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婚約破棄をしたいらしいのです
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「貴方とは婚約破棄を考えさせてもらう。」
そう、美しい顔を歪ませおっしゃるのは、この国の王太子です。
「な、何故私が、どういうことでしょう」
そして、目の前で扇を広げ優雅に喋っているようにみえるのは、王太子の婚約者。
公爵家の一人娘。
エリザベス・ペサリー様です。
「まだシラを切るつもりか。エリザベス!罪状は上がっている。特待生であるマリアンヌに誹謗中傷しただけでは飽き足らず私物を壊すなど、それに最後にはマリアンヌを階段から突き落とした疑いまでかかっている。貴方が、私を想ってくれているのは、しっている。だが、人命に関わるのは流石にやり過ぎだ」
そう苦虫を噛み潰した顏でおっしゃる王太子様にエリザベス様は、「そ、そんなことしておりません!!何かの間違いですわ。」
そう叫ばれますが、宰相のご子息のセドリック様が歩み出てきて仰られます。
「あなたは、この侍女の顔を見てもそう言えますかな?」
そうやって、押し出されたのは、そう・・・。
私です。いや~。そんな大事な場面を私に丸投げしないで頂きたい。
「おまえは・・・」
「お嬢様・・・」
え?甘い感じの言い回しだけどまったく甘い感じはありませんよ。だって、お嬢様は私を睨んでおられますし、ええ、いつもの般若顏の二割り増しです。
言ったらダメですよ。給金が減ります。一応言わせて貰えばお嬢様は、とても美しいお顔をされております。ちょっときつめの目元を除けば。
さて、私ですが、一体何を喋ればいいんでしたっけ?っと周りにあまりにも注目を集めすぎてお遊戯会の舞台にも上がったことが無い。裏方人生の私にはここは荷が重いようです。ちらりとセドリック様を見ると、何故かわかってるだろって感じて流されました。
いや、わかって無いですよ。
無言でいる私にセドリック様は、額に手を当てため息をつきながらついに本題に入りました。
「私の調査によると、貴方は毎回この侍女を使ってマリアンヌさんを貶めていたようですね。貴方が命令する所を貴方の取り巻き達が見ています。それに貴方の侍女もあまり貴方に忠誠は誓ってないようですね。さっさと吐くでしょう。ほらさっさと喋りなさい。」
まったく尊大な態度でおっしゃるセドリック様に吐けと言われ近くにいた騎士がエリザベス様に剣を向けておられます。
「えっと、マリアンヌさんについていろいろ頼まれたことは、あります。」
私は、ビクビクしながら話します。
「ほらみたことですか。」
「やっぱり、エリザベス・・・君は・・・」
「エリザベスなんてことを・・・」
「エリザベスさま・・・」
っと色んなことを言われるエリザベス様ですが、この後。誤解の無いよう私が、ちゃんと言わなきゃダメなやつですね。そう思い声を大きめにだしました。
「ですが!!」
「ですが?」
「ですがってなんだ!」
何故か怒られながら私は続けます。
「私は、お嬢様の世話はやりますが、マリアンヌさんの嫌がせはやっておりません。」
「何を言ってるんですか?今さら主人をかばったところで」
慌ててセドリック様は私を睨まれますが、ちゃんと正直に言わないとクビになってしまいます。
「いえ。庇ってるわけではなく。給金が出てませんのでそんなめんどくさいことはいたしません。」
「「「は?」」」
なぜか疑問系で聞き返された私は、『こいつらさては耳が悪いな』っと思いもう一度言います。
「だから、給金を貰ってないのでやっておりません。」
「何を言っている。給金なら出てるだろうが!!」っと次期公爵を継ぐ予定のエリザベス様の兄上の長男ウィリアム様が仰います。
「はい。それは、お嬢様の身の回りの世話の給金です。料理・洗濯・掃除にお嬢様の身の回りの世話が私の仕事でありまして。その他は別途特別料金になっております。」
「いや、特別料金って」
「あ、因みに料金表はこちらになっております。」
「えっと、
お手紙配達1000円。(学園内に限る)
教材調達2000円(商店街までとする。)
雑用5000~(用事により変わります)
護衛1時間1万円(ただし、相手が格上やプロの場合相場に応じて変動します。)
夜のお世話300000円(生物学上女である場合)
夜のお世話3000000円(生物学上男の場合)
・
・
・
マリアンヌさんへの嫌がらせ999999円(学生期間限定サプライズプライスです。)
何ですかこれ」
「おい桁がおかしい所があるぞ。なぜおまえのような貧相・・・」
「誰かなにかおっしゃりましたか?」
どこからか今変な声が聞こえた気がしましたが、気のせいでしょう。
ついどす黒いものが出てしまいました。
「とにかく。ただでさえ洗濯物や食器洗いだけでも、1人でやらなきゃいけないこの学園内で、何故私がそんな面倒くさいことを料金外でやらなければならないんですか?」
「金を貰えばやるのか?」
「勿論です。」
即答する私にセドリック様は睨みながら証拠にならないといわれます。
「じゃあ、お前が貰ってない証拠は無いだろう。エリザベス様は、かの有名な公爵家の令嬢ですからね。お金なら持っているでしょう。」
「いえ。それは「やめなさい。」」
ここで初めてお嬢様が言葉を出されます。
「何ですか。今さら罪を告白する侍女を止めるのですか?」
ニヤっとされるセドリック様にお嬢様は私を睨んだまま目を離されません。
「いえ。そうじゃなく「黙りなさい。」」
「エリザベス重要な事だ。話を聞かなくてはならないんだ。」
「アンドリューさま・・・」
エリザベスさまは絶望的な真っ青なお顔で王太子様を見つめておられます。
ではここはお嬢様の名誉の為。張り切って大声でいかせて貰いましょう。
「エリザベス様が私にマリアンヌさんへの嫌がらせを頼める事はありません。」
「何故だ。」
「何故ならば。エリザベス様は、フォンテンシュのチョコケーキが大好きで一度食べ過ぎて太られニキビと鼻血を出された事がありまして」
「やめてぇぇぇ~・・・」
叫ばれるお嬢様。ちょっと引き気味の皆様。会場は混沌としております。
「どんだけ食べたんだ」
「そう言えばそんな事もあったような・・・」
っと様々な声とウィリアム様の回想の入った言葉が入ります。ですが、ここで諦めるわけにはいきません。お嬢様の無実の為に私は血を吐く思いで語ります。
「それはそれは鼻血も大量にだされたあの日。なんと出血で意識を1日無くされたほどでした。それで心配なされた公爵様に『月に3回まで』と言われ月に3回買える分のお小遣いしか貰っておられません。」
「しかし、教材やら買うだろう。」
「はい。ですからお嬢様は日々3回を減らさないよう節約生活をされておられます。」
「節約生活っていくらだ」
「フォンテンシュのケーキは、お一つ1万円の高級品なので三万円をなんと公爵様がご慈悲で教材費の為とお嬢様のケーキを減らさぬ為に月のお小遣いは三万九千円まで出されております。」
顔を真っ赤にして崩れ落ちるお嬢様。
「うぅ・・・ついにアンドリュー様にまで知られてしまいました」
「エリザベス・・・」
「もういっそ処刑してください!」
いやいやと、髪を振り乱しながら、泣き崩れるられたエリザベス様をそっと抱きしめながら慰めるアンドリュー様。
なんだかいい雰囲気です。何故でしょう?
