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12話
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「いや~止めるって言った本人があんなこと始めるもんだから目ん玉飛び出るかと思った」
ハーフアップの女子生徒、土屋 舞彩。
どういうつもりか問い詰めるために追いかけて来たらしい。
ニヤニヤと悪戯っぽく笑う舞彩に希乃葉は苦笑で返す。
「あはは…驚かせてごめんね。普通に止めてって言っても聞いてくれそうになかったから…」
「でも本当に別人みたい。すっごい怖かったもん、あの時の希乃葉ちゃん」
うんうんとナンシーとエマが頷き肯定する。
「ええ?大袈裟だよ。確かに少し林くんたちに合わせはしたけど…」
「あれが少し…?」
頬を引き攣らせる舞彩に希乃葉は首を傾げる。
彼女はあくまでほんの少し康生たちに合わせただけのつもりなのだ。
会話をするために、声に耳を傾けてもらえるように振る舞っただけのこと。
厳格な者は奔放な者の戯言を取り合わない。
その反対もまた然り。
相手に合わせて態度を変えるというのは誰しもが少なからずやっていることだろう。
それを少し意識して、大仰にやってみせた。
希乃葉にとってはコミュニケーション法の一種という認識。
だから悪ぶってみたものの普段の自分とそこまで乖離しているつもりはなかった。
「ま、何はともあれ怪我も無く助けちゃうんだからすごいよ。兵士含めて誰も動こうとしてなかったのは事実だし、正直委員長が来るのを待つしかないと思ってたんだ」
きょとんとしている希乃葉に無自覚な演技派こわ~と思いつつこれ以上は藪蛇かと舞彩は話題を変えた。
「委員長?」
「そ、熊谷 博司委員長。昨日矢面に立って王様と喋ってた厳ついやつ。
彼くらいだよあいつら止めれるの」
王に噛みついていた金髪…柳田と呼ばれた生徒を下がらせた広い背中を思い出す。
熊谷博司…それは希乃葉のクラスでもよく耳にした名前だった。
確か、中学までに幾つもの大会を総なめにした柔道の期待の新星で強豪校の推薦を受けていたにも関わらず蹴って何故か柔道では無名であるうちの高校に入ったために話題になっていた。
鍛え抜かれた逞しい背中を改めて思い浮かべそれに比べて薄く感じる康生を思い浮かべる。
「…腕っぷしじゃ敵わなそうだものね」
「あははっ、そうそう!なんかやらかそうとする度に委員長が止めてくれててね。
委員長に睨まれたら舌打ちして逃げてくのがカッコ悪いったらないの!
それでも大人しくしようとはしないんだから図太いっていうか面の皮が厚いっていうか…」
「へ~頼りになる人なんだ。
あ、じゃあもしかして私余計なことした?」
「いやいや、委員長が何時来てくれるか分かんなかったし委員長は力づくで押さえつけるだけだからその場しのぎでナンシーは解放されなかったと思う。むしろ後から八つ当たりされてたかも…」
舞彩の言葉を聞いてナンシーは青褪め助けてくださったのがノノハ様でよかったですぅ~!と抱き着いた。
よしよしと宥めて本題に移る。
「それで…土屋さんがナンシーを引き取るってことでいいんだよね?」
「おうよ!って、土屋さんなんて他人行儀やめてよ。私たちはもう友達…いや!秘密を共有する仲間、相棒といっても過言じゃないでしょ!」
二ッと笑う舞彩に釣られて希乃葉も吹き出す。
手を差し出せばすぐ意図を察して握り返してくれた。
「これからよろしくね、舞彩!」
「うん!よろしく希乃葉ちゃん」
ハーフアップの女子生徒、土屋 舞彩。
どういうつもりか問い詰めるために追いかけて来たらしい。
ニヤニヤと悪戯っぽく笑う舞彩に希乃葉は苦笑で返す。
「あはは…驚かせてごめんね。普通に止めてって言っても聞いてくれそうになかったから…」
「でも本当に別人みたい。すっごい怖かったもん、あの時の希乃葉ちゃん」
うんうんとナンシーとエマが頷き肯定する。
「ええ?大袈裟だよ。確かに少し林くんたちに合わせはしたけど…」
「あれが少し…?」
頬を引き攣らせる舞彩に希乃葉は首を傾げる。
彼女はあくまでほんの少し康生たちに合わせただけのつもりなのだ。
会話をするために、声に耳を傾けてもらえるように振る舞っただけのこと。
厳格な者は奔放な者の戯言を取り合わない。
その反対もまた然り。
相手に合わせて態度を変えるというのは誰しもが少なからずやっていることだろう。
それを少し意識して、大仰にやってみせた。
希乃葉にとってはコミュニケーション法の一種という認識。
だから悪ぶってみたものの普段の自分とそこまで乖離しているつもりはなかった。
「ま、何はともあれ怪我も無く助けちゃうんだからすごいよ。兵士含めて誰も動こうとしてなかったのは事実だし、正直委員長が来るのを待つしかないと思ってたんだ」
きょとんとしている希乃葉に無自覚な演技派こわ~と思いつつこれ以上は藪蛇かと舞彩は話題を変えた。
「委員長?」
「そ、熊谷 博司委員長。昨日矢面に立って王様と喋ってた厳ついやつ。
彼くらいだよあいつら止めれるの」
王に噛みついていた金髪…柳田と呼ばれた生徒を下がらせた広い背中を思い出す。
熊谷博司…それは希乃葉のクラスでもよく耳にした名前だった。
確か、中学までに幾つもの大会を総なめにした柔道の期待の新星で強豪校の推薦を受けていたにも関わらず蹴って何故か柔道では無名であるうちの高校に入ったために話題になっていた。
鍛え抜かれた逞しい背中を改めて思い浮かべそれに比べて薄く感じる康生を思い浮かべる。
「…腕っぷしじゃ敵わなそうだものね」
「あははっ、そうそう!なんかやらかそうとする度に委員長が止めてくれててね。
委員長に睨まれたら舌打ちして逃げてくのがカッコ悪いったらないの!
それでも大人しくしようとはしないんだから図太いっていうか面の皮が厚いっていうか…」
「へ~頼りになる人なんだ。
あ、じゃあもしかして私余計なことした?」
「いやいや、委員長が何時来てくれるか分かんなかったし委員長は力づくで押さえつけるだけだからその場しのぎでナンシーは解放されなかったと思う。むしろ後から八つ当たりされてたかも…」
舞彩の言葉を聞いてナンシーは青褪め助けてくださったのがノノハ様でよかったですぅ~!と抱き着いた。
よしよしと宥めて本題に移る。
「それで…土屋さんがナンシーを引き取るってことでいいんだよね?」
「おうよ!って、土屋さんなんて他人行儀やめてよ。私たちはもう友達…いや!秘密を共有する仲間、相棒といっても過言じゃないでしょ!」
二ッと笑う舞彩に釣られて希乃葉も吹き出す。
手を差し出せばすぐ意図を察して握り返してくれた。
「これからよろしくね、舞彩!」
「うん!よろしく希乃葉ちゃん」
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