高尾山で立ち寄ったカフェにはつくも神のぬいぐるみとムササビやもふもふがいました

ムササビカフェ食堂とおばあちゃん

心が大切

  わたしは真昼さんのプロ並みの盛り付けと自身の不器用さを比べてしまいしゅんとなる。

「真歌さんどうしたんですか？」

  しゅんとして俯くわたしの顔を真昼さんは不思議そうに覗き込みながら尋ねてくる。

「いえ、真昼さんは器用で羨ましいなと思ったんですよ」

「真歌さんはまだ若いから大丈夫ですよ。これから料理も練習すれば上達する筈ですよ」

  真昼さんは少女のようなあどけなさの残るその顔にひまわりの花のような大きくて暖かい微笑みを浮かべながら言った。

「そうですよね。何事も練習ですよね」
「うふふ、そうですよ。わたしも昔はそんなに料理は得意じゃなかったですもん」

  少女のような真昼さんのその顔に説得力はないけれど、本当はおばあちゃんでしかも幽霊さんなんだよねと考えると納得出来る。

「では、わたしも頑張ってみますね」

  わたしは両手の拳を握りやる気満々のポーズを作ってみせた。


「頑張ってくださいね」
「はい、頑張りますよ～」
「うふふ、真歌さんってばなんか物凄く気合いが入っていますね。もちろん努力は大切ですが心が一番大切ですよ」

  真昼さんは胸元に両手を当ててホカホカ心があたたかくなる笑顔を浮かべた。

「心ですか」
「はい、美味しくなあれって心を込めて作るんですよ。それと食べてくれる人の笑顔を思い浮かべてね」
「あ、それって素敵ですね」

  わたしの頬は自然と緩む。

「うふふ、そうですか。ありがとうございます」
「そう言えばわたしのおばあちゃんも言っていました。美味しくなってねと言いながら料理を作るのよって。するとあら不思議美味しくなるんだよってよく言っていました」

「あら、真歌さんのおばあさんもですか」
「はい」

  わたしは返事をしながら木々が見える大きな窓がある眺めの良い席に座るおばあちゃんに目を向けた。

  おばあちゃんは窓の外を眺めていた。

  今、何を考えているのかな？

「おばあちゃんも真歌ちゃん食べてみて美味しいはずよ。だって、真歌ちゃんの笑顔を思い浮かべて作ったんだからねって」

  わたしは窓の外を眺めているおばあちゃんに視線を向けたまま言った。