ただのチョコケーキなのに・・・ゾク
今、エリザベス様の方からの僅かな殺気が、もしや、お嬢様は思考を読むことができるのでしょうか?
そんなことで少しずつ私がエリザベス様に恐怖を覚えていると
「でも、私は聞きましたわ!!エリザベス様がそこの侍女に『アレをしてくるようにと』怪しいことを頼んでその侍女が了承するところを」
そこで空気を読まず叫び出すご令嬢。
「そう言っておられますが?」
セドリック様は、一応まだやる気のようです。
「はい。了承はします。ですが、お嬢様は日頃からツンデレ・・・ごほん。我儘「あなたそれフォローしてるつもりなの」」
目が真っ赤になりながら睨まれるエリザベス様は、いつの間にかアンドリュー様の腕の中にスッポリと収まっておられます。アンドリュー様。それは流石にセクハラです。
「エリザベス少し黙って進まないから」
「うぅ・・・だってお兄様。」
「では。」
「あなたはもうちょっと自重と空気を読みなさい!!」
話そうとすると何故か仲間のはずのセドリック様からの怒られました。
「ゴホン・・・とにかく話を続けなさい。」
ウィリアム様からの促され。
え?いいの?言っちゃうよ?っとビクビクしながら私は、しゃべり出します。
「昔からお嬢様は、・・・自由奔放(我儘)
でしたのでとりあえず聞いたふりして『わかりました』っと応えるのが我が家のメイドのしきたりでして」
「いや、それは昔からお前(あなた)だけだぞ(よ)・・・」
なにやらささやきが聞こえた様な気がしましたが気のせいでしょう。
「とりあえずやってないわけですね。」
「勿論です。」
「因みにあの料金表のマリアンヌさんの項目の料金は、高い様な気がしましたが」
「ぁぁ、それはですね。一応なんかの有事の際に逃げるようの偽造通行証と旅費に当てようと思いまして。」
そんなことをつい口を滑らしてしまったせいでしょうか。
「・・・それは、後ほど詳しく詰所までご同行願えますか?」
これまで静かだった後ろの騎士様がいきなり声を上げられました。
「・・・」
だまりこむ私の耳元で騎士様は観念したように囁かれました。
「・・・情報料は、払いましょう。」
「わかりました。そこまでおっしゃるなら是非行かせていただきます。」
まるで悪魔のささやきでしたが、そこまで言われたら仕方ありません。
「売ったわ・・・」
「いくらぼったくるつもりなんだ。あいつは・・・」
勿論。お嬢様とウィリアムさまの呟きは私には届きません。ええ、聞こえておりません。
「で、でも、私達聞きましたし、そういえばあの侍女が夜中こっそり出て行くところも見ましたわ」
お嬢様の取り巻きの別のもう1人の方が声をまた上げられます。
「あなた・・・」
お嬢様がキッっと睨みます。
何故か私を。
・・・そして、私はそっと視線をそらします。
「またやったのか・・・」
何故かウィリアム様まで残念な子を見る目に
「なんなのですか?」
セドリック様は、戸惑ったようなお顔でエリザベス様に問われました。
エリザベス様はため息をつきながら私の秘密をこんな大勢の前で暴露されるつもりのようです。
「この子は、昔から大事なもの(お金)は、穴を掘って隠す癖がありまして、毎日掘り返しては、お金を数え埋めていたのですが、その所為で一時期お母様の家庭菜園が枯れてしまいまして、我が家では、庭に穴を掘るのを禁止したのです。」
そして、秘密を暴露された私は観念して語ります。
「あの時はクッキーの箱に入れてしまって、奥様が菜園にお水をまかれるたびにどんどん錆びて酸化してしまいましたのでそれを考慮して今回は壺に致しました。」
「そういう問題ではありません!!埋めるなとあれだけ言ったでしょう。」
「ですが、埋めないと落ち着かないのです。いいですかお嬢様。人は、土があるから掘るんじゃないんです。そこにお金と土があるから掘るんです。」
胸を貼って答える私にエリザベス様は額に手を当て何やら疲れているご様子。
そこには、いつもの冷たさを感じるつり上がった瞳はなく。たまにご実家で疲れた際見せられる儚げな大人の色気が見えます。
「・・・ごめんなさい。私にはよくわからないわ」
「・・・大丈夫だエリザベス。私にもわからん。」
「アンドリュー様」
「エリザベス・・・様はいらない。アンドリューと・・・」
「アンドリュー・・・」
何故か甘い雰囲気のお二人です。お嬢様。
そいつさっきお嬢様に『婚約破棄』とかいってたやつですよ。たぶんそいつ今のお嬢様の色気にやられただけです。
そんなシラけた目線を送っていた私にセドリックさまからの一言が刺さります。
「しかし、マリアンヌさんに被害が出ているのは、事実。どう説明する?」
「ああ、それですが、それならさっき証言されていた。ナタリー様、レジーナ様、フレイア様の証言ですが、おかしいところがございます。特に皆様はお嬢様といつも一緒に行動されておられましたよね」
「え、ええ。」
「ですから、私への命令も聞いておられたと」
「なにを言いたいのかしら」
「ならば普通なら、気付いていたはずです。エリザベス様の侍女が私1人しかいないと、それに他にも一緒におられる取り巻きの方はおられましたが、ナタリー様、レジーナ様、フレイヤ様は、いつも必ず誰か1人付いておられました。特にこの頃はエリザベス様が独りきりの時は、夜寝る前などしかないほどピッタリとくっついておられた癖に!世話をする私がマリアンヌさんへの嫌がらせに抜け出せるはずがありません。
それに侍女は私1人しかいないエリザベス様の部屋に毎日当たり前の様にお茶で集まっておられました。毎日私が紅茶を準備したり、お菓子を準備したりして嫌がらせに抜け出す暇さえなかったということもわかっておられるはず。
それなのに、エリザベス様のお部屋で毎日毎日貴方達は、紅茶やお菓子をパクパクと食べて私が次々に準備しなければならず、余る筈だった私のおやつまで、パクパクといい加減迷惑だと思っていたことも、もっと早く気づくべきなんです!!たまには自分たちの部屋で食べればいいのに・・・」
「はぁ、私情がかなり入ってますが、そうなのですか?」
「「「・・・」」」
「・・・毎日誰かと一緒におられたのは本当ですわ。それにいつもエリザベス様の部屋でお茶会をしておりました。」
そう答えるのは、エリザベス様の取り巻きのお一人伯爵家のクリスティーナ様です。
「それにエリザベス様がマリアンヌさんの存在に気づいたのは最近です。それも、あなた達3人が、エリザベス様に噂を流すまでマリアンヌさんの『マ』の字もお知りになりませんでした。なのに、私が調べた時期ではその前からマリアンヌさんへの嫌がらせははじまっています。」
「なにを・・・」
「私、面倒くさいのは嫌いなんでお嬢様から頼まれるものを極力減らそうとしております。」
「・・・そうね。貴方は、そういうところで無駄に能力を使う子よね。」
エリザベス様が哀愁漂うように同意されています。どうしたんでしょうか?
