょうか。
多分この会場にいる貴族達は誰もが知っていてもおかしくはないのに、この言葉遣いがなっていない男爵令嬢ならともかく…何故王族のファステス殿下が分からないかなぁ?
「聖女の役目とは、この大陸の中央に位置するギアスの大穴の底から瘴気が噴き出していて、歴代の聖女はそのギアスの大穴の底に向かって瘴気を浄化するのが目的なんですよ。」
「瘴気というのを浄化するだけなんでしょ? 楽勝じゃない!」
「歴代の聖女様達は、瘴気を浄化させる際に命を落としたというのに…ですか?」
「だが、それを成功して王族と結婚をした聖女も過去にいたのだろう?」
「それを可能にした聖女も中にはいたらしいですね。 ただ、今回はそう簡単に事が運ぶとも思えませんけど…」
「ど、どういう意味よ⁉」
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「先々代の聖女様は、聖女の印が出現した際に逃亡を図って他大陸に逃げ延びて聖女の印を喪失し…先代の聖女様も聖女の印が出現した際に逃亡を図ったけど、神殿の者達に捕まってギアスの大穴に向かう際に自害をして…」
「な、なんですって⁉」
「過去にも聖女の印が出現した聖女様達の中にはひた隠しにして公表をしなかった者もいたらしいけど、結局はバレてしまって…なので今期の聖女もひたすら隠して公表をしないと思っていたのですが、まさかダイア様の様に王族の地位に目が眩んで名乗り出てくるとは夢にも思っていなかったんでしょう。」
私はそう言うと、貴族達は私の言っている事に対して頷いたのだった。
そして…ダイアの周りに騎士が取り囲んでいた。
「ちょ、ちょっと近寄らないでよ! これは命令よ‼」
「あ、ちなみにですが…聖女が王族と同じ地位を与えられるのは、聖女としての役目の浄化を終わらせて帰還した場合だけですよ! 現在のダイア様は聖女の印があっても王族の地位はありませんので、命令が出来る立場ではないのです。」
「それを早く言いなさいよ‼」
ダイアは私の話を聞いてからすぐに逃げ出そうとしたが、騎士に囲まれていて逃げる事は叶わなかった。
「ファステス殿下、このままでは私は…」
「すまない…」
ファステス殿下は何も言えずにダイアは騎士に捕まって連行されて行った。
連行されている時にダイアは散々暴言に近い発言をしていたのだった。
「私が死んだら呪ってやる!」とか、「浄化に成功した暁には、お前等は奴隷にして一生コキ使ってやる!」とか…?
聖女は神によって選ばれる…という話だけど、よくあんな性格の人を選んだわね?
人材不足だったのかな?
それとも扱い易くてチョロい人を選んだのかな?
まぁダイアのこれから待ち受ける運命は、物凄く過酷の物になるでしょうねぇ?
そして…1人残されて呆けているファステス殿下は我に帰ると、私の方に振り返ってからまるで何事もなかったかのように振る舞いながら手を差し出して言って来た。
その言動に対して…どうなったのかは次回に続きます。
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