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つくも神
思い出の味
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「お客さんがいるので厨房で食べましょうね」
高男さんが言いながら小さな椅子を四人分並べた。
「は~い」とわたし達三人は声を揃えて返事をしちょこんと小さな椅子に腰を下ろす。
「では、みんなお客さんと同じ料理をいただきま~す」と手を合わせる高男さんに続きわたし達も手を合わす。
そして、わたしは菜っ葉の煮物に箸を伸ばす。口に運んだ菜っ葉の煮物は小松菜がほんの少し苦味があり油揚げと良く合い素朴な味わいだった。
この味をわたしは知っているように感じた。そう思った。どこでこの味と出会ったのかなと考えると、あっ! そうだと気がついた。その時、
「すみませ~ん、温かいお茶をください」とお客さんから声が掛かった。
高男さんが湯呑みに緑茶を注ぎ「真歌さん、お客さんにお茶を運んでもらえますか?」と言った。
わたしは「は~い」と返事をしお盆に載せられた湯気の立った緑茶をお客さんの席へと運ぶ。
「お待たせしました。お茶です」
わたしは対面の接客は初めてなのでちょっとドキドキしながらお客さんの目の前に緑茶を注いだ湯呑みを置いた。
「ありがとう」
お客さんはわたしの顔をちゃんと見て挨拶をしてくれた。
「ごゆっくりお召し上がりくださいね」
「はい、ありがとうございます。この料理懐かしくてとっても美味しいですよ」
お客さんは懐かしそうに顔をほころばせた。
「あのこの料理お客様の思い出に残っている味なんですか?」
わたしがお客さんにそう尋ねると、
「そうなんですよ。この菜っ葉の煮物もお好み焼きも田舎の母の料理を思い出す味なんですよ」と答えうふふと微笑み浮かべた。
「お母さんの料理をですか」
「はい、母の味を思い出しました……この菜っ葉の煮物は少し苦味があるけど油揚げと良く合っていてとても美味しいです。でも、子供の頃は美味しいけどにが~いって言ってたんです」
お客さんはそこで緑茶を一口飲み喉を潤してからまた、話し始めた。
「この懐かしい思い出の味定食は何気なく注文したんですが味もさることながら家族で囲んだ食卓を思い出しました。それで久しぶりに田舎に帰ろうかな~と思いました」
お客さんはにっこり笑い、「それとこのお好み焼きも母が一枚一枚家族の為に焼いてくれたのを思い出しました」と食べかけのお好み焼きに視線を落とし言った。
「偶然の不思議な料理との出会いですね。わたしもこの菜っ葉の煮物を食べたんですけど田舎のおばあちゃんが作ってくれた味を思い出しましたよ」
わたしはそう言いながらさっき知っていると感じた味はおばあちゃんの菜っ葉の煮物だったんだと答えが出た。
「店員さんもこの菜っ葉の煮物を食べておばあちゃんを思い出したんですね!」
お客さんは目を見開きわたしの顔を見た。
「はい、わたしも菜っ葉の煮物苦いよ~って言って食べていたんですよ。でも食べてるうちにクセになる美味しさに変わったんです」
わたしはおばあちゃんの笑顔と菜っ葉の煮物にそれから懐かしい匂いを思い出していた。
高男さんが言いながら小さな椅子を四人分並べた。
「は~い」とわたし達三人は声を揃えて返事をしちょこんと小さな椅子に腰を下ろす。
「では、みんなお客さんと同じ料理をいただきま~す」と手を合わせる高男さんに続きわたし達も手を合わす。
そして、わたしは菜っ葉の煮物に箸を伸ばす。口に運んだ菜っ葉の煮物は小松菜がほんの少し苦味があり油揚げと良く合い素朴な味わいだった。
この味をわたしは知っているように感じた。そう思った。どこでこの味と出会ったのかなと考えると、あっ! そうだと気がついた。その時、
「すみませ~ん、温かいお茶をください」とお客さんから声が掛かった。
高男さんが湯呑みに緑茶を注ぎ「真歌さん、お客さんにお茶を運んでもらえますか?」と言った。
わたしは「は~い」と返事をしお盆に載せられた湯気の立った緑茶をお客さんの席へと運ぶ。
「お待たせしました。お茶です」
わたしは対面の接客は初めてなのでちょっとドキドキしながらお客さんの目の前に緑茶を注いだ湯呑みを置いた。
「ありがとう」
お客さんはわたしの顔をちゃんと見て挨拶をしてくれた。
「ごゆっくりお召し上がりくださいね」
「はい、ありがとうございます。この料理懐かしくてとっても美味しいですよ」
お客さんは懐かしそうに顔をほころばせた。
「あのこの料理お客様の思い出に残っている味なんですか?」
わたしがお客さんにそう尋ねると、
「そうなんですよ。この菜っ葉の煮物もお好み焼きも田舎の母の料理を思い出す味なんですよ」と答えうふふと微笑み浮かべた。
「お母さんの料理をですか」
「はい、母の味を思い出しました……この菜っ葉の煮物は少し苦味があるけど油揚げと良く合っていてとても美味しいです。でも、子供の頃は美味しいけどにが~いって言ってたんです」
お客さんはそこで緑茶を一口飲み喉を潤してからまた、話し始めた。
「この懐かしい思い出の味定食は何気なく注文したんですが味もさることながら家族で囲んだ食卓を思い出しました。それで久しぶりに田舎に帰ろうかな~と思いました」
お客さんはにっこり笑い、「それとこのお好み焼きも母が一枚一枚家族の為に焼いてくれたのを思い出しました」と食べかけのお好み焼きに視線を落とし言った。
「偶然の不思議な料理との出会いですね。わたしもこの菜っ葉の煮物を食べたんですけど田舎のおばあちゃんが作ってくれた味を思い出しましたよ」
わたしはそう言いながらさっき知っていると感じた味はおばあちゃんの菜っ葉の煮物だったんだと答えが出た。
「店員さんもこの菜っ葉の煮物を食べておばあちゃんを思い出したんですね!」
お客さんは目を見開きわたしの顔を見た。
「はい、わたしも菜っ葉の煮物苦いよ~って言って食べていたんですよ。でも食べてるうちにクセになる美味しさに変わったんです」
わたしはおばあちゃんの笑顔と菜っ葉の煮物にそれから懐かしい匂いを思い出していた。
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