「つまりです。そんな面倒ごとの塊もとい。マリアンヌさんが王太子様の周りにいるのを見せない為に私は時に道に迷ったフリをしながら、時に鳥の糞が落ちて来たと嘘をつき、お嬢様を池に突き飛ばすなど様々な労力を使ったのです。なのに貴方達は、お茶会などと言って・・・」
つい私は感情の高鳴りをかんじて涙を流します。
「ちょっ・・・何故泣いてるんだ?」
「ああ、セドリック様。・・・あれはですね。無駄に働いた時に出るあの子の悔し涙ですわ。近頃はめっきり見なくなりました・・・」
私は、手に力が入りすぎて爪が皮膚に食い込んでしまいましたが、あの方々には、わたしの労働力分は償って貰わなければなりません。
「あなた達は、わざわざ他の取り巻きの方が心配して気を回しマリアンヌさんの『マ』の字すら出さなかったのをいいことに誤魔化していた私の労力を無視し、マリアンヌさんの話をされましたよね。私はしっかりとおぼえております。
しかも、話した後マリアンヌさんにエリザベス様が嫌がらせをするように仕向けている様な口振りでございました。ですが、罪をなすりつけるはずのエリザベス様がなにも騒動を起こさないので不思議に思ったのではありませんか?」
「そ、 そんなことはありませんわ!!」
「本当にそうですか?だからじゃないんですか・・・貴方達は誇張してエリザベス様にマリアンヌ様の噂を教え、それをまに受けたエリザベス様が『マリアンヌさんに例のアレをやるのもいいかもしれないわね』言われたのを勝手に解釈してエリザベス様が『仰っているのです。』とエリザベス様のせいにして嫌味や嫌がらせをマリアンヌさんに繰り返していたのを私はしっています。
因みに私がお嬢様が言われた嫌がらせは『毛虫を木から落としてビックリした声を聞かれて恥ずかしがればいいんだわ』っという。笑え・・・ごほん。かわいい物です。
それなのに行われたのは教科書が破かれるなどのお嬢様にしては、嫌がらせ難易度が高い嫌がらせでした。
お嬢様は、こんな冷たい見た目ですが、ドロドロ復讐劇やシンデレラの冒頭の継母にいびられるシーンだけでも『あぁ、ダメだわ。お願いもうやめて。ああああ。き、聞こえませんわ』っといって耳を塞いで逃げる人なのにそんな高等なイジメをできるはずがありません。
しかも、私を目撃なさったとか?
何故私が夜中お金を掘りに薬学部の農園まで行ってたのをご存知なんですか?
いつどのようにして見られたのですか?」
「そ、それは・・・」
「・・・薬学部の七不思議の『何かを数える幽霊の声』は、あなただったのね」
追い詰める私を無視し、空気を読まずエリザベス様が呟いておられますが私はまるっと無視します。
「わかりました。・・・嫌がらせがエリザベス様じゃないのは、理解いたしましたが、マリアンヌさんが階段から突き落とされた件はどう説明するのですか。エリザベス様の侍女らしき姿を見たと目撃したものが言ってますが」
「わたしをですか?」
「ええ。貴方の容姿は珍しいですから」
そう、私の容姿はこの国には珍しい黒髪です。
「たしか2日前の3時頃と聞いていますが、あっているなら、私はアリバイが御座います。」
セドリック様は、メガネをクイっと上げながら私に向き直りました。しかし、私は無実を勝ち取るため胸を貼って答えます。
「ほう。それはどういったものでしょう。」
「私、その時間クリスティーナ様の侍女様に怒られておりました。」
「は?」
「ですからクリスティーナ様の侍女様に怒られておりました。」
「頭がいたいわ・・・」
「父上は、なぜこの子をエリザベスにつけたのやら・・・」
自信を持って言う私を見ながらエリザベス様とウィリアム様は何やら天井を見上げながらつぶやいておられます。
「・・・ゴホン・・・説明して頂いても?あと誰かクリスティーナ様の侍女を連れてきてほしい。」
「あの・・・大丈夫ですか?先ほどから咳が・・・のど飴をどうぞ」
そう言って、ボケットから取り出したのど飴を差し出すと後ろからエリザベス様の「あの子が他人に進んで物をあげるなんて・・・」と言う声が聞こえた気がしましたがまるっと無視しました。
「いえ、私は大丈夫ですので説明を・・・」
「そうですか?では。仕方ありません。私のアリバイですので、説明させて頂きます。その日。私は毎日の日課の洗濯を他の方の洗濯物に紛れ込ませる為に洗い場に向かっておりました。」
「どこから、怒った方がいいのかしら?」
エリザベス様の声が聞こえません。ええ、きこえませんとも。
「そして、私はその日かの有名な洗濯物をパリッと仕上げる。天才のクリスティーナ様の侍女様を見つけてしまったのです。そこからの私の行動は速かったのですが、常日頃からクリスティーナ様の侍女様には陰ながらお世話をして頂いている身であります。つい洗濯物を紛れ込ませる頻度がこの頃増えてしまったのは仕方ありません。それが、その日ついにバレてしまったのです。」
ガクッと崩れる私を冷たい目で見るエリザベス様。
何か新しいものに目覚めるかもしれません。
「な、なにか今背筋にゾクッとしたものが・・・」
「大丈夫かい?エリザベス」
「そして、ばれてしまった私は、侍女様に反省をしている事を示すため正座をしながら侍女様の1時間ほどの説教を甘んじて受けました。その後も足の痺れで10分ほど動けませんでしたので、マリアンヌさんを階段から突き落とすことは、できません。それに足の痺れがなくなった後もクリスティーナ様の侍女様に付き纏いガトーショコラと美味しい紅茶を頂いていたので私ではありません。」
「今付き纏いという言葉が聞こえたけど気のせいかしら?」
「気のせいでは無いぞ。エリザベス・・・」
そこでドアが開き見覚えのある2人が入ってきました。
「セドリック様。クリスティーナ様の侍女をつれて参りました」
勿論。さっき出て行かれた騎士の方とクリスティーナ様の侍女様です。
「ご苦労。・・・早速ですが、このエリザベス様の侍女が、2日前の3時ごろ貴方と一緒にいたと証言しているのですが事実でしょうか。」
「え?」
最初は、何のことかと驚かれながら私の顔を確認された侍女様は私の顔を見るや否や。睨みつける目になられました。
「ええ、2日前ですよね。勿論覚えております。見かけない花柄のシーツが混ざっていると思いまして、またかと、いつも洗い終わった後いつの間にか無くなるそのシーツを私は覚えておりました。なので、その日こそは犯人を捕まえるべく張り込みをしていました所。2時半にノコノコと現れまして正座させて説教いたしました。」
「花柄?」
「どうしたエリザベス・・・」
「私のシーツは、白です。花柄ではありません。」
「どういうことだ」
「え?確かに花柄のシーツをその侍女が取りに来ました。間違いありません。その後。クリスティーナ様に出す予定のガトーショコラまで試食して紅茶まで催促していきましたから顔を間違うということは、ありません。」
怒りの形相で話される侍女様はそれはそれは怒っておられました。
「どういうことかしら・・・」
目線を逸らした私に詰め寄るエリザベス様の冷たい眼差しは、流石の私でも無理でした。
「エリザベス様。言い訳させてください。私もたまにはパリッとしたシーツで横になりたかったのです。お昼寝しかパリッとしたシーツで寝れないなんて、夜も・・・夜もパリッとしたシーツで寝たかっただけなんです。」
私は震える声を押し殺し言い訳をさせていただきました。
「・・・貴方とは、また後から話し合いが必要みたいですね。」
「えっと、つまり貴方は、自分の仕事を他人に押し付けてそれのせいで怒られていたわけですね。」
「いえ、ちがいます。私の仕事はエリザベス様の身の回りですので、エリザベス様の洗い物は、私が洗ってパリッと仕上げております。ですから、侍女様のところには、私の私物の洗い物だけ紛れ込ませていただけです。」
「だから、『常日頃からクリスティーナ様の侍女様には陰ながらお世話をして頂いている身』なのですね。」
「はい。いつも、お世話になっております。」
私は常日頃から公爵家の侍女長様から『貴方は、そのお辞儀の角度だけは本当にうまいわね。』っといわれたお辞儀を侍女様に誠心誠意を、こめて致しました。
「クリスティーナ様。本当にごめんなさい。私の侍女が・・・」
「い、いえいえ、私も知りませんでしたので」
何か向こうでエリザベス様が謝っておられますが私は気にせず続けます。
「ですので、私がマリアンヌ様を突き落とすことは出来ないのです。」
胸を張って答える。私は、潔白です!!
