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第四話 逃走

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俺「…もう、剣を握れないだろう?」ゼェゼェ 

女剣士「あ、ああ…」プルプル 
女剣士「あが……」ドサッ 

俺「決着が…着いたな…」ゼェゼェ 
俺(この怪我…俺ももう、剣士をやってられないかもしれないな) 

女剣士「勝てなかった…最後まで、勝てなかった…あれだけやったのに、全て、無意味に…」 

俺「女剣士…」 

女剣士「でもこれで! 貴方の心と身体に、一生消えない深い傷を残すことができた! ウフフ、アハハハ!」 

俺「……」 


女剣士「見なさい! この首飾りの、骨の欠片…これ全部、私が殺してやった人間なのよ!」 
女剣士「貴方と! 私で! 殺した数なの!」 

女剣士「そこの騎士長さんも、貴方が人生を奪ったようなものなのよ!」 
女剣士「もう首から下が動かないの!」 
女剣士「あの人…ずぅっと生き地獄を味わい続けるのよ! アハ、アハハハハ!」 

俺「…そうだ、俺の罪だ。そして、ここで終わらせる」ジャキン 

女剣士「…………」ポタ 
女剣士「……早く、殺して。お願い、貴方の手で……」 

俺「…………」 


女剣士「ごめんね…全部、八つ当たりなの。わかってた」ポタポタ 
女剣士「本当は初めて負けたあの日……あの日から、きっと貴方のことが好きだったんだと思う」 

俺「……っ!」 

女剣士「…私は家が厳しかったし、見合い結婚することが決まっていたからそういう感覚に疎かったし…何より初恋だったから、わからなかった」 
女剣士「凄く家が厳しくって…でもあの頃はそれが普通だと思ってて」 
女剣士「どこに矛先向けたらいいのかわからなくって…それで、ずっと貴方を目の敵にしていたけど…」 
女剣士「本当は憧れたかったし、大好きになりたかったの」 


女剣士「もっと、別の場所で会えたら…」 

俺「…一年の頃、名家の天才剣士がいるって聞いて…ずっと憧れで、目標にしていたんだ」 
俺「そうでもなったら…わざわざ奥義返しなんて、編み出すもんか…」 

女剣士「…そっか、両想いだったんだ」ニコ 
女剣士「…………」 
女剣士「……お願い」 

俺「……」シュッ 

ザクッ 


女剣士「…………」 

俺「…………」ハァハァ 
俺(なんで、俺は外した……! 決めただろ、覚悟……!)ギュッ 

騎士「騎士長様!」 
騎士「奴が殺人鬼か! 大丈夫かっ! 俺!」 

俺「うっ…」 

女剣士「……臆病者」ボソッ 
女剣士「…………」ガンッ 

俺「ガハッ!」 
俺(蹴飛ばされた……!)ゲホッ 


女剣士「……」ヨロ、ヨロ 
女剣士「…………」チラッ 

俺「…………」 

騎士「逃げるぞ! 追えっ!」 

女剣士「…………」バッ 

俺(騎士長様……すいません……女剣士……ごめん……)ポタポタ


―一週間後― 

騎士C「あれが、犯罪者と前騎士長様の仇を逃がした奴か…」 
騎士D「おい、止めろ」 

俺「…………」 

騎士C「事実だろうがっ! あいつはあの時、あのアマを殺せてた!」 
騎士C「それを……!」 

騎士C「お前、聞こえてるんだろ! 何とか言えよ!」ガッ 

俺「…………」 

騎士C「何か言ってみろよおっ!」ボロボロ 
騎士C「知ってるんだろ? 騎士長様は今、ベッドに寝た切りで……」ウッ、ウウ 

俺「…………」 

騎士D「…怪我人相手だ、止めろ」  
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