「私の無実が証明されて嬉しいはずなのですが、無性にあの子を殴りたくなるのはなぜでしょう。・・・頭がいたいですわ」
「エリザベス。きっと疲れているのだ。もう、いいだろうセドリック。近く控え室を開けさせよう」
「申し訳ありません。」
「いや大丈夫だ。」
いつの間にか儚げなオーラで色気が出たエリザベス様を連れてアンドリュー様が出て行かれます。
エリザベス様が危ないかもしれません。
男はギャップに弱いといいますので。
なんて気長に考えて見送っていると、セドリック様がエリザベス様が出て行かれたのを確認してこちらを見られます。
「貴方実は犯人を知っているのでは無いですか?」
「私がでありますでしょうか?」
「ええ、貴方ですよ」
「そうですね。犯人というかは、わかりませんが、とある情報は知っています。」
「え?知っているのですか?」
ここでいままで黙りだったマリアンヌさんがやっと喋られました。もはや、空気でした。
「ええ、もしかしたらですが・・・」
「・・・仕方ありません。情報料は払いましょう。」
そうおっしゃる目を私は見つめ覚悟を決めます。
もちろん。貰えるものは貰いましょう。と。
「そうですか。そこまでおっしゃるなら、何処から話しましょうか。実はあの日3年生の最終試験日でして、試験の内容はモンスターの召喚でした。」
「ええ、それは聞いていますが・・・」
「そして、その日学園で初めて召喚されたモンスターがおりまして、あまりにも珍しかったので数日召喚したまま檻に入れて少し生態を調べることにしたようです。」
「はぁ、それ自体珍しいことではありませんよ。」
「はい。ですが、問題はそのモンスターがドッペルゲンガーという。モンスターだったことが問題でありまして、まあ、モンスター自体顔がのっぺらした顔になるため本人とは別人だとすぐわかるのですが、たまたま知らない学科の一年生が人が入っていると思い檻の鍵を開けたことは、しってますでしょうか?」
「え?」
「ドッペルゲンガーは、闇の魔物。何処かが黒色に絶対なってしまうそうです。目撃者は私と同じ黒色を見たとか。まあ、これは想像に過ぎませんので私にはこれ以上はわかりません。」
「いえ、それだけ情報を頂ければ私の方でも調べてみます。貴方を疑ってしまい申し訳ありませんでした。」
「いえ、追い詰めらるのは、慣れておりますので」
「そ、そうですか」
こうして、よくわからない。婚約破棄騒動は終結しました。
◇◇◇
その後。私は騎士の方に偽造通行証のことで話を聞くため、取り調べ室という部屋に連れて行かれカツ丼を二杯もご馳走になり、三食ご飯付きの牢屋に連れて行かれました。罪状は偽造通行証を作ろうとしたためとの事でしたが、まだ頼んでいなかったため情報提供までしたので入らなくてもいいと言われたのですが、私はそれで罪を逃れるのは、いけないと牢屋に入りました。普通の生活では、体験できないとても有意義な生活を送らせて頂きました。
感想ですか?それは、もちろん。至福でした。働かなくてもご飯と屋根付きトイレ完備の部屋で寝ることができ、まあ、たまに他の牢からはちょっと『俺は悪く無い』『お前らのせいだ』『呪ってやる』等何やら、叫ぶ声がたまに聞こえましたが、その他は、天国にいるような気分で私としては出たくなかったのですが、お嬢様の『侍女が喜ぶだけなので出してください。あの子には働かせることが一番の罰になるのです』言われたため。渋々、渋々外に出ました。
騎士様には、「またいつでも遊びにおいで」とのお言葉を頂き「はい。いつかまた戻って参ります。」と笑顔で返事をしたらお嬢様から扇が飛んできました。
まったく。この世はあんな天国があるというのに、私はまだ働かなくてはいけないのですね。
神様は理不尽です。
そして、目の前のエリザベス様はアンドリュー様との婚約は解消されずあの騒動前より仲良くなられました。
「はぁ、貴方のせいで薬学部の生徒には申し訳立たないし」
「いえ。その点は旦那様からの薬学部へ資金援助を申し出られましたので、『またいつでも埋めに行きても大丈夫だよ。』との薬学部の先生からのメッセージも頂きましたし大丈夫かと。」
「え?」
「それに旦那様も大変喜んでおられました。『これで誰にも文句を言われぬ。資金援助を、する理由ができた。』と、それはそれは真っ黒な笑みで微笑まれておりました。」
「貴方の行動。実は、お父様に誘導されているんじゃ無いんでしょうね。」
「いえ、私はたまたま、柔らかくて、掘り返してもばれない薬学部の畑に決めたまでですので、たぶん違うと思いますが、否定できないのが旦那様です。」
つい、あの豪華な机に肘をついてにっこり笑う旦那様をそうぞうして、ぶるっと震えてしまったのは、仕方ありません。
「はぁ、とにかく疲れたわ貴方が後ろから出てきた時は、私を売り飛ばしたのかと思ったわ」
「お嬢様の私を見る目がよくわかるお言葉ですが、私はさすがに罪を捏造いたしません。
それに
『主人を守るのは侍女の役目で御座います。』」
「貴方から聞くと、一番胡散臭い言葉だわ。
はぁ・・・、
でも、ありがとう・・・」
「え?お嬢様何か言われましたか?」
「なんでも無いわ。早くお茶を入れなさい。甘めがいいわ」
「まったく。お嬢様は我儘ですね」
「もう、我儘でいいわ」
こうして、お嬢様とお金好きな侍女は平和な1日をたま送り始めるのでした。
そう、美しい顔を歪ませおっしゃるのは、この国の王太子です。
「な、何故私が、どういうことでしょう」
そして、目の前で扇を広げ優雅に喋っているようにみえるのは、王太子の婚約者。
公爵家の一人娘。
エリザベス・ペサリー様です。
「まだシラを切るつもりか。エリザベス!罪状は上がっている。特待生であるマリアンヌに誹謗中傷しただけでは飽き足らず私物を壊すなど、それに最後にはマリアンヌを階段から突き落とした疑いまでかかっている。貴方が、私を想ってくれているのは、しっている。だが、人命に関わるのは流石にやり過ぎだ」
そう苦虫を噛み潰した顏でおっしゃる王太子様にエリザベス様は、「そ、そんなことしておりません!!何かの間違いですわ。」
そう叫ばれますが、宰相のご子息のセドリック様が歩み出てきて仰られます。
「あなたは、この侍女の顔を見てもそう言えますかな?」
そうやって、押し出されたのは、そう・・・。
私です。いや~。そんな大事な場面を私に丸投げしないで頂きたい。
「おまえは・・・」
「お嬢様・・・」
え?甘い感じの言い回しだけどまったく甘い感じはありませんよ。だって、お嬢様は私を睨んでおられますし、ええ、いつもの般若顏の二割り増しです。
言ったらダメですよ。給金が減ります。一応言わせて貰えばお嬢様は、とても美しいお顔をされております。ちょっときつめの目元を除けば。
さて、私ですが、一体何を喋ればいいんでしたっけ?っと周りにあまりにも注目を集めすぎてお遊戯会の舞台にも上がったことが無い。裏方人生の私にはここは荷が重いようです。ちらりとセドリック様を見ると、何故かわかってるだろって感じて流されました。
いや、わかって無いですよ。
無言でいる私にセドリック様は、額に手を当てため息をつきながらついに本題に入りました。
「私の調査によると、貴方は毎回この侍女を使ってマリアンヌさんを貶めていたようですね。貴方が命令する所を貴方の取り巻き達が見ています。それに貴方の侍女もあまり貴方に忠誠は誓ってないようですね。さっさと吐くでしょう。ほらさっさと喋りなさい。」
まったく尊大な態度でおっしゃるセドリック様に吐けと言われ近くにいた騎士がエリザベス様に剣を向けておられます。
「えっと、マリアンヌさんについていろいろ頼まれたことは、あります。」
私は、ビクビクしながら話します。
「ほらみたことですか。」
「やっぱり、エリザベス・・・君は・・・」
「エリザベスなんてことを・・・」
「エリザベスさま・・・」
っと色んなことを言われるエリザベス様ですが、この後。誤解の無いよう私が、ちゃんと言わなきゃダメなやつですね。そう思い声を大きめにだしました。
「ですが!!」
「ですが?」
「ですがってなんだ!」
何故か怒られながら私は続けます。
「私は、お嬢様の世話はやりますが、マリアンヌさんの嫌がせはやっておりません。」
「何を言ってるんですか?今さら主人をかばったところで」
慌ててセドリック様は私を睨まれますが、ちゃんと正直に言わないとクビになってしまいます。
「いえ。庇ってるわけではなく。給金が出てませんのでそんなめんどくさいことはいたしません。」
「「「は?」」」
なぜか疑問系で聞き返された私は、『こいつらさては耳が悪いな』っと思いもう一度言います。
「だから、給金を貰ってないのでやっておりません。」
「何を言っている。給金なら出てるだろうが!!」っと次期公爵を継ぐ予定のエリザベス様の兄上の長男ウィリアム様が仰います。
「はい。それは、お嬢様の身の回りの世話の給金です。料理・洗濯・掃除にお嬢様の身の回りの世話が私の仕事でありまして。その他は別途特別料金になっております。」
「いや、特別料金って」
「あ、因みに料金表はこちらになっております。」
「えっと、
お手紙配達1000円。(学園内に限る)
教材調達2000円(商店街までとする。)
雑用5000~(用事により変わります)
護衛1時間1万円(ただし、相手が格上やプロの場合相場に応じて変動します。)
夜のお世話300000円(生物学上女である場合)
夜のお世話3000000円(生物学上男の場合)
・
・
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マリアンヌさんへの嫌がらせ999999円(学生期間限定サプライズプライスです。)
何ですかこれ」
「おい桁がおかしい所があるぞ。なぜおまえのような貧相・・・」
「誰かなにかおっしゃりましたか?」
どこからか今変な声が聞こえた気がしましたが、気のせいでしょう。
ついどす黒いものが出てしまいました。
「とにかく。ただでさえ洗濯物や食器洗いだけでも、1人でやらなきゃいけないこの学園内で、何故私がそんな面倒くさいことを料金外でやらなければならないんですか?」
「金を貰えばやるのか?」
「勿論です。」
即答する私にセドリック様は睨みながら証拠にならないといわれます。
「じゃあ、お前が貰ってない証拠は無いだろう。エリザベス様は、かの有名な公爵家の令嬢ですからね。お金なら持っているでしょう。」
「いえ。それは「やめなさい。」」
ここで初めてお嬢様が言葉を出されます。
「何ですか。今さら罪を告白する侍女を止めるのですか?」
ニヤっとされるセドリック様にお嬢様は私を睨んだまま目を離されません。
「いえ。そうじゃなく「黙りなさい。」」
「エリザベス重要な事だ。話を聞かなくてはならないんだ。」
「アンドリューさま・・・」
エリザベスさまは絶望的な真っ青なお顔で王太子様を見つめておられます。
ではここはお嬢様の名誉の為。張り切って大声でいかせて貰いましょう。
「エリザベス様が私にマリアンヌさんへの嫌がらせを頼める事はありません。」
「何故だ。」
「何故ならば。エリザベス様は、フォンテンシュのチョコケーキが大好きで一度食べ過ぎて太られニキビと鼻血を出された事がありまして」
「やめてぇぇぇ~・・・」
叫ばれるお嬢様。ちょっと引き気味の皆様。会場は混沌としております。
「どんだけ食べたんだ」
「そう言えばそんな事もあったような・・・」
っと様々な声とウィリアム様の回想の入った言葉が入ります。ですが、ここで諦めるわけにはいきません。お嬢様の無実の為に私は血を吐く思いで語ります。
「それはそれは鼻血も大量にだされたあの日。なんと出血で意識を1日無くされたほどでした。それで心配なされた公爵様に『月に3回まで』と言われ月に3回買える分のお小遣いしか貰っておられません。」
「しかし、教材やら買うだろう。」
「はい。ですからお嬢様は日々3回を減らさないよう節約生活をされておられます。」
「節約生活っていくらだ」
「フォンテンシュのケーキは、お一つ1万円の高級品なので三万円をなんと公爵様がご慈悲で教材費の為とお嬢様のケーキを減らさぬ為に月のお小遣いは三万九千円まで出されております。」
顔を真っ赤にして崩れ落ちるお嬢様。
「うぅ・・・ついにアンドリュー様にまで知られてしまいました」
「エリザベス・・・」
「もういっそ処刑してください!」
いやいやと、髪を振り乱しながら、泣き崩れるられたエリザベス様をそっと抱きしめながら慰めるアンドリュー様。
なんだかいい雰囲気です。何故でしょう?
ただのチョコケーキなのに・・・ゾク
今、エリザベス様の方からの僅かな殺気が、もしや、お嬢様は思考を読むことができるのでしょうか?
そんなことで少しずつ私がエリザベス様に恐怖を覚えていると
「でも、私は聞きましたわ!!エリザベス様がそこの侍女に『アレをしてくるようにと』怪しいことを頼んでその侍女が了承するところを」
そこで空気を読まず叫び出すご令嬢。
「そう言っておられますが?」
セドリック様は、一応まだやる気のようです。
「はい。了承はします。ですが、お嬢様は日頃からツンデレ・・・ごほん。我儘「あなたそれフォローしてるつもりなの」」
目が真っ赤になりながら睨まれるエリザベス様は、いつの間にかアンドリュー様の腕の中にスッポリと収まっておられます。アンドリュー様。それは流石にセクハラです。
「エリザベス少し黙って進まないから」
「うぅ・・・だってお兄様。」
「では。」
「あなたはもうちょっと自重と空気を読みなさい!!」
話そうとすると何故か仲間のはずのセドリック様からの怒られました。
「ゴホン・・・とにかく話を続けなさい。」
ウィリアム様からの促され。
え?いいの?言っちゃうよ?っとビクビクしながら私は、しゃべり出します。
「昔からお嬢様は、・・・自由奔放(我儘)
でしたのでとりあえず聞いたふりして『わかりました』っと応えるのが我が家のメイドのしきたりでして」
「いや、それは昔からお前(あなた)だけだぞ(よ)・・・」
なにやらささやきが聞こえた様な気がしましたが気のせいでしょう。
「とりあえずやってないわけですね。」
「勿論です。」
「因みにあの料金表のマリアンヌさんの項目の料金は、高い様な気がしましたが」
「ぁぁ、それはですね。一応なんかの有事の際に逃げるようの偽造通行証と旅費に当てようと思いまして。」
そんなことをつい口を滑らしてしまったせいでしょうか。
「・・・それは、後ほど詳しく詰所までご同行願えますか?」
これまで静かだった後ろの騎士様がいきなり声を上げられました。
「・・・」
だまりこむ私の耳元で騎士様は観念したように囁かれました。
「・・・情報料は、払いましょう。」
「わかりました。そこまでおっしゃるなら是非行かせていただきます。」
まるで悪魔のささやきでしたが、そこまで言われたら仕方ありません。
「売ったわ・・・」
「いくらぼったくるつもりなんだ。あいつは・・・」
勿論。お嬢様とウィリアムさまの呟きは私には届きません。ええ、聞こえておりません。
「で、でも、私達聞きましたし、そういえばあの侍女が夜中こっそり出て行くところも見ましたわ」
お嬢様の取り巻きの別のもう1人の方が声をまた上げられます。
「あなた・・・」
お嬢様がキッっと睨みます。
何故か私を。
・・・そして、私はそっと視線をそらします。
「またやったのか・・・」
何故かウィリアム様まで残念な子を見る目に
「なんなのですか?」
セドリック様は、戸惑ったようなお顔でエリザベス様に問われました。
エリザベス様はため息をつきながら私の秘密をこんな大勢の前で暴露されるつもりのようです。
「この子は、昔から大事なもの(お金)は、穴を掘って隠す癖がありまして、毎日掘り返しては、お金を数え埋めていたのですが、その所為で一時期お母様の家庭菜園が枯れてしまいまして、我が家では、庭に穴を掘るのを禁止したのです。」
そして、秘密を暴露された私は観念して語ります。
「あの時はクッキーの箱に入れてしまって、奥様が菜園にお水をまかれるたびにどんどん錆びて酸化してしまいましたのでそれを考慮して今回は壺に致しました。」
「そういう問題ではありません!!埋めるなとあれだけ言ったでしょう。」
「ですが、埋めないと落ち着かないのです。いいですかお嬢様。人は、土があるから掘るんじゃないんです。そこにお金と土があるから掘るんです。」
胸を貼って答える私にエリザベス様は額に手を当て何やら疲れているご様子。
そこには、いつもの冷たさを感じるつり上がった瞳はなく。たまにご実家で疲れた際見せられる儚げな大人の色気が見えます。
「・・・ごめんなさい。私にはよくわからないわ」
「・・・大丈夫だエリザベス。私にもわからん。」
「アンドリュー様」
「エリザベス・・・様はいらない。アンドリューと・・・」
「アンドリュー・・・」
何故か甘い雰囲気のお二人です。お嬢様。
そいつさっきお嬢様に『婚約破棄』とかいってたやつですよ。たぶんそいつ今のお嬢様の色気にやられただけです。
そんなシラけた目線を送っていた私にセドリックさまからの一言が刺さります。
「しかし、マリアンヌさんに被害が出ているのは、事実。どう説明する?」
「ああ、それですが、それならさっき証言されていた。ナタリー様、レジーナ様、フレイア様の証言ですが、おかしいところがございます。特に皆様はお嬢様といつも一緒に行動されておられましたよね」
「え、ええ。」
「ですから、私への命令も聞いておられたと」
「なにを言いたいのかしら」
「ならば普通なら、気付いていたはずです。エリザベス様の侍女が私1人しかいないと、それに他にも一緒におられる取り巻きの方はおられましたが、ナタリー様、レジーナ様、フレイヤ様は、いつも必ず誰か1人付いておられました。特にこの頃はエリザベス様が独りきりの時は、夜寝る前などしかないほどピッタリとくっついておられた癖に!世話をする私がマリアンヌさんへの嫌がらせに抜け出せるはずがありません。
それに侍女は私1人しかいないエリザベス様の部屋に毎日当たり前の様にお茶で集まっておられました。毎日私が紅茶を準備したり、お菓子を準備したりして嫌がらせに抜け出す暇さえなかったということもわかっておられるはず。
それなのに、エリザベス様のお部屋で毎日毎日貴方達は、紅茶やお菓子をパクパクと食べて私が次々に準備しなければならず、余る筈だった私のおやつまで、パクパクといい加減迷惑だと思っていたことも、もっと早く気づくべきなんです!!たまには自分たちの部屋で食べればいいのに・・・」
「はぁ、私情がかなり入ってますが、そうなのですか?」
「「「・・・」」」
「・・・毎日誰かと一緒におられたのは本当ですわ。それにいつもエリザベス様の部屋でお茶会をしておりました。」
そう答えるのは、エリザベス様の取り巻きのお一人伯爵家のクリスティーナ様です。
「それにエリザベス様がマリアンヌさんの存在に気づいたのは最近です。それも、あなた達3人が、エリザベス様に噂を流すまでマリアンヌさんの『マ』の字もお知りになりませんでした。なのに、私が調べた時期ではその前からマリアンヌさんへの嫌がらせははじまっています。」
「なにを・・・」
「私、面倒くさいのは嫌いなんでお嬢様から頼まれるものを極力減らそうとしております。」
「・・・そうね。貴方は、そういうところで無駄に能力を使う子よね。」
エリザベス様が哀愁漂うように同意されています。どうしたんでしょうか?
「つまりです。そんな面倒ごとの塊もとい。マリアンヌさんが王太子様の周りにいるのを見せない為に私は時に道に迷ったフリをしながら、時に鳥の糞が落ちて来たと嘘をつき、お嬢様を池に突き飛ばすなど様々な労力を使ったのです。なのに貴方達は、お茶会などと言って・・・」
つい私は感情の高鳴りをかんじて涙を流します。
「ちょっ・・・何故泣いてるんだ?」
「ああ、セドリック様。・・・あれはですね。無駄に働いた時に出るあの子の悔し涙ですわ。近頃はめっきり見なくなりました・・・」
私は、手に力が入りすぎて爪が皮膚に食い込んでしまいましたが、あの方々には、わたしの労働力分は償って貰わなければなりません。
「あなた達は、わざわざ他の取り巻きの方が心配して気を回しマリアンヌさんの『マ』の字すら出さなかったのをいいことに誤魔化していた私の労力を無視し、マリアンヌさんの話をされましたよね。私はしっかりとおぼえております。
しかも、話した後マリアンヌさんにエリザベス様が嫌がらせをするように仕向けている様な口振りでございました。ですが、罪をなすりつけるはずのエリザベス様がなにも騒動を起こさないので不思議に思ったのではありませんか?」
「そ、 そんなことはありませんわ!!」
「本当にそうですか?だからじゃないんですか・・・貴方達は誇張してエリザベス様にマリアンヌ様の噂を教え、それをまに受けたエリザベス様が『マリアンヌさんに例のアレをやるのもいいかもしれないわね』言われたのを勝手に解釈してエリザベス様が『仰っているのです。』とエリザベス様のせいにして嫌味や嫌がらせをマリアンヌさんに繰り返していたのを私はしっています。
因みに私がお嬢様が言われた嫌がらせは『毛虫を木から落としてビックリした声を聞かれて恥ずかしがればいいんだわ』っという。笑え・・・ごほん。かわいい物です。
それなのに行われたのは教科書が破かれるなどのお嬢様にしては、嫌がらせ難易度が高い嫌がらせでした。
お嬢様は、こんな冷たい見た目ですが、ドロドロ復讐劇やシンデレラの冒頭の継母にいびられるシーンだけでも『あぁ、ダメだわ。お願いもうやめて。ああああ。き、聞こえませんわ』っといって耳を塞いで逃げる人なのにそんな高等なイジメをできるはずがありません。
しかも、私を目撃なさったとか?
何故私が夜中お金を掘りに薬学部の農園まで行ってたのをご存知なんですか?
いつどのようにして見られたのですか?」
「そ、それは・・・」
「・・・薬学部の七不思議の『何かを数える幽霊の声』は、あなただったのね」
追い詰める私を無視し、空気を読まずエリザベス様が呟いておられますが私はまるっと無視します。
「わかりました。・・・嫌がらせがエリザベス様じゃないのは、理解いたしましたが、マリアンヌさんが階段から突き落とされた件はどう説明するのですか。エリザベス様の侍女らしき姿を見たと目撃したものが言ってますが」
「わたしをですか?」
「ええ。貴方の容姿は珍しいですから」
そう、私の容姿はこの国には珍しい黒髪です。
「たしか2日前の3時頃と聞いていますが、あっているなら、私はアリバイが御座います。」
セドリック様は、メガネをクイっと上げながら私に向き直りました。しかし、私は無実を勝ち取るため胸を貼って答えます。
「ほう。それはどういったものでしょう。」
「私、その時間クリスティーナ様の侍女様に怒られておりました。」
「は?」
「ですからクリスティーナ様の侍女様に怒られておりました。」
「頭がいたいわ・・・」
「父上は、なぜこの子をエリザベスにつけたのやら・・・」
自信を持って言う私を見ながらエリザベス様とウィリアム様は何やら天井を見上げながらつぶやいておられます。
「・・・ゴホン・・・説明して頂いても?あと誰かクリスティーナ様の侍女を連れてきてほしい。」
「あの・・・大丈夫ですか?先ほどから咳が・・・のど飴をどうぞ」
そう言って、ボケットから取り出したのど飴を差し出すと後ろからエリザベス様の「あの子が他人に進んで物をあげるなんて・・・」と言う声が聞こえた気がしましたがまるっと無視しました。
「いえ、私は大丈夫ですので説明を・・・」
「そうですか?では。仕方ありません。私のアリバイですので、説明させて頂きます。その日。私は毎日の日課の洗濯を他の方の洗濯物に紛れ込ませる為に洗い場に向かっておりました。」
「どこから、怒った方がいいのかしら?」
エリザベス様の声が聞こえません。ええ、きこえませんとも。
「そして、私はその日かの有名な洗濯物をパリッと仕上げる。天才のクリスティーナ様の侍女様を見つけてしまったのです。そこからの私の行動は速かったのですが、常日頃からクリスティーナ様の侍女様には陰ながらお世話をして頂いている身であります。つい洗濯物を紛れ込ませる頻度がこの頃増えてしまったのは仕方ありません。それが、その日ついにバレてしまったのです。」
ガクッと崩れる私を冷たい目で見るエリザベス様。
何か新しいものに目覚めるかもしれません。
「な、なにか今背筋にゾクッとしたものが・・・」
「大丈夫かい?エリザベス」
「そして、ばれてしまった私は、侍女様に反省をしている事を示すため正座をしながら侍女様の1時間ほどの説教を甘んじて受けました。その後も足の痺れで10分ほど動けませんでしたので、マリアンヌさんを階段から突き落とすことは、できません。それに足の痺れがなくなった後もクリスティーナ様の侍女様に付き纏いガトーショコラと美味しい紅茶を頂いていたので私ではありません。」
「今付き纏いという言葉が聞こえたけど気のせいかしら?」
「気のせいでは無いぞ。エリザベス・・・」
そこでドアが開き見覚えのある2人が入ってきました。
「セドリック様。クリスティーナ様の侍女をつれて参りました」
勿論。さっき出て行かれた騎士の方とクリスティーナ様の侍女様です。
「ご苦労。・・・早速ですが、このエリザベス様の侍女が、2日前の3時ごろ貴方と一緒にいたと証言しているのですが事実でしょうか。」
「え?」
最初は、何のことかと驚かれながら私の顔を確認された侍女様は私の顔を見るや否や。睨みつける目になられました。
「ええ、2日前ですよね。勿論覚えております。見かけない花柄のシーツが混ざっていると思いまして、またかと、いつも洗い終わった後いつの間にか無くなるそのシーツを私は覚えておりました。なので、その日こそは犯人を捕まえるべく張り込みをしていました所。2時半にノコノコと現れまして正座させて説教いたしました。」
「花柄?」
「どうしたエリザベス・・・」
「私のシーツは、白です。花柄ではありません。」
「どういうことだ」
「え?確かに花柄のシーツをその侍女が取りに来ました。間違いありません。その後。クリスティーナ様に出す予定のガトーショコラまで試食して紅茶まで催促していきましたから顔を間違うということは、ありません。」
怒りの形相で話される侍女様はそれはそれは怒っておられました。
「どういうことかしら・・・」
目線を逸らした私に詰め寄るエリザベス様の冷たい眼差しは、流石の私でも無理でした。
「エリザベス様。言い訳させてください。私もたまにはパリッとしたシーツで横になりたかったのです。お昼寝しかパリッとしたシーツで寝れないなんて、夜も・・・夜もパリッとしたシーツで寝たかっただけなんです。」
私は震える声を押し殺し言い訳をさせていただきました。
「・・・貴方とは、また後から話し合いが必要みたいですね。」
「えっと、つまり貴方は、自分の仕事を他人に押し付けてそれのせいで怒られていたわけですね。」
「いえ、ちがいます。私の仕事はエリザベス様の身の回りですので、エリザベス様の洗い物は、私が洗ってパリッと仕上げております。ですから、侍女様のところには、私の私物の洗い物だけ紛れ込ませていただけです。」
「だから、『常日頃からクリスティーナ様の侍女様には陰ながらお世話をして頂いている身』なのですね。」
「はい。いつも、お世話になっております。」
私は常日頃から公爵家の侍女長様から『貴方は、そのお辞儀の角度だけは本当にうまいわね。』っといわれたお辞儀を侍女様に誠心誠意を、こめて致しました。
「クリスティーナ様。本当にごめんなさい。私の侍女が・・・」
「い、いえいえ、私も知りませんでしたので」
何か向こうでエリザベス様が謝っておられますが私は気にせず続けます。
「ですので、私がマリアンヌ様を突き落とすことは出来ないのです。」
胸を張って答える。私は、潔白です!!
「私の無実が証明されて嬉しいはずなのですが、無性にあの子を殴りたくなるのはなぜでしょう。・・・頭がいたいですわ」
「エリザベス。きっと疲れているのだ。もう、いいだろうセドリック。近く控え室を開けさせよう」
「申し訳ありません。」
「いや大丈夫だ。」
いつの間にか儚げなオーラで色気が出たエリザベス様を連れてアンドリュー様が出て行かれます。
エリザベス様が危ないかもしれません。
男はギャップに弱いといいますので。
なんて気長に考えて見送っていると、セドリック様がエリザベス様が出て行かれたのを確認してこちらを見られます。
「貴方実は犯人を知っているのでは無いですか?」
「私がでありますでしょうか?」
「ええ、貴方ですよ」
「そうですね。犯人というかは、わかりませんが、とある情報は知っています。」
「え?知っているのですか?」
ここでいままで黙りだったマリアンヌさんがやっと喋られました。もはや、空気でした。
「ええ、もしかしたらですが・・・」
「・・・仕方ありません。情報料は払いましょう。」
そうおっしゃる目を私は見つめ覚悟を決めます。
もちろん。貰えるものは貰いましょう。と。
「そうですか。そこまでおっしゃるなら、何処から話しましょうか。実はあの日3年生の最終試験日でして、試験の内容はモンスターの召喚でした。」
「ええ、それは聞いていますが・・・」
「そして、その日学園で初めて召喚されたモンスターがおりまして、あまりにも珍しかったので数日召喚したまま檻に入れて少し生態を調べることにしたようです。」
「はぁ、それ自体珍しいことではありませんよ。」
「はい。ですが、問題はそのモンスターがドッペルゲンガーという。モンスターだったことが問題でありまして、まあ、モンスター自体顔がのっぺらした顔になるため本人とは別人だとすぐわかるのですが、たまたま知らない学科の一年生が人が入っていると思い檻の鍵を開けたことは、しってますでしょうか?」
「え?」
「ドッペルゲンガーは、闇の魔物。何処かが黒色に絶対なってしまうそうです。目撃者は私と同じ黒色を見たとか。まあ、これは想像に過ぎませんので私にはこれ以上はわかりません。」
「いえ、それだけ情報を頂ければ私の方でも調べてみます。貴方を疑ってしまい申し訳ありませんでした。」
「いえ、追い詰めらるのは、慣れておりますので」
「そ、そうですか」
こうして、よくわからない。婚約破棄騒動は終結しました。
◇◇◇
その後。私は騎士の方に偽造通行証のことで話を聞くため、取り調べ室という部屋に連れて行かれカツ丼を二杯もご馳走になり、三食ご飯付きの牢屋に連れて行かれました。罪状は偽造通行証を作ろうとしたためとの事でしたが、まだ頼んでいなかったため情報提供までしたので入らなくてもいいと言われたのですが、私はそれで罪を逃れるのは、いけないと牢屋に入りました。普通の生活では、体験できないとても有意義な生活を送らせて頂きました。
感想ですか?それは、もちろん。至福でした。働かなくてもご飯と屋根付きトイレ完備の部屋で寝ることができ、まあ、たまに他の牢からはちょっと『俺は悪く無い』『お前らのせいだ』『呪ってやる』等何やら、叫ぶ声がたまに聞こえましたが、その他は、天国にいるような気分で私としては出たくなかったのですが、お嬢様の『侍女が喜ぶだけなので出してください。あの子には働かせることが一番の罰になるのです』言われたため。渋々、渋々外に出ました。
騎士様には、「またいつでも遊びにおいで」とのお言葉を頂き「はい。いつかまた戻って参ります。」と笑顔で返事をしたらお嬢様から扇が飛んできました。
まったく。この世はあんな天国があるというのに、私はまだ働かなくてはいけないのですね。
神様は理不尽です。
そして、目の前のエリザベス様はアンドリュー様との婚約は解消されずあの騒動前より仲良くなられました。
「はぁ、貴方のせいで薬学部の生徒には申し訳立たないし」
「いえ。その点は旦那様からの薬学部へ資金援助を申し出られましたので、『またいつでも埋めに行きても大丈夫だよ。』との薬学部の先生からのメッセージも頂きましたし大丈夫かと。」
「え?」
「それに旦那様も大変喜んでおられました。『これで誰にも文句を言われぬ。資金援助を、する理由ができた。』と、それはそれは真っ黒な笑みで微笑まれておりました。」
「貴方の行動。実は、お父様に誘導されているんじゃ無いんでしょうね。」
「いえ、私はたまたま、柔らかくて、掘り返してもばれない薬学部の畑に決めたまでですので、たぶん違うと思いますが、否定できないのが旦那様です。」
つい、あの豪華な机に肘をついてにっこり笑う旦那様をそうぞうして、ぶるっと震えてしまったのは、仕方ありません。
「はぁ、とにかく疲れたわ貴方が後ろから出てきた時は、私を売り飛ばしたのかと思ったわ」
「お嬢様の私を見る目がよくわかるお言葉ですが、私はさすがに罪を捏造いたしません。
それに
『主人を守るのは侍女の役目で御座います。』」
「貴方から聞くと、一番胡散臭い言葉だわ。
はぁ・・・、
でも、ありがとう・・・」
「え?お嬢様何か言われましたか?」
「なんでも無いわ。早くお茶を入れなさい。甘めがいいわ」
「まったく。お嬢様は我儘ですね」
「もう、我儘でいいわ」
こうして、お嬢様とお金好きな侍女は平和な1日をたま送り始めるのでした